第176回国会 2010年11月25日 農林水産委員会


◎6次産業化、生産者の所得を増やす支援こそ必要
 TPPは6次産業化にも逆行

○農林漁業者等による農林漁業の六次産業化の促進に関する法律案

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ちょっと時間が短いので、端的に早速お聞きしたいと思います。
 農家が農産物を生産、加工、販売している産直運動などは、六次産業化のそれこそ前からというか、既にずっと取り組まれてきていることで、大いに推進、支援していく必要があると思うわけですけれども、まず農家の所得をどうやって増やしていくのかというところが大事だと思うんです。
 農林水産省が今年二月に発表している農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表というのがありますが、この連関表の最終消費から見た飲食費の部門別の帰属額及び帰属割合の推移というのを見ますと、食料関連産業の生産額規模は、一九八〇年のときは四十八兆円だったのが、二〇〇五年には七十四兆円に拡大をしているんですが、その一方で、国産の農水産物、言わば農家の取り分については十二兆円から九兆円に減少しているわけです。国産のシェアや農業段階の取り分が二六%から一三%に落ち込んだということになるわけですけれども、なぜこの国産の農水産物が減少しているのかということについて、まずお聞きします。

○副大臣(筒井信隆君) 国産の農産物の、例えば米を中心として価格下落というのがなだらかではありますが続いているというふうな価格の問題もありますし、生産量自身が一定時期からやはり増加していない、減少傾向にある、それらのものも理由となっているんだというふうに思うわけです。
 今の質問はそこまでですね。

○紙智子君 原因についての分析というか、なぜ減っているのかという話ですけれども、お願いします。

○副大臣(筒井信隆君) だから、農家がそもそも減っていますし、農地も減っていますし、生産量が減っているということ、それから生産物自身、米を見れば分かるわけですが、価格の下落傾向がある、これらが原因だろうというふうに思っています。

○紙智子君 輸入が増えているものもありますし、流通、加工というところが増えてきているということがあると思うわけです。
 それで、問題は、農業所得の減少が続いてきていて、この六次産業化でもって農家の取り分、一次産業の取り分を増やすものになるかどうかというところが大事です、そこをお聞きしたいと思います。

○副大臣(筒井信隆君) 今、委員が読まれました産業連関表によると、食品関連の製造業、それから流通業あるいは外食産業の取り分はずっと増えているわけでございまして、そのことを言われているんだと思うんです。ただ、この製造業、食品流通業、外食産業のところには、例えば六次産業化を既にやっている場合には、農家の手取りになっている部分もこの中に入っているわけです。だから今後、製造業とか流通業とか、あるいはレストランという外食産業的なものにまで農家自身が取り組んでいけば、そこに上がっている数字の一定部分を一次産業者の手取りに転換することができる。これが六次産業化の大きな目的の一つだというのは先ほども申し上げたとおりでございます。
 つまり、消費者が支払っている食品についての価格を一〇〇とすれば、今までは二〇とかせいぜい三〇しか農家の、一次産業者の手取りに入っていなかったわけでございますが、製造業や流通業等々に、あるいはレストラン等々に進出することによって、農家の手取りを四割、五割、六割に上げていく。これが六次産業化の大きな目的の一つだということでございます。

○紙智子君 トータル的に見ると、この表で見ると、確かに、例えば農商工連携をやったと、それによって全体、その分野は増えたと言うんだけれども、しかし農家の手取りの部分は減っているというのが表れているわけですよね。それで、やっぱり実際に六次産業化すれば取り分が、それを増やすということが目的だと言うんだけれども、実際には減少してきたことについてきちっと手を入れていかないといけないというふうに思うんですけれども、そこの認識。

○副大臣(筒井信隆君) 農商工連携は必ずしも一次産業者の所得増大につながるとは限らないわけでして、一次産業者、二次産業者、三次産業者の間でそれを分配するわけですから。しかし、この六次産業化、この法案である農林漁業者等による六次産業化は、まさに一次産業者等が二次産業、三次産業に取り組むわけですから、消費者にまでわたる金額のほとんどをその一次産業者の手取りとすることができるということになりますから、その割合が上がっていけば上がっていくほど私は一次産業者の収入というのは増えてくる、ほぼ自動的に増えてくる。まあ、中には赤字とか何かで失敗する場合があるかもしれませんが、そういうのを除けば、ほぼ自動的に増えてくるというふうに思っております。

