<第177回国会 2011年6月17日 東日本大震災復興特別委員会>


共産党の「提言」示し原発からの撤退の決断を迫る

○東日本大震災復興基本法案(衆議院提出)
○地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、現地対策本部の設置に関し承認を求める件(内閣提出、衆議院送付)


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東京電力福島原発の事故によって引き起こされた事態に対して、日本の多くの国民が、このまま二十一世紀もこの原発頼みのエネルギー政策を続けていいのかと真剣な模索をしています。福島県が十五日に、復興ビジョンに、原子力に依存しない社会づくりを掲げました。
 放射能の汚染は、福島だけではなくて、関東各県を始めとして本当に広範囲にその影響を広げているわけです。土壌や農林水産物を始め、大きな被害を及ぼしました。海洋汚染についても、この後どこまで広がるのかということは定かではありません。人体への健康被害も心配です。そして、計画的避難地域も含む避難指示の出ている十二の市町村から八万三千人の人たちが、いつ戻れるか分からない、そういう避難生活を強いられているわけです。
 本当に残念ですけれども、またしても相馬市で酪農家の方が、原発さえなければということを書き残して亡くなりました。一たび起きると、こういう形で、ほかの事故とは全く違う大変異常で深刻な被害をもたらす、これが原発事故だということを今回の事故は、福島の事故は示したと思いますが、総理大臣、そう思われませんか。

○内閣総理大臣(菅直人君) 今回の原発事故、かつて他の国にあった原発事故と幾つかの点で異なっていると思います。一つは、言うまでもなく、地震、津波という大きな災害と同時に、それが原因で起きたということであります。それから、複数の原子炉が同時にまさに電源が落ち、事故につながったという問題であります。さらには、これまでの事故では、少なくとも、事故の収束までは、最終的なところまでは時間が掛かりましたが、当面のいわゆる、何といいましょうか、事故の一番強いところは比較的短い時間でありましたけれども、今回の場合は、発生から三か月を超えてもまだ完全な安定状態まで行っていない、長期にわたっているという意味で、大変深刻な事故だと思っております。
 しかし同時に、長期にわたってはおりますけれども、ぎりぎりの段階で拡大を抑え、また、それからの収束に向けて、まだいろいろ山はありますけれども、そちらに向かって動いているということは私は申し上げることができると思っておりますので、何としても収束に向かって、関係者一同の皆さんにも御努力をいただいて頑張り抜かなければならないと、こう考えております。

○紙智子君 もちろん、収束を一刻も早くしなきゃいけないですけれども、しかし、原発事故がもたらす異常さということは、私たち、改めて認識をしなければいけないというふうに思います。
 そして、福島の原発事故を受けて、これ、ドイツの国会では、二〇二二年までに現在の十七基の原発は閉鎖を決定しました。イタリアは、原発再開の是非を問う国民投票で原発再開に反対が九割を超えました。スイスでは、政府は原発を二〇三四年までにこれは段階的に停止する方針を発表していますが、六月八日に国民会議が実質的にこれを承認するということになりました。IAEAが置かれているオーストリア、ここは原発は一つもありません。そして、デンマークは脱原発です。
 日本での福島原発事故が国際社会に大きな影響を広げていると。この日本でこそ、今回の事故からしっかりと教訓を受け止めて、今こそ原発からの撤退に向けて踏み出すべきではないでしょうか。総理大臣。

