第177回国会 2011年4月14日 農林水産委員会


○原発被害補償を速やかに

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 震災から一か月過ぎようとしているわけですけれども、被災された皆さん、もう本当に懸命な復興への努力と、それから被災者救済のために本当に日夜分かたず頑張っておられることに対して敬意を申し上げたいと思います。
 その上でですけれども、東京電力の放射能漏えい事故で、これ農業者、漁業者は多大な損害を受けているわけです。速やかにこれ補償するのは当然なんですけれども、ところが、福島原発事故に関して四月十一日に経団連の米倉会長の記者会見がありまして、ここでこういうふうに言っているわけですね。大規模な天災それから内乱等による事故の場合にはこれは国が補償するということになっているんです。最大の、もうそれこそ東電、電力事業を完全に援助する、早く被災者に賠償金を払えというようなことを政府の高官が言ったというふうなことを伝えられていますけれども、それは本来、政府がちゃんと、どういう支援策であるべきかということを、一次的には政府の責任なんですから、政府がやらなきゃいけないということで、東電の賠償責任を免責するような発言をされているわけです。
 これ、避難勧告を受けておられる被災者の皆さんにとってもこの経団連の会長の発言というのはとても許せないものだというふうに思うわけですけれども、まずこの点について大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) この度の福島原子力発電所の事故によって生ずるところの損害につきましては、第一義的に東京電力の責任であると総理大臣も自らおっしゃっておられるわけでございますので、私どもも第一義的に東京電力の責任であると、こういう認識を持っておるところでございます。

○紙智子君 東京電力がこの賠償責任を負うということをもし否定した場合には、否定することになると、これは農産物や水産物の補償の枠組みそのものが崩れてしまうということでありまして、政府としてやっぱり東電の賠償責任という問題を改めて明確にすべきだと。今おっしゃいましたけれども、改めて、もう一言お願いします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今申し上げましたとおりに、このことの考え方は、まさしく第一義的には、この損害についての、第一義的に東京電力の責任で行うというふうなことであるものと思っております。

○紙智子君 それで、福島原発の事故から一か月過ぎようとしているわけなんですけれども、それにもかかわらず、被害農家にとっては、これ一円の補償金もまだ支払われていないんですね。議論はされているんですよ。必要だと議論はされているんだけれども、まだ支払われていないと。それから、つなぎ資金についても被害農家に渡っていないんですね。
 なぜこんなに遅れているのか、そしていつまでに手渡せることになるのか、これについて明らかにしていただきたいと思います。

○副大臣(篠原孝君) 我々は出荷制限をするときに既に、十分な補償が得られること、これを条件に出荷制限に応じていただくということを農業者の皆さんと約束しております。ですから、枝野官房長官の記者会見でも、同じように出荷制限をするんだけれども補償は必ずやっていくということで話をしていただいております。ただ、時期の問題でございます。前例は、ジェー・シー・オーの事故のときは三か月後に補償金が支払われております。我々はそれではもたないということで、特に、これはすぐお分かりいただけると思いますけれども、酪農家が一番大変でございまして、原乳は出荷できない、ですけれども餌をくれなければならないと。餌代が掛かるということ、クーラー代等も掛かるということで、出費はかさんでいくのに収入はないということ。で、つなぎ融資ということを一生懸命考えて、これもちょっと手間取ってしまったわけですけれども、そこそこできました。あとは原子力損害賠償法でもってきちんと補償金が支払われること、これ以外ないと思っております。十一日に原子力損害賠償審査会ができまして、指針ができるはずでございます。
 これは私自身の考え方というか表現でちょっとどぎつくなるかもしれませんけれども、避難をせざるを得なかった方は避難をしてほかのところに移っているわけです。ですけれども、それは避難されている皆さんは手厚く住むところも提供されているわけです。農家はそこまで行かないと。しかし、収入の道を閉ざされているわけです。私は、半分避難を命じられたような感じになっているんじゃないかと思います。
 補償のことを我々が言いますと、いや、農家だけじゃないんだということがすぐ出てきます。農家、漁家だけじゃないんだということが出てきますけれども、避難された方々の次に直接的な被害を受けているのは私はやはり農家、漁家ではないかと思います。ですから、審議が速やかに行われて、早く基本指針ができて、早く補償できるように農林水産省から関係省庁に強く働きかけてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今、つなぎ資金の話も出されました。間に合わない中でまずそこを早く手当てをしようということで、つなぎ資金が当座の運転資金になるわけですけど、この資金が急がれるんだけれども、まだその申請書類も、だから農家の側から見ればどう申請していいのかということも分からないという状況もあると。さらに、農協と、その農協を一つ、何ていうか母体にしていろいろやり取りしようとなっているんですけれども、農協と疎遠な農業者もいるわけですよね。みんながみんなそこにいるわけじゃないっていうか。ですから、そういう農業者は対象外になってしまうということもあるわけです。丁寧でやっぱりスピード感のある対応が不可欠だと思うんです。
 それで、やっぱり改善すべき点は改善するということで、一刻も早くこの避難農家全てにつなぎ資金が渡るようにこれは格別の段取りというか努力を政府もすべきだと思うんですけれども、これについていかがでしょうか。

