閉会中審査 2010年9月9日 沖縄北方特別委員会


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、普天間の基地の移設問題についてお聞きをします。
 日米専門家会合の報告書は、V字案、I字案を併記をし、軍用機の飛行経路は明記しないというものです。地元紙は玉虫色だと書きましたし、県民不在の空文だというふうに報道がされています。名護の市長さんは、話にならないと、言語道断だということを、重ねて拒否を表明しています。これ、当然のことだというふうに思います。
 これまで自民党政権のV字案では飛行経路を示す台形図が示されていたわけですけれども、今回はこれも示されていません。米側の主張している区域がこれまでの日本側の説明の台形図よりもはるかに広いということは、これ、飛行経路の見直しが今後あるということなんでしょうか。外務大臣にお聞きします。

○国務大臣(岡田克也君) 米側の示しているものが日本側の従来説明してきたものよりもはるかに広いというふうには考えておりません。ただ、それが陸地に近づいているということは言えるかと思います。
 なぜ、我々といいますか、従来の、前政権の時代ですけれども、自民党政権の時代ですが、台形の案を日米合意したものとして国会などでもお示ししていたと思います。ところが、米国からするとそれは必ずしも合意していないというふうに言っているわけであります。私は、過去のことをいろいろ言うよりは、現に食い違いがあるということは事実なので、そのことは正直に政府として申し上げ、そして、もし日米間で本来の、今までの台形のものに代わるものが合意できればよかったわけですが、そこまで話は煮詰まりませんでしたので今回の専門家同士の合意の中には入れなかったということであります。
 引き続いて日米間で議論を行い、新しい要素も加わるかもしれません。そういったことを含めて、地元になるべく負担が少なく、同時に米軍の運用上の要求も満たす、そういう飛行経路というのはどういうものなのか、しっかりと日米両国で議論を行って、しかるべきときにそれをお示しする、それが政府の責任であるというふうに考えております。

○紙智子君 今の話を聞きますと、飛行経路がより広がる可能性が必ずしもあるとは言えないことも言いつつも、しかし陸上に近づくということですとか、もしかすると広がる可能性も含んでいるわけですよね。
 大臣は記者会見で、この米側が主張する飛行経路の見直しは沖縄に導入予定のオスプレイ配備が背景にあるということも言われています。それで、最新鋭の米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの配備というのは、これ、あるんでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 私が先ほど広い狭いと申し上げたのは、全体の面積でいうと必ずしもアメリカの主張しているものが日本の台形案よりも広いと、面積として広いという、必ずしもそういうことではないと、そういう趣旨で申し上げたわけであります。ただ、より陸上に近いということはおっしゃるとおりで、私も先ほどそう申し上げたつもりでございます。
 オスプレイについては、まだはっきりと決まっていないということでございます。従来はこれも、そういうものは聞いていない、あるいはないというふうに説明してきたかと思います。しかし、今オスプレイはかなり幅広く導入されておりますので、私は可能性はかなりあるのではないかと。あるとすれば、やっぱりそういうことを念頭に置いて、もちろんあるかないかということをまず確認をしっかりと日米間で取る必要がありますが、あるということであれば、当然そのことを前提に飛行経路も変わってくるわけでありますから、それに沿ったものにしなければいけないかもしれないということであります。
 いずれにしても、なるべく正直にいろんなことを申し上げて、そして誠意を持って説明していくと、そういう姿勢で挑んでいきたいというふうに考えているところであります。

○紙智子君 米側ははっきりと配備の方針、政策を言っているわけで、そこはやっぱりはっきりと日本側もする必要があるというふうに思います。
 オスプレイ配備ということになると、住民生活や環境にどういう影響をもたらすとお考えですか。

○国務大臣(岡田克也君) ですから、まだ日米間でそのことを確認しておりませんので、正式に何か政府としてそれを調査しているということはないと思います。
 騒音とかそういった問題でどういう影響があるのかということについて、もし導入するということであればそのことをしっかり見極めていかなければいけないと、そういうふうに考えております。

