<第177回国会 2011年6月7日 農林水産委員会>


○農林水産省設置法の一部を改正する法律案、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、地方農政局及び北海道農政事務所の地域センターの設置に関し承認を求める件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今回の農林水産省設置法の改正案は、今まで農政事務所が行ってきた業務を大きく変えるものです。とりわけ、これまで政府米や小麦の保管、管理、安全性チェック及び販売を行ってきた機能が廃止されます。つまり、現在の農政事務所の所掌事務である政府米の販売促進等、それから政府備蓄米及び輸入食料の適正かつ円滑な運営と流通の確保という部分が削除されるわけです。
 また、東日本大震災において緊急食料の支援拠点として大きな役割を果たしてきた国の事務所を統廃合する、災害などの緊急時に支援の拠点になり得る事務所は全国に三百四十六か所あるわけですけれども、それを六十五か所に削減するという重大な内容が含まれているわけです。
 そこで、まず米の保管、管理、安全性チェック及び販売の機能を廃止することについてお聞きします。
 政府は、昨年の通常国会に農林水産省設置法改正案を提出したんですけれども、これは廃案になりました。農林水産技術会議の廃止等を盛り込んだ内容でしたから、これ設置法の廃案は当然だったわけですけれども、実はこの改正案に米の包括的民間委託は含まれるという説明を受けていたわけです。で、設置法の廃案になったので、これは包括的民間委託もやめるんだろうと思っていました。
 ところが、農林水産省は設置法改正もせずに二〇一〇年十月から米の包括的民間委託を強行したと。これ、法令の改正もなしに実施したわけです。ルールを変更する議論もせずに、なし崩し的に包括的民間委託を実施したということは、これは大臣、これで農水省の説明責任、果たせると思いますか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 政府米の保管、運送等の業務につきましては、二十二年の十月から包括的に民間の委託事業体に委託すると、こういうことでございます。
 従来から、保管あるいは運送、カビ確認、変形加工等の業務については、国が直接行うのではなく、民間業者に委託して実施してきたところでございまして、今回包括的民間委託に変更するものの、民間に委託をするということについては変わりはないということでございます。このことは、実務は民間がということでございまして、変わりはないというようなことでございます。
○紙智子君 今の説明だけでは全然納得いかないんです。
 二〇〇八年に発覚した汚染米の問題というのは、農林水産省の政府米の管理不備によるもので、非食用として輸入された汚染米が食用に不正転用されて多くの国民の口に入ってしまったということで、農林水産省は安全管理を含めた体制上の問題が指摘されたわけです。
 この汚染米の問題を反省するのであれば、私はこの食の安全に今まで以上に農林水産省が責任を持つことが求められているはずだというふうに思うんです。ところが、まともに議論もせずにこの包括的民間委託を強行したということなわけです。
 そこでお聞きするんですけれども、受託業者名と外国産米穀の取扱数量、これについて教えてほしいというのがまず一つです。
 それから、その上に立って、包括的民間委託は従来の方法とどこが変わるのかということ、さらに業務の契約方法、それから監督体制についてどういうことかということをお聞きしたいと思います。
○副大臣(篠原孝君) 政府米の販売等の業務は、現在三社を受託事業体に包括的に委託しております。三社の外国産米の取扱数量は、昨年九月末の在庫と二十二年度分の輸入数量との合計でございますけれども、百六十万トンのうち、住友商事が約七十万トン、三菱商事が同じ約七十万トン、それから日通グループが約二十万トンでございます。これらの受託事業体に委託した業務は、また再委託ができることになっておりまして、再委託先の選定はこの三社に委ねておるところでございます。
 どういうふうにやっているかということでございますが、受託事業体は再委託先の業務の実施体制を国に報告することになっております。国が関与をしていないということ、関与がだんだんだんだん薄くなっているという紙委員の御指摘でございますけれども、再委託先もちゃんと報告することになっておりますし、再委託先に対しても業務実施状況を確認することになっております。それから、国が再委託先に対しても監督及び調査ができることになっておりまして、国は受託事業体も再委託先も同様に監督することになっております。国は、最終的には、ですから再委託先に対しても食糧法五十二条に基づきます立入検査も可能となっております。
