<第174回国会 2010年4月7日 少子高齢化・共生社会に関する調査会


○「コミュニティの再生」のうち少子高齢化とコミュニティの役割(子どもと高齢者の安心・ 安全なまちづくり、貧困と格差)

参考人
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授 大西  隆君
NPO法人高齢社会をよくする女性の会副理事長、ノンフィクション作家 沖藤 典子君
NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事、反貧困ネットワーク副代表 赤石千衣子君

○会長(田名部匡省君) 紙智子君。

○紙智子君 今日、三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 それで、私は、非常に気になることでもあり、早く何とかしなければならないと思っていることの一つで今日はちょっと考えたいと思うんですけれども、介護施設の火災事故が続いているわけですけれども、昨年の三月は群馬県の有料老人ホームたまゆらで、これは十人の方が犠牲者になる、そういう火災事故がありましたし、今年の三月は、私の出身地でもあるんですけれども、札幌のグループホームみらいとんでんで火災事故があって、七人の方が犠牲者になってしまったということで、本当にお悔やみを申し上げたいわけですけれども。
 それで、消防法の設置基準、それから費用についてなんですけれども、最初に大西参考人と沖藤参考人のお二人にお聞きしたいんですけれども、認知症のグループホームの数というのが、二〇〇三年当時三千六百六十五か所だったものが二〇〇八年に九千二百か所ぐらいですから大体二・五倍、入所者は二〇〇三年当時四万三千五百人ぐらいだったのが二〇〇八年には十三万二千人余りですから、大体三倍に増えているんですよね。もっと増えるんじゃないかということが言われているわけですけれども。
 そういうふうに増えてきている中で、一方で、高齢者の施設で犠牲者が出た火事、火災の事故というのが、消防庁によりますと二〇〇六年から二〇〇九年の四年間で十一件になっていて、大きな施設もあるんですけれども、小さな、それこそスプリンクラーの設置義務というのは二百七十五平方メートル未満は必要ないと言われているんですけど、そういう小さな施設も含めてあるわけですよね。
 それで、消防庁が長崎県の大村市のグループホームであった火災事故を受けて、その後、消防法の施行令を改正して、そこでは、自力で避難が困難な入居者がいる施設ではスプリンクラーや火災報知機などの設置基準を強化するということだったわけですけれども、しかし、十人未満の施設ならば消防計画の作成や防火管理者を置かなくてもよい、それから、二百七十五平方メートル未満の施設だったらスプリンクラーを置かなくてもよいというような内容なわけです。
 一方で、自動火災報知機ですとか一一九番の装置というのはすべての施設で設置しなきゃいけないということなんですけれども、その設置のための費用というのは八十万前後は最低でも掛かるということなんですよね。札幌の今回の火災事故というのは法令違反ではないというふうに言われていて、そうすると、本当に現行の防火の安全対策で入居者の安全が守れるんだろうかということがすごく問われてくるわけですよね。
 この点で、安全対策の問題どうあるべきなのかということや、本当に今の設置基準で大丈夫なのかと、費用なんかはどうするのかということについてお二人からお聞きしたいということと、あわせて、もう一つなんですけど、人員配置です。人員配置の問題では、今回、札幌の火災の事故というのは三月の十三日の未明に発生していると。それで、夜勤が一人だけだったわけですね。お年寄りの九人のうち七人が介助が必要だったと。
 火災が発生する場合、まず最初に初期の消火ということが必要なのと、消防への通報と避難介助ということが必要になるわけですけれども、結局、グループホームの国の人員配置の基準というのは一人の夜勤職員で最大十八人まで可能だということになっていて、本当にそれで大丈夫なのかというのは、どう考えても、一人で、じゃ、どうするのかということがあるわけで、これについてもちょっと御意見をお聞かせいただきたいというように思います。

○参考人(大西隆君) 手を挙げましたけれども、今御質問の点について私は専門家というわけではないので、参考になることを申し上げられないと思いますので辞退させていただきます。