○紙智子君 沖縄県民がオスプレイ配備に反対しているのは、やっぱり事故の危険ですとか、あるいは騒音が更に拡大するんじゃないかということなんかもあって、拒否感ですね。そういうやっぱり認識を大臣はお持ちでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) オスプレイは導入当初かなり事故があったということは事実です。しかし、そういうものは克服されたからこそ今幅広く導入されているわけで、私、今数字手元に持っておりませんが、オスプレイが従来のヘリコプターと比べて事故率がどのぐらい高いのかとか、あるいはそもそも高いのかとか、そういったことは、それもこれから議論していかなければいけないことだというふうに思います。現時点では特に数字は持っておりません。
 騒音の問題も、果たしてオスプレイになれば騒音が大きくなるのかどうかということについても今後の検討課題であると、こういうことであります。

○紙智子君 オスプレイは、今、克服されているという話しされたんですけれども、九一年から二〇〇〇年の間の主な事故だけでも四件で三十人が死亡しているわけですよね。今年も四月にアフガニスタンで墜落事故があったばかりと。ですから、不安定な構造で事故がやっぱり繰り返されているということで、米国においては未亡人製造機というふうな言い方もされているわけですよ。
 ですから、騒音や事故が従来のヘリコプターと同じなのかどうかと、違うのかということについての御認識はどうでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 繰り返しになりますが、過去においてはいろいろトラブルが多かったということは認識をしております。しかし、そういうものが基本的に克服されたからこそ、今広く配備されているというふうに考えております。
 騒音の問題も、これは科学的に計量して数字がきちんと出てくる話でありますので、今後検討課題として、あくまでも客観的にしっかりと認識をしていきたいというふうに思っているところであります。

○紙智子君 米側はこのオスプレイを配備すれば当然飛行経路というのは変わるという話もされていますから、今、岡田大臣自身もそういう影響なんかも見直さなきゃいけないという話をされたと思うんですけれども、やはり環境アセスメント、これ必要ですよね。

○国務大臣(岡田克也君) ですから、飛行経路がどう変わるのか、そして騒音とかそういったものが多いのか少ないのか、そういう事実をきちんと把握をした上で、環境影響調査、まあ全面的な見直しというふうには私考えませんが、やや追加的なものが必要なのかどうかということも、そういった今申し上げた前提がどうなるかによって変わってくる。そういう調査、追加的な調査が必要でない場合もあるかもしれませんし、あるいは必要な場合もあるかもしれないと、現時点では断定的には申し上げられないということでございます。

○紙智子君 米国でもこのオスプレイの配備に当たっては環境影響評価が行われて、これ、二〇〇〇年から昨年まで九年間費やしてやってきているわけですよね。ですから、一部とかいうことじゃなくて、やっぱり方法書からやり直して、オスプレイも含めてこれはしっかりとやるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) ですから、それは導入するということになれば、先ほど申し上げましたように客観的な数字として特定できるわけですから、それに基づいて、より追加的な調査が要るかどうかというのが決まってくるということであります。飛行経路とか、そういうことによってもその結果というのは変わってくるというふうに考えております。

