<第180回国会 2012年1月31日 参議院予算委員会 TPP・外交問題集中審議>


TPPの交渉内容が秘密になっていることを暴露。TPP参加撤回を求める

○委員長(石井一君) 次に、紙智子さんの質疑を行います。紙智子さん。
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初にお願いしておきますけれども、時間が十分間ということですので、御答弁簡潔にお願いをしておきたいと思います。
 TPP参加に向けた事前協議をめぐって野田総理にお聞きします。
 総理は、TPP交渉参加については、国民にきちんと情報を提供し、十分な国民的議論を経て結論を得ると言われました。しかし、ニュージーランド政府の公式発表によって、これ、交渉内容については、途中経過は限られた対象にしか明らかにせず、協定発効後四年間は秘匿されるという合意があると、このことが明らかになりました。
 先日の衆議院での我が党の委員長への答弁でこのことはあなた自身も認められました。その上で、相手国が非公開として提供する文書はその国の意向を尊重するのは通常の慣行に沿っているんだと、で、協議で得られる情報については出せるものは出していくというふうに述べられました。
 しかし、これでは国民は納得できないわけですよ。出せるものは出すと言うんですけれども、相手の国が出せないものは国民に明らかにしないということになるんでしょうか。──総理に聞きました。(発言する者あり)
○委員長(石井一君) まあ、それじゃ一言で簡単に。時間が十分ですから。
○国務大臣(玄葉光一郎君) はい。
 もう以前から申し上げておりますけど、条文案というのは参加国間でそれぞれ出さないという申合せがあるということであります。テキスト、条文案です。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) これ、本会議でも御答弁させていただいたんですけれども、ニュージーランドの外務貿易省のホームページに、御指摘のとおり、TPP交渉中のテキスト及び交渉の過程で交換される他の文書を秘密扱いする旨の記述が記載をされているということでございますが、一般に、外交交渉においては、交渉相手国が非公開として提供する文書については当該国の意向を尊重することは当然であると考えます。実際、この記述においても、これは通常の交渉の慣行に沿った扱いであるとされております。
 その一方で、TPP交渉参加国政府は一貫してTPP交渉に関する透明性の向上に共に尽力してきている旨記載をされているところでございます。
 いずれにしましても、交渉参加に向けて協議を行っている段階であり、協議を通じて得られる情報について、さっき申し上げたように交渉相手国のいろいろ立場もありますけれども、得られるものについて出せるものについては出していくという姿勢を行い、国民的な議論に供していきたいというふうに考えております。
○紙智子君 昨日の本会議の答弁と同じものを読み上げているだけだと思います。今の答弁ですと、APECのときにあなたが明言をされたきちんと情報公開をするという約束、これ果たせないということじゃありませんか。
 そして、相手が出せない情報というのは、日本にとってはこれ不利なことですよ。国民的な十分な議論を行う、そのための前提となることが崩れるということですよ。あなたはそれを分かっていたのに、結局これ、きちんと情報公開するということをおっしゃってきたんですか。これは国民をだますことになりませんか。
○国務大臣(玄葉光一郎君) これ基本的には、テキストについては以前から出てきませんと。ただ、それぞれの国に情報収集に行っています。それを整理して情報というのをきちっと出していきますので、そういう意味では……(発言する者あり)いや、国会であっても、あるいはそれぞれの党の部門会議あるいは部会、そういったことでもいいんですけれども、また、これから各地を古川大臣中心に歩かれるということも恐らくあるのかもしれません。そういう意味で、それぞれにおいてしっかり情報を出していくということでございます。
○紙智子君 外務省流の理屈だと思いますけれども。
 これは、大事な情報を隠したまま交渉を進めれば必ず矛盾を来すことになるんですよ。
 韓国で、米韓のFTAを締結をして、これ批准に至る過程でも、議会にもそれから国民にも明らかにならない部分があったわけですよ。そういう中で今、大統領選挙にかかわるような、揺るがすような大変な問題になっていることを御存じだと思うんですね。ラチェット規定、一度決めた自由化は後で気が付いて駄目だと思って変えようと思ってもできないとか、それから、さっきもお話ありましたけれども、ISD条項ですね。これは、米国の企業の投資を守るために相手の国の政府を訴えたり自治体を訴えることができるという中身です。これが後から分かって問題になって、それで今、交渉をやり直せと国会決議が上がっていることを総理御存じですよね。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 米韓の両国間の関係について私がどうのということは差し控えたいと思いますが、そのような国会での決議が出ているということは承知をしております。