 このような措置というのは、片方で人件費の節約ということで定員削減が行われておりまして、食糧事務所は縮小されてきたんではないかと思います。そういった中で、我々がどのように関与してどのように安全を確保したらいいかということをいろいろ考えた結果での改正でございます。こういった努力を通じまして、政府米の販売業務等の適切な履行の確保に我々は万全を期しているところでございます。
○紙智子君 人件費節約で人が減っているから仕方ないという、これは私はそうじゃないと思うんですよね。やっぱり必要なところには人は削っちゃいけないということがあるわけです。
 それと、今お話あったように、受託業者は自己資本金が十億円以上必要ですから、これ大手になるわけですよね。今回、汚染米をあの当時、あの事故のときに、当時、この汚染米を三笠フーズに販売した住友商事も入っているわけですよ。どういうような議論があったか分かりませんけれども、透明性、公平性が保たれるのかというのは甚だ私は疑問に思うわけです。
 加えてお聞きしますけれども、この再委託業者という話ありました。再委託業者は何社になるでしょうか。
○政府参考人(高橋博君) 受託事業体から再委託をされております業者数でございますけれども、保管、運送業務関係につきましては四百七十三社、カビ確認、カビ毒検査業務につきましては二百二十三社、変形加工業務につきましては二十四社となっております。
○紙智子君 つまり、合わせると七百二十社ということですよね。だから、受託業者は三社なんだけれども、この三社が再委託する業者は七百二十社にもなるわけです。
 加工用、飼料用のMA米が食用へ転用を防ぐというための指導監督、安全管理を民民の契約でやってもらうということなんですけれども、これ一体どうするのか、横流れを防ぐ方向について示していただきたいと思います。
○副大臣(篠原孝君) 横流れ防止が新たに設置する地域センターの大事な業務だということをお答えしたところでございます。
 具体的にどうするかということでございますけれども、用途限定米を保管する際にほかの米穀と明確に区分して保管することをまず義務付けております。その販売する際にでございますけれども、包装等に加工用米はマル加、飼料用米は飼料の飼ですね、それから米粉は粉、バイオ米はバイオというようなふうに表示することにしております。それが一つでございます。二つ目は、定められた用途に確実に使用すると確認できた事業者へ直接販売すること。三つ目は、定められた用途への確実な使用を内容とする契約の締結、これらを義務付けております。
 その遵守状況を確認するために、現在は農政事務所ですが、今後は地域センターにやっていただくわけですけれども、日常的に改正食糧法に基づく立入検査を行い、ルール違反があった場合には勧告、命令を発出し、命令違反の場合には罰則を適用することにより横流れの防止を徹底したいと思っております。
 さらに、昨年十月から米トレーサビリティー法が施行されまして、米穀等の譲受け、譲渡しに伴う記録が義務付けられております。用途限定米穀についてはその用途の記録を義務付けております。
 以上のような措置を講じまして、日常的な米穀の流通監視業務と不適正な事案が生じた場合における迅速な流通ルートの遡及等を通じまして、米穀の適切かつ円滑な流通の確保をしてまいる考えでございます。
○紙智子君 今説明あったわけですけれども、これはやっぱり事後のチェックについてはそういう形でやれるかもしれないけれども、流通過程の不正や転用を防止するといいますか、そういうことをどうやって防げるのかということについて疑問なんですが、いかがですか。大臣。
○副大臣(篠原孝君) 紙委員御指摘のとおり、三つの大きな企業と、それからそれが七百社を超える再委託の業者に行くのは問題じゃないかという御指摘だと思います。
 途中で変形加工業務というのがあったりする可能性があるわけですが、そういうことにつきましては、従来は、加工時に発生する副産物である微細米等を変形加工業者が取得し販売することも認めておりましたけれども、現在はこれを微細米も含めまして国の所有として、横流れは絶対にないようにしております。
 それから、カビ確認業務でございますけれども、国と受託事業体との契約におきまして、各受託事業体には当該業務の管理責任者を置くとともに、確認、廃棄処理方法は従来と同様の方法で行うように定めているところでございます。こういったことにより、不適正な流通の発生を防止してまいりたいと思います。