○内閣総理大臣(菅直人君) 私は、この三十年、四十年間の我が国のエネルギー政策は、もちろん石油、天然ガスといった化石燃料とそして原子力エネルギーに大きく依存するというか、それを基軸エネルギーとして積極的に進めてきた数十年であったと思います。
 今回の事故が発生した後、私がエネルギー基本計画の白紙見直しを申し上げ、そして、再生可能な自然エネルギーとそして省エネルギーをもう二つの大きな基幹エネルギー、エネルギーの柱にするということを申し上げ、内閣としてはそういう考え方を基本的には了解をいただいております。
 いろいろな国が原子力についての国民投票などが行われておりますが、私は、その前にといいましょうか、まずはどういうエネルギーで本当に我々の生活が今のようにといいましょうか、少なくともあるレベルで維持できるのか。
 そのためには、まず今極めて割合の少ない再生可能エネルギーを拡大していって、例えば将来それだけで全てのエネルギーが賄えるようになれば、それは化石エネルギーも要らない、原子力エネルギーも要らないということになりますけれども、そこまではとてもまだ見える状況ではありませんので、一方で再生可能エネルギーを拡大する、一方で原子力については安全性を徹底的に追求する、化石燃料についてはCO2のできるだけの少ない中での効率的な利用をする、そして省エネについても徹底的にそれを進めていくと、そういう姿勢が必要ではないかと考えております。

○紙智子君 今総理の答弁の中で、自然エネルギーの再生の問題触れました。それはいいんですよ。しかし、触れなかったのは、やっぱり撤退ということについては一言も言われませんでした。
 今回、福島が復興ビジョンで、今回の災害で最も深刻な被害を受けた福島の地において、脱原発という考え方の下、原子力への依存から脱却をして再生可能エネルギーへの飛躍的な推進を図るんだということを掲げて、これを基本理念に書いているわけですよ。私はこれは本当に重いと思いますよ。
 そういうところにしっかりと耳を傾けなきゃいけないし、国民の意思という点で見ても、先日、直近のこれは朝日新聞の世論調査でしたけれども、国民の世論は、原発の段階的廃止というのは七四%になっているんですよ。やっぱりこの方向に、撤退の方向にこそ踏み出すべきだというふうに思います。
 総理は、今いろいろ言われた中にありましたけれども、もちろん原発の危険性を最小限にするということでの手だて、これはもちろん全力を尽くしてやらなきゃいけないことですよ。しかし、徹底してやらなきゃならないけれども、そもそも原発というのは、放射能は一旦放出されたらこれは止める手だてがないということが今回の事故から明らかになったんじゃないでしょうか。
 しかも、日本は、言わばまたいつどこで地震、津波が起きるか分からないという状況の中で、そういう状況だからこそ、先日、地震予知連の島崎邦彦会長も、それから茂木元会長もこう言ったんですよ。今回の地震でこれまでの地震学の大きな枠組みや専門的な考え方を変えなければならない、絶対大丈夫なんということは絶対言えないと、こう言って、反省を込めて語っているんですよ。
 総理はいろいろと切り替えなきゃいけないという話をされたんですけれども、やっぱり最も肝心なことは原発からの撤退を決断することだと思います。
 ちょっと見ていただきたいんです。(資料提示)

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 これは、我が党は、今こそ原発からの撤退の政治的決断をということで、自然エネルギーの本格的導入ということで先日提言を出して、今、国民的な討論とそして合意を呼びかけているところです。
 いつまでに撤退するのか、そして日本のこれからのエネルギーについてはどうあるべきなのかと、こういう国民的な議論を経て決定していくということが大事ですけれども、それにつけても、やっぱり原発からの撤退ということを大方向として多くの国民の合意にしなきゃいけないと。
 その上に立ってですけれども、四つの柱です。一つは五年から十年以内に原発ゼロにすると、二つ目は自然エネルギーの本格的導入、三つ目は独立した規制機関を、そして四つ目はエネルギーの浪費型社会からの転換という方向です。
 この五年から十年以内に、これは決して無理なことを言っているわけじゃないんですよ、実現可能だと。総理が言われているように、新増設はこの際やらないと。そして、ここに書いてあるように、今、福島や浜岡は、危険な原発について、あるいはその下にあります老朽化の原発、これ想定の三十年から四十年、これらを廃炉にする、そして自然エネルギーに切り替えると。今、日本の電力の大体原発で二五%を持っていると言われていますけれども、これをやっぱり自然エネルギーに切り替えていくためには今からやっぱり二・五倍にするということで可能なわけですよ。その方向へやっぱり持っていくことは可能だし、挑戦すべきだと。
 私、こういう苦しみを二度と繰り返さないためにも是非とも撤退への決断をしていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。