○副大臣(篠原孝君) 紙委員の御指摘のとおりでございまして、ルートとしてはつなぎ融資が一つあります。ですけれども、補償金の場合も損害賠償請求をして、それに基づいて補償金が支払われるという形になっておりますので、個々の農家がやっては大変なんで、農業団体が中心になって取りまとめてやるという形になっております。ですから、つなぎ融資も実はそのルートでもってもう一括してやっていただくのが一番いいんじゃないかということでやっておりました。
 これについてはジェー・シー・オー、余り良くないあれかもしれませんけれども、茨城県はノウハウを十数年前に持っているわけでございますので、こちらから話を聞いたりして、各県とも急いでやるようにということで、我々中継ぎをしているところでございます。一刻も早く補償金が支払われるように、つなぎ融資のお金が農家の手元に届く、懐に届くように全力を尽くしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今お答えになっているんですけれども、外れているところも含めてちゃんと乗せてやってほしいということをちょっと改めて申し上げておきたいと思います。
 それから次は、新たな計画的避難区域の設定ということにかかわってなんですけれども、農業関係の被害補償の問題についてですが、計画的避難区域に設定された町村というのが福島県の葛尾村、それから浪江町、飯舘村、川俣町それから南相馬市の一部ということですよね。これらの地域は、約一か月掛けて別の場所に計画的に避難することになっているわけです。要するに、その指定区域でいいますと、農業はできないことになるわけですよね。そうすると、そこでの農業生産がどうなっていくのかということでちょっと改めてこの町の状況を見てみますと、葛尾村でいうと農家数が二百八十六戸ということでありまして、ここが水田が百三十一ヘクタール、それから農家の約四割が肉用牛を飼養していると。肉用牛は五千七十頭いるんですね。
 それから、浪江町は農家戸数が千五百九十五戸あって、水田が千二百四十ヘクタールで、肉用牛が千八百五十頭なんですよ。豚が一万三千二百頭、乳用牛が六百五十頭。
 飯舘村でいいますと、農家戸数が千四十八戸で、水田が八百七ヘクタールで、肉用牛が三千二百六十頭、乳用牛が三百三十頭。野菜生産もトマト、ホウレンソウ、大根などもやっていると。
 川俣町では、農家戸数が千三百十四戸、水田は四百二十八ヘクタール、肉用牛二百九十頭、豚一万四千六百頭、乳用牛七百頭。
 南相馬市は農家数が四千三百九十八戸あるんですね。水田五千二十ヘクタールで、乳用牛が千三十頭、肉用牛が三千六百九十頭、豚一万三百頭と。
 だから、合わせますと、農家数でいうと八千六百四十八戸があって、水田で七千六百二十六ヘクタール、肉用牛が一万四千百六十頭、乳用牛が二千七百十頭、豚が三万八千百頭と、トータルするといるわけです。
 こういう農家に対する補償がどうなるのかというのがあります。それから、五万五千頭に及ぶ家畜の扱いをどうするのかということは極めて重大な問題だと思うんですけれども、これについての農水省の見解をお話し願います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 計画的避難区域というふうなものが設定されたわけでございまして、今先生お話しのとおりに一か月後には避難してほしいと、こういうことでございますから、実質的には原子力損害の賠償に関する法律に基づきまして適切なる補償が行われることになるものと、このように考えておるところでございます。
 また、家畜等々につきましては、十一日の日に枝野長官から計画的避難区域の設定が示されたわけでございますけれども、この区域におけるところの家畜の飼養管理あるいは移動等をどうするかというふうなことにつきましては、今、福島県と連携を取りながら早急に詰めておるところでございます。

○紙智子君 公共の牧場ですとかそれから空き牛舎なんかも探しているという話も聞いているんですけど、やっぱりめどというか示していただかないと非常に不安だと思うんですね。そこを是非やってほしいと思います。
 それともう一つ、農家の補償の問題で、二十キロ圏内の避難指示を受けているところ、これは早い段階で二十キロ圏内というのがあったんですけど、この受けている農家の問題もそうなんですけれども、結局集団で移動しているところもあるんですけれども、もうそれぞれ散り散りばらばらにというか、自分たちでいろんなつてをたどって避難している農家もいるわけです。そういう農家も掌握できていないところもあるわけですよね。そうすると、補償をしなきゃいけないというんだけれども、実際によく分からなくて対象に外れてしまっているという状況もあると思うんです。
 それから、家畜の扱いも、できるだけやっぱり家畜も一緒に移住できる方が望ましいというか、受入先なんかもそういう意味では検討すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 これはちょっと、総務省にかかわる問題と農水省にかかわる問題、先の、最初のところと後ろは農水省なんですけど、それぞれでお答え願います。

