第177回国会 2011年4月27日 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会


水ビジネス、訴訟や水メジャーの撤退も

○(水問題における取組について)
  参考人
  有限責任事業組合海外水循環システム協議会運営委員長 伊藤 真実君
  株式会社日本政策金融公庫国際協力銀行特命審議役環境ビジネス支援室長 本郷  尚君
  独立行政法人国際協力機構地球環境部部長 江島 真也君

○紙智子君 三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。日本共産党の紙智子でございます。
 前回の調査会で、私は、水道事業の海外展開で果たして利益が上がるのだろうかということをお聞きしたんですね。なぜならば、水道事業は、浄水場やそれから水道管などの整備や更新などにすごくお金が掛かると。日本でいうと水道事業が八割赤字ということもあって、水道料金の値上げなんかも問題になる事例があるわけです。
 それで、参考人の方からはそのとき、ODAは配水管それから導水管、浄水場などを造りっ放しで帰ったと、反省する必要があるんだと。水道事業の海外展開で維持管理を入れてリターンがあるかといったら、そんなにあるわけでもないと。大もうけはできなくて、現地に技術的なトランスファーをして、最後は少し人件費プラスアルファぐらいが稼げればいいかなと、こういうことが述べられたわけです。
 それで、二つお聞きしたい。これは伊藤参考人と本郷参考人にお聞きしたいんですけれども、一つは、海外で水道事業を展開するに当たってのリスク管理ですね、リスク管理をどうするのか。つまり、どういうリスクが想定されているのかということなんですけれども、管理をどうするのかと。それからもう一つは、日本の技術を海外で生かす、これは必要だというふうに思うんですけれども、相手国の自主的、自発的発展をどう保障するのかという問題もあると思うんですよ。だから、この点どうかということをお聞かせいただきたいということ。
 それからもう一つ、これ江島参考人にお聞きした方がいいのかなと、分からないんですけれども、国連の人間開発報告書の中に、要するに水メジャーが進出し水道料金を高騰させたことから貧困層の反発を受けて撤退したという報告があるんですけれども、言わば海外で水道事業を展開したけれどもうまくいかなかった事例とかその原因について、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。

○参考人(伊藤真実君) リスク管理の話ですけれども、非常に難しい話なんですが、私、明快な解は持っていませんけれども、海外で水道事業をやるときにやはり私が非常に重要だなと思っているのは、三菱商事さんがマニラで東側、マニラウオーターをやられまして、西は失敗したけど東は成功したという事例、有名な話ございます。
 三菱商事さんにいろいろ話をお聞きしていると、やはりいかに、ブロックブロックごとに供給して、そこの住民の責任でいろいろルールを作って、お金もちゃんと払うような仕組みを、やっぱりそういうメンタル的というか、そういう形で、ほかのファイナンスの問題もいろいろあるんですが、やっぱり大きかったのはそこだということを三菱商事の方はおっしゃっているわけですね。
 やっぱりその国々でその住民の方たち、あるいは官も含めて、うまくやっていくことが一番であって、リスクを言えば切りがないと思うんですが、そうして成功してくる事例もありますので、やっぱりそこに飛び込んでいくことではないかなという、ちょっと大ざっぱですけれども、そういう気がしております。
 ただ一方では、我々はやっぱり商売をやっていく連中ですから、今最後にちらっと出ていましたけど、今、お金を使いまして海外のコンサルを使って、なぜうまく撤退できたのかと、海外勢は。なぜ失敗したのかから、失敗したときに訴訟になっている場合あるいはうまく撤退している、そういうものの解析を転ばぬ先のつえで今お願いして、実はつい一週間ほど前、我々協議会の中で、外国の調査会社ですけれども、そういうところから報告を受けたりして勉強はしております。
 まあ一言で言うと、余り大上段でいかないで、やっぱりよく分からないので、失敗しないためには、小さく産んで大きく育てるじゃないですけれども、少しずつ、うまくいけば仕事を拡大していくやり方がいいんじゃないかというような意見が出ておりました。
 済みません、余り細かい話はできませんけれども。

