<第177回国会 2011年8月1日 東日本大震災復興特別委員会>


○原子力損害賠償支援機構法案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、総理に伺います。
 放射性セシウムに汚染された稲わらが牛に給与され、牛肉から暫定基準値を上回る放射性セシウムが検出され、疑いのあるものを含めて四十六都道府県まで流通した問題というのは国民に大きな不安を与えています。内部被曝を恐れてスーパーで牛肉を買い控える、あるいは焼き肉店のお客が減るなど、その影響は深刻です。
 福島県浅川町では、三月、四月には酪農の原乳が停止となりました。今度は七月になって肉牛の出荷停止になったわけです。それからまた、百キロメートル以上離れたところで、よもや給与した稲わらがセシウムに汚染されているというふうには思いも寄らなかった生産者のショックというのは、これは本当に大変なものです。
 これからどうしていったらいいのか、新たな苦しみを与えている事態に対して、菅総理の認識を伺います。──菅総理、総理から、総理です。

○国務大臣(鹿野道彦君) 総理がお答えになる前に私の方から申させていただきますと、今回、この稲わら問題につきまして緊急措置という形で、とにかく安全なものだけが出回ると、こういうような体制を築くという意味におきまして、既に出荷されておるところのこの牛肉につきましては、暫定値を超えたものについては買い取る等々、あるいはまた非常に値が下がっておるというようなこと等々から新マル緊事業、すなわち肥育経営の安定特別対策事業等々に対する運用改善等々、あるいは具体的な形でお金が入らないと、このようなことから一頭当たり一定額の交付というようなこと等々、あるいは非常に稲わらの問題で飼料が不足している人たちに対する現物を支給する等々、こういうふうなことの施策をまず講じさせていただいているところでございます。
 これからも、各県の状況というふうなものを踏まえさせていただきながら、できるだけの対策を講じてまいりたいと思っております。

○内閣総理大臣(菅直人君) おっしゃるように、セシウムで稲わらから牛肉が汚染されたという問題は、消費者の皆さん、さらには生産者の皆さんに本当に深刻なある意味での心配あるいは打撃を与えたと思っております。こうなったことを止められなかったという意味では責任を痛感をいたしております。
 これから、とにかく、今農水大臣も言われましたように、市場に出回っているものは安心だということをきちっと言えるような体制をつくって、出荷停止すべきものは出荷停止し、検査すべきものは検査をしっかりしていきたい、こう考えております。

○紙智子君 時間が短いので、聞かないものに答えないでください。
 汚染された肉が食卓に上がらないようにしてほしいと、全頭検査をしてほしい、消費者団体からの要請も上がっています。生産者からも、牛肉の安全、安心の確保のために全頭検査が必要だといって、既に宮城県、それから秋田県、山形県を始め十一県が独自に自主的に全頭検査を始めています。しかし、この検査機器は不足していると。そして、検査料も、これ一件二万円以上の検査料が掛かるんですね。ですから、この検査の基準も様々で、統一してほしいという声も出ているわけで、総理、これらの不安と問題を解消するためにも、全頭検査を国の責任で行うべきではありませんか。

○内閣総理大臣(菅直人君) 現在、各県においてそういう体制が取られております。また、出荷停止などは国の責任で指示を出しているところであります。
 基本的には、最終的な責任はやはり国がしっかり持たなければならないと。ただ、実際に行うのは、最も効果的、効率的になるように、場合によれば自治体にやっていただくのを国が支援する、あるいは直接に一部は国がやれるものがあるとすればやる、そこは一番効果的な在り方をしっかりと協議をして見出してまいりたいと思います。

