<第179回国会 2011年11月14日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


根室港の施設改善と泡瀬干潟の埋立て事業の見直しをもとめる。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に北方問題からですが、北方四島の新造船がいよいよ来年から交流事業で運航することができるということになりました。船の名前も「えとぴりか」ということで付いたとお聞きします。
 それで、私が国会に来たのが二〇〇一年なんですけれども、元島民の皆さんから船の要望というかお話聞いて、二〇〇二年に沖北委員会で取り上げさせていただいて十年たつわけですけど、その間に議員連盟の取組でも本当に強力に進めてくる中でいよいよ運航できるということであります。
 それで、この新しい船で出発することになるわけですけれども、港は根室港なんですね。それで、大臣も先日船で乗り降りされたので分かると思うんですけれども、何もない岸壁なわけですよね。ですから、ここで壮行式をやって送り出し、出迎えるわけですけれども、雨が降るとずぶぬれになってしまうと。地元では、せめて屋根付きのステーションを造りたいという希望を持っているわけですけど、是非この計画について後押しをしていただきたいということで、最初にこのことを質問いたします。
○国務大臣(川端達夫君) 要望書は私もいただきました。せっかくいい船できて、私も行って岸壁に行きましたけれども、本当に何もないところでありますからということでの、そういう御要望としてはやっておられることは十分に承知をいたしております。内閣府としても、いわゆる根室港を管理するのは根室市です、根室市あるいは関係省庁ともよく相談をさせていただきたいというふうに思っております。
○紙智子君 よろしくお願いします。
 それで、ちょっと二問目はこの次にまたやらせていただくことにして、次、泡瀬干潟の問題について質問をさせていただきます。
 前回に続いてなんですけれども、それで今資料をお配りさせていただいていると思うんですけれども、これはラムサール条約の実施に関する我が国の報告書案の一部です。登録湿地の状態の変化や保全措置、我が国の取組状況などが、環境省、それから外務、農水、経済産業、国土交通、文部科学の連絡会議で了承されて、これ九月に公表をされたものです。
 ここで、線を引いてあるところを見てほしいんですけれども、条約湿地に登録されていない国際的に重要な湿地の生態学的特徴は維持されているかという問いに対して、その下のまた線引っ張っているところを見てほしいんですけれども、沖縄県の泡瀬干潟において人工島を造る大規模な埋立計画が進んでいるなど、一部において生態学的特徴の部分的な喪失が懸念されているというふうにあるんですね。
 これ、非常に重要な中身なんですけれども、泡瀬についてどのような認識で書き入れたのか。今日環境省の方においでいただいているので、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(渡邉綱男君) 来年六月に開催予定でありますラムサール条約の第十一回締約国会議に向けまして、現在国別報告書の作成中の段階でございます。
 御指摘の記述についてですけれども、この報告書案におきまして、ラムサール条約湿地に登録されていない国際的に重要な湿地の状況に関する問いに対するもので、生態学的特徴の部分的な喪失が懸念されている事例として泡瀬干潟に言及しているものでございます。
 泡瀬干潟を含みます中城湾北部につきましては、昨年、環境省が公表しましたラムサール条約湿地としての国際基準を満たすと認められる潜在候補地の一つというふうになっておりまして、水面の埋立てが進行中の湿地と把握していることから、同報告書案で言及をしたところでございます。
 泡瀬干潟の埋立事業につきましては、事業者において環境保全上の配慮に十分に努めていただきたいというふうに考えておるところでございます。
○紙智子君 今お話しいただいたわけですけれども、この泡瀬というのは沖縄本島の中でも大規模な干潟なわけです。多くの絶滅危惧種が生息していて、シギとかチドリ類などの渡り鳥の飛来地として非常に重要な湿地だということです。生物多様性の宝庫というふうに言われているわけです。
 それで、もう一点お聞きしたいんですけれども、全国百七十二の潜在候補地の中で現在埋立工事が行われている例は泡瀬だけですよね。
○政府参考人(渡邉綱男君) 今回選定しました百七十二の潜在候補地の中で、具体的な埋立計画の進行がされているというので私たちが把握したのは泡瀬干潟でございます。
○紙智子君 ですから、国際的に見ても非常に重要なこの泡瀬干潟を、国内の潜在候補地の中で唯一言わば大規模な埋立てをして今現に壊しつつあるということなわけです。これまでの工事でも、アセスが予測していなかった環境悪化ですとか、あるいは海草藻場の激減、サンゴの劣化ということが既に起きているわけです。
 それで、大臣は先月沖縄を訪問されたと思うんですけれども、残念ながらこの泡瀬には行かれていないと思うんですけれども、前回も質問の中で紹介しましたけれども、生物多様性の宝庫で絶滅危惧種が生息している場所に、今本土の建設会社が空気圧送船ということで船を入れて、大量の土砂をここに投げ込んでいるわけです。それで、大臣にはこの干潟の生物をきちんと見てほしいなというふうに思うんです。
 大臣の地元は琵琶湖の方だというふうに伺っていますけれども、琵琶湖も九三年に登録された条約湿地なんですけれども、これは、九六年に大臣が琵琶湖総合開発の終了に向けて開発から環境保全への転換を求めるということで質問をされておられますよね。実は議事録を読ませていただいているんですけれども、当時の議事録見ると、琵琶湖周辺の内湖に生えているアシが水中の養分を陸上に揚げ、底に沈めるバッファーの役割を果たしており、岸辺の水草は魚の産卵場になり、藻が異常繁殖すると風に流されて岸辺に打ち上げられる、全部がうまく機能を果たしながら自然の力を保ってきたということを言われている。自然の生態系に目を向けておられる御質問なんですね。そして、その内湖を埋め立てて自然が元々持っていた部分を埋め立てたことで、実は自然の力を全部殺してしまうことを結果的にやってきたということを指摘されていて、次の時代は環境保全、復元する政治の姿勢が必要だというふうに述べられているんですよ。
