第176回国会 2010年11月5日 農林水産委員会


”温暖化大干ばつで日本飢餓” TPP加入やめよ、自給率減を警告

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 午前中の衆議院の農水委員会の中で、菅総理が所信表明演説の中でTPPへの参加を検討するというふうに発言するときに事前の了解を得ていたのかどうかという点で、これは事前の了解を得ていたということを認められたんですね、大臣はね。
 ということは、やっぱり国内対策という、大臣の所信の中に入っていたこの国内対策というのは行く行くはやっぱりTPPへの参加ということを仮定して考えていたことだったのではないのかと、セットではないと言いながら、実際にはそれがあったんじゃないのかなということを改めて考えたわけです。
 今の議論とちょっとそこのところは違うわけですけれども、民主党内からもいろいろな意見が相次いで出てきた中で、今はもっと慎重にというふうになっているんですけれども、そこは実際のところは違ったんじゃないのかなというふうに私自身思うわけです。
 それで、民主党のこのTPPのプロジェクトチームですかがこの間いろいろ議論されて、それで提言を出されているわけですけれども、FTA、EPAについては推進していくということですよね。これは、こっちの方は推進するけれどもTPPはちょっと待てというのでいいのかというと、そうでもないというふうに思うわけです。
 我が党の立場は、二国間の貿易の場合は、やっぱりそれぞれにとって有益なもの、どちらもいいというものについてはこれはちゃんと判断をして、慎重に見て判断をしてそして賛成するものもあるわけですけれども、しかし、アメリカだとかオーストラリアとかの場合のように、FTA、EPAでこれは多大な打撃を受けるということには断固反対ということでやってきたわけですよ。そういう意味では、アメリカやオーストラリアとのEPA、FTAについてはこれ進めるということになっているわけで、TPPは駄目だけれどもこっちの方はいいというのはちょっと違うんじゃないのかというふうには思うわけです。
 その上に立ってなんですけれども、TPPについてなんですが、これ皆さんも質問されていて、私もやっぱり何度聞いても、大臣自身のお考えをはっきり聞きたいと思うわけですけれども、この間の農林水産省の試算で、参加した場合に、加入した場合に日本の食料自給率が一四%まで下がると。十年後に食料自給率五〇%にするというのを閣議決定したわけですけれども、このことと加入ということが本当に両立できるのかと。できるというふうに考えているんだったらどうやってするのかということについて大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 昨年の衆議院選挙におきまして、EPA、FTAを推進するということはマニフェストにも掲げられておるというふうなことの事実関係だけ申させていただきたいと思います。
 また、食料自給率につきまして、一四%まで、このTPPに参加した場合に国境措置がゼロになると、いわゆる関税撤廃ということで言わば試算が出ていると、こういうようなことから今先生が言及されたわけでありますけれども、あくまでも仮定の話でございまして、まだ方向が決まったわけではございません、こういうふうなことだけは申させていただきたいと思います。

○紙智子君 仮定のことであって決まっていないからだと言うんですけれども、これ、具体的に見ていかなければならないわけです。
 例えば国内対策で、大臣は別の場所で発言されているんだけれども、例えば大幅に農水予算を拡大するとか、それからいろいろな対策の中の一つに体質改善の問題ですとか幾つか挙げられていると思うんですけれども、どうやっても関税を撤廃した場合にはこれは安いものが入ってくるということは避けられないわけですよね。
 そういう中で、例えば自給率五〇%ということで民主党のマニフェストの中でもはっきり言っている、自給率五〇%のために麦生産を国内では百万トンに引き上げるということを書いていますよね、麦生産百万トンに引き上げると。麦の関税がゼロになったら、この麦生産が増えるどころか、九九%の国産の麦が全部輸入に置き換わることになってしまうわけですよね。そうすると、全く五〇%の目標というのは不可能になると。このことは、大臣、お認めになりますよね。

