<第174回国会 開会日 2010年4月21日 少子高齢化・共生社会に関する調査会


○「コミュニティの再生」のうち少子高齢化とコミュニティの役割

○会長(田名部匡省君) 少子高齢化・共生社会に関する調査を議題といたします。
 本日は、「コミュニティの再生」のうち、「少子高齢化とコミュニティの役割」について委員各位の御意見を伺いたいと存じます。
 議事の進め方でございますが、まず各会派からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員相互間で自由に意見交換を行っていただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、御意見のある方は順次御発言願います

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 本調査会のテーマは「コミュニティの再生」ですけれども、貧困と格差あるいはドメスティック・バイオレンスの議論もいたしましたので、それらについても意見を述べたいと思います。
 「コミュニティの再生」のうち、少子高齢社会への対応、また育児・介護社会化によるコミュニティーの維持、子供と高齢者の安心、安全な町づくり、貧困と格差などについて、参考人からの意見聴取や議論が行われました。それらを踏まえまして、地域社会みんなが支え合っていかなければならない現実があると、そのために自主的に協力し合っていくコミュニティーというのは非常に大切だというふうに思います。
 地域社会には、地域を代表して地域の共同管理に取り組んでいる自治会や町内会があります。また、ここ近年、関心に沿った専門的力量を備えたNPOが自立性あるいは自主性を前提にしながら、地域の課題にかかわっている現状があります。こうした多様な地域主体が連携協力することの大切さと同時に、こうした組織が行政とどうかかわりを持っていくのかということはコミュニティーを発展させる上でも重要になってくると考えます。
 行政とのかかわり方については、西郷泰之特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン代表理事ですけれども、NPOは行政の委託、補助の関係でしかない、いろいろ意見は言うけれども聞き入れられないこともよくあるという意見や、あるいは、行政と民間の共同のテーブルづくりというのを工夫していただくとNPOもやりがいがあると述べられました。
 また、駒崎弘樹特定非営利活動法人フローレンスの代表理事は、イギリスやアメリカの事例を紹介しながら、日本においてNPOが行政の下請になるのは、足かせ、手かせがはめられた状況で活動しているためだということも述べられました。
 私は、やはりコミュニティーを発展させる上で、NPOの社会的役割を認め、行政と対等・平等の立場で多面的な協力関係を築くことが大事だと考えます。
 加えて、コミュニティーを発展させる上で地方自治の発展ということも重要だと思います。その点では、自治体の首長さんから貴重な御意見を伺いました。分権改革の名で、三位一体改革による地方交付税など地方財源の大幅な削減と市町村合併が押し付けられることがありました。
 山内道雄島根県海士町長は、平成の大合併について、合併すると役場の職員が中心部へ家を移してしまう、行政もそのように流れる、災害が起きたときは役場の職員が先頭に立たなければならないが、その点が一番心配だと述べられました。
 また、武田丈夫和歌山県古座川町長は、山村ですから奥地の地域の住民は取り残される、地域のためには役場を核としてそれぞれの地域に人を配置しながら緊急時の対応を取り組む必要があると述べられました。また、町の経済のために地域資源を生かした地域づくりが重要だと指摘もありました。
 地方の財源確保は地方自治発展の上でも土台となるものです。地方交付税の復元や増額で本来の財政保障、財政調整機能を回復・強化するとともに、企業誘致や公共事業に依存する地域づくりから地域資源を生かした地域づくりへの転換が模索されている中で、こうした地域の努力を後押しする国の政策が必要だと考えます。
 次に、貧困と格差について意見を述べます。
 安心して子育てできる社会をつくることが政治の喫緊の課題です。特に、子供の貧困問題を解決することが急がれています。厚生労働省の国民生活基礎調査では、十八歳未満の子供がいる世帯の平均年収は、一九九六年七百八十二万円が二〇〇七年には六百九十一万円へと九十万円近く減り、特に、平均年収三百万未満の世帯の比率は八・八%から一四・〇%に増え、三十歳代の世帯主で増加しています。若い親、子育て世代にも貧困が及んでいると考えられます。
 また、文部科学省の子どもの学習費調査で年収に占める学習費用は、年収四百万以下世帯で小学校だと六・三%、中学校で九・二%、公立高校で一〇・九%です。さらに、物価が下がっているのに学習費の総額が増えています。
 加えて、地方自治体が財政難になる中、学校のテスト印刷費の一部を保護者に求める事例も生まれています。小中学校は義務教育でありながら、自治体の財政力によって義務教育無償の対象範囲が変わってくる実態があります。
 私は、政府のデータでこうした傾向になっているのでその原因を聞きましたけれども、厚生労働省は経済動向以外に理由があるかまでは分析ができていないというふうに言い、文部科学省は要因の分析はできていないという答えでした。
 私は、構造改革路線が不安定な雇用と低賃金、長時間労働を広げ、社会保障費の削減と相まって、親の貧困と格差がそのまま子供の貧困と格差につながっている、あるいは、地方交付税の削減によって地方自治体が財政難に陥ったことが原因していると考えております。
 四月十四日の調査会で福島みずほ少子化担当大臣は、子供の貧困は今の日本社会の重要課題の一つである、その対策や労働法制の規制強化等をしっかり取り組んでいくというふうに答弁されましたので、今後の政府の取組を注視していきたいと思います。
 その際、私が特に重要だと思うのは、仕事と子育ての両立を図るということ、働くルールを確立すること、待機児ゼロにするために保育所を整備すること、親の経済的困難を軽減すること、子供の貧困を解決するなど、子育てしにくいという日本社会の在り方を変える総合的な取組が必要だと考えます。
 次に、仕事と子育ての両立を支援する上で保育所を整備することが必要ですが、その際、保育の質が課題になります。
 汐見稔幸白梅学園学長は、アメリカ政府が保育の質について調査したけれども、結果として、レベルの高い保育所で育った子供たちが一番よく育っている、保育の質が子供の育ちに影響を与えることが非常にはっきり出てきていると述べ、保育所の数を増やすだけでなくて、その質をきちっと担保しなければいけない、ヨーロッパは初めからそのことについてかなりうるさくやってきたと述べられました。
 また、待機児を解消するため、戦後直後に作られた保育所の最低面積基準を緩和する動きについて、汐見参考人は、ヨーロッパでは分権化した場合にこのレベル以下ではやっていけないという最低基準をはっきり作ろうとしている、ところが日本は最低基準まで分権化してしまって自治体任せにする動きが出てきている、最低基準がばらばらになると子供たちの平等ということを考えてもまずいと述べられました。
 終戦直後に作られて六十年間放置された保育所の最低基準は引き上げてこそ、国民の願いにこたえるものだと思います。
 次に、高齢者の安心、安全の確保についてです。
 いろいろな課題がありますが、とりわけ最近相次いで起きている高齢者施設の火災事故について取り上げました。昨年三月は群馬県の有料老人ホームたまゆらで十人が犠牲になり、今年三月には札幌市のグループホームみらいとんでんで七名が犠牲になりました。
 沖藤典子NPO法人高齢社会をよくする女性の会副理事長は、防火安全対策についてはきめ細かくチェックした安全基準を設けるべきだと述べ、高齢者施設の国の人員配置基準は介護保険が始まって以来変わっていない、グループホームで十数人に一人、特別養護老人ホームは二十五人に一人、ショートステイでも二十五人に一人ぐらい、根本的に見直す必要があると指摘されました。
 私は、介護報酬の引上げや、介護報酬とは別枠に公費を投入し、介護労働者の賃金を月四万円以上引き上げること、夜間は二人体制にすることなどが必要だと考えています。
 同時に、自力で避難が困難な入居者ですから、周りの支援が必要であり、命を大切にするためにも防火安全対策の設置基準を強化すること、そのための財政支援を直ちに具体化すべきだと考えます。
 時間となりましたので、残りはまた後ほど追加させていただきます。