 これは率直に言って、私、ぐっと感動して読ませていただいたんですけれども、こういう姿勢で大臣は取り組まれてきたんだなということを認識を新たにしたわけです。その立場でこの泡瀬を見たら、今埋立てが続行するというのは非常に胸が痛いことなんじゃないのかというふうに思うんです。
 それで、是非、まずはこの泡瀬干潟に実際入って、入ってというのはもう、遠くから見ている分には分からないわけです。やっぱり実際泥のあるところに行って、そして、海に潜るということもあるんですけれども、中に入って専門家の話もよく聞いていただきたいし、それでやっぱり工事はストップしていただきたいなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(川端達夫君) 昔の質問を引用していただいてありがとうございます。琵琶湖もいろんな歴史をたどる中で、やはりいつも、より人間の利便を求めるのか、自然を守るのかというのの境目は大変難しい線があるなというのは思っております。
 そういう中で、今度の泡瀬干潟もいろんな議論等の中で一定の方向性で動かしておられるという状況にありますけれども、一般論で申し上げれば、沖縄担当大臣として、沖縄で起こっている様々なことに関して、現地を見、いろんな人とお話しするということに関しての部分は極めて大事なことであるというふうには思っております。
 今の御指摘の部分に関しては、具体的に計画をしているわけではありませんが、基本的な姿勢としてはそういう立場でこれからも取り組んでまいりたいと思っております。
○紙智子君 実際に行かれるということは検討されますでしょうか。
○国務大臣(川端達夫君) 先生からそういう御指摘があったことは受け止めさせていただきたいと思います。
○紙智子君 環境に配慮をしながらという話はよく出されるんですけれども、配慮をしながら埋立てを進めるということは、これはちょっとあり得ないなというふうに思うわけです。
 それで、生物多様性国家戦略、これ閣議決定されているわけですけれども、干潟や藻場の保全が言わば政府の目標にもなっているというふうに思うんですね。ですから、是非大臣として大局的な判断を、国際的に重要な干潟を守るということで判断をしていただきたいし、沖縄の振興という立場ももちろん今大臣の立場としてはあるわけですけれども、この振興という中身も、やっぱり何が本当に振興になるのかということも是非お考えをいただきたいと思うわけです。
 それで、いろいろリゾート地のホテルの計画なんかもあるんですけれども、必ずしも、やっぱり計画したけれどもうまくいかない状況というのもあるわけですから、先走ってどんどん進めていくということの中で、本当にこれが振興になるのかということも立ち止まって考えるということは必要だというふうに思うわけです。
 私も実は何度も泡瀬干潟には行きまして、やっぱり行ってみてびっくりするわけです。修学旅行の子供たちが現場に行って、その多様性というか生き物の多さにびっくりするわけですね、感動するわけです。そういうやっぱり力を持っているところなんだと。サンゴの群集があり、希少種、絶滅危惧種、こういうものがたくさんある中で、是非見ていただきたいということです。
 それで、今、その埋立面積は確かに当初の計画よりは少し小さくなったというんですけど、それでも、ちょっと見えにくいかもしれませんけど、結構な面積なんですよ。だから、いや、少ししか掛からないんだということを市長さんなんかは言われているんだけれども、だけど実際に、この海でいいますとここの部分が埋立ての計画で進んでいるわけで、今埋め始めているわけですけど、やっぱり全体に対して影響がないわけがないんですね。ですから、そういう意味でも是非本当に現場に行っていただきたいというふうに思うわけです。
 琵琶湖は県も挙げて保全に取り組んできたという経過もあると思うんですけれども、そういう点から、この埋立て、サンゴの群集、先ほども言いましたけれども、新種もあり、希少種もあり、絶滅危惧種もあり、ニライカナイゴウナという貝類があり、ホソウミヒルモという海草があり、本当に多数生息しているときに、一部ちょっと移動させたりはしているんだけれども、しかしほとんどはあることが分かりながら埋め立てていっているわけですよ。だから、本当にそういう意味ではよく見ていただいて御検討いただきたいというふうに思うんですけれども、もう一度、いかがでしょうか。
○国務大臣(川端達夫君) 先ほど環境省の方からもいわゆる環境監視をしっかりやるようにという御意見もありました。沖縄総合事務局と沖縄県で泡瀬地区環境監視委員会というのがありまして、これも含めて、しっかりモニタリングしてそういうことが起こらないようにということが前提になっておりますので、その部分はしっかりと監視をするように我々としても注視をしていきたいというふうに思っておりますし、専門家の指導、助言も含めて、トータルは、先生おっしゃいましたように、元々干潟の一八%ぐらいを埋め立てるという計画が半分になって二%、二%でも影響があるというふうに言われるというのは、ゼロではないことは間違いないと思いますが、そういう意味で、この環境監視の機能をしっかり持つ中で進めていくべきだというふうに思っております。
○紙智子君 繰り返しになると思うんですけれども、環境に、監視しながら進めるという、そこのところが矛盾してしまうわけですよね。
 やっぱり琵琶湖は、先ほども言いましたけれども、大臣御自身が質問をしてから十五年たって、今もこの汚濁のメカニズムが解明されていないということで、みんなが真剣に取り組んでいるんですけれども、悩んでいる最中だと思うんですよ。それで、そういうことを御存じの大臣ですから、早急に直接やっぱり現地に行って御覧になって工事の中止を判断されるように、そのことを切にお願いしまして、質問を終わらせていただきます。