<第179回国会 2011年11月11日 予算委員会>


APEC首脳会議で「TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加表明は行うべきでない」と野田佳彦首相に求める。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 APECに参加をされる野田総理に伺います。
 TPPの参加交渉について、四十四道府県で今、反対、慎重の意見が上がっています。国民の世論も、八割、九割が説明されていないと感じているわけです。与党の一角である国民新党の亀井代表は反対と言っております。民主党の中では慎重にという人が多数を占めているにもかかわらず、あなたはAPECで交渉参加を表明するおつもりなんでしょうか。
 これまで、国民の皆さんの意見をよく聞いて、十分な議論を踏まえてとおっしゃっておられたわけで、十分な議論はできていない、そして理解もできていない、こういう中で到底参加をするなどとは言えないと思います。これをもし言うことになれば絶対に許されないと、私は参加を言うべきではないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 紙委員の御意見はそういう御意見であることはよく分かりました。あるいはまた、地方議会からもそういう意見書が出てきていること、各種団体からもいろんな御要請が出てきています。党内でも活発な御議論をいただいて、昨日御提起をいただいた御提言の中には、慎重、時期尚早、あるいは推進、前者の方が多かったということによって慎重な対応を求めるということでございました。
 そういうもろもろの御意見なども踏まえながら最終的な判断をしていきたいというふうに思います。
○紙智子君 TPPに参加をするということは、全ての農林水産物の関税ゼロ、それを原則とするものです。農水省の試算とシミュレーションでも、関税ゼロになると食料自給率一三%にまで下落をすると。日本の米は九割が輸入米に置き換わり、日本の国土面積の一割に及ぶ百四十六万ヘクタールもの耕作放棄地を生むことになると。これ、百四十六万ヘクタールといいますと、東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県、千葉県の総面積に匹敵するものです。さらに、米の生産の減少で農村の半分の農家が離農に追い込まれることになるわけです。
 私の出身地であります北海道ですけれども、ここは日本の中でも最も大規模で専業農家が多いわけです。日本の食料自給率の半分を担っている。この北海道はTPPで深刻な危機に追い込まれるといって、先日も北海道を挙げた集会を行いました。道内百七十九自治体の中で百七十六自治体が反対若しくは慎重の意見書を上げているわけです。
 北海道庁の試算ですと、農業産出額で五千五百六十三億円減少すると。関連産業では五千二百十五億円の打撃を受け、地域経済は九千八百五十九億円の打撃を受けると。そして、合わせてその影響は二兆六百三十七億円に上るということになります。米は九割削減、一千百三十億円の生産減、小麦は四百十八億円の減で一万一千戸の農家が離農すると。そして、酪農は生産が大幅減少で二千五百三十六億円の生産減、これによって六千戸の酪農家が離農に追い込まれるということが示されているわけです。
 だからこそ、先日、十一月四日ですけれども、集会の宣言では、TPPは北海道の一次産業や地域経済社会に計り知れない影響を与える、影響について十分な情報提供を行い、農林水産業者、商工業者、医療関係者、消費者などしっかり意見を聞いた上で国民的議論を行うべきであり、TPP交渉への参加を拙速に判断してはならないとしているわけです。あなたは、こうした声にこたえるべきではありませんか。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) そういう声が北海道から上がったということは承知をさせていただきました。その上で、要は、アジア太平洋地域の成長力を取り込んでいくことのプラス、それと農業の再生と第一次産業との影響とのバランス、そういうものも含めて総合的な観点から判断をさせていただきたいというふうに思います。
○紙智子君 アジア太平洋の成長を取り込むと言うんだけれども、これはもう既に何度も議論になって、それはできないということが明らかになっているわけですよ。
 それで、この間も度々両立できるようにやっていくんだというお話ありました。しかし、二〇〇七年に、当時、日本とオーストラリアが関税撤廃の問題をめぐって議論になったときに出している農水省の文書があります。それで、関税撤廃した場合に、国内の対策をいろいろ取った場合にどうかということを書いた上で、そこで結論として出しているのは、いろいろ対策を講じても、巨額を投じて措置を講じても国内農業等の生産縮小、食料自給率の低下等は避けられない、いろいろ対策取っても避けられないということを既に二〇〇七年の段階で農水省が出しているわけですよ。そして、いろいろと効率化ということも言っているんですけれども、万全を尽くしてやるということもこの間、野田総理、言われました。