 また、国と受託事業体の契約におきましても、受託事業体は再委託先の業務の実施体制を国に報告し、再委託先に対して業務実施状況を確認します。それから、先ほども申し上げましたけれども、国も再委託先に対しまして監督、調査ができるようにしております。
 ですから、最終的には、国は再委託先に対しても食糧法に基づく立入検査も可能となっておりますので、従来と同様の厳しいチェック体制を敷いていくことができるのではないかと思っております。
○紙智子君 なかなか聞いていて分かったかなというか、よく分かりづらいと思うんですよ。
 それで、結局、いろいろなことを今言われたんですけれども、検査は基本的には書類でやるわけですよね。立入検査もありましたけれども、書類が基本的にはそうなっていて、汚染米の事件では、これ検査をしたけど、先ほども話ありましたけれども、何回も検査したけれども見抜けなかったわけですよ。汚染米の問題で、農林水産省がこの販売業務と流通監視業務を一体で行っていたことを、これ、反省したんじゃなかったでしょうか。
 受託業者が販売もチェックもやると、行うと。これ、農水省の立入検査も書類でやるということだと思うんですけれども、それで本当に食の安全、安心を守ることができるんでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 今御指摘をいただいた件についてはしっかりと取り組んでいかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。
○紙智子君 だから、民民でやって、これからは同じようにやってもらうと言うんだけれども、やっぱり基本的なところできちっとかかわってそういうことが二度と起きないようにしていくということでは、これ、一体でやっていたことを反省したわけだから、ちゃんとした体制を取らなきゃいけないじゃないかというふうに思うんですよ。
 米の複雑な流通過程に対してやはり誰が責任を持つのかということでいいますと、やっぱり汚染米の事件というのは、業者ももちろん責任は大きい、業者とともに国の責任が問われたと思うんですよ。その事件を反省するのであれば、やっぱり米の包括的民間委託はやめて食の安全、安心に万全を尽くすというのが農林水産省の役割だというふうに思います。そのことを強調いたしまして、質問を終わります。



○反対討論

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農林水産省設置法の一部を改正する法律案並びに地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づく承認案件に対する反対討論を行います。
 反対する第一の理由は、食の安全、安心に対する国の責任を放棄するものだからです。
 本改正案は、農政事務所を廃止し新たに地域センターを設置するものですが、現在の所掌事務である政府米の販売促進等、政府備蓄米及び輸入食糧の適正かつ円滑な運営と流通の確保は地域センターに引き継がれず廃止されます。政府はこうした業務を包括的に民間委託すると言いますが、民間業者に丸投げするものでしかありません。しかも、包括的民間委託は法令の改正もせずに昨年十月から実施されました。ルール変更の議論もせずになし崩し的に包括的民間委託の実施を強行する、農林水産省の説明責任は全く果たされていません。
 国が全量を管理していた食糧管理制度はWTO協定の発効に伴いなくなり、大量のミニマムアクセス米が輸入されました。また、米を扱う流通業者も許可制から登録制、さらに届出制へと緩和されました。相次ぐ規制緩和が続く中で二〇〇八年に汚染米の事件が発覚したわけです。この事件で国民が求めたのは政府米の厳格な安全管理です。この願いに背を向け、政府米の保管、管理、安全性チェック及び販売など、食の安心、安全に万全を尽くすための国の機能を廃止することは容認できません。
 反対する第二の理由は、国の事務所を三百四十六か所から六十五か所に統廃合するからです。
 東日本大震災において、農政事務所等は緊急食糧の支援拠点として大きな役割を果たしています。災害など緊急時に支援拠点になり得る国の事務所を二百八十一か所も廃止する必要はありません。人員削減を理由にした統廃合ですが、本来、行政需要に応じて国の対策は強化されるべきです。地域に密着した農政事務所の役割は農政上も災害時においても重要で、こうした拠点はなくすべきではありません。
 以上で反対討論を終わります。