<第177回国会 2011年8月23日 農林水産委員会>


セシウム汚染・牛肉問題 検査体制、支援をはじめ国の責任で緊急の対策を

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 放射能汚染から五か月が過ぎました。先週の十九日に、放射能汚染から食品の安全確保と農業生産を守る緊急申入れを鹿野農水大臣に対していたしましたけれども、現場の声を踏まえて質問したいと思います。
 十九日に政府は、汚染肉牛が発見されて出荷停止となっていた宮城、それから福島、岩手、栃木、この四県のうち宮城県の出荷停止を解除することを発表しました。
 私は十六日に宮城県の仙台に参りましたし、それから十九日は岩手県の水沢江刺に行ってきたんです。それで、宮城の生産者はやっと牛を出せるということで少しはほっとしたと思うんですけれども、岩手県の水沢では不安と混乱が続いています。これは福島も栃木もそうだと思うんですけれども。
 それで、岩手の農家の方は、一番せっぱ詰まっているのは、出荷の時期になっている牛が遅れれば遅れるほどこれ死んでしまいかねないぎりぎりの状態である、現に、この暑さの中で仕上がっていた牛が死んでしまったという話なんですね。一頭で百万とか百数十万とか、そういう牛が死ぬとこれは農家の経営を直撃する、本当にそういう意味では心配でもう夜も眠れないような事態に置かれていて追い詰められている、そういう我々の気持ちを政府は分かっているのか、伝わっていないんじゃないかと、そういうやっぱり思いがもう訴えられましてね。
 ですから、今日はこの声をそのまま農水大臣に伝えますので、まずこれに対して一言答えていただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 被災地の方々、また被災を受けられた方々がどういう思いでおるかというふうなことが、今、紙先生から現場に行っての声としてお話が出されたわけでありますけれども、そういう方々のお気持ちというふうなものを十分体して施策を講じていきたいと、こういうふうに考えて施策を打ち出してきたところでございます。
 とにかく、今のお話のとおりに、いつになったらば出荷できるのか、こういうふうなことで日々本当にやきもきしながら、今それ以上に、本当にどうなっていくのかというようなことで夜も眠れないような状況が続くという、そういう畜産農家の人たちの思いというふうなものを改めて受け止めさせていただきながら、その農家の人たちの心配というふうなものが少しでも減少されるようなことでいろいろと取り組んでいかなきゃならないと。そういう意味におきましては、早期の出荷再開に向けて厚生労働省あるいはそれぞれの関係県と連携を取りながら、出荷あるいは検査の方針というふうなものの作成につきましても、最大限、できるだけ農林水産省としてやれることはやっていきたい、そして農家の方々の御心配を少しでも少なくしていきたいと、こんな気持ちを持つところでございます。

○紙智子君 それで、汚染稲わらの管理についてなんですけれども、この汚染稲わらの処理、管理をめぐっては、二転三転して十九日にようやく農水省から文書が出されました。暫定許容値を超える稲わらは、カラースプレーで区別をしてシートで覆って、飼料庫等牛舎の外で保管すると。県の職員は、当該農家を訪問して覆ったシートをテープで包むなど封印をすると。その後も県職員は三か月に一回は保管する農家を訪問して、数量や管理状況や封印の状況を把握すると。
 牛舎の外に置くということで、それもできるだけ離れた場所で保管するというふうになっているわけですよね。結局、農家は、そうすると稲わらを移動しなきゃいけないということになるわけです。量が多いところはこれは大変ですから業者に頼んだりしなきゃいけないし、場所がないところもあるわけで、そういうところは公用地を確保しなきゃいけないと。
 またそこで手間暇掛かるのかということなわけで、こういうときにお金が掛かったり場所がないというときには、これは生産者に負担させるんじゃなくて、これはやっぱりちゃんと、させないような形で支援をするべきだと思いますけれども、まずそのことについて確認をしておきたいと思います。

○副大臣(筒井信隆君) その農家の中にそういう場所がないときに他の場所に移動をするというのも、またこれも極めて難しいことでございまして、移動をしたところがたとえ国有地であったとしても、その付近の住民からのいろんな声もまた上がってくるわけでございます。それらも勘案しながら、やはり原則その農家の持っている土地のなるべく厩舎等から離れた土地に先ほど申し上げたような着色等々をして保管をするという今方針を出しているわけでございまして、同時に、その放射性物質の量が、濃度が高い場合には、農水省の職員も派遣しまして、体外被曝を受けないような、そういう処置もとっているところでございます。

