第177回国会 2011年2月23日 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会


◎水ビジネスで海外進出、「維持管理を入れるとそんなにリターンはない」と参考人

○(水問題への取組について)
 参考人
 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授    中山 幹康君
 特定非営利活動法人日本水フォーラム事務局長  竹村公太郎君
 グローバルウォータ・ジャパン代表、国連テクニカルアドバイザー、麻布大学客員教授 吉村 和就君

○紙智子君 三人の参考人の方、今日はありがとうございます。
 私、二つ質問したいんですけれども、一つ目のところ、ちょっと時間もありますので、中山参考人と吉村参考人にお聞きしたいと思います。
 それで、バーチャルウオーターの話が先ほども出ました。輸入製品を日本で作った場合にどれくらいの水が必要かという研究が行われているわけですけれども、食料を大量に輸入するためには輸送に掛かるエネルギー、それから温室効果ガスも出すと、それから生産国の土地や水資源にも負担を掛けるということになるわけです。
 今、日本の食料自給率が四〇%ということですから、多くの食料を輸入に依存していますから、それだけ地球環境には多くの負担を掛けているということにもなるわけです。
 例えば小麦なんかの場合でいいますと、年間の輸入量で五百四十万トン超えるということですから、そのためにバーチャルウオーターというのは大体九十億立方メートルというふうに言われているんですけれども、今穀物の価格も高騰するとか地球温暖化が進むという中で、いつでもお金さえ出せば食料が手に入るということではないわけですけれども、そういう意味では、地球環境の保全を考えたときには、この国土を生かした循環型の社会への転換が求められているというふうに思うわけです。
 そこでなんですけれども、今、国としてでいえば食料自給率については五〇%に上げるという目標を持っているんですけれども、そのこと自身がやっぱり世界の水問題考えたときにはこれ国際貢献というふうになるんじゃないのかなと思うんですけど、この点についてお二方の御意見を伺いたいと思います。

○参考人(中山幹康君) 余り明確なお答えができないと思うんですけれども、例えばカーボンフットプリントと同じような考え方で、ウオーターフットプリントという考え方がございます。ある同じ製品を作るときにどれくらいの水を使うのかと。例えば、地球温暖化という面を考えますと、世界のどこの国が製品を作っても同じ量のCO2を排出したら、地球温暖化への貢献といいますか、影響というのは一緒なんですけれども、例えばある製品を作るときに、日本でも、同じ農作物を北海道で作るのと沖縄で作るのとでは環境への負荷は随分違うと思います、同じ量の水を使いましても。
 そういたしますと、私はバーチャルウオーターについては専門ではございませんけれども、日本の食料自給率を上げるということは確かに外国での水の使用量は下げますけれども、例えばウオーターフットプリントの環境への影響という考え方をすると、それが地球全体で最も賢明な答えかどうかということにつきましては、多分かなりいろんなことを考えないといけないことでありまして、残念ながらまだ我々はそこまで十分な知識を持っていないんではないかと。大変逃げたような答え方で失礼でございますけれども、そのように私は感じております。

○参考人(吉村和就君) バーチャルウオーターの考え方については前回、東大の沖大幹先生がお話しなさったのかと思います。私も彼と共著をしましたので知っておりますけれども、簡単に言いますと、日本が海外から六〇%の食料と同時に六百四十億トンの水を輸入していると。つまり、日本は世界で最大の仮想水の輸入国となっているわけです。
 それから、現在の政権では、食料自給率四〇から五〇%、一〇%上げるための水の資源、必要な資源量、約百六十億トンと言われております。この量は大体、日本人が一年間に使う生活用水量と同じなんですね。しかし、農業ですから、使うときと使わないときがありますので、どこかでためておかなければいけないと。
 じゃ、今、現政権では例えばダムは要らないと。治山治水から見るとダムは要らないかもしれませんけれども、食料の自給率を一〇%上げるためには百六十億トンの水をどこかにためておかなければいけないと。富士山の保有水量というのは二十億トンでございますので、富士山の七つ分を日本国のどこかにためておかなければいけないと。ですから、ダム問題、ちょっと話それますけど、ダム問題も、治山治水だけじゃなくて食料の自給率、そういうところからも多面的に見なければ水政策は間違われるんじゃないかなと、こう思っております。以上です。

