第177回国会 2011年5月10日 農林水産委員会


○被災対策 漁船確保「必要なことは全て検討する」(副大臣)と答弁。瓦れき撤去、養殖施設支援の拡充を要求

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、東日本大震災での漁業被害の問題で質問をしたいと思います。
 それで、先日、当委員会で調査に入りました宮城県の女川町で、帰り際に、漁業というのは裾野が広いんだと、そのことを非常に強くお話をされていました。そのことをやっぱり認識してほしいと。魚が揚がったとしてもどうやって冷やすのか、製氷の施設や冷蔵、加工業がなきゃいけない、それから魚市場、加工業者、輸送の業者などが、そういう流れがつくられてこそ復興なんだということが何度も話をされて、これはこの委員会でも皆さん共通の認識になっているというふうに思うんですけれども、それで本当にそのとおりだというふうに思ったわけですが、そこでやっぱり急がれるところからちょっと質問をしたいと思うんですが、海の瓦れきの撤去、それから船の確保というのはやっぱりもう最優先というか急がれるわけですけど、まずその瓦れきの撤去についてです。
 女川町では、私たち行ったのは四月二十六日だったと思いますけれども、そのときに町長さんが、浜の瓦れきの方はまとめつつあるけれども、漁場の方は全く手が付いていなくて、復興の一番のネックになっているというお話でした。今はもうちょっと進んでいるのかもしれませんけれども。
 環境省は、東日本大震災で、家屋の瓦れきなどの廃棄物の量というのが大体二千万トンを超えるというふうに推計しているわけですね。瓦れき撤去は、撤去してその後焼却をするということなんですけれども、瓦れきの処理が最終的にこれ終わるのにどれぐらいを見込んでいるのかということをお聞きします。
○政府参考人(伊藤哲夫君) 瓦れきの処理、どれくらい掛かるかということでございます。
 阪神・淡路大震災では、災害廃棄物の処理におおむね三年を要したところでございます。今回の震災においては、非常に阪神・淡路以上の瓦れきが生じているわけでございますが、例えば宮城県の災害廃棄物処理基本方針においては、おおむね三年以内に処理を終了することという目標を立てております。また、岩手県におきましては、岩手県における震災により発生した災害廃棄物処理の基本的考え方において、処理完了に要する期間についておおむね三年から五年を目標としているところでございます。
 このような処理が実現できるよう、環境省としても最大限の努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
○紙智子君 漁港内、それから漁場というのは、津波の引き波でもう相当の陸上からの瓦れきが流れ込んでいるわけですが、その上、大量の砂もたまっているということです。海の中の瓦れきの処理というのは、これはどれぐらい掛かるのかということについて、環境省と水産庁にお聞きしたいと思います。
○政府参考人(伊藤哲夫君) 海の中の瓦れきの撤去も非常に重要な課題であるわけでございます。
 この海の瓦れきにつきましては、処理に関係する者がそれぞれ積極的に取り組んでいくということが重要であるというふうに考えております。環境省では、海域の瓦れきの処理について市町村が自ら行う必要があると認めた場合、市町村の災害廃棄物処理事業として実施できることとしているところでございます。海域の瓦れきにつきましては、被災地域によってその存在状況が大きく異なっており、処理の見通しについても異なっているものと考えられますが、環境省といたしましては、海域の瓦れき処理が円滑かつ迅速に進むよう、関係省庁と連携して最大限取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○大臣政務官(田名部匡代君) この瓦れきの撤去についても、できるだけ見通しをお示しすることができれば漁業者の皆さんのまた新たな希望につながっていくのかなと思っているところなんですが、なかなか現段階で見通しを示すことは難しい状況にあります。
 例えば漁港であれば、査定前の工事の着工をしながら、できるだけ早く瓦れきの撤去をする、また瓦れきの撤去をすることに対する支援をしていく、こういうことを現段階でしているわけですけれども、海の中の瓦れきということになりますと、まさにこれは早くその瓦れき撤去をしなければ、船が出たときに、例えば底引き網であれば海底のものに引っかかって二次災害が起こり得る可能性もあるわけですので、何とか早くしたいと思いながらも、現在はダイバーであるとかソナーを使った海底の調査を含め、少しずつその瓦れきの除去をしているところであります。
 早急に進めたいというその作業の急がれる部分と、また様々な理由から慎重に行っていかなければならないという部分と両者あるわけですけれども、今先生、(発言する者あり)いや、それは今日の新聞にも載っておりましたが、多くの御遺体がまだ海底の中に残っていると、車ごと津波の被害に遭われたわけですので。そういう意味では慎重に行っていかなきゃいけない部分というものは現実にあるわけですので、そういうことも御理解いただきながら、少しでも早く漁業が再開できるようにまた全力で取り組んでまいりたいと、そのように考えています。