○紙智子君 体外被曝を受けないようにするのは当たり前の話で、やっぱりその掛かっている、やらなくてもいいようなことをやらせてしまうということですから、これに対してはちゃんと、県任せとか農民任せにしないで、国がそれに対して支援をするという形を取ってほしいと思います。
 それから、牛の全頭検査についてなんですけれども、八月の十六日、仙台で、肉牛農家、それからJA宮城と、それから県の担当者から話を聞いたんですけれども、宮城の場合は屠畜場は一か所使っていて、検査規模に合わせて処理頭数が一日九十頭だと。検査機器が全然足りないわけですよね。簡易検査を含めて抜本的に増やして、滞りなく検査できるようにしてほしいというふうに要求しているんですけれども、やっぱり万全を期すということで、検査機器は、例えば大学の研究室や民間など、国が借り上げてフル動員で動かせるようにするということ、それから出荷停止している県の全頭検査にとどまらず、検査の必要性を求めているところ、こういうところも、都道府県ですね、全頭検査を認めるべきではないかと思うわけです。
 これからまだセシウム、三十年とか掛かるわけですから、これから先のことを考えても、この検査機器の確保や検査費用の支援というのが、これ拡充しておく必要あると思うんですけれども、これいかがでしょうか。

○大臣政務官(岡本充功君) 御指摘の牛肉の放射性物質の全頭検査につきましては、原子力災害対策本部が出荷制限の解除の要件の一部として関係県に求めているほか、今御指摘がありましたけれども、そのほかの生産県においても、消費者の安心の確保の観点から実施が検討されていると承知をしておりまして、厚生労働省として積極的に全頭検査体制の整備を支援しているところでございます。
 七月二十九日には、必要な検査体制を確保できるよう、簡易計測機器の技術的な要件を定めるとともに、牛の計画出荷が図られるための対応について示したところでもございます。また、関係省庁と協力しながら近隣で検査機器を有する検疫所、研究所、大学等を紹介する仕組みを構築するなど、都道府県等の食品中の放射性物質検査が速やかに実施されるよう協力をしているところでもございます。
 今後とも関係省庁としっかり連携をしていく必要があると思いますし、委員御指摘のとおり、大学でもこういった計測ができる機器があるところ、既に一部文科省からの報告を得ておりますけれども、こういったところにも要請ができるような体制をつくっていく必要があるんだろうというふうに考えています。

○紙智子君 それともう一つ、出荷先の都道府県の検査体制の強化ということも急がれていまして、宮城も岩手も八割、九割が東京に出荷なんですね。ところが、その東京の屠畜場でも検査できる体制がないと。国は出荷先の自治体と調整すべきであって、そのために必要な検査費用も国が負担すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○大臣政務官(岡本充功君) 今の御指摘のとおり、現時点で宮城県、これから出荷再開をするというふうに聞いておりまして、まずは県内の屠畜場に出荷をされるというふうに理解をしております。今後、出荷数が増えるに従って東京など県外にも出荷をしていくという形になるであろうというふうに考えておりまして、検査機器の整備、これが急がれるというのは御指摘のとおりだと思います。
 いずれにしても、関係するそういった都道府県、委員御指摘の例えば東京であれば東京都等に働きかけるなど、必要な検査体制の確保についてしっかりと構築をしていく必要があるということは事実だろうと思っています。

○紙智子君 それから、肉用牛の肥育農家の支援対策の問題で、先ほどもちょっと議論になっていましたけれども、喫緊の資金繰りのために畜産関係団体から肥育農家に飼養頭数一頭当たり五万円支援、販売時それから賠償時に返還が求められる仕組みなわけですよね。それで、実質的には餌などに使っているという現実なわけですけれども、売れたら返還と。これ、餌代で掛かるだけではなくて、売れても下落する。その分補填するんだと言うんだけれども、しかし減収になるというのはこれ確実であって、損失を出していて苦労を掛けている農家から返却させるというのはこれは酷だと思うんですよ。
 さっきもありましたけれども、これはやっぱり返さなくてもいいようにするべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今回の追加措置は、まさしく資金繰りで大変な苦しい状況にあられるという、そういう状況に対しての支援策としてとらさせていただいたわけでございます。そして、いつまで返せなんというふうなことは決して言っていないんでありまして、言わば販売収入というふうなものがあった場合に、どうぞひとつそのときにはお返しいただければと、こういうふうなことでございます。
 そしてまた、枝肉価格が仮に下落したというふうな場合には価格下落分を別途支援するというふうなことにもいたしておるわけでございますので、そして損害賠償につきましては、当然農林水産省としても、きちっと賠償すべき損害と認められるとされておるわけでございますから、早期に賠償金が払われるようにこれもできるだけの努力をしていきたいと、こんなふうに思っておるわけでございますので、この点は御理解をいただければと思っておるところでございます。