○国務大臣(鹿野道彦君) 重ねて申し上げますけれども、このTPPに参加をすると仮定した場合に関税がゼロになると。そのゼロになるということを前提とした場合に一四%に自給率がなるんじゃないですかということを、これを試算として出したということでありまして、これに対して、じゃ、そのままにしておくのか、それとも国内対策を、仮にの話でありますから、国内対策をやったときにはどうするかというふうなことは、これは当然新たな数字が出てくるというふうにも思うわけでありますけれども、いずれにしても、今方向が決まったわけじゃありませんので、これ以上言及させていただくことは控えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 関税がなくなった場合に、自給率を上げるための戦略作物にしていた麦というのは増やせないわけですよね。だから、どうあろうとも、これから進むかどうかは別としても、一般的に見てもそうですよね。それについては、大臣、認められますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今の先生の質問はちょっと私理解できないんですけれども。何らかの措置を講ずればあるいはまたこの自給率が上がっていくということも、その可能性はあるというふうなことはその中に含まれてくるんじゃないでしょうか。そういう意味で、あくまでもこれは仮定の話であります。仮定の話を私、この場において軽々に申させていただくことは控えさせていただきたいと、こう思っております。

○紙智子君 そういう仮定の話は避けるということでずっと先送りしてきているということ自体、非常に問題であるというふうに思うんですよ。
 だって、実際に参加を検討すると言っておきながら、具体的な、じゃ、こうなった場合はどうなるかということをめぐって議論を真剣にしようとしているのに、まだそれについては決まっていないから何とも答えようがないという、そういう答弁は極めて不誠実だと思いますよ。

○国務大臣(鹿野道彦君) きちっとこのTPPに対する対応を決めたときにはこうでありますというふうなことを申し上げる、これの方がよほど私は国民にも理解してもらえると思えると思うんです。まだ何にも方向が決まらない中で、ただああですよ、こうですよというふうなことは、かえって私は国民に対して不誠実だと、こういうふうな認識を持っております。

○紙智子君 今そういうことを言われるんですけれども、やはり多くの人たちが、いきなり総理大臣の所信表明の中で参加ということを言われて、実際にどうなるかということで心配をして、各団体なども含めて心配をして要請をしてきているわけですから、これに対してちゃんとその思いを受け止めてきちんと明らかにしていくということは必要なことだというふうに思うわけですよ。
 それで、何も決まっていないことをいいかげんに出すことの方が不誠実だと言うんですけれども、実際に話し合われていることも出さずにそして先送りをしていくということ自体、APECの中でそのことを、参加するかどうかということも含めて、どういうふうにしていくのかということが、今その判断が求められているわけですよね。それに対して先送りをしていくということは、極めて、午前中、衆議院でもそういう議論がされたかとは思うんですけれども、問題だというふうに思うんですよ。
 それで、問題は、この日本が食料自給率一四%のままで、計算したらそうなるというのが農水省の試算ですけれども、果たして将来日本の国民が生存を守ることができるかどうかというところが問題になってくると思うんですね。
 それで、お配りしたちょっと資料を見ていただきたいんですけれども、これはアメリカの大気研究センターが十月十九日に出している、地球温暖化で二〇三〇年までに米国の中部や西部の多くの地域で深刻な干ばつに見舞われると、今世紀末に中国や東南アジア、アフリカ、南米、オーストラリアの大部分も深刻な干ばつに見舞われると、地中海地域は人類の経験したことのない深刻な干ばつに見舞われる可能性があるということを明らかにしているわけです。世界的に農業生産が深刻な打撃を受けると。
 人類の生存のための食料の確保が非常にこれ見ると心配になる状況があるわけですけれども、そういう中で、自ら食料を自給できるということを努力していかなきゃいけないわけですけれども、それができない状況に日本がなってしまえば真っ先にこれ飢餓に追い込まれるということになることは必至だと思うわけです。
 大臣は、このTPP加入はそういう意味ではそういった危機的な状況に日本を追い込んでいくことになるというふうに思うわけですけれども、それでもよしとするのかどうかということをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 私、先生、ちょっと誤解しないでもらいたいんですけれども、私がTPPに対して参加をするというような考え方に立っているということは一度も申し上げたことございませんし、また今、干ばつの話を出されましたけれども、当然、二年、三年くらい前ですか、オーストラリアで大干ばつがあったというようなこと等々、あるいはまた、中国におけるところの、あるいはロシアにおけるところのそういう環境問題に関しての異変、異常気象というふうなものがこの地球を襲っているというふうなことは当然いろんな意味で総合的に判断の材料というふうなことは忘れてはならないことだと思います。

