<第177回国会 2011年8月4日 農林水産委員会>


米の放射能検査対策の強化を! 東電への指導を迫る(仮払い、風評被害、きのこ農家への送電問題)!

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 米の放射性物質の検査についてお聞きします。
 千葉県は、早場米の収穫が八月に行われることもあり、収穫前の米の放射性物質の測定を決めたわけです。農水省も汚染が心配される各都県に打診をして、今十四都県で収穫前の予備調査と収穫後の本調査を行うということを明らかにしています。それで、放射性物質の汚染の可能性のある米を検査し管理する対策を講ずるのは当然だろうというふうに思うわけです。
 ただ、流通が、自由に流通となっている中でいいますと、例えば産直ですとか縁故米ですとか、あるいは卸の集荷業者ですとかなどを含めて、どうやってやっぱり検査から漏れないようにするのかということが大事です。稲わらの教訓からいっても、やっぱり通り抜けてしまったものがもう流通してしまうとこれまた大変なことになると思いますので、そうならないようにしなければいけないと。どうされるつもりなのか、全量検査をするのかどうかということも含めて伺いたいと思います。できるだけ短めにお願いします。

○副大臣(篠原孝君) 牛の場合は全頭検査というように何頭何頭というのにもできますけれども、米の全量といった場合、莫大な量になりますし、田んぼも一枚の広さ様々でございます。ですから、実質的には、現実的には、検査はある程度の地域を区切り、かつそこから、まあ我々が考えていることでございますけれども、おおむね十五ヘクタールを一つと、一か所と考えてくまなく検査するというようなことで検査をしていく以外にないのではないかと思っております。
 擦り抜けにつきましては、これはきちんとルールを守っていただくということ以外には今のところ対処の仕方はないのではないかと思っております。

○紙智子君 流通する前に政府自身が関与して、今それぞれの自主的な中身なんですけれども、政府がやっぱり関与してちゃんと把握できるということが大事だというふうに思いますし、やっぱりこれまた本当に知らないところで流通してしまうということは内部被曝につながることですので、そこはしっかりやっていただきたいと思います。
 それから、次に東京電力への賠償請求の問題なんですけれども、どれだけ請求があって、これに対してどこまで払われたのかということを東京電力に尋ねたわけですけれども、先週末時点で請求は、農業では三百十九億円、漁業で六十三億円、個人で二百十五件の八億五千万円、これに対して支払が、農業で四十七億円、漁業は十八億円、森林組合に対してはゼロ円ということで、全体で約四百億円の請求に対して六十五億しか払われていないと。もうじき五か月になろうとしているということで、やっぱり非常に遅れている、これに対しての大臣の御認識を伺います。

○国務大臣(鹿野道彦君) これまでも農林水産省といたしましても、東京電力に対しまして仮払金の早期支払など誠意ある対応というふうなものを求めてきたところでございますけれども、今先生からのお話のとおりに、私どもも関係やあるいは団体からの聞き取りによりましてお聞きしますと、八月三日までに五百二十一億円の損害賠償請求に対しまして七十八億円の仮払いが支払われたと、こういうふうな状況だということでございます。
 仮払いにつきましては、五月三十一日に出荷制限による損害等がいわゆる開始されて、八月一日には風評被害に対する仮払いも開始されたと、こういう状況でございまして、近々におきましては賠償財源の確保に資するところの原子力損害賠償支援機構法が公布されるということも聞いておりますし、また、原子力損害賠償の紛争審査会による中間取りまとめも近々予定されている中で、農林水産省といたしましても、今御指摘のできるだけ早い損害の早期支払というふうなものに対してよりこれからも引き続いてあらゆる努力をしていかなきゃならないと思っております。

