第177回国会 2011年5月26日 農林水産委員会


○大震災の農林水産業被害と復興について参考人質疑

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。今日は、皆さん、本当にありがとうございます。
 それで、最初に佐藤富志雄参考人にお伺いいたします。
 実は私も、先日、名取市からずっと海岸線を歩きまして、今日お話あった、配られている資料の、もう土地改良区の方からもいただいて、それで、やっぱり先ほどおっしゃいましたけど、ポイントは、いかに早く農地を復興し、そしてそのためにも排水機場をちゃんと整備してやるようにするかというお話されたんですけど、これも現場から直接伺って、とにかく梅雨入り前には早く排水機場を直して水を外に出せるようにしてほしいという話もお聞きして、ここは少なくとも国営の直轄のやつについてはできるところはもう大急ぎでやるというふうにはなっているんですけれども、ただ、やっぱり地盤が下がっているのでもっと能力を高めないといけないということも含めて議論をさせていただきました。私だけじゃなくてほかの党の方もこの問題を取り上げて、そこに向かって、ですから、当面の予算は付いたけれども、この後の本格的な予算ということでは、やっぱり次の二次補正で必ず取らなきゃいけないということで頑張りたいと思います。
 そのときにお聞きした中に、例えば、作れば作れるんだけれども、下に水を流せないために作付けを自粛している地域があるという話を、イエローゾーンというふうに聞いたんですけど、そのときに、このことの、この分の補償も必要じゃないかという話をしましたら、農水省は、できるだけ作付けしていただいて対応したいということをおっしゃっていたんですが、ただ、水田作っていたところを次、大豆だとかすぐにできるのかというと、これはなかなか難しい面もあって、その辺、現場でやっておられる佐藤さんの方から、どんなことなのかということでお話しいただければと思います。

○参考人(佐藤富志雄君) 今のイエローゾーンの話なんですけれども、先生も地元を見られて分かったかと思うんですけれども、当然、上手のバイパス寄りなんですけれども、そこにたまたま上余田地区という集落があるんですけれども、その中で、当然、イエローゾーンの中にありまして、災害の対策が受けれない地域なんですよね、結局は被害のない農地として残っていますから。ただ、自粛地域ということで稲作りができない。結局は何もできませんよという結論になるんですけれども。
 そこでたまたま、上余田の地域の集落の皆さんの話合いの中で、やっぱり誰か知恵者がいるんですよね。たまたま、ただいまの水田利活用に乗っかった転作、要するに大豆作りなり、これからですと大豆なんですけれども、大豆に取り組もうという部分の声が上がりまして、たまたま私どもに目を付けられまして、この作業受託、委託はアグリさんでお願いできないかと、私らではこういう準備をしますという要望がございまして、私どもと上余田地区では契約が成立しまして、総面積で、あの地域、集落全部ですから、三十六ヘクタールぐらいになりました。
 一応そんな程度なんですけれども、それを受けて自前の面積、ですから、今回補助事業で農機具云々の話もそういった感じで、たまたま、稲作りたいんだがもう作れない、豆しかできない、で、他地区の部分も受託しながら面積拡大というのが当社の部分なんですよ。多分、そういう状況の中で、個人さんもいられるんですよね。この農地もったいないから豆作ってほしいという部分がありまして、恐らく最終的にはもう五十を超える上りかなと思うんですけれども、そうすると、通常の、通常は三十ヘクタール規模ですから、倍近くになるというような状況になっています。
 あと、何もないという地域もあります。もう諦めの心境で、本当にその地域に関しましては何の対策も取れないという部分ですよね。そういう地域も若干ございます。

○紙智子君 大豆を作付けでやるというふうになったんですけれども、同じようにというか、今まで、通常の土地と同じような形ででき上がるかどうかという心配というのは、これはどうなんでしょうね。

○参考人(佐藤富志雄君) 当然、農地を利用して作る分には同じですから。ただ、私どもは、基本的にはある一定の圃場整備を受けたところで今までやっていたんですよ。今回は未整理といいまして昔の一反歩というような地域なんで、これは作業効率が非常に悪いんですけれども、私らとしても仕事としてやらなくちゃならないという部分もあるんですよね、水稲作付けができない状況でございますので。考え方によっては、上余田さんの方から豆作りの作業を我々がいただいたというようにも理解できるんですけれども。
 そういう状況で、ギブ・アンド・テイクの世界で、先方さんは豆作りのノウハウ、そしてまたそれ用の機械も持ち合わせていないということですので、我々のできる範囲内の分は発揮してということになりますね。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございました。
 じゃ、次に、三野参考人にお伺いします。
 今のお話とも重なるんですけれども、除塩の作業ですね、これやっぱりすごく急がれるわけですけれども、実際に地盤が下がっているところについていうと、先ほどの説明ですと、やっぱり海の塩との関係というのはすごく微妙な状況なのかなと。そうした場合に、もっと盛土をしてというか、高くしないといけないのかなというふうにも思ったりして聞いていたんですけれども、下がったところについて、名取市のような場合のですね、そういうところに対しての除塩の作業ということでいうと、どれぐらいのやっぱり経過を見ながらというか、時間掛けてやらなきゃいけないものなんでしょうか。