○紙智子君 先ほども夜も眠れないという話がありましたけれども、やっぱり精神的に受けたそういうストレスといいますか、体調を崩す人もいるわけで、治療費も掛かったりするわけですし、それからたくさんのやらなくてもいい作業なんかもやっているわけですよ。そういうことを考えると、慰謝料とかあるいはお見舞いだとかそういう意味合いも込めて、これは後から返すなんということではなくて、やっぱりそういう考え方の整理をして、これから先の話にもなってくると思うんですけれども、是非御検討いただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、ちょっと時間がなくなってしまったのでまとめて質問するんですけれども、米の放射性物質の調査、これ本来だったら全量検査できればいいんですけれども、相対取引とか産地直送とか縁故米とか、流通形態もすごく多様化しているということなんですけれども、やっぱり擦り抜けないためにもできるだけ細かいメッシュでやるべきだと思うんです。
 福島大学の小山良太准教授が、今必要なのは、放射能汚染地域を細かく調査し詳細なマップを作ると、今後、除染や作付け制限や作物の選定などを有効に行うためには最低でも一圃場ごとの土壌分析が必要だというふうに指摘しているんですね。これについてどうかということが一つ。
 それから、産地では少しでも早く安心して刈取りをしたいと。だから、検査二段階でやるんですけれども、例えば予備調査なんかも、早く設定できるところは早く設定してやってもいいんじゃないのかという声があるんです。やっぱり早く安心して刈取りしたいというのがすごく強くあるんですね。そういうことについてどうかということと、それから、予備調査と本調査、これ、結果については全て公表していただきたいということ。
 もう一つ、併せて、その上で暫定規制値を超えて市町村単位で出荷停止になった場合の補償について、これは全て国が買い上げる必要があるんじゃないのかということで、十九日、申入れの際に大臣は検討するというふうにおっしゃいましたけれども、これについて改めて確認をしたいと思います。

○大臣政務官(吉田公一君) 米の暫定規制値を超える可能性が高い地域がございますが、作付け制限を行うとともに、土壌中の放射性物質濃度が高い市町村におきましては収穫前と収穫後の二段階で調査を実施いたしております。特に、予備調査の結果、放射性物質濃度が一定水準を超えた場合、本調査でおおむね十五ヘクタールに一点の試料採取を行うということで、かなりきめ細かい調査を行うということでございます。

○国務大臣(鹿野道彦君) 仮にお米に対しての出荷制限がなされるというふうなことになります場合は、八月五日の原子力損害賠償紛争審査会で決定した中間指針におきましても、政府により出荷制限指示が出された場合は農林水産物等の売上高相当額は賠償の対象になると、こういうふうになっておるところでございます。そのことによりまして、暫定値を超えたというふうなことでありますならば、当然のことながら、これに係る損害は東京電力によりまして適切なる賠償が行われるということになるわけであります。そのことのために、東京電力に対して、早急に賠償金が支払われるように農林水産省としても取り組んでいくということになるわけでございます。

○紙智子君 仮払い法の枠では二分の一補償ということで、やっぱり国が、国がやっぱり全部賠償して、そして国が東電に請求するという形を是非取っていただきたいと思います。
 もうちょっと時間なくなりましたので、循環型の農業に……

○委員長(主濱了君) 時間が来ましたので、おまとめください。

○紙智子君 はい。
 取り組んできた中で、やっぱりせっかく循環型をやってきたのに、セシウムが入り込んだためにその循環が壊れてしまうし、台なしになるというような声もありますので、こうしたことも含めて、今後しっかり基準も示しながら取り組んでいただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。