○紙智子君 環境省にお聞きしますけれども、地方自治体に対して四月三十日に、災害廃棄物の処理の促進についてということでの依頼文書を出しているわけです。生活環境に支障が生じる災害廃棄物については、今年の八月末を目途に生活環境に支障のない場所に移動すべく格段の御配慮をという文書ですよね。これは、漁業などの生産活動も含まれるんでしょうか。
○政府参考人(伊藤哲夫君) ほとんどの市町村で瓦れきの仮置場への搬入が進んでおり、今後それを加速化していく必要があるわけでございますけれども、環境省といたしましては、とりわけ避難所や住宅地の近くにある瓦れきの撤去をし、生活環境上支障が生じないと、こういうふうなことにしていくことが重要だと考えており、今先生御指摘のように、このような撤去が急がれる瓦れきについては、八月末を目途に仮置場や中間処理施設に移動するよう関係地方公共団体に依頼をしたところでございます。
 このため、生産活動に影響する瓦れき全てを対象ということにしているわけではないということでございます。
○紙智子君 それで、大臣にお聞きしますけれども、漁港や漁場の海の中の瓦れきもこれ生産活動に支障がない場所に移動させるという見通しですね、これについて示すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 漁船の航行なり、あるいは係留なり、漁業活動に重大な支障を及ぼす漁港なり漁場の瓦れき処理というものは、当然のことながら急がなければならないと思っております。
 このために、査定前に着工できる応急工事も活用して航路等の対策も実施をいたしておるところでございまして、この度の補正におきましても漁場復旧対策支援事業というふうなものを計上させていただきまして、いろいろ瓦れき等を漁業者やあるいは専門業者の方が回収、処理する取組も支援をいたしておるところでございます。
 このような事業というものを最大限活用して、早急に漁港なり漁場の瓦れき等の回収、処理というものを進めていかなければならないと思っているところでございます。
○紙智子君 漁業者の皆さんは、養殖の収穫は一年から四年ぐらいだって言っていますよね。だから、ワカメは八月にやると来年収穫できると。それから、ウニなんかは六月に間に合わせたいということもあるわけですよね。ですから、そういう本当にやりたいという思いがある中で、やっぱりそれを勇気付けるメッセージを出していくべきだというふうに思います。
 それから、漁船の確保の問題について質問したいんですけれども、今回の漁船の被害というのは二万隻を超えているということですよね。私、以前、五トン未満の共同利用小型漁船の建造事業等、これの枠を超えた支援、再建を求めたわけですけれども、今回新たに共同利用漁船等復旧支援対策事業ということがやられることになったと。これは歓迎します。
 この事業のまず補助率、それから要件、例えば漁船数ですとか、あるいは地域などの中身について説明をできるだけ簡潔にお願いします。
○副大臣(筒井信隆君) 県が三分の一以上、国が三分の一の支援をする、そして五トン以上のものについても対象にするという事業を今度設定をしたわけでございます。
○紙智子君 これは、中古船を確保するということでも可能になるんでしょうか。
○副大臣(筒井信隆君) 中古船の場合も対象にいたします。
○紙智子君 この被災した船ですね、これ修理、修繕するためには、被害状況を調査をして、それで使えるならば引き揚げるというようなことがやらなきゃいけないんですけれども、このときに現況調査したり、あるいはその引揚げ費用の支援はないというふうに聞いているんですけれども、今後支援すべきではないでしょうか。
○副大臣(筒井信隆君) それらを含めて、今の制度の対象になっていないものについては今後検討をさせていただきたいと思います。
○紙智子君 この事業は、漁協の負担が三分の一なんですよね。それで、漁協は債務超過で経営大変という、非常に、存続できないというような事態のところもあるわけで、踏み込んでやっぱり支援してほしいと。今、検討されると言いましたんで、是非そのことをお願いをしたいと思います。その点、もう一言いかがですか。
○副大臣(筒井信隆君) 今、漁業公社といいますか、漁業の国有化的な意見さえも復興会議で出ているところでございまして、漁業を復興させることが最大の課題で、そのために必要なことは全て検討対象として取り組んでいきたいというふうに考えております。
○紙智子君 次に、養殖の施設についてなんですけれども、今回の被害で財産をなくして、借金を抱えて、まさにマイナスからのスタートになるということで、漁業を続けるかどうかということを非常に迷っている漁師の方も多いわけですよね。やっぱり出てくる声というのは、せめてゼロからのスタートをと。だから、マイナスからじゃなくて、せめてゼロからのスタートをという要望が寄せられているわけです。
 そこで、養殖施設の災害復旧の事業についてなんですけれども、災害復旧事業の基準が、残存価値でいいますと、今の施設の借金を返しながら更にその借金を抱えるということになるので、もっと、新たな借金をしなくてもいいようなことを考えるべきじゃないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 先生からは本当に難しい問題提起をいただきました。
 今回も、この養殖の施設の復旧事業について、できるだけ漁業者の方の負担を軽減しなきゃならないと、こういうようなことで取り組んだところでございまして、魚類の養殖施設あるいは貝類の養殖施設、あるいはその他のいろんな養殖施設についても幅広くこの対象にして、そして、災害復旧事業の補助率も、今回はもう経費の九割まで負担をすると、こういうようなこともいたしたところでございます。