○紙智子君 今の答弁の中で、要するに検査機器や検査料について国が責任を持つということでよろしいですね、確認します。うなずいていらっしゃいますから、そうだと思います。
 次に、生産者の被害、これも深刻だと。福島、宮城の出荷停止になった肉用牛は、福島で七万八千二百頭、宮城で九万六千百頭が今飼育されているわけです。たった今、速報で岩手県産の肉牛も出荷停止になったということが流れました。農家数でいえば、福島で四千三百戸、宮城で五千七百二十戸、合わせて一万戸です。
 四十年間肥育農業をやってきた農家の方は、牛は三十か月間、最高の状態になるように丹念に調整をして育てている、出荷を延ばせば肉の価値が下がって毎日の餌代だけ持ち出しになると言うんです。震災前は一キログラム当たり二千百円だった肉牛が事故後は千円になったと、稲わらのセシウム汚染後はたった百円に下がっていると言うんですよ。二十八日の東京食肉市場の和牛の取引頭数は平年の半分です。それから、価格も一時的にはBSE発生時を下回る低迷もありました。影響は全国にも波及をして、子牛の価格も下がっていると。どうしてこんな目に遭わなきゃならないのかと、こんな悔しい思いはないと、こういうふうにおっしゃっているわけですよ。
 農水大臣、これどういうふうに対応されますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) まさしくこのような、今先生からおっしゃられたような状況でございまして、そういう意味で、私ども農林水産省といたしましては緊急対策を講じさせていただきました。そういう中で、具体的に各県におきましてもそれぞれ取組の中で出荷制限を行う等々、こういう判断をなされておるわけでありますけれども、私どもも、厚生労働省と連携を取りながら、全頭・全戸体制をしいて、そして、そういうことの中で一体的に出荷制限の解除というふうなものも、これも取り組んでいかなきゃならない。そういうふうなことにつきましてこれからもしっかりと取り組みながら、基本的にはとにかく安全なものだけが出回るという体制を築いていくと、こういうことに万全を期していかなきゃならないと思っております。

○紙智子君 今、農水大臣の答弁の中で、この間発表したスキームについておっしゃらなかったですね。簡単に言ってください。

○国務大臣(鹿野道彦君) この全頭検査等々につきましては、厚生労働省としても、御承知のとおりに、簡易検査器もこれを導入すると、こういうようなこと等で検査体制の強化というふうなものが求められる中で、どういう方式を取ってこの全頭検査、全戸検査を行ったらいいかということにつきましては、当然県とも連携を取りながら、今厚生労働省と打合せをさせていただきながら取り組んでいるところでございます。

○紙智子君 全頭検査の話、もう終わっているんですよ。ちゃんと聞いたことに答えてください。
 政府が発表したスキーム、三つあるんですけれども、そのうちの一つがこれです。(資料提示)

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 信頼回復のための対策スキームというふうになっていまして、これは要するに、スキームそのものを私たちは全てよしとしておりません。不十分な点たくさんありますし、それは全面賠償に向けて万全を尽くしていただきたいと思います。
 その上で、この三つのスキームの中のここに出しました汚染牛の買上げなんですけれども、これ食肉流通団体が汚染牛を買い上げる、汚染されていない牛肉保管をして、その賠償請求は東京電力にまとめて行う、東京電力がこれ損害賠償するということになっていますけれども、総理、このスキームを発表している以上、当然これは東京電力に賠償させるということでよろしいですね。総理ね、総理。

○国務大臣(海江田万里君) これは当然のことだろうと思います。東京電力に対しても、この牛の問題は早く処理するようにということを私からお話ししてございます。

○紙智子君 では、東京電力の社長に今日おいでいただいています。西澤社長に伺います。
 それで、今の確認の前に、まずこの問題ですね、放射性セシウムによる汚染の被害の問題について、当然これ東電の賠償責任あると思いますけれども、それについて御認識を伺いたいと思います。

○参考人(西澤俊夫君) 先生の御質問にお答えいたします。
 福島第一原子力発電所の事故によりまして今回の事態が発生し、畜産農家の皆様、そして広く国民の皆様に大変な御迷惑と御心配をお掛けしております。心からおわび申し上げます。
 今回の事態につきましては、現在、国や自治体におきましていろいろな実態の調査、それからいろんな検討がなされてございます。補償につきましては、これらの検討結果や、それから紛争審査会の指針等を踏まえましてきちんと対応してまいりたいと思います。
 以上でございます。

○紙智子君 賠償審査会云々ということじゃなくて、今このスキームが、国が発表したわけですよ、このスキームの中で言われているように、請求されたものは東電が支払をするということでよろしいんですね。そのことについてお答えください。