○紙智子君 そういうことも忘れてはならないというふうにおっしゃったわけですけれども、このことと併せて、要するに言いたいことは、お金で買い取ってくることができるように思っていると思えばそれはもう全くそうじゃなくて、事態としては極めて深刻だし、だから温暖化に向けての対策も今各国が真剣に取ろうとしているわけでもありますから、そのことをやっぱり十分考えた上でも、ここはTPPへの参加ということはやめるべきだというふうに思うわけです。
 さらに、先ほど来出されていますけれども、地域経済に与える影響という点でも、私も北海道だし、松木政務官も北海道の出身なわけですけれども、このTPPに加入することによって二兆一千二百五十四億円ですか、この影響が出ると。地域経済への影響ということでいうと九千八百五十九億円だと。雇用の話も十七万三千人もの雇用が失われると。この被害額というのは、日豪のEPAの影響試算のときに一兆三千七百六十一億円というのが出されたんですけれども、その一・五倍に及ぶわけです。ですから、北海道の地域全体が丸ごと崩壊するに等しいというふうに思うわけです。
 事態は北海道にとどまらないということなんですけれども、農水省の試算で、GDPの減少額で七兆九千億円ですか、それから就業機会の減少が三百四十万人ということですから、日本の農村がやはり崩壊することになるわけで、これ、本当に認められない話だというふうに思うわけです。
 だから、今各地で緊急集会という形で集会が持たれてきているんですけれども、そのスローガンになっている中身というのは、地域社会の在り方とこの国の形を問うというような、これは北海道ですけれども、これには、漁業や林業や農業の団体ももちろん主催者で入っていますけれども、そのほかにも北海道の経済団体連合会、それから商工会議所など含めてもうすべて団体が入って、それぐらい地域全体にとってどういう問題なのかということで立ち上がっているわけです。
 ですから、こういうことについては絶対認められないというふうに私は強く言いたいわけですけれども、これを是非、やっぱり日本的規模で考えたときに、大臣がなぜ総理大臣に対して、だから私はできないというふうに言えないのかというように思うんですが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(松木けんこう君) 紙先生、いろんなお話を今いただきました。本当に日本にとって大変なことだというふうに思いますし、大臣も、ここでは言いませんけれども、その気持ちで頑張っていると思います。

○紙智子君 大臣、いかがですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 先生からの御意見というものは承らさせていただきました。

○紙智子君 私は、前原外務大臣が先日、一・五%に九八・五%が犠牲になっているという話、これどなたかも取り上げましたけれども、この発言というのは全く逆の話だなというように思うんですよ。今まで豊かだった日本の農林水産、一次産業を一・五までそれこそ切り詰めてきたその政治の責任というのは本当に大きいものがあるというふうに思いますし、それが逆に発想が転換されていて、一・五%の犠牲になるという考え方はいかがなものかというふうに思っているんですけれども、最後にこのことに対しての感想をお聞きして終わりたいと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 農業、第一次産業の果たす役割というのは単なる産業というふうな役割だけではなしに、物を生み出すということだけでなしに、その生み出すことによって多面的機能の発揮を維持している、あるいは生物多様性の保全にも寄与しているというようなこと、本当に大きな役割を果たしているんだというようなことを踏まえていかなければならないと思っております。

○紙智子君 いろんな角度から考えても、TPPへの参加はもう断固反対ということを申し上げて、質問を終わります。