○会長(田名部匡省君) 紙智子君。

○紙智子君 ちょっと先ほど言い切れなかった部分もあるので、併せて発言をさせていただきたいと思います。
 この少子高齢化・共生社会調査会ということで私も参加をして、やっぱりこの問題はどう考えたらいいんだろうというようなことをいろんな角度からやっぱりフリーに、よく視察もしたりしながら深めていくというところでは、すごく自分自身も認識も深めることができて、そういう意味で非常に意味のある調査会ではないかというふうに思っています。
 それで、先ほどもう一つ言いたくて時間がなくて言えなかったんですけれども、ドメスティック・バイオレンスという問題についてはこの調査会で、元は共生調査会というふうに言っていたと思うんですけれども、調査会で手掛けて、そして法を作ったと、議員立法という形で作った経過があったというふうに思うんです。
 それで、私は最初DVというのはよく知らなくて、初めてその調査に行って話を聞いたときに、本当にびっくりしたんですね。夫婦でありながら暴力に遭って、本当にあごの形も変わってしまうぐらい殴られたり死の恐怖を感じたりという中で、ところが、全然、訴えても夫婦のけんかには、まあ犬も食わないということで全然関心を持たれないというようなことで、暴力を振るわれている方が逃げなきゃいけないという状況があって、どう考えてもおかしいし、何でこういうことが通るのかというふうに最初は非常にショックを持って受け止めたわけですけど。
 でも、その問題をドメスティック・バイオレンスという形でやっぱり理論的にも整理をして、考え方もはっきりさせて、そしてやっぱり必要な法律を作ろうということで、南野先生なんかはその出発からやられてきたと思うんですけれども。
 そういう形でやっぱり議論し、超党派の取組でこういうものを一つ作り上げてきたのはすごく大事だと思いますし、それが一回、二回と法改正ということで進んできている中で、今回、三次改正に向けての要望もまた出されているということで、更なるやっぱり改正を行えるようにということを一つ願っているわけです。
 それで、とりわけ財政難の中で活動を事実上休止するような民間のシェルターなんかもあったりして、ここがずっと最初から寄り添ってやってきているということがあるわけですけど、財政難でやめざるを得ないようなところもあるという中で、先日、質問の中で福島大臣が、この民間団体の財政支援ということでは運営費のことも含めてもう本当に優先してやらなきゃいけない課題であるという認識を述べられていて、こういう内容を始めとして、今例えば予防教育の問題についてどうするかということが出されているし、予防教育というのは、要するにそういうことに発展する前にちゃんと教育を受けて、これがドメスティック・バイオレンス、いけないことだということが分かるようなことをやっていくということですけれども。
 こういう教育の問題ですとか、市町村の基本計画にきちっとセンターの設置の問題とかも入れていく問題はどうかとか、あるいは、その対象について、夫婦間ということで来ているんだけど若い人たちの中でも同じようなことが発生しているということで、そういう問題はどうか、それから、緊急の、釈放時の保護命令という問題ですとか、いろいろテーマというのは出されていて、こうした一つ一つの問題を、是非また一定の時間を取って検討をして三次改正に向けられればということを願っておりますので、そのことを申し添えて意見ということにしたいと思います。
 以上です。