○紙智子君 ちょっとその辺の理解というか、違うんですよね。どうして農家の取り分が減少を続けてきたのかということで言うと、生産者の側の努力が足りなかったというんじゃなくて、やっぱり流通とか小売部門とか販売店、ここが力を持って、まあ交渉力といいますか、ここが非常にアンバランスがあって、だから、いつも現地に行くと聞かれるのは、価格を量販店が決めてくるということで、自分たちは値は決められないという話をよくされるわけですけれども、そこのところが非常に問題だというふうに思うわけですよ。
 乳価なんかもそうなんですよね。そこのところがちゃんと解決されていかなきゃいけないわけで、六次産業化は、農家が作ったその農林水産物を加工して付加価値を付けて販売していくと。二次産業、三次産業に進出していこうということなんですけれども、価格形成においてこの量販店が力を持つ現状では、やっぱり依然として一次産業の取り分が増えることにならないんじゃないのかと。
 だから、そういう意味で、農家のその販売力を強化するということでの手だてを考えなきゃいけないんじゃないのかということを言いたかったわけですけど、いかがでしょう。

○副大臣(筒井信隆君) それも必要。それで、量販店や何かが価格決定権を事実上持っているという状況がやっぱり打破しなければいけない、これも必要だというふうに思います。
 今、直売所が全国で万の単位で増えておりますが、この直売所の場合にはまさに一次産業者がその価格決定をして販売をしているわけでして、産直や何かもそうでございまして、インターネットを含めた、活用した産直も、まさに一次産業者が値段を決めて、それについて消費者が買ってくれるという形ですから、この直売所やあるいは産直の比率を大きく増やしていくことが価格決定権を取り戻すためにも私は役に立つというふうに思っております。

○紙智子君 小規模な農家の組織的な販売力をもっと強化していくということで、役立てるものにしていかなきゃいけないということが言えると思います。
 それともう一つ、加えてお聞きしておきたいのは、TPPとのかかわりなんですね。それで、六次産業化というのが、この農林漁業等の振興や農山漁村の活性化、自給率向上を目的にしてやられるということなんですけれども、まあ農家や地域を元気にするためなんだということなんですけれども、一方でTPPへの参加ということになるとこれに逆行する事態になるんじゃないのかというので、ちょっと用意したのがこの資料の図式ですけれども。
 これは北海道庁が出したものなんですけれども、これ一つの、十勝地域の畑作地域A町となっているわけです。ここで見ると、町全体の従業者が一万七百人、そのうち六四%が農業に関連しているところだと。これがもしTPPに参加して価格が関税ゼロになったときに下がってきた場合に、こういう関連のもの全体が大きなダメージを受けると。そうなったら、せっかく趣旨としている、地域を活性化していこうと、元気にしていこうということと逆行するんじゃないのかということについての御認識を伺いたいと思います。

農業が地域の雇用・経済に果たす役割
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○国務大臣(鹿野道彦君) 今先生申されたとおりに、農業が地域の雇用なり経済に果たすところの役割というのは非常に大きいものがあるわけでありまして、そういう意味で、これから農業者が農林水産物を生産すると、それにプラス加工なり販売をというようなことによって進出をすることによって所得の増大につながっていくというようなことを目指しているわけでございます。
 TPPにつきましては、まだ参加するとも参加しないともというような段階でございませんで、御承知のとおりに、いわゆる情報収集も含めての前の段階の協議に入っていると、こういうことでございます。

○紙智子君 まあ参加するとも参加しないともまだ決めていないというふうに言いながら、でも、しかし、総理大臣がこの間おっしゃってAPECの中で話をしていることは、やっぱり参加に向けて情報収集ということなんだと思うんですよ。やめることもあるのかというと、そういう方向ではないんじゃないかというふうに思うわけですね。
 それで、やっぱりこの図式で見て分かるように、これは単なる農業の分野だけじゃなくて、この地域でいいますと、もう本当に六割、七割方が全部関連してきていると、雇用も含めて。ですから、地域そのものが経済が成り立たないんじゃないかということがあるからこそ、先日、十一月の八日、ああ十二日だったかな、札幌でやった集会というのは、それこそ道経連もそれから消費者団体も農林漁業者ももうみんな集まって危機感を持ってやったわけですから、そこはしっかりと踏まえていただきたいし、進めないようにしてほしいと。
 ちょっと、続きは後の一般質疑の方でやらせていただきたいと思います。