○政府参考人(久元喜造君) 今御指摘いただきましたように、今回の災害ではたくさんの住民の方が市町村の外に避難をしておられます。住所地がある市町村や県ではそういう避難者がどこにおられるのかという情報の把握が非常に重要になっております。
 そこで、総務省といたしましては、四月十二日付けで全国の自治体に通知を発出いたしまして、以下のようなお願いをしております。
 まず、避難者の方には避難先の市町村に必要な所在地などの情報を届けていただきたいということ、そして、全国の自治体を結ぶLGWANと呼ばれる専用の回線がありますけれども、これを使って避難先の県、更に避難元の県に情報を通知して集約をすると。さらに、その情報を住所地のある市町村にこれを伝達をいたしまして、住所地のある市町村で全国に散らばっている住民の情報、所在地の情報をまとめると、こういうことをお願いをしております。このシステムが順調に稼働いたしますと、住所地のある市町村あるいはそれを包括する県からいろいろな情報連絡ができるようになると、こういうふうに考えているところでございます。

○副大臣(篠原孝君) 二十キロ圏内の避難区域の農家は当然、原子力損害賠償法に関する法律に基づきまして適切に補償されるべきだと考えております。当然のことだと思います。
 今御指摘のとおり、遠方に避難されておられるわけですね。どこにおられるか分からないということでございますけれども、今総務省の方から答えがありましたようにLGWAN、それから全国避難者情報システムというのができ上がっているそうでございます。これを活用いたしまして、離れていてもどこにおられるかというのを把握いたしまして、農業者、漁業者、被害も適切かつ速やかに補償されるように全力を尽くしてまいります。

○紙智子君 いろんな減免制度だとか、それから保険料の、何というんですか、先送りということだとか、いろんな措置が受けられるのに知らないで、自己申請ということになると、知らないで、それも受けられないということになりかねないので、そこは丁寧にやっていただきたいと思います。
 それから、漁業再建の問題ですけれども、特に三陸それから仙台の漁業再建が非常に重要な課題なわけですけど、これ大臣にお聞きしますけれども、農林水産省としての、どうやるかという道筋ですね、これについて明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今回の地震、大地震によって被害を受けた三陸地域というのは、日本の漁業にとってもまさしく重要な地域であるわけでございます。その地域の漁業なり漁村の復興というふうなものにつきましては、菅総理大臣からも、まず地域の住民の要望を尊重する、二つ目には全ての国民の人たちの英知を結集して復興に当たる、三番目として未来の夢を先取りする未来志向の復興を目指すと、こういう基本的な考え方が示されたわけでございますけれども、私ども農林水産省といたしましては、いよいよこの復興計画、復興構想というふうなものが、会議が動き出すという中におきまして、まさしく次の世代に評価される我が国の代表的な復興モデルになるように、これからも懸命に取り組んでいきたいと思っております。

○紙智子君 最後の質問になりますけれども、これも大臣にお願いしたいんですが、TPP問題についてです。
 それで今、国を挙げて復興をやろうということで懸命に努力をしているわけですけれども、復興しても、例えば三陸のワカメのように、もしTPPということになると、これ九九%がワカメが駄目になっちゃうということもあるわけですね。ところが、今日の日本農業新聞の報道記事の中にありましたけれども、TPPの作業部会は、閣僚からの中止の指示がない限りは粛々と検討を進めるということで、再開しているんですよね。これというのは、今復興に取り組んでいるそういう現地の思いからいっても、非常に逆行する話だというふうに思うわけです。
 それで、やっぱりこの際、大臣として、先送りじゃなくて、はっきりこれは断念すべきであるということを農水大臣として明確にするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) これだけの巨大地震というものによってまさしく被害を受けておる、これをどう復旧復興させていくかというのはまさしく政府の最大の責任であり、責務であるわけであります。すなわち、国を挙げて今この取り組んでおる復旧復興に全ての、あえて申し上げますならば、全てのエネルギーを費やしてもこの復旧復興に臨んでいくんだというこの気概がやはり今必要だと。
 私は、そういう意味で、農林水産省といたしましては、とにかく今回の被災に遭われた方々の地域の復興復旧に懸命に取り組んでいくという、このことに一点集中と言ってもいい気持ちで、決意で取り組んでいきたいと思っております。

○紙智子君 表現としては、一点集中という話があったんですけれども、それであれば是非中止ということも言っていただきたいということを最後に改めて強調しまして、質問を終わります。