○紙智子君 支援機構法が通ったということも言われたんですけれども、簡単ではないと思うんですね。というのは、請求書を受け付ける東電の側でいいますと、これは指針の範囲しか受けないと。書類の提出だけでもすごく大変だということも出ているわけです。
 出荷制限指示などの請求の明細ということで、私もちょっとどういう書類なのかといただいたんですけれども、この書類に書き込むわけですけれども、書き込むだけじゃなくて、更に御提示いただく書類というのがあるんですよ。これ読みますと、例えば耕作面積及び圃場廃棄した数量を証する書類ということで、農地基本台帳記載事項証明書、耕作証明書、耕作日誌、過去の生産量の記録、作物の栽培状況が分かる写真。それから、取引単価を証する書類ということで直近の仕切り書など。廃棄費用を証する書類として、廃棄伝票、廃棄に係る契約書、廃棄した作物の写真などと。確定申告ということでとにかく多々あって、一旦書き込んで出したんだけれども、また突っ返されて何が足りない、何が足りないと言われて、結局、こういうことをされちゃうと、お年寄りですとかそれから小さな規模の農家の方なんかはもうそれだけで目いっぱいになっちゃって、もうそれだったらいいやといって諦めてしまうというケースも出ているわけですよね。
 これはもうこういうことを、わざと面倒なことをやって出させないようにしているんじゃないかというぐらい大変な事態になっていて、これをやっぱりもっと簡潔に請求しやすくしてあげなきゃいけないということでこの間も議論になっているんですけれども、これについて経済産業省にお聞きしたいと思うんですけれども、改善されたんでしょうか。

○副大臣(松下忠洋君) 改善されています。
 当初、今おっしゃったように、私も見ましたけれども、それはもう全部出すのは大変なことです。通知のときに徹底していなかったところありまして、これは東電の方も社長が謝罪していましたけれども、全部その資料を出すようにと勘違いされたようでして、そのうちの必要なもの、最低限、一通、二通、それで大丈夫なんだということが趣旨でございまして、そこを改善いたしまして大幅に理解が進んできたというふうに思っています。
 これからもしっかり注意しながら進めていきますので、どうぞよろしく御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 これからはもうそういうことではないというふうにとらえていいということですね。
 それで、実害部分についてもそういう非常に面倒なことがやられたんだけれども、風評被害ということになるともっと複雑になるんじゃないかと。それで、風評被害の請求に対してまずちょっと最初にお聞きしたいのは、支払ったものはどれだけあるんでしょうか。

○副大臣(松下忠洋君) 八月一日からお支払い始めました。茨城、栃木の二つの県の農業団体からの三月分として請求されていた約二十二億円がございました。そのうち仮払いが二分の一ということで約十一億円をお支払いしております。それから、二十二億円以外に請求されているものが約百五十九億円に上がっていますけれども、これも団体等との協議中でございまして、順次更なる支払がなされるように今進めているところでございます。
 先ほど鹿野大臣からもお話ありましたけれども、原子力の賠償支援機構法、昨日成立いたしましたので、いよいよ被害者救済に本交渉、本賠償で入っていくということを進めたいということで、今手続を進めておるところでございます。

○紙智子君 今、団体を通じてのものについては払い始められているということなんですけれども、これ農協などに入っていない個人の分はどうなっているでしょうか。

○副大臣(松下忠洋君) 個人のものも多数受け付けられております。というのは、福島県の場合、これは山田委員もいらっしゃいますけれども、あの地域、二十キロ圏内の農協団体の人たちも一斉に避難されておられたりしまして、なかなかうまく機能できないような状態になっておりまして、そこの構築も大事なことなんですけれども、個人の受付もしっかりいただきながら、それも進めていくということでございます。

○紙智子君 それはちょっと実態と認識違うと思いますよ。個人の方は請求書も受け取ってもらえていないんですよ。風評被害のやつは受け取ってもらえていないと言っているんです。それで、請求書をどういうふうな形で出すかという、実害のやつはこういう文書出ていますけれども、これすらもないんですよ。だから、出したくても受け取ってもらえないというのが個人の方から出されている声なんで、これちょっと再度そこのところを確認していただけますか。確認して、やっていただきたいということで、一言でいいです、御返事いただきたい。

○副大臣(松下忠洋君) 出荷制限も含めて、一緒にきちっと対応してまいります。

○紙智子君 東京電力は、立証責任は被害者という立場なんですけれども、住民に風評被害を立証させようというのは非常に厳しい話なわけです。それで、深刻な放射能汚染の被害をつくった責任というのはそもそも東電にあるわけですから、真摯にやっぱり賠償にこたえていく姿勢を示すべきだと思います。そして、風評被害も直ちに個人も含めて支払うように指導していただきたい。
 それで、そのことについてで言えば、やっぱり非常に複雑な、どういうふうに請求をするかという話になっちゃうわけですから、やっぱりもっと簡単に、我が党としてはもう最初から提起しているんですけれども、全面賠償すべきであって、そして、事故がなかった場合には通常ではこれだけ入っていたやつが事故によってこういうふうに減ったということで、その差を賠償するという形にしてやるべきじゃないかと、これが一番簡単だし分かりやすいんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○副大臣(松下忠洋君) 実際にやっている人たちにいろいろ工夫するように指示いたします。それでまた、時間掛からないように、あるいは手続が複雑で頭が痛くならないように、その辺工夫させたいと思っています。