 しかし、今農水省として、農水省も含めて再生実現会議というところで、この間の議論の中でも出していますけれども、この基本方針・行動計画、私読ませていただきましたけれども、これ読みますと、結局、要になっているのは規模拡大、そして集約ですよ、農地の集約、ここを中心にしながらいろいろ戦略つくってやるということなんですけれども、結局、この中身というのは、多くの農家をやっぱり切り捨てていく方向なんですね。
 今、平均で二ヘクタールの農家の面積を二十から三十にしていくということは、百七十三万戸の米農家でいいますと、これ九割の農家が切り捨てられていくことになるんですよ。こんなことをやったら地域が崩壊してしまう。しかも、国際競争に負けない農業というんですけれども、規模を拡大しても、日本の何倍も広大な面積のアメリカやオーストラリアとどうやって勝負するのかということは書いていないですよね。アメリカが百倍、オーストラリアは一千五百倍と言っているわけですから。そういうことも書いていないと。
 しかも、私、本当にこれひどいなと思ったのは、この中に畜産、酪農は入っていないんですよ。一体どうするのか。これについて対策があるんですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 北海道の畜産、酪農というのは、まさしく我が国の食料供給に大きな役割を果たしていただいておりますが、実は、この北海道の畜産、酪農は、既にもうヨーロッパ並みの経営規模を確立しておられるということは御承知のとおりであります。
 ゆえに、これからは、まさしく地方の経営を安定させるためには、六次産業化等々、生産物に付加価値を付けて、そしてまた輸出戦略というふうなものも見直したりというようなことの中で、これから具体的な食と農林水産業の再生基本計画に基づいて取り組んでいきたいと思っております。
○紙智子君 具体的な中身が全然分からないんですよ、今の話でいいますと。
 それで、北海道の道東地域は酪農、畜産の地域なわけですけれども、バターやチーズなどの加工用の原料乳のほぼ全量が外国産に置き換わるんですよ。そして、行き場を失う牛乳は飲用乳として都府県に流れるわけですよ。そうすると、都府県の飲用乳は、プレミアム牛乳、これを除いて消滅してしまいかねないという問題がある。牛肉は生産量の七五%が外国産に置き換わる。
 民主党の自給率引上げのための切り札としてきた小麦、これについては壊滅状態ですよ。そして、砂糖の原料作物であるサトウキビ、てん菜、それからでん粉の原料作物であるジャガイモ、サツマイモは、これは一〇〇%輸入に置き換わると。これ、農水省のシミュレーションですよね。そういうことが示されているわけです。そうなると、北海道の畑作というのは輪作体系でやってきましたから、これ、もう完全に破綻します。それから、北海道だけじゃなくて、沖縄、鹿児島の生産も壊滅すると。地域の経済が成り立たなくなるということですよ。
 こういう不安に、総理は、絶対そうならないと、必ず回避できるんだということを言えますか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 経済連携ごとに私どもは考えていくということを申し上げているわけでありまして、まだTPPについては、総理のおっしゃるとおりに、どういうふうな動きをするか決めておりません。そういう中で、新たな財源という措置も場合によっては講じていかなきゃならないと思っております。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 砂糖の原料作物であるてん菜は、北海道の御指摘のとおり輪作に欠くことのできない作物であります。また、サトウキビは、台風の常襲地帯である鹿児島県とか沖縄県における基幹作物であります。また、カンショは、保水性の乏しい火山灰土壌の南九州の代替困難な作物であります。
 それぞれ、品質格差がなくて海外産品に置き換わりやすい特徴を有しているというのが実情だというふうに思いますので、TPPに入るとか入らないとか関係なく、これらについては、まさに今、鹿野大臣の下で食と農林再生の漁業本部でまさに基本方針と行動計画を作りましたけれども、これらによって体質の強化であるとか六次産業化であるとか等々のまさに高いレベルの経済連携と農林漁業の再生が両立をできるように努力をしていきたいというふうに思います。
○委員長(石井一君) 紙智子さん、時間が来ております。
○紙智子君 全く説明になっていないです。誰も納得できません。やっぱり参加はできないということをはっきりおっしゃるべきだし、私はもう何よりも、今被災して苦しんでいる皆さんがどれだけ懸命になって復興のために頑張っているかと、そのことを潰すようなこのTPP参加は断固として参加しないということを言っていただきたいことを申し上げまして、質問を終わります。