第177回国会 2011年2月16日 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会


◎食料輸入大国は水資源輸入大国。水の需要が高まる時代、食料を輸入に依存する国のあり方の見直しを

○(水問題の現状について)
 参考人 東京大学生産技術研究所教授   沖 大幹君
      総合地球環境学研究所教授    渡邉 紹裕君
      国連人口基金東京事務所長    池上 清子君

○紙智子君 三人の方々、お話、ありがとうございます。
 やはり、地球規模の問題で、そういうときに私たち自身がどういう国際的には問題が起こっているかということをきちっと把握をして、そこから私たち日本の位置を確認をし、日本が何をやるべきなのか、何ができるのかということをちゃんと考えていかなきゃいけないというふうに思うんですね。
 それで、今地球環境の変化の問題などなどもあって、食料でいうと、食料はやはりお金さえ出せばいつでも外国から持ってくることができるというふうな考え方にはもう通用しない時代になってきていると思うわけですけれども、地球環境の保全とかそういったことを考えたときに、本当にそれぞれの国の例えば国土を生かした循環型の在り方ということで努力をしていかなきゃいけないんだと思うんです。
 そのときに、日本でいうと、今食料自給率で四〇%ということなんですけれども、お話の中にもありましたけれども、やっぱり食料を大量に輸入するということはそれに対して負荷が掛かっているという問題がありますし、食料の自給率が四〇%ということは、結局、海外から物をいっぱい持ってきているということは、その分の水も非常に多く使っているということにもつながっているわけで、水の自給率が何か五八%とか、ちょっと聞いて驚いたりもしたんですけれども、そういう今の日本の状況ということについて、一方では水の枯渇だとか水資源をめぐる紛争も起こっているという中で、こういうことを日本が打開していくということについて言えば、日本自身がそこを変えていくというふうに、輸入に頼っていくという方向ではなくて、やっぱり国内でしっかりと自給率を高めていくということが必要なんじゃないのかなと。
 そういう国の在り方そのものをめぐってどのようにお考えになるかということを三人の方からお聞きしたいと思います。

○会長(藤原正司君) 済みません、手短に沖先生からお願いします。

○参考人(沖大幹君) 手短に申し上げます。
 まず、食料の自給率を一〇〇%にするということはやはりかなり難しい、今の食生活を維持するのは難しいというふうに考えられます。
 水に関して申しますと、水あるいは食料ですが、輸出していらっしゃる国は主に先進国である。我々が、もちろん途上国からも来ていますけれども、主に先進国から大量の食料を輸入しておりますので、じゃそこでどのぐらいの環境負荷が掛かっているかということですが、一番深刻なのは化石水と言われる、つまり昔たまった水で、使ってしまったらなくなる循環していない水資源を使って生産されたものも一部日本に入ってきております。これに関してはいずれ数十年後には枯渇するんではないかというふうに考えられていまして、その影響は非常に大きいだろうと。ただし、日本が全部輸入している中のそれは六、七%ぐらいの水に相当するんじゃないかというのが我々の最近の推計結果ということになります。

○参考人(渡邉紹裕君) 先ほど申し述べたことともかかわりますが、基本的には、今のバーチャルウオーターの話もそうですけれども、水がない国で食料を輸入するような話と、私どものように水が十分あるところで食料を輸入するということと大分意味が違うと思いますね。今先生がおっしゃったように、そこのところを私たちがどう理解するかという根底のところをやっぱり今見直す時期だというのは先ほどお話し申し上げたつもりです。
 それで、地域の水をみんなで、みんなでというのが大事だと思うんですけれども、意識して使っていくというのは、これは私は人間がやっぱり生きていく基本だと思うんですね。これは乾燥地であっても湿潤地であっても、日本のどこでもそうだと思うんです。そういう仕組みを日本でまずつくり直すというのが先ほど申し上げたことです。
 海外でも地域の状態によって今申し上げた仕組みは全く様相は違うはずですが、根幹のところで、最近コモンズの管理ということが世界的な話題になっていますけれども、共有のところを国家でもなくマーケットでもなくみんなで管理するということにかかわる生きがいみたいなのがやっぱり私は生活の根幹にあるんじゃないかと思います。そこを仕立て直すことについて私たちは何か協力することができるだろうと思っています。それはかんがいでいえば、同じ生産をするのにこれ以上水量を増やさないということにつながっていくだろうというふうに思います。
 そういう枠組みの中で今申し上げたようなスタイルをつくっていくことが、それぞれの地域の基本的なライフスタイル、何というんですかね、仕立て直すことにつながるんじゃないかと、そういうところへ進むべきだろうというふうに考えます。

○参考人(池上清子君) 水が少なくなるとか、食料が足りないとかということも重要なイシューではあるんですが、同時に、不足している、足りないと言われているものをどういうふうに配分するのかということがもう一つ重要な問題だと思うんですね。
 そうすると、公平性というか、どんなふうに格差を少なくするような形で限られた資源を一人一人に配ることができるかという問題だと思うんですけれども、先ほどセネガルのところでも申しましたが、住民組織というのがすごく大きな力を途上国では持っていますので、それは日本にも昔住民組織というのがあって、そこはかなり力が昔はあったと。ですから、今はその辺は日本から持っていけるものではないかもしれないですけれども、そういった人と人とのつながりの部分というのを大切にしながらお伝えしていくということは重要かなと思います。

○会長(藤原正司君) どうもありがとうございました。


○会長(藤原正司君) ほかに。紙先生。

○紙智子君 まだ時間ありますか。

○会長(藤原正司君) はい、できるだけ手短にお願いします。

○紙智子君 はい。
 先ほど沖先生のお話の中で、自給率の話で、食料自給率一〇〇%はちょっと難しいんじゃないかという話があったんですけど、水の例えば自給率でいうと、どのぐらいが適当というのがもしおありだったらお聞かせ願いたいなということと、もう一つ、ちょっとこちらの参考資料の中ですね、この中に、七十九ページ、六十六ページのところから、変貌する農業と水問題で、その再構築に向けてという中で、七十九ページのところに提言がありますね、日本学術会議の。
 変貌する農業と水問題にかかわってということで、「日本からアジアへ、アジアから世界への提言」という中に、米の選好性を高めると、そこを読むと、稲作を世界の食用穀物生産のコアと位置付け、米の選好性を戦略的に高める取組を行うことは、地球規模での人類を養うことへの貢献として価値ある提案と言えるというふうにあるんですけれども、ちょっとここのところの意味というのをもうちょっと詳しくお聞かせ願えれば。これは渡邉先生が適当なんでしょうか、どちらが。

○会長(藤原正司君) それでは、渡邉先生、お願いします。

○参考人(渡邉紹裕君) 私は、この取りまとめの一部をお手伝いをさせていただきました。
 ここの表現は非常に抽象的で、先生おっしゃるように分かりにくいと思いますが、現実的に、ネリカ米のような形でアフリカでも稲作が進められていると。そのときに、本当にそれが現地に適しているかどうかのチェックも含めて、私たちが長年アジアで培ってきた稲作にかかわる、あるいは稲作にかかわる水利用に対する技術を検証した上で、現地で使えるような形で移転するなり協力することができるのではないかと、そういうようなことを進めるべきではないかという意味です。
 この選好性という言葉も非常に分かりにくいと思いますが、現地の状況、広い意味での風土に合った稲作として位置付けられるのであれば、そこを積極的に推進すべきじゃないかと、こういうことでございます。