○紙智子君 日本と無関係じゃないんですよ。
 だって、先日、総理、バーシェフスキー元米国の通商代表は、これ日本経済新聞のインタビューで何と言っているかというと、日本との関係では韓国から引き出した以上の譲歩を求めたいと、こういってコメントしているんですよ。にもかかわらず、その中身が国民に明らかにならないというのは、これ本当に許されることなんでしょうか。私はおかしいと思いますよ。
 そして、実際に米国は何を日本に対して求めているのかということで、総理、事前協議に際して米国の通商部で、日本との物品とサービス貿易に関する関税の撤廃及び非関税障壁の撤廃などについて、これ米国の国内の業界などからの意見公募をやっていますよね。パブリックコメントですね。これ、十三日までに百十三件出されたことが公開をされました。
 これは総理、お読みになりましたか。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) ざっと資料というか結果を目を通させていただいております。
 御指摘のとおり、一月の十三日に、米国政府官報告示による意見募集、いわゆるパブリックコメントが締め切られまして、期日までに百十三件の意見が提出をされたと承知をしています。これらの意見は米国政府に対して提出されたものであり、米国の方針は、今次意見募集の結果も踏まえて検討されるものと承知をしています。中にはいろんな意見がありますが、全体として肯定的な意見が大勢であったというふうに思いますし、ただし、この肯定的な意見であっても、米であるとか食品添加物を含め、関税、非関税障壁等への対応を求める意見が付されていると、そういう傾向もございましたし、パブリックコメントの中からは日本の団体が出しているものも、そういうものも散見をされました。
○紙智子君 私も読みましたけれども、驚くべき中身ですよね。
 今一部触れましたけれども、日本への要求というのはあらゆる分野にかかわっていますよ。そして、例えばその中でも、今紹介ありましたけれども、全米精米連盟は全ての米の関税をなくして残留農薬検査についても緩和すべきだということを言っています。それから、全米の酪農連盟は乳製品の関税を撤廃するとともに食品の添加物認証システムを緩和すべきだということを要求していますよ。それから、ウォルマート・ストア、ここも米や乳製品その他の食料品など関税を撤廃すれば自分たちの売上げの利益が上がるんだというふうに言っていますよ。全米商工会議所、ここも政府調達から農業や医薬、医療器具に至るまで市場開放を要求すると。
 みんな、ですから言っていることは、自分たちの利益を上げるためにもう言いたい放題なんですよね。これは日本にとってはどれも到底受け入れることはできないものですよ。総理、これに対してどう対応するのかと。
 ちょっと具体的に言います。抽象的な答弁困りますから言いますけれども、米はこれ重要品目としてしっかり守るということをやれるのか、あるいは乳製品について守るのかどうか。それから、食品の添加物の認証、承認システムですね、これについて緩和するという要求を拒否するのか。これらについてどういう立場で対応されるのか、総理にお聞きします。(発言する者あり)
○委員長(石井一君) いやいや、あと一分ですから総理にお答えいただきますか。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) パブリックコメントですから、いろいろな業界やお立場からいろんな御意見出されるものは承知していますが、例えば食品添加物のお話もございましたが、それが今の交渉参加している国の間で議論になっているという話はありませんし、パブリックコメントはいろいろなのが出ますけれども、それが全てTPPの議論になっているということではないし、そこは整理をしてお考えいただきたいと思います。
 米などについてのいわゆるセンシティブ品目については配慮しつつ、高いレベルの経済連携に臨むというのがこれ一昨年の十一月の閣議決定でございます。
○紙智子君 断固として守るというふうに言っていただきたかったんですよね。なぜそこを言えないのかと。私は、抽象的なことではこれ終わらない話なわけです。
 結局、米国の多国籍企業が日本の農産物の関税の撤廃だけじゃなくて非関税障壁も含めてこれ撤廃を要求していると、さらに政府調達や保険や郵政などへの参入も強く求めているんですよ、その中に、見ますと。そして、自社の利益になることを語っていると。
 どれを取っても、これ米国の利益にはなるけれども、日本の利益を損なうことは明らかだと。そうである以上、TPP参加をはっきりとこれやめるということを決断をされるように強く求めて、質問を終わります。
○委員長(石井一君) 以上で紙智子さん、日本共産党の質疑は終了いたしました。(拍手)