○紙智子君 それと、もう一つお聞きしたいんですけれども、I字案ですね、このI字案で埋立面積を減らせばその分環境が守られるというふうにお考えのようなんですけど、そういうものではないと。埋め立てれば、そこだけでなく周辺にも影響が出るということで、自然保護協会によりますと、I字案は、国の天然記念物であるジュゴンのえさ場となる海草藻場ですね、このうち被度の高い場所が消失するということが分かっているわけです。ですから、これ、V字案もI字案も藻場が消失するということでありまして、それら含めて、V字案もI字案もどちらもこれ、地元は受け入れられないというふうに思うわけです。
 沖縄県民の皆さんにとっては、この辺野古への移設反対、そして普天間基地は無条件撤去というのは、これ変わらない強い思いなわけです。大臣は、沖縄を説得するということではなくて、この辺野古への移設そのものを是非とも断念すべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 それで、あともう一つ聞きたいことがあるので、今のことについての答弁は要りません。
 それで、もう一つ、北方問題について質問をしたいと思うんです。
 私、八月の二十一から二十三まで実はビザなし交流で色丹島に行ってまいりました。開発がかなり進んでいるというふうに聞いていたんです。実際に訪問してみましたけど、私も初めてだったんですけれども、色丹は。以前訪問された方がかなりカラフルな建物が増えたということを言っておられました。それから、学校は非常に新しくて立派なものができていました。
 それから、出生率がサハリン州の中では最も伸びているという話を聞いたんですね。それで、その理由については、若いカップルが多いんだということと、それから行政府が住宅手当とかあるいは子供とかの手当、それから女性の健康の問題というか保健の問題で対策を打っていて、その成果だということも話をされました。
 全体としては住民生活が少し向上しているのかなということを感じたわけです。
 問題は、問題なんですけれども、今回の交流のときに、住民との意見交換の場が直前になくなったんです。すごく不自然な形でなくなったわけです。それで、北海道の担当の方は、いや、手違いだったんだと言うんですけど、これ、五月にも対話集会が中止になったと。そして、出入国カードも要求されたこともあったわけですよね。
 一方で、ロシアがいわゆる対日戦勝記念日というのを制定をすると。択捉での軍事演習も最近やってきているわけで、ロシア側の態度は実効支配を更に強化しようというふうに、そのことを世界にも認知させようとしているかのように見えるわけです。
 それで、ロシアの一部の議員が言っている分にはまだ聞き流すということはあったかもしれませんけれども、上院議長自身が日本の北方領土の返還要求は歴史の歪曲だということを演説をされていると。
 それから、メドベージェフ大統領の署名でこの記念日が制定されているということでいいますと、外務省は欧州局の参事官の名前で申入れをしたというんですけれども、やっぱり抗議を含めて、そもそもソ連がこの領土不拡大という戦後処理の言わば大原則に反することをやったからこういう問題が起こっているということをやっぱりはっきりさせながら、日本国民が領土返還を求める大義を堂々とやっぱり掲げて交渉に臨まないといけないんじゃないかと。そのことが、この間、絶えず政権が替わったりもする中でしっかりとやられていないということがいろいろなことにしわ寄せとして出てきているんじゃないのかと、今度の交流事業にも現れているんじゃないかというふうに思うわけです。
 この点で、大臣に対して今後の対応ということでお聞きしたいと思います。

○副大臣(武正公一君) 紙委員にお答えをいたします。
 今のその住民交流会が行われなかったことは大変残念でありまして、本年度の四島交流において、実施団体間で相互理解の深化という目的に合致するようなプログラムが創意工夫の上、実施されていると承知をしております。
 今御指摘の第二次大戦終了の日の記念日に追加をされたことにつきましては、現在の日ロ関係にふさわしいと思えず、特に日本国民、元島民の方の感情をかんがみて残念であるという旨は、七月二十七日ですかね、参事官から在京臨時代理大使に、そしてまた、私から八月十三日にも臨時代理大使に、また九月三日にはモスクワにおいてサルタノフ次官に直接その旨を伝えました。そして、今後の日ロ両国の関係に否定的な影響を与えないようにということを求めてきたところであります。
 また、七月初めに行われた択捉島における軍事演習については、判明後直ちにロシア側に対し、北方領土に対する我が国の法的立場にかんがみ受け入れられず、また我が国国民の対ロ感情にも否定的な影響を与えかねず極めて遺憾である旨抗議するとともに、演習の即時の中止を求めておりまして、このような御指摘の事案に対して我が国として適切に対応してまいっております。
 いずれにせよ、こうした問題を根本的に解決するためにも北方領土問題の解決が必要でありまして、政府としては北方領土問題の最終的解決に向けて具体的な進展が得られるよう、強い意思を持ってロシアとの交渉を進めていく所存でございます。

○紙智子君 やっぱりビザなし交流でいいますと、日本とロシアの双方がお互いに領土問題という問題について解決のための意見交換をする、それで理解を深める機会としてきていたわけで、元島民の皆さんが自らの体験とそれから歴史の事実を示して、そしてやっぱり領土返還の思いを伝える場としてもすごく大事なわけですよ。
 ところが、領土問題を抜いてやりましょうという話になると全然やっぱり趣旨が違ってきちゃうわけで、そういう点では、やっぱり領土交渉ということと両方、両輪でやっていかなければ、交流事業に大きな負担が掛かってきているという状況もあると思いますので、そこは強くこの後の交渉の中で含めていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。