○紙智子君 さらに、被害者に苦しみを上乗せしている事態というのがあるんですよ。これちょっと具体的な話なんですけれども、キノコの農家の話なんです。
 原発事故で風評被害を受けて収入が減ったキノコ農家に対して東京電力が、電気料金を滞納しているからということで送電を停止するという通告をやっているんです。それで、キノコ農家の方は、この原発事故の後、取引先から放射能汚染の可能性があるから取引できないといって入荷を断られたと。市場からは、買手が付かないから持ってきても値が付けられないといって断られたと。収入がそのことによって激減をしたわけです。それで、電気料金を払いたいと思っていたけれどもできなくなったというのは、これは事故のせいですよね、東電の起こした事故のせいなわけです。しかも、通告書が出されているんですけれども、通告書には、供給停止によりいかなる損害が生じても当社は一切の責任を負いかねますと、こういう免責も強調して書いてあるわけですよね。ちょっとこれはひどいんじゃないかというふうに思うわけです。
 それで、常にキノコというのは十八度ぐらいで、施設の中でずっとその温度を保たなきゃいけないから、電気が切れちゃうっていうことは、もう腐っちゃいますからね、できないわけですよ。そういうことになっているわけです。原発事故で被害を与えた東電の側は生産に欠かせない電気を停止するというふうに、言わば本当に意地悪いというか、こういうことをやるということは本当に許されないというふうに思うんですけれども、大臣、これについて今の話の範囲になるけれども、感想をちょっとお願いしたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今の紙先生からのお話を受けまして、感想ということでございますけれども、いわゆるこの原子力の事故によって経営なりにも大変な影響を及ぼしている、そしてまた、これからの生活にも大変不安な気持ちになっておられるということは大変お気の毒なことだなと、何らかの形で御支援することができることがあればなと、こんな率直な思いでございます。

○紙智子君 私は、本当に加害者の側がこういう形で、払わないのなら電気切るぞと言うのは本当に血も涙もないというふうに思うわけです。被害を受けた農家から訴えがあったら、送電の停止という通告じゃなくて、やっぱり親身になって相談に乗ってやるというのが本来責任ある企業の姿だと思うんですね。
 東京電力は、今回の事故対応として電気料金等の特別措置というのを発表しています。例えば、料金を、払いを先送りするとか延期するというようなことを、柔軟な対応を取るという特別措置をとって発表しているんですけれども、その対象というのは、災害救助法が適用された地域及び隣接地域で被災して申入れがあったところに適用するというものなんですね。だから、この人のように風評被害ということで収入が減ったというのは入っていないということになるわけです。
 やっぱり電気料を支払おうにも風評被害でもって収入がなくなって払えないというわけですから、これは本当に送電停止を一方的に通告するんじゃなくて特別の対策を取るように、これは経済産業省としても東電に対して指導すべきではないでしょうか。

○副大臣(松下忠洋君) 平常時ではなく、はっきりと原因が何かというのはこれは特定されているわけですから、これはしっかりと対応していきたいと考えています。
 供給する電力会社と、それから電力を供給される一般家庭あるいは農業従事者との間に供給約款というのがあるのは承知していますけれども、それはそれとして、とにかく個々それぞれに、やっぱり事情がはっきりしているし原因もはっきりしているのであれば、これはよく相談して個別に対応していくのが正しいと、そのように指導してまいります。

○紙智子君 キノコを父親の代から受け継いで一生懸命作ってやってこられたわけですよね。それが今本当に停止しなきゃいけないような危機に立たされていて、そういうときに本当に励ましていく、激励していく、逆にですね、そういう対応が必要なのであって、やっぱりこの間、国会で東電の社長さんも直接お見えになって、そして、申し訳なかったと頭を深々と下げて謝罪はされるんだけれども、しかしその一方で、現場ではこういうことがやられているというのは本当に矛盾することだと思うんですよ。
 やっぱりこういう事態がなくなるようにするためにも、国の経済産業省としてもきちっとした、確固とした対応を取っていただきたいということを最後に強く申し上げまして、最後もう一言答弁をいただいて、質問にしたいと思います。

○副大臣(松下忠洋君) しっかり指導して対応してまいります。ありがとうございました。