<第177回国会 2011年5月31日 農林水産委員会>


○TPPやめよ 農相に迫る

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 TPPの問題について質問します。
 二十六日にTPPに関しての重大発言が相次ぎました。一つは日米首脳会談における総理の発言であり、もう一つは第十七回国際交流会議のアジアの未来における松本外務大臣の講演です。それで、菅総理はTPP交渉参加の判断時期について、震災のために遅れているが、改めて総合的に検討しできるだけ早期に判断したいということで、またしてもTPPへの前のめりの姿勢を明らかにしたわけです。
 同じ日、二十六日に全国農業委員会会長大会が開かれて、TPP交渉への参加撤回を求める緊急要請決議というのが採択をされました。TPPへの参加は、地域社会の再生を目指す今般の復興への取組とは全く相入れないものであるということをはっきり言って、即時撤回を求めているわけです。
 それで、大臣は、この全国農業委員会会長大会のTPP交渉の参加撤回を求める決議と総理の発言についてどのように受け止められておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(鹿野道彦君) 二十六日の全国農業委員会会長大会におけるところの決議というのは、農業委員会の会長会議で決議されたことだと思います。その考え方を明確にされたということだと思います。
 それから、総理大臣がいわゆるそう遅くない時期に早期の方針を固めたいと発言したと今おっしゃられましたけれども、日米首脳会談におきまして、菅総理の方から、TPPについては被災地の農業の復興にも関係しており、その点を踏まえてしっかり議論し、TPP交渉参加の判断時期については、震災のため遅れてはいるが、改めて総合的に判断してできるだけ早期に判断したいという旨を述べられたものと私は承知をいたしております。
 このようなことから、被災地の農業の復興といった点を踏まえてしっかり議論するという趣旨も述べられておるところでございますので、まさにいろいろな要因を考慮して総合的に検討するというような考え方というふうなものは、五月の十七日の政策推進指針で閣議決定した、総合的に検討していきましょうというようなことの考え方を変更するというようなことではないものと私どもは思っておるところでございます。
○紙智子君 非常にこう何となく煙に巻かれるような、一体どっちなんだろうと聞いていて思う、そういう答弁なんですよね。
 それで、大変な時期で復興のことで遅れているから、先送りしたからいいという話じゃないんですよ。要するに、ここではっきり言っているのは、これは参加しないという方向で決断をしてほしいと。参加の撤回を求める決議ですから、参加しないでほしいと、そのことをはっきりしてほしいということを言っているのであって、ところが回答は、いや、その判断についてこれは適切な時期にという話ですから、全然この答えになっていないわけですよ。
 私は、やっぱりそこで農水大臣の役割が本当に大事だと思うんです。やっぱり農水大臣が説得しなければ、あと誰がするのかと。総理に間違った判断をさせないために説得するのは農水大臣を除いてほかにいないじゃないかと思うわけですけれども、いかがですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 常々、紙先生から大変な御激励をいただいて、ありがとうございます。これからも激励をいただく中で、私どもも私としての考え方というふうなものの中で努力をしていきたいと思っております。
○紙智子君 それで、松本外務大臣の発言、さっきもありましたけれども、これは本当に重大だなと思うんですよ。
 それで、今この震災復興をTPP参加の口実に使おうという動きが水面下で動いているわけです、水面下とも言えないですけれども、動いているわけですけれども、外務大臣の講演の中身というのはまさにそのもの、本当によく似たそのものだというふうに思うんですね。
 外務大臣は、昨年十一月の閣議決定でEPA、FTA推進を掲げましたが、震災によりその意義は何ら損なわれることはなく、むしろ以前にも増して重要となっていると考えますというふうに述べて、震災でTPP推進が以前よりも重要になっているというような驚くべき認識を明らかにしているわけです。そして、TPP交渉の進捗状況に応じて、日本の意向を交渉に生かせる早いタイミングを選ばないと意味がないと、こう言って早期の交渉参加を主張しているわけです。
 大臣は、この松本外務大臣の発言をどう受け止めておられますか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 松本大臣が、先ほどの質疑の中にも出てまいりましたが、こういう発言をしたというようなことは私自身も承知をいたしておりますが、重ねて申し上げますけれども、現在、政府といたしまして、まず何をやるべきかというふうなことは、この大震災からの復旧復興に全力を注ぐというふうなことでありまして、まずは復旧復興が喫緊の課題であると、こういうふうな認識に立っておるわけでございますので、政府が決めたところの、総合的にこのTPPについてどうするかということは、この判断するというふうなことの考え方には何ら変わることはないものと思っております。
○紙智子君 松本外務大臣は、外交の問題だけ言っているわけじゃないんですよね。所管外の農林水産業の再生まで言及しているわけです。
 それで、被災地域の第一次産業の復旧はもとより、世界に開かれて日本の再生と共存し得る力強い農林水産業として再生できるよう、経営の大規模化や参入機会の拡大が可能となるような制度設計を行うべきだと、こう言って、TPP対応型の制度設計にすべきだということまで主張しているわけですよね。
 私は、ここまで言われてやっぱり黙っている法はないと。やっぱり大臣の明確な見解を述べられるべきだと思います。いかがですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) この大震災におけるところの復旧復興というふうなものについて、漁業あるいは農業をどうしていくかというふうなことは、当然、政府といたしましても最大の今課題でございますので、政府全体として全力を挙げて取り組んでいくというふうなことは当然のことでございますが、その中で、農業の分野、漁業の分野というものは私自身が責任を担っておるわけでありますから、私自身が最終的に判断をし、そしてその判断が内閣全体の判断になるように努力をしてまいりたいと思っております。
○紙智子君 この一連の発言の背景には、私は、日本経団連の復興・創生マスタープランというのがこの度出されていますけれども、この考え方があるというふうに思うんですよ。
 被災地域全域を震災復興特区という形で指定をして構造改革路線を進めると、そういう産業改革を提起するわけですけれども、それと同時に、それだけにとどまらず、消費税増税のための社会保障と税の一体改革を進めるということとTPPの参加を進めるということで、いわゆる新成長戦略を加速させようという中身が含まれていると思います。
 これは、やっぱり被災地域にとっても、被災者にとっても、これからの復興への願いということとは全く逆方向を向かっている話であって、もう絶対にこれは許されないことだというふうに思います。そのことを最後に申し上げまして、ちょっと今日は十分間という短い時間ですけれども、引き続き追及させていただくことを述べまして、質問を終わります。