<第174回国会 開会日 5月17日 決算委員会


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 PCBの廃棄物処理事業についてお聞きします。
 二〇〇一年にPCB廃棄物処理特別措置法を作って、二〇一六年までに処理を終わらせることになっているわけですけれども、今年二月時点の処理の進捗率が一二・六%ということです。
 政府が全額出資した日本環境安全株式会社、JESCOの五つの事業所で処理を行っているわけですが、このままでは二〇一六年までに終わらせるというのはかなり困難な状況です。欧米では処理はほぼ終わっていて、期限までに終わらなければ、これ国際的に見ても恥ずかしい事態なわけですけれども、処理が長引けばそれだけ散逸する、行方が分からなくなるPCBも増えることになるわけです。政府のこの点での認識について最初に伺います。

○政府参考人(谷津龍太郎君) 進捗状況でございます。
 平成二十一年度末におきまして、JESCOに登録のあったPCB廃棄物の台数に占める累積処理台数の割合は、トランス類で見ますと二五・三%、コンデンサー類では一九・八%、これをPCBの分解量で見ますと一三・三%でございます。
 で、認識ということでございます。これにつきましては、五か所の事業所とも前年度を上回る処理実績を達成してございまして、着実に処理が進展しているというふうに認識してございます。
 JESCOにおきましては、当然ながら、安全性の確保が第一ということで、安全性に留意しながら、更に稼働率を上げる方法について継続的に検討を行っているところでございます。こうした対策、検討を通じまして、PCB廃棄物の安全かつ確実な処理の推進に努めてまいりたいと、このように考えております。

○紙智子君 順調に進んでいるようなお話がされたんですけれども、私の地元北海道のJESCO、室蘭にあるんですけれども、ここは二〇〇八年の五月に処理を開始したんですが、その後トラブル続きで、進捗率は六・四%、今年二月に地元の監視円卓会議に出された事故トラブル情報を見ますと、〇八年四月から〇九年九月までの一年半に三百件以上なんです。
 それで、ほとんどもう毎日のようにトラブルが起きるということがあるわけですが、その内容は、設計プログラム設定の不具合などの装置関係が二百四十八件、操作ミスなどのヒューマンエラーというのは五十四件、大半が、クレーンが動かないとか液がこぼれた、あるいは設計ミスというのもあります。反応槽に入れるまでの前処理段階の設備でこれがきちんと作動しないという問題が指摘されているわけです。
 それでもJESCOの北海道は、遅く出発したのでほかの事業所に比べれば少ない方だということをおっしゃっているわけです。処理の遅れというのはこういう施設設備の設計の問題が大きいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(谷津龍太郎君) 御説明申し上げます。
 JESCOにおけるPCB廃棄物の処理技術でございますが、安全、安心かつ確実な処理を行うために、有識者の意見もお伺いしながら、世界でも実績の少ない新しい技術を採用しているという状況にございます。
 処理開始当初は、一部事業所での事故やトラブル等により十分な操業が行えませんで、処理が進捗しなかった時期もございました。その後、様々な安全対策を講じて、より高い安全性を確保しながら運転管理の充実を図りつつ、徐々に処理実績を上げているということでございます。
 今後とも、安全な操業を最優先しつつ、PCB廃棄物の着実な処理の推進に努めてまいりたいと、かように考えております。

○紙智子君 安全にやるということはもちろんそれはもう大事なことだ、最優先のことだと思いますけれども、本来、このPCB廃棄物の処理というのは、汚染者負担の原則でPCBの製造や使用企業の責任で行うと。国は安全性について規制、監視するのが本筋だったというように思うんです。
 それから、化学的処理法を採用したのは日本だけで、これ大量に処理する技術としては先例がないものだったわけですよね。国が税金で処理施設を造って、この環境事業団やJESCOという化学処理の実績がないところに担わせてきたというツケが回っているという面もあると思います。
 それから、JESCO北海道の施設建設は、これ新日鉄がやったんですけれども、ここもPCB処理実績はなかったわけです。
 新日鉄は下請に結局これを丸投げして、建設段階のステンレス配管溶接工事、これ、非常にずさんなひどいものだったということで地元では言われているんです。幸い、これまでのところは大量のPCBが処理施設外に漏えいするという事故は起きていないんですけれども、しかし今年二月もダイオキシンが基準を超えるおそれのある数値が出たということもあって、もし稼働率をこの後上げるということが最優先ということになると一体どんなことになるんだろうかと、そういう不安があるわけです。
 それで、こういう地元の不安について、今度大臣にお聞きしたいんですけれども、どのように御認識されるでしょうか。

○国務大臣(小沢鋭仁君) やっぱりそういう地元の皆さん方が不安を感じるようなことがあってはならないと、こう思います。
 JESCOに対して、国は、いわゆる廃棄物処理基本計画、これを立てて、それに沿って処理事業が適切に実施されるように統括的な立場から適宜必要な監督指導を行うという責任を持っておるわけでありまして、それに沿ってしっかりやっていかなければならないと思います。
 同時に、これ、やはり住民の皆さんたちがどういうふうに考えるか、住民の皆さんたちが受け入れてくれる組織でないとこれまた進みませんので、そういった意味では、これは廃棄物処理法に基づく許認可権者である地元の都道府県あるいはまた政令市と、それから住民の皆さんたちで様々な運営基準等も決めていただいているところでございまして、そういったやり方を室蘭市の場合でも円卓会議という形でつくっていただいたわけでありまして、そういったまさに会議体が有効に機能してくれることを期待をしているということでございます。

○紙智子君 処理施設を受け入れた地元の説明とか情報公開も、実はJESCO北海道は極めて不十分という問題が起きていたんです。昨年の十一月までは事故情報というのはわずか八件だったんですね。ところが、十二月に北海道新聞が報じて三百件以上のトラブルが明らかになりました、三百八件ですけれども。
 それで、JESCO北海道では、去年の四月以降PCBを含んだ油などの漏えい事故が三件発生していたんです。八月の三十一日、車に載せるトランスの解体エリアで洗浄機械のバルブを閉め忘れて、機械からPCBを含む約三百リットルの予備洗浄液が漏えいしたと。この洗浄液は安全基準の三千倍に当たる一キロ当たり千四百三十五ミリグラムのPCBを含んでいるわけです。北海道や室蘭への報告義務があったんですけど、これを行っていなかったんですね。このほかにも、昨年七月十日にコンデンサー解体エリアでPCBの混ざった液が漏えいしたわけですけれども、これも報告していなかったと。
 一方では、試運転のときに起こっていた雪解けの水の漏えいだとか天井から雨漏りしているとか、こういうことについては危険性の一番少ない事故報告ということで、情報ということで円卓会議にのせているんですよ。そういう本当に、何というか、ささいなことものせていて、いかにもそういう意味ではここまで細かくやっているというふうに見えるようなこともやっていたんですけれども、しかしながら肝心かなめのところをちゃんと報告していないということで、円卓会議の中でもこれはもう許せないということで厳しい意見が出されていたわけです。
 こういうことについて、大臣、どのように受け止めますか。

○国務大臣(小沢鋭仁君) まず、どういったものを情報公開あるいはまた報告義務を掛けるかということに関しましては、これは先ほども申し上げましたが、受け入れていただいている地元公共団体や地元の皆さん方との協議でその基準を決めていくということが重要だろうと思います。
 もちろん環境省としては、基本的なところはしっかり統括、指導をしていくことを前提に、地元の皆さんとJESCOの方で基準を決めていくということが必要だと思います。
 先ほど三百件を超える案件と、こういう話で、それがどれだけその地元で合意をしたものと符合するのかと、こういうことでございますが、大きいものでは、私のところに報告が上がってきているのは、去年の四月二十一日、七月十日、八月三十一日の案件と、こういう話で、今委員が御指摘があったようなことだと思います。
 私も省内でこういった話を受けまして、とにかくこういう人体に影響のあるもの、あるいはまたそういったデータに関してはでき得る限り情報公開を進めていくことが重要だと、こう思っておりまして、そういった立場から、今回も地元の地方公共団体の皆さんと相談をさせていただき円卓会議をつくっていただいたところでございますが、更にしっかりとそうしたものが機能するように指導をしてまいりたいと思います。

○紙智子君 北海道ではこのJESCOの事故情報隠しへの厳しい批判を受けて、その後、改善されてきているということはあるんです。トラブル事象や不具合事象、連絡・公表区分に該当しない不具合事象などが円卓会議の委員に示されるようになっているんですね、それが、だからすごく増えて量が多いわけですけれども。
 その書いてある中身は、例えば攪拌洗浄エリアでロッドのねじとねじ押さえ用ナットが緩んだために装置が停止したとか、中央制御室で搬送系の操作、監視システムのソフトウエアがフリーズ状態になったために操作不能になったとか、こんなようなことが相次いで起こっているということで、環境省は処理の稼働率を上げると、この後、進めるためには稼働率を上げるということを言っているんですけれども、簡単じゃないというふうに思うんですよ、こういうことが次々起こっているわけですから。
 それで、二〇一六年までに終了させるとなると、やっぱり汚染者の負担をもっと中心にして進めるとか、あるいはまた新たな処理技術なども含めて、その処理の枠組みを見直していくことも必要じゃないかというふうに思うんですけれども、この点は考えておられるでしょうか。

○政府参考人(谷津龍太郎君) 御指摘のPCB特措法に基づく処理についてでございます。
 当然ながら、PCB特措法に基づいて国の基本計画、それと、その計画に基づいたJESCOにおける事業の実施、また、このPCB廃棄物の保管事業者による処理コストの負担と、こういう枠組みの下で現在処理が進められておるところでございます。
 また、先生御指摘の技術についてでございますけれども、これも先生のお話の中にございました化学処理ということで、今、日本は非常に安全性に留意しながら確実な処理ということで、化学処理という方式を選んでいるわけでございます。
 こうした最も基盤となる技術について、今からそれを開発するということは今のところは想定しておりませんが、これをいかにうまく廃棄物処理を円滑にするために使いこなすかという観点からの技術的な検討は、これはなお一層力を入れて取り組んでまいりたいと、かように考えております。

○紙智子君 今までどおりの延長線ではやっぱりいかないんじゃないかというふうに思うんですね。やっぱり早く処理しなきゃいけないという側面もあるわけですから、新しい枠組みということで是非考えていただきたいというふうに思うんです。
 それから、少量、低濃度のPCBを含む器具などを今プラズマ焼却で処理する施設というか、北海道の今、第二期施設の計画が出ているわけです。この工事は、〇八年の三月にカワサキプラントシステムズが三百八十四億円で落札したものを、室蘭市が地元活用すべきだといって反発をして、入札をやり直すという事態になっているんですね。それで、地元企業、これはもう新日鉄なんですけれども、その価格というのは、実はカワサキの落札価格よりも二百億円も高いということで、結局、これ、カワサキに最初落ちたということだったわけです。それで、環境省も間に入ってこの室蘭の説得に当たったんだけれども、今、宙に浮いた状態になっていると。
 このことでまた処理が遅れることにもなるわけなんですけれども、やはり衆参の附帯決議、特措法のときの附帯決議の中には、施設の設置・運営コストの抑制に十分配慮するというふうに明確に書いてあるわけですね。それから、処理施設は全額国費で賄われるものなわけですけれども、仮に再入札してその結果、二百億円も高い落札額になるということになると、これは問題じゃないかというふうに思うんですけれども、この点でのちょっと大臣の御所見を伺いたいと思います。

○政府参考人(谷津龍太郎君) 北海道事業についてのお尋ねでございます。
 御指摘のとおり、北海道事業の増設部分につきましては、現在、再入札という方向に向けた準備をしているところでございます。
 私どもとしても、当然、廃棄物処理全体に要する社会的コストをなるべく小さくすると、これが我が国全体にとって極めて重要だというふうに認識をしているわけでございます。
 御指摘の平成二十年の三月に行われましたJESCO北海道増設事業の当初の入札でございますけれども、その後、地元の室蘭市の方から地域の技術と一体となった体制整備という受入れ条件に合致していないんじゃないかという見解が示されたことから、最も必要な地元の理解が得られないということで、現在、この増設事業の実施に至っていないという経緯がございます。こうした経緯を踏まえまして、私どもとしても、室蘭市とも慎重に今調整をしながら、JESCOにおいて改めて北海道事業所の事業計画を検討しているということでございます。
 今後とも、公正な再入札、これが肝心でございますので、その準備が円滑に進められるということを私どもとしてもJESCOと一緒に進めていきたいと考えております。

○紙智子君 大臣の所見をお聞きしたんですね。
 それで、要するにそういうやり取りがあって、結局はその高い方に、受け取っているんだから地元に落とせということで、高いものを国費を払ってやっていくというふうになるのかならないのかというところは、ちょっとこれはやっぱり国民の目線から見ても非常に、二百億も高いということにならないようにするべきじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。適正な価格にちゃんと落ち着くようにしないといけないと思うんですけど、大臣の。
○国務大臣(小沢鋭仁君) これ、平成二十年のことでございますので、私としては報告を受けている立場でございますけれども、今、谷津部長が申し上げましたように、室蘭市側から地域の技術と一体となった体制整備などの受入れ条件に合致していないという見解が示されたことから再入札が実施されると、そういう経緯だというふうに承知をしております。
 今委員が御指摘の二百億も高かったというのは最初の案件の違いだと、こういうふうに聞いておりまして、再入札はこれからでございますので、そういった意味では、とにかく今申し上げた地元の皆さんも納得してもらえる、あるいはまた、それは国民負担ということを考えればでき得る限り、当然安全を第一として、安い、公正な入札ができるように我々としてもしっかりと指導監督をしてまいりたい、そう思っております。