○参考人(西澤俊夫君) 今のスキームにつきましては、農水省の方ともきちんと話合いさせていただいております。
 以上でございます。

○紙智子君 話合いをしているということは、受け入れたというふうに理解してよろしいんですか。

○参考人(西澤俊夫君) 今、現在お話合いをさせていただいておりまして、審査会の方でもその指針が出るというふうに聞いておりますので、それを踏まえてきちっとしっかり対応してまいりたいというふうに思います。

○紙智子君 謝罪をされているわけですからね、これ本来、この事故が起こらなかったら起きない問題だったわけですよ。本当に責任があるわけです。
 それで私、今話を聞いていておかしいと思うんですけれども、結局、国としてはまだ今話合い途中だと。話合いも決まらないうちから発表されたということなんですか。そんなことがあるんですか。総理、どうですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 二十九日の日に審査会に対しましても説明をさせていただきましたし、また当然、今回の問題につきましては東京電力が基本的にこの賠償の責任を担っていただくというようなことになると思うわけでありますので、これは当然、私どもとしては賠償していただくことができるというようなことの中で基本的な考え方を打ち出させていただいたということでございます。

○紙智子君 そういただけると思って出しているということ自体が私はおかしいと思うんですよ。発表したのは二十六日でしょう。その時点でどうしてちゃんと合意できていないんですか。ここのところがしっかり確認しなければ、本当に請求されたもの全部行くのかということが宙に浮いちゃうじゃないですか。そうなったら、この受入れをやろうという食肉流通団体は、そんな不確かなことは受け入れられなくなっちゃいますよ。ここのところはどうなんですか。本当にしっかりさせるんですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今東電の社長からも申されたとおりに、今回の件につきましては、この原発事故によるというようなことでありますという受け止め方をされているということでございますから、当然のことながら、今回のこの稲わら問題につきましては東電としてその責任を果たしていただけるものと私どもは確信をいたしているところでございます。

○紙智子君 いただけるものというふうにおっしゃいましたけれども、じゃ、もう一度社長に伺います。これ、請求されたものについては全額賠償支払をするということでよろしいですか。

○参考人(西澤俊夫君) 指針等の、紛争審査会の方でもきちっと議論されると思いますので、それを踏まえましてきちっと対応させていただきます。農水省のスキームについても十分吟味し、きちっとそれについては対応させていただきたいと思っております。

○紙智子君 これ聞いていて納得しないと思いますよ。審査会がどうこうという問題じゃないんですよ。今ここに現に社長がいらっしゃるんですから、社長が決断して、全部、全面的にこたえますと、こういう場としてここ設定されているんじゃないですか。もっとはっきりとおっしゃってください。全面賠償いたしますか。

○参考人(西澤俊夫君) 繰り返しになって誠に申し訳ございませんけれども、今回の事故の要因は福島第一原子力発電所の事故にあることは確かでございます。それに基づきまして、きちっと請求されたものにつきましては我々の方できちっと対応させていただきたいというふうに思います。

○紙智子君 総理、最後にお聞きしますけれども、これ、やはり国が、信頼回復のスキームということで国が発表したわけです。そうである以上、東電に賠償責任を果たさせるということでは明言していただけますか。

○内閣総理大臣(菅直人君) これは、政府としてあるいは農林水産省として責任を持ってこういうスキームでやっていこうということを提起しているわけですから、国としても責任を持たなければならないと、こう考えております。

○紙智子君 今明言をしていただけたものと思います。
 やはりこの間、本当に、今回だけじゃないですね、口蹄疫の問題があり、様々なそういう不利益を得ながら……(発言する者あり)時間ですか、なっているわけですけれども、やはり何よりも国民の食の安全、安心のためにも、そして生産者の苦しみを打開するためにも、やはり国の責任でここはしっかり払わせると。そして、やっぱりもしもの事態に備えて、国はどんなことがあっても必ず迷惑を掛けないということで、最後にそのことを訴えまして、私の質問といたします。
 ありがとうございました。