○参考人(三野徹君) それは状況によると思うんですが、私もつい数日前に、地元に災害後すぐ入られたコンサルタンツの方から、いろんな施設の排水機場と排水樋門の災害の被災の状況を見せていただきました。これは悲惨なものです。少なくとも除塩を済ますというのは、作付けが可能なことは、あれだと思いますが、今度は海の水がいかに入ってこないようにするかという管理も保全も必要でございますので、そういうものを全体がうまく完成しないと、多分単なる水田で塩を抜いて作付けするだけでは済まない問題が起こっていると思います。
 そういう問題は、先ほど佐藤さんの方からもお話のありましたように、地元には大変知恵者がいらっしゃるし、いろんなことを経験してこられた。特に、数百年という歴史の中で多分いろんな慣行とか合意形成の仕組みができておりますので、そういう仕組みとセットにしないと、私は単なる工学的な復旧だけでは済まない話があると思いますので、大変これは、多分水門の復旧とかポンプ場の復旧というのはかなり時間が掛かる問題だと思いますので、その辺は少し地元の知恵をお借りしながら、なるべく今という時点をどう過ごすかということを集中的に考える必要があるんじゃないかというように思います。
 そういう意味では、先ほどのビジョンとシナリオというのをしっかり確立すれば、また地元も納得されるんじゃないかと、そういうように思います。

○紙智子君 いずれにしても、これ挑戦していかなきゃいけないことだというふうに思います。
 次に、八木参考人に伺います。
 先ほどもちょっとお話が出ていましたけれども、環境、経済、社会という三つの視点からということでお話があったわけですけれども、三つ目の環境面についてという中で、やはり日本沿岸で資源が保全されてきた伝統的な仕組みの活用というお話がありました。そういう点では、漁業権の制度という問題を取り上げてお話しされているわけですけれども、やっぱり漁業権という問題は、すごくこれまでの長い歴史を通じて現場で積み重ねられてつくられてきたというのがあると思うんですね。
 それで、そういうやっぱり長い歴史の上にあって今日のものがあるということでは、この漁業権というものの持っている意味といいますか、これがもし損なわれるということになるとどういった心配することがあるのかということについてお聞かせをいただきたいと思います。

○参考人(八木信行君) 基本的な漁業権の仕組みは、漁業者が一定の区画の資源を利用できる権利があるという状況の下で漁業者がその区画の中の資源を自ら進んで守るという仕組みになっています。権利型の漁業管理と呼ばれているものです。
 ですから、漁業権そのものが消失をするというのは仮の話としておっしゃったんだと思いますけれども、そういう場合はまた新しい権利関係の仕組みを構築するということが重要かというふうに思います。その権利が構築できない場合は魚が早い者勝ちの競争で捕られてしまうという状況になりますので、資源保全の立場からしても問題があるというふうに思います。

○紙智子君 それで、ちょっと時間がすぐ来ちゃって、済みません、最後、宮下参考人にお聞きします。
 ホットスポットという問題について、これ、一応避難区域というふうに指定されているところ以外にも部分で存在しているということで、実はチェルノブイリのときもそういう分布の仕方というのがあってということだったわけですけれども、最近も例えば亀戸で三千ベクレルぐらい、超えるベクレルの数値が示されたとか、皇居の前の土からも千ベクレルを超えるそういうものが出てきたということですよね。これは考えてみるとちょっと怖いなというか、つまり、何というか、ぽんと飛んだ形でそういう放射能が出てくるということになりますと、それを受けて農産物なんかも出荷制限になったりとか、あるいは牧草なんかも、それからお茶なんかからも検出されるということになっていて、これ大変なことだなと。
 それで、ちょっとその辺のことについて、対策なんかもそうですし、そういうホットスポットということについてお話しいただきたいのと、じゃどういうふうな、もっと調べてということだと思うんですけれども、対応策が必要かということについてお聞きしたいと思います。

○参考人(宮下清貴君) やっぱり汚染マップをより正確なものを作るということに尽きるかと思いますが、いろんなところが検査をやっておりまして、県なども汚染状況を公表しております。それを見ていますと、ホットスポットというのは、要は距離が遠くなればその分薄くなっていくんですけれども、そうじゃなくてある程度離れたところで高い濃度というのがホットスポットということだと思いますけれども、チェルノブイリで言っているホットスポットはもっとかなり高濃度、数千ベクレル程度じゃなくてかなり高濃度のところへいっているかと思います。
 それで、現状でちょっと汚染マップ見てみますと、大体距離がかなり利いていることはまず間違いないです、それは言えるかと思います。ただ、距離とは必ずしも比例しないで遠いところが高く出ると、そういった例も確かにございます。それは、恐らくそのときの、降下のときの地形とか気象条件によっているんじゃないかと思いますけれども、そこはやっぱり事実、情報ですね。汚染マップを、もうかなり詳しくなってきておりますけれども、これが更に詳しくなっていけばそれも安心材料になるんじゃないかというふうに思います。

○紙智子君 そのためには検査の体制というのをもっと増やさなきゃいけないと思うんですね。それで、多分、検査体制というのは非常に不足していると思うんでそこを強化すべきだと思いますけれども、それについても一言お願いします。

○参考人(宮下清貴君) いろんなところがやっておりまして、県もかなりやっておりますし、国でも戦略推進費ですか、それを使ってそろそろ更に本格的に始めるというようなことになっておりまして、そこの体制はかなりそろってきているんじゃないかと。また、放射能の分析器もまたかなり増えてきているようでありますし、そのような状況で進んでいくことを希望するというような感じですね。