○参考人(沖藤典子君) 御質問二つあったと思うんですね。入居者の安全はどうあるべきかということと、人員配置基準は現在の状況でいいのかということです。
 入居者の安全はどうあるべきかという御質問は全く当然のことでありまして、中に入っている方々が非常に虚弱な方である、あるいは、例えば出口はこっちですと仮に叫んだとしても、その出口の方に行かれない、出口を認知できない、そういう方々の安全を守るということに対して私は非常に何か甘いというか、もっともっと厳しくするべきだと思います。
 防火できる建物がありますね、鉄筋コンクリートとか、それから壁の材質とか、カーテンの材質とか、そういうこともきめ細かくチェックした安全基準を設けるべきだと思っています。それはグループホームに限らず、特養であれ高専賃のような高齢者専用住宅であれ、足腰が弱まっている人たちが住む住居というのは特別の配慮が必要だと思っております。
 これはちょっと常識的な答えで申し訳ないと思いますが。
 それから、人員配置に関しては、これはもう介護保険が始まって以来、認知症グループホームに限らず、特養も老健も配置基準が変わっていないということです。夜勤が、グループホームでは十人に対して一人ですけど、特別養護老人ホームですと二十五人に一人とか、それからショートステイでも二十五人に一人ぐらいの配置基準で、今までこういう事故が度々ありながら配置基準が改善されていないということは非常に残念なことだと思っております。
 私も、去年、おととしですか、五十人のショートステイの方々のところで夜勤を経験しまして、そこは法律上では夜勤人員二人いればいいというところを、特別に施設法人持ち出しで三人夜勤を置いているというところに私も加わって夜勤を経験させてもらって、もう本当に夜のお年寄りの動き方の多様性といいますか、もうぞろぞろぞろぞろ、あちこちからはい出してくる。あちこちでピンポン鳴ると。それから、ベッドから降りると自動的に通報が入りますね。自動センサーマットがあるから、ピンポンピンポン始終鳴っていると。
 そうしますと、五十人に三人であっても、もう本当に走り回るわけですね。四人目の私は、恐ろしくて、そのはっているお年寄りたちを抱きかかえていいものやら、もし骨折させてしまったらどうしようとかという恐怖感があるから、そうは簡単に手出しできないという状況で一晩過ごしまして、この夜勤の体制というものは根本的に見直す必要があるというように思いました。
 しかも、働く人の側からいえば、十時間拘束で二時間仮眠時間があるわけです。ところが、実際に二時間仮眠取れるという状況じゃないんですね。登録型の人ですと、その二時間は無料、無料というか、ただ働きになるわけで、実際の賃金が払われていない二時間、空白の二時間があるということも体験いたしまして、根本的な問題だなと実感いたしました。
 それこそ高齢者の本当の姿は夜にあるというか、高齢者は夜動くというか、夜の実態を見ない限り人員配置を是正はできないんじゃないかと思っております。
 特に今重度化して医療対応が必要な方が非常に増えていますから、万一の火災あるいは水害、水害でも土砂崩れで押し流されて、事件がありましたですね、そういう大雨とか台風とか、そういうものに対する対応というようなことも含めた人員配置体制と、それから、これはコミュニティーとのかかわりだと思うんですが、地元の消防団とかそれから自治会、町内会と施設側が日常的にどれだけコンタクトを取って防災体制を整えているかということと非常に大きく関連している問題であります。
 そのことによって特別養護老人ホームなどが迷惑施設化されてしまって、いまだに設置をしようとすると住民運動の中で反対運動がなきにしもあらずということで、つい最近もある駅から非常に近いところに設置をしようという動きに対して地元住民が反対だ、そういう施設はどこか山の遠いところへ持っていってほしいと。これが去年聞いた話です。そういうことがいまだに起こっていると。山の方へ持っていけば土砂災害とか、そういうことが起こるわけです。
 ですから、先ほど言いましたように、都市計画の中にきちんと位置付けて、地域の人たちとの連携も組み合わせて設置基準を考えていっていただきたいというように思っております。
 ありがとうございます。