 この今般の養殖施設の復旧事業に当たって、残存価格の明確に判明しない施設については、これを購入価格の二分の一とみなして、特に壊滅的な被害を受けた岩手県、宮城県及び福島県の三県については四分の三とみなすと、ここまで思い切ったかさ上げもさせていただいたところでございます。そういう意味で、このようなことでひとつ取り組んでいただければなと、こんなふうに考えておるところでございます。
○紙智子君 難しいことに対してという話があったんですけど、ただやっぱり、今十分の九まではということですよね。実際に三陸の漁業者の皆さんの状況を聞きますと、去年チリ地震があったわけで、その津波の影響もあったわけですよね。それで、そのときには養殖の被害額が、養殖関係だけでいうと二十五億円の被害額なんですよ。これに対して実際に交付されたのはどれだけかというと、大体五億円に満たないぐらいなんですよね。だから大体二十億ぐらいのところは漁業者やあるいは漁協や、こういうところが負担をしてきたということでもあるわけです。
 ですから、非常にそういう状態の中で何とかしたいという気持ちがあるわけですから、そこはやっぱり本当に国が全額見るぐらいのそういう気持ちで、腹構えでやっていただきたいなと思うんですけれども、大臣、もう一度いかがでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 先生からの御指摘のことにつきましては、思いはここに並んでおる我々も同じでございますけれども、今回のとらせていただいた措置というのは相当思い切った措置のかさ上げだと、こういうこともございますので、まずこの今回の予算措置等々も含めてのこういう対応について生かして、活用していただきながら、今後、地域におけるところの方々がこれからの復興構想に向けてどういう御要請、御要望というふうなものがあるかということも全体的な取組の中で考えていかなきゃならないということもあり得ることでございますので、そういう中で私どもも取り組んでいきたいと思っております。
○紙智子君 この間、私たちの党も何班にも分かれて現地に入って、聞く声というのはやっぱり共通して、ここの思いというのは本当に何度も何度も出されていることなんですね。ですから、是非引き続きそういうことで検討、努力していただきたいというように思います。
 それから、加えてなんですけれども、水の環境の問題、海の環境の問題ですけれども、養殖施設の環境が、やっぱりいろんなものが入っていますから相当悪化しているんじゃないかと。養殖を再開するに当たっても環境の調査というのはこれは必要だと思うわけですけれども、これは第一次補正の中に環境調査は含まれているでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 今回の津波によりまして養殖漁業への被害が本当に甚大な中におきまして、その再建については浮遊物や水質等の、今先生からお話のありました養殖漁場環境の悪化というものについては懸念をいたしているところでございまして、被災県が養殖漁場環境の調査を行うに当たりましては、国といたしましても県の試験研究機関と独立行政法人の水産総合研究センターの協力が円滑に行われるように連携強化を図ってまいりたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
○紙智子君 今、被災県とそれから独立行政法人という連携というお話あったんですけれども、やっぱり是非国の責任でやっていただきたいと、やるべきではないかと思うんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 関係県との調整というものを図りながら、独立行政法人の水産総合研究センターの北光丸によりまして、水温や塩分あるいは油分等々の漁場環境調査を実施したのが四月の十四日から二十六日までであります。そして、このような中で、国といたしましても五月の十三日に関係県及び水産総合研究センターとの意見交換会の機会を、実施を予定しておるところでございまして、このような中で自主的な調査というふうなものについてしっかりとした実施をしてまいりたいと思っておるところでございます。
○紙智子君 海の中の瓦れきを撤去した後、養殖を始めるに当たって施設の環境を、その基準というんですかね、そういう基準というのはどういうふうになっているでしょうか。ありますでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 今先生が申された持続的な養殖生産の確保を図るための基本方針ということにおきましても、養殖漁場におけるところの漁場環境改善のための目標というものを定めているところでございまして、また、水産庁からの要請によりまして、日本水産資源保護協会が、水産資源保護の観点から水域が保つべき水産用水基準を策定しておりまして、基本方針で定めていない項目については、この基準を参考にいたしているところでございます。
○紙智子君 是非、安心して養殖を再開できるように、安全な水産物を供給するためにも、関係者や専門家の意見をよく聞いてというか、よく意思疎通をしながらそうした環境基準を作るということも是非御検討いただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。