○紙智子君 先ほどちょっと時間がなくて聞けなかったんですけれども、去年六月に新成長戦略でパッケージ型インフラ海外展開を進めるというのがあるんですね。そこに、自治体の水道局等の公益事業体の海外展開策を策定・推進するといって、二〇二〇年までに十九・七兆円の市場規模を目指すということが掲げてありますよね。
 それで、そこを読みますと、経済戦略として水をとらえてビジネスにすると。お金もうけもしようということなわけですけれども、その水ビジネスの利益を得ようということなんですけれども、今もちょっとお話出ていたんですが、水道事業の巨額の利益が生まれるのかなというのは実は非常に疑問も持っていて。
 今、お話もありましたけれども、水道事業が赤字で、水道料金の値上げが問題になっている側面もあるわけです。浄水場とかそれから水道管ですね、などの整備や更新などに多額の費用も掛かるということで、これは海外で事業展開する場合に相手国のやっぱり自主的な自発的な発展で役立つ取組が重要なんですけれども、どういうふうにこれを展開するのかということで御意見を、ちょっと先ほど聞けなかったので吉村さん、それから竹村さん、お願いします。

○参考人(竹村公太郎君) 私どものODAの議論の中で一番反省するのが、ODAで浄水場を造ったと。水源と配水管、導水管と浄水場を造って、インドネシアの例ですけれども、で帰ってきちゃった。つまり、日本の政府は、維持管理についてはODA対象外と、それは運営は各国がやれということで、みんな私どもは造りっ放しで帰ってきたと。で、今インドネシアはどうなっているかというと、日本が造った、ODAで造ったところを、ヴェオリアという名前があって、フランスの企業が維持、運営、管理している。そうすると、インドネシアの方々は、ヴェオリアさんが水を配ってくれているという概念で今思っているんです。これは事実でございます。
 こういうことが本当に、ちょっと悔しいなという思いから最初来たんですけれども、そうじゃなくて、今御質問のありましたように、本当にそういう維持管理に入っていって、私たちがリターンがあるのかといったら、そんなにないと思います。せいぜい人件費が出たら御の字ということでして、要は、団塊の時代の方々が社会から隠れようとしている、その人たちの活躍する場としての、そのもろの各地方自治体の方々が行くという以上に、彼らが、その下部組織としての経験者たちが株式会社をつくって、地方自治体の経験がつくった株式会社が次は民間の方々とタイアップして、その知恵を使いながら外へ出ていくと。
 しかるべきリターンがあれば、僕は国際貢献、先ほど言いましたように、べらぼうなもうけというより、国際貢献という非常にパブリックな形をにおわせた持続可能な国際貢献というと、先ほど言ったODAだと出しっ放しですので、リターンがある、リターンがあるようなシステムをつくっていきたいなというのが私の考え方でございます。

○参考人(吉村和就君) やはり、海外で水ビジネスで、水商売のようにがばっともうけるか、あるいはもう失敗していくかどっちかでございますけれども、海外の水は、今、竹村参考人言ったように、私も適切な対価がなければやっぱりビジネスはできないということですね。ですから、欧米のように、もうけるか、あるいは損したらぱっと退却すると、そういう姿ではなくて、ある程度お金の回る仕組みが必要ということ、これははっきりしていると思います。
 それから、やはり日本がなぜ信頼が得られるかというと、やはりうそをつかないということと急にあしたからいなくなるということがないという信頼感がありますので、そういう意味では水ビジネスは今後伸びていくなと。
 東南アジアを見ますと、とにかく、都市化率を見てみますと、今大変なことになっているわけです。平均で今や、都市化率が二三%が二〇二五年には四十何%に、これ平均値ですね。それから、中国については、今、都市化率が四二%が今度六五%と。何といったって、人口百万人以上がこれから二百二十、中国でできるというんですね、現在は百十八でございますけれども。そうなりますと、とても自社の技術者、それから企業だけではできないということでございますので、アジアの人口増加、都市化率の増加のところへ日本のいろんなビジネスチャンスがあるということでございます。
 しかし、そこでどうも大もうけはできなくて、現地に技術的なトランスファーをして、最後は少し、まあ人件費プラスアルファぐらいが稼げればいいかなと、こう思っております。