○紙智子君 ありがとうございます。
 御自身の体験も踏まえてお話しいただきまして、一人体制では介護する側も物すごいプレッシャーだと思うし、やっぱり責任が掛かっているので持てないと思うんですよね。そういう意味でも、最低でもやっぱり夜間はそういうところでも二人体制とか複数体制にする必要があると思うし、介護報酬ですね、これの引上げも必要だというふうに私ども考えております。
 それから、ちょっともう一人の赤石参考人にも伺います。
 それで、先ほどのお話を聞いておりまして、やっぱり貧困という問題に、なぜそういうことになるのかということと、それと貧困の問題を解決するためにどうするかということで正面から向き合って努力されていることに敬意を申し上げたいと思うわけです。
 それで、お話も聞きながら、やっぱり不安定雇用が非常に増えてきているということですとか、そういう中で労働者世帯の収入減ということが親の貧困格差ということにもなり、親の貧困格差が子供の貧困ということにもつながっているということでは、そういう全体をどうするかということでやっていかなきゃいけないし、社会全体でそれこそ子育てを支えていくことや経済的な支援を強めていかなきゃいけないというふうに思うんです。
 私は、生活保護の母子加算の問題でこの復活をということでいろいろ要求をされてきた方々とも直接お会いして話を聞いたときに、本当に何というんですかね、もう朝から三回ぐらい仕事を切り替えて働いて、何とか高校に子供をやらせたいと。
 子供の方はもうお母さんのことを苦労を知っていて、別に行かなくていいと言うんだけれども、親はやっぱり行きたいだろうと思っていて、そのために何とかしようということでもう体を壊してしまうぐらい働くという状況があって、本当に安定して働けるということと収入という問題と、それから教育の問題でもできるだけ軽減していくということでいうと、今、高校無償化の法律ということで、これができてということで、そういう意味では非常にいい面というのもあるんだけれども、もう一方で特定扶養控除が縮減されるということによって一部で差引き増税になったりというようなこともあるわけですよね。
 やっぱり、そういうこと全体を含めてどうしたらいいのかということなんかについて御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(赤石千衣子君) ありがとうございます。
 母子家庭の子供たちを応援する施策としてどんなもの、現状の政策をどう考えているかみたいなことでしょうか。

○紙智子君 とりわけ教育ということで。

○参考人(赤石千衣子君) 今回、「母子家庭の子どもと教育」というアンケートをしていろんなことを考えました。まず、高等教育、高校や大学に進学させたいという希望を持っている母子世帯のお母さんは非常に多い。これは何かもう既に困窮世帯の子供の親があきらめているということがよく希望格差という形で言われているんですけれども、私たちの調査では、母子世帯のお母さんは、何とかして高校にやりたい、何とかして専門学校にやりたい、何とかして大学にやりたいという希望を非常に持っているということがありました。
 ところが、やっぱり二百十三万円の年収で子供に教育を受けさせるということはもうはなから無理なんですね、それは食べさせるだけでやっとなわけですから。そうすると、どうするか。一つは、親族からの援助がある場合には何とかなるかなと思っている人が多かった。あるいは、養育費が定期的に支払われている場合にはちょっと何とかなるかなと思っている人が多かった。あとはどうするかというと、奨学金か貸付金ということになります。
 この奨学金、貸付金というのは、もう高校のときから借りている方が多いです。これは本当に、母子団体のこれまでの積み重ねによって母子向けの貸付金で修学資金というようなものがありまして、ちょっと低利なのでそちらを借りる方が多いんですけれども、それを、借金の返済は子供にするという形で親が保証人になるという形に今なっております。そうすると、高校あるいは専門学校あるいは大学を卒業したときにはその子供たちは既に四百万、五百万の借金を負っているという状況で、何とか借金をしてやっていけるというのが今の現状です。
 それで、確かