<第174回国会 開会日2010年5月13 日 農林水産委員会


○口蹄疫問題等に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私ども日本共産党も、四月二十七日に宮崎県に調査に入って、日帰りでしたけれども、二十八日に郡司副大臣に対して申入れをさせていただきました。あの時点でまだ五例目、六例目だったわけですね。
 それで、現地に行きましたら、やっぱりここで何としても封じ込めたいと、もう祈るような気持ちで現場でお話を伺いました。その時点からもう二週間過ぎまして、事態は非常に深刻化していると。やはり、戦後最大の口蹄疫被害というふうにも言えると思うんですけれども、発生県の宮崎県は日本で第二位の畜産県だと。それだけに、日本の畜産業に対する脅威だというふうに思うわけです。これに対する取組は、日本の畜産業にとって正念場と言えるものだと思います。
 それから、川南町の被害は、町内でいえば半数以上に及んでいると。そういう中で、現地の被害農家の精神的な打撃ということでいえば、もう聞けば本当に夢も希望もないという涙声になってしまうような、そういう状況に置かれているわけです。
 これほどの畜産被害が出ている以上、やはり大臣が陣頭指揮を執ってやる必要があったというふうに思うわけですけれども、まず大臣として、現在の宮崎の口蹄疫被害の戦後最大規模の被害の重大性の認識ということと、これまでの取組における大臣の役割と、それから今後の決意ということで述べていただきたいと思います。

○国務大臣(赤松広隆君) 四月の二十日の発生以来、本当に、地域的にはほぼ三キロのところに封じ込めていますけれども、しかし、川南町を中心としながら、数の上では今委員御指摘のようなことになっているということで、まだまだこの勢いは衰えていないということで、大変危機意識を持ってこの問題をとらえております。
 しかし、私どもは、専門家の意見も聴きながら、とにかくどういう方法が一番効果的なのか、何が今必要なのかということを、町、市、県、国、一緒になってしっかりと相談もしながら、国としてもまたできるだけの体制を取りながら、先ほども獣医さんの問題あるいは職員の問題、そしてまた一方では自衛隊等の支援もお願いをしながら、そしてまた畜産業界全体のボランティアの皆さん方の応援もいただきながら、四十七都道府県のそれぞれ職員の皆さんの応援もいただきながら、今、国を挙げて何とかここで封じ込めたいということで頑張らさせていただいておるところでございます。
 発生源や感染経路、これについては残念ながら今なお分かっておりませんけれども、しかし、まずは、取りあえずは今何とかここで押さえ込むと、そういう中で、並行して今後のためにもこの感染源や感染経路についても専門家の科学的な知見に基づいた形でのやっぱり検証をきちっとしていかなければいけない、こういうふうに思っておりまして、全力投球で頑張りたいというふうに思っております。

○紙智子君 私どもも、このような甚大な被害が主要畜産県で広がって、この口蹄疫の更なる広がりを許せば日本全国にも飛び火しかねないと。そういう意味では、日本の畜産業の正念場のときに、やっぱり陣頭指揮に立つべき大臣が農産物の輸入拡大につながりかねないようなEPA、FTAの会議に海外出張したということについて、現地から批判が出るのはこれ致し方ないことだと思うんですよ。現地の人の身になったらそうなんですよね。やはり大臣として、そのことについては真摯に受け止めて、襟を正すべきは正すべきだということについては一言申し上げておきたいと思います。
 そこで、二十八日の申入れの趣旨に沿ってなんですけれども、質問したいと思いますが、現地の川南町では処理頭数が多過ぎるということで埋設場所の選定ができないという話が先ほどもありましたけれども、これは本当に県任せにせずということになって現地に大臣も赴いて、それで、埋却処理について、国有林のことも提言も含めて言われているんですけれども、その点について、具体的にどういうところをどうするのかということについてお話しください。

○副大臣(郡司彰君) そのようなことで国有林ということについての検討をさせていただいております。そして、山に向かっては水源に近いのではないかという懸念があるものですから、では、それ以外のところの可能性というものもあるんだろうかということで、枠を広げて今現在行っているところもございます。
 ただ、地元の合意そのものがまだ得られていない段階でもございまして、あるいはほかの産業に対する、先ほどから出ております風評被害等を心配をする声もそのことの調整、話合いの中で出ているものでありますから、ここで今明らかにすることは若干差し控えをさせていただければというふうに思いますけれども、鋭意一定のポイントを定めまして、その地域の土壌の関係、そしてまた地元の調整を重ねているということでございます。

○紙智子君 私も、どこでもいいわけじゃなくて、やっぱりきちっとした基準を示して、それで現地の協力も得られるようにしていくべきだというふうに思います。
 それから、昨日、我が党の仁比議員が宮崎に行きまして関係者から現時点での実情を聞き取っているんですけれども、埋却場所についてはやっぱり個人任せになっているので、牛でいえば自分で埋めろという話になっているし、豚の場合も、そうは言われても、さっきもお話ありましたけど、そう言われても土地がないと。そういう中で、どうしていいか分からない状態で何日も過ぎるということが実際あるというのが昨日の段階でも話が出されているということですから、これについてはやっぱり責任を持って国として支援をしていただきたいというふうに思います。
 それから、防疫対策なんですけれども、市町村の財源がないために機動的に防疫対策に取り組めないという声も出されているわけです。それで、やっぱり緊急にいろいろ手を打たなきゃならないんだけれども、やっぱり手元にその財源がないためになかなか手が打てないということがあって、使用使途を定めない一定の交付金を当該の市町村に提供してほしいというのがもう最初本当にたくさん出されたんですよね。二つの町の町長さんからはもう共通して出されたわけです。それで、それについて、そういう形での提供の考えはないかということを一つお聞きしたいと。
 これは農水大臣だけでは考え付かないということもあると思うんですけれども、やっぱり省庁も連携するべきだし、それからやっぱり総務省などもその辺は協力しながらやらなきゃいけない話だと思うんです。ですから、それについて答えていただきたいということと、それから防疫対策について、一般車両を除外しているために人や車両の移動で被害が広がっているんじゃないかという指摘が専門家からも出されていると。これ押さえ込むためにもやはり徹底した防疫対策が必要だということなんですけれども、そのための人員の十分な確保についても求められているということで、農水大臣のそれについての見解をいただきたいと思います。

○大臣政務官(小川淳也君) 大変重要な御指摘をいただいたものと考えております。
 今現在ですけれども、様々な防疫措置はもちろんでありますが、自治体の懸命の取組に対して、これまでの枠組みでも特別交付税によりまして財源措置をいたしてまいりました。これと併せて、使途の制限のないというお話でしたので、独自に地方が単独事業としてやるものについても特別交付税措置を行ってまいっております。
 ただ、事の重大性にかんがみまして、これまでの措置では不十分であるというような御指摘も多々いただいているところでございまして、この点については、委員の御指摘も踏まえて、よく農林水産省と連携を取りながら万全の対策を講じてまいりたい。ただ、お尋ねの、ダイレクトにお尋ねをいただきました交付金制度について今現在明言を申し上げるような材料は持ち合わせておりません。
 いずれにしても、現行法でできるものと新たな法律を講じてでも行わなければならない措置との見極めを早急にさせていただきたいと考えております。

○副大臣(郡司彰君) 今ございましたように、総務省の方の考え方と私どもと今後折衝、相談をしながら、機動的に使えるような形のものを考えていきたいというふうには思っております。
 言わずもがなのことでございますけれども、家伝法に基づきますそれぞれの支援というものはこれまで行ってきておりますし、また農水省の方の関係では、今言いましたところ以外に、家伝法以外で措置できない消毒ポイントにおける消毒作業員の人員の人件費など、県、市町村が行う様々な防疫措置に関する費用について、県の計画に基づいて消費・安全対策交付金、補助金二分の一でございますけれども、活用するということの検討もさせていただきたい、そのように思っております。

○紙智子君 やはり、今までの枠内の中だけだと本当に対応し切れないという実情があるので、そこは枠を超えてもできないかということは是非検討していただいて、今後の対策に生かしていただきたいというように思います。
 それから、口蹄疫の押さえ込みと同時に、やっぱり焦点になっている問題だと思うんですけれども、経済的な損失についてどう補償するのかということです。
 それで、直接被害を受けている川南町の農家は、もう二度と牛飼いなんかしたくないという声があったり、あるいは、もう体力も気力もないと、そういう絶望のふちに立たされている状況があるわけです。この背景には、やっぱり現在の畜産農家が置かれている厳しい経営状況があるというふうに思うんです。飼料の価格がですね、燃油価格に伴って飼料の価格がぼんと上がって高止まりするという状況があったり、デフレによる販売価格がずっと低迷してきてどんどん下がり続けてきているということがあって、もうぎりぎりの経営の中でやってきたわけで、それに今回の事態ですから、そしてお話もありましたけれども、本当に我が子のようにかわいがって育ててきたそういう牛や豚を殺さなきゃいけないという声や、もうすべて財産がなくなるということや、そういう悲しみや苦しい気持ちがある中で殺さなきゃいけないという事態に直面しているということですから、そういう畜産農家をどうやって立ち直らせていくのかということが問題なわけです。
 現地の声で聞いた中で異口同音に出されていたことというのは、やはり融資では駄目だと。いろいろこういう対策とか融資でできますよとあるんだけれども、もうやっぱり借金抱えながらやってきた中でこれ以上また新たに投資して、借金してやろうというふうにはやっぱりなかなか思えないというのがあるわけですよ。
 ですから、これまでの前例にとらわれないで、被害農家に対して直接支援の措置をとって経営を再建させるべきだと、その点について、大臣、いかがでしょうか。

○副大臣(郡司彰君) 疑似患畜に対する殺処分を行ったことに対してはこれまでもいろいろ議論がなされ、委員も御承知のことだろうというふうに思っております。
 それ以外の経営再開ということに当たっての融資というものは、これも大臣の方からそれぞれの委員会でお話をしましたように、百億円という枠を広げてということもやってきているつもりでございます。
 それだけではなくて別な方法をいろいろと考えろと、こういうようなことでございますけれども、例えば、これまで経営再開に当たって必要な資金を支給をするための国と生産者が一対一の割合で積み立ててきておりました家畜疾病互助基金というのがございまして、これは現在、しばらくの間、これはよかったことでもあるんでありますけれども、こうした疾病が起きておりませんでしたので基金総額は八億円というような額にとどまっております。もしこれを使うということになりますれば、当然これは額として非常に少ないということになるわけでございまして、もし必要な場合には、こうしたものを活用をしながら、しかしながら、今後、全国の皆様方と御相談をして、今後の積立てについて若干上積みを図るような形でできるのかどうかということについても検討をさせていただいております。
 御存じだと思いますけれども、今現在ずっと下がってきておりますので、一頭当たりの負担金というものはかなり少ない額にはなってきております。そういったことを全体としていろいろと検討させていただきたい、そのように思っております。

○紙智子君 この問題では、衆議院の審議の中で山田副大臣が、被災された方々が再び畜産や牛豚を飼って再生できるように、前例にとらわれず、あらゆる措置を図っていきたいと述べられていると思うんですね。ですから、是非そのとおり、前例にこだわらず、本当にどうやって希望を持って、じゃこれからも頑張るかというふうに激励できるように考えていただきたいと思います。
 それから、もう一つの問題ですけれども、直接被害を受けていない農家も深刻な経済危機を受けているという問題です。
 農水省は、移動制限区域及び搬出制限区域を、これまでの二十キロ、五十キロから十キロ、二十キロに区域を縮小したわけです。それで、補償の措置についてはこの区域内に限っているわけですけれども、今回のこの口蹄疫の発生で家畜市場が閉鎖されるということになって、宮崎県全域の畜産農家に対して深刻な影響が出ているわけです。まあ、宮崎県だけじゃないですよね、そういう意味では。市場に出せなくなるということは、自主的に閉じているところもありますから、そういうところも含めて影響が出ているわけです。それで、区域内農家に限らず、畜産農家は家畜の出荷ができないと。えさ代がかさむ一方で、家畜の商品価格が低下してしまうと。経済的な打撃を受けているわけです。
 この畜産農家に対しての経済的な被害に対する補償についても必要だと、先ほど来ちょっと話も出てますけれどもね。これについて述べていただきたいと思います。

○副大臣(郡司彰君) 区域外の関係でございますけれども、幾つかのメニューを今考えているところでございます。
 一つといたしましては、これは関係する四県に対してすべてでございますけれども、搬出制限区域外において家畜を出荷できない等の影響を受けている経営に対する対策として、肉用子牛生産者補給金の飼養開始月齢の要件を緩和をいたしております。これは二か月未満を四か月未満。さらに、肉用牛肥育経営安定特別対策、いわゆる新マル緊でございますけれども、この登録月齢の要件を緩和をいたしまして、十四か月を十六か月。それぞれ二か月間延ばしていただいているというような形。それから、畜産高度化支援リースでございますけれども、対象としまして、出荷できない家畜を飼育するためのカーフハッチを追加をしております。そしてさらに、繁殖肥育一貫生産方式を導入をしているところに対する支援でございますけれども、頭当たり二万七千円を行ってきておりますが、農協等が離農をした農家の牛舎を活用して肥育を行う地域内一貫生産を追加をする等の対策を講じているところでございます。
 なお、今後、配合飼料メーカー等の業界団体に対しまして、区域内の農家を始めとして、口蹄疫の発生に伴い飼料代の支払が困難となっている農家への支払猶予についても要請をしているところでございます。

○紙智子君 それで、これも昨日現地で仁比議員が聞いている中で、要は評価額の問題というのがあって、それで、本来、育てて、そして一定の大きさにして売るわけですけれども、子牛だったり、その評価額で考えられるとすごく下がってしまうということもあったりして、現場の生産者の立場に立った、そういうやっぱり評価ということを是非反映させていただきたいということも出ていましたので、是非御検討いただきたいと思います。
 それから、動物用の薬品や人工授精師ですね、それから食肉加工メーカーなどの関連産業もすごく大きな影響を受けていて、自治体の様々な行事も中止ということもあって、例えば弁当会社とか関連会社なんかも影響を受けていると。聞くと、五月にもう山開きとかそれから釣り大会とかワイナリーとか子供祭りとかスポーツだとかと、もう二十種類ぐらいの事業なんかも全部中止になっているわけですね、行事なんかも。そうすると、それにやろうとしていた弁当屋さんやいろんな関連の、運ぶ、運輸の仕事の関係も含めて、全体にやっぱり影響出ていると、もちろん食肉工場なんかもそうですけれども。
 こういうところに対しての打撃をやっぱり救っていく国としての対応策も是非検討してほしいと言うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(郡司彰君) いろいろなところでイベントの中止などが出ているというふうにも認識をしております。特に、これから観光等の面も含めていろいろと影響が出てくるということが懸念をされますので、そこのところについてこれから検討をしていきたいなというふうに思っておりますし、ある意味、これまでの議論に出されましたように、風評被害等に基づく影響を抑えるということについても一方でしっかりとやっていかなければいけないというふうに思っております。
 それに伴いまして、いろいろと、先ほど来からの話ではございませんけれども、融資を相談したいとか、あるいは経営のことについて相談をしたいと、このようなことが出てくるということも考えられますので、特に政策金融公庫あるいは商工中金あるいは信用保証協会等に設置をされました相談窓口を有効に活用する中できめ細かい対策を行っていきたい、そのように考えているところでございます。

○委員長(小川敏夫君) 時間が来ておりますから、紙君。

○紙智子君 もう時間なくなりました。
 最後一つだけお聞きしたいんですけれども、感染経路の解明の問題で、到達点とこれからの見通しということをちょっと最後にお聞きして、終わりたいと思います。

○委員長(小川敏夫君) 赤松大臣、なお、時間が来ておりますので、答弁簡略にお願いします。

○国務大臣(赤松広隆君) これにつきましては、今私どもの本部の下で牛豚等疾病小委員会、また、その下に大学の先生方で口蹄疫疫学調査チームというのを設置をしておりまして、これで今並行してこの感染源、感染経路、それらについて今調査を進めておるところでございます。
 十年前は原因がはっきりできなかったものですから、何としても今度だけは感染経路なり感染源が分かるようにしっかり取り組んでまいりたいと思います。