○参考人(本郷尚君) 先生御指摘の、まず最初にもうからないビジネスではないかという点は、やはりその御指摘のとおり、大きくもうけるようなビジネスではなくて、むしろ安定した収益を長く続けられるというタイプで、例えば鉱山開発だとか石油開発とかとはちょっと違う性格のものという認識ではないかなと思います。
 続いて、リスク管理の点なんですけれども、やはりいろんな事業を行っていけば必ずリスクが顕在化してくるわけですけれども、先ほど来申し上げているように、自治体との関係、これは基本的には社会サービスですから、社会サービスの相手方である自治体がどういう対応で出てくるか、これは不確実性という点では非常に大きな点になると思います。それから、長い間事業を行いますので、その間、経済変動、特に為替ですね、為替変動というのは非常に大きなポイントになると思います。それから、もう一つ大事なのは天災ですね。こういったことはやはり自然が相手ですので当然起こり得ることだろうと思います。そうしますと、そういったものを全て事前に潰す、リスク対応を考えるということはこれ基本的に無理だということですので、やはりリスクが顕在化したときにそれをどういうふうに解決していくかという解決能力が問われてくるということになります。
 最も私どもが現実的だというふうに考えておるのは、やはり現地での有力パートナーとチームを組むということで、いろんな問題が出てきたとき、それぞれ現地の自治体あるいは中央政府との太いパイプあるいは産業界との太いパイプを利用して様々な解決方法を試していくという、そういう体制ができるということが重要になってくるんじゃないかなと思います。
 それから、技術の点について言いますと、確かに相手国のニーズ、先ほど伊藤様が申し上げていましたけれども、ニーズが合うかどうかというのが一番のポイントでありまして、日本がいいと思っても相手がいいと思わなければこれは価値はゼロですので、まずはニーズを確認するということ。そうすると、おのずと現地の持つ技術の良さというのも出てきて、日本からのと現地の技術をうまく組み合わせていくということになろうかと思います。
 また、極端な話、一例なんですけれども、インドのような人件費の安いところでは、西日が差すような建物にブラインドを設置すれば非常にエネルギー、冷房のエネルギーを節約できるわけですけれども、日本であればタイマーを使って自動的にコントロールしようと考えるわけですけど、インドですと人件費が安いので、むしろ雇用供給のために人手でやりますと。これはインドの大学で実際にやっているケースでございますけど、我々とはちょっと違ったアプローチというのも取られているということでございます。
 技術というのはかなり様々、現地の状況によって求められるものが違ってくるということではないかと思います。

○参考人(江島真也君) 確かに、御指摘のように、水メジャーが途上国で民営化した水道事業を請け負って料金改定、値上げを行った結果、住民の反発を受けて撤退したというケースは存在します。
 ただ、ちょっと私も不勉強ながら、その根本的な原因がどこにあったのかというところまではちょっと、済みませんが把握しておりません。契約がどうなっていたかというのを見ないと、料金改定という一番機微な部分なので絶対契約には入っているはずなんですけれども、それがどういう契約だったのかというところまでは承知しておりません。
 JICAのケースでは、水道事業を支援する場合には、もちろん造りっ放しは良くないので、例えばどこかの企業に委託するにせよ、あるいは途上国が自ら維持管理するにせよ、赤字になっては維持管理もできなくて結局駄目になってしまうので、赤字にはならないような制度設計を支援します。
 その場合に、途上国の場合は結構水道が整備されていないと、民間の水屋さんといいますか、タンクやボトルで水を売りに来て、それを買って、収入の二割とか三割を水に使っているような人たちが結構いるので、そういった人たちに意見を聞いて、どれくらいまでだったら料金を支払う意思がありますかと。丁寧な調査をやることで、水道の企業体の収支とそれから住民の支払の意思がうまくバランスするような仕組みを入れてあげることで、なるべく持続可能な水道プロジェクトになるような工夫を多くしております。