○紙智子君 それから、その保管、管理の問題についてなんですけれども、経済的な理由でPCB処理に出せない企業とか、あるいは倒産になった企業からのPCBどうするのかとか、それから企業の中には時間がたっていて、自分のところにPCB入りの容器が存在していることを忘れているところもあるわけですよ、自覚していないところというのもね。それから、工場の跡地に放置されているPCBのトランスの発見されたこともあるとか、あるいは大学や小中高、公共施設に保管されているものから散逸が起こらないかどうかという、こういう問題もあるんですけれども、この点どうでしょうか。ちょっと短めにお願いします。

○政府参考人(谷津龍太郎君) 委員も御承知のとおりでございますけれども、PCB特措法に基づいて、保管事業者は都道府県又は政令市に毎年その保管状況に関する届出を行うことになっておりますし、また廃棄物処理法に基づく保管基準も適用されると、こういう状況でございます。これらに対しまして、都道府県、政令市において、届出状況を踏まえながら適切な保管についての指導、助言を行っているということでございます。
 また、公共施設等につきましても、それぞれの管理者がしっかり管理をするという前提になっておりますし、倒産等の場合でございますけれども、PCB廃棄物の受渡しとか譲渡は原則禁止されているんですけれども、倒産した場合には、しっかりこれを扱うという前提の下で譲り渡すことが可能という制度になっておりますので、こういった枠組みの中でしっかり保管についても取り組んでまいりたいと思います。

○紙智子君 制度の説明としてはそういうことでしょうけれども、実際に廃校になった学校からPCBの廃棄物などの事故例が起きているんですよね。処理作業の遅れというのがPCBの廃棄物の散逸を引き起こすことにもなりますから、やっぱり長期保管を安全にするためにも、保管状況とそれからその事故事例も把握をして体制を万全にしてほしいということを要望しておきたいと思います。
 それから、最後になりますけれども、これ厚生労働大臣にお聞きしたいと思います。
 PCB廃棄物の処理に当たっている労働者の健康診断についてです。JESCOの報告書で、作業従事者の健康管理として労働安全衛生法に基づく特殊健康診断の実施に加えて、血中のPCB及びダイオキシン類濃度の測定を定期的に行っているというふうにあります。
 JESCO北海道の処理事業は、運転会社、これは室蘭環境プラントサービス、略称MEPSというんですけれども、このMEPSというところが行っていて、JESCOの施設内では、このMEPSの正社員とともに数社の派遣会社から派遣社員が来ていると。で、作業に当たっているんですね。それで、作業従事者の三分の一に当たる五十一名が派遣なんですよ。健康診断はこれらすべての作業従業員を対象としているのかどうか、まずお聞きします。
○国務大臣(長妻昭君) まず、労働安全衛生法の第六十六条第二項には、事業者は、これPCBも含みますけれども、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対して医師による特別の項目についての健康診断を行わなければならないという規定がございまして、これは派遣社員にも実施を義務付けておりまして、派遣先の事業主がこの実施義務を負うという形になっております。
○紙智子君 実際にPCBを扱っている労働者は特別健診という形で半年に一度医師の問診や尿検査を行うということが決められているんですけれども、その〇八年二月の試運転のときから働いている派遣労働者が、そういう特殊健診というのは一度も受けたことないって言っているんですね。手作業でPCBを抜き取る曝露レベルの高いところに派遣労働者が何度も入っているんですけれども、血液検査の回数も正社員よりも少ないと。分かれているわけですね、正社員と派遣と区別、差別があると。
 雇用形態を問わず労働者がすべて義務付けられている健診を受けるかどうかということでは、厚生労働省としてもきちんと把握して、健康管理がずさんにならないようにJESCOを指導すべきではないかというふうに思うんですけれども、それをちょっとお願いします。

○国務大臣(長妻昭君) このJESCOについては、平成十三年のこの特別措置法によってもこの作業がなされているということで、一民間企業とはもちろん違うわけでございますので、現場で適切に健診が実施されているのか否か、実態を一度把握してみたいというふうに考えておりまして、その結果、適切な健康指導がなされていないということになれば、そういう指導をしていきたいというふうに考えております。

○委員長(神本美恵子君) 時間が参っております。

○紙智子君 ありがとうございます。
 是非やっていただきたいということと、やっぱり当初議論されていたことと、実際に今、大分時間たって薄れてきているというのもありますから、是非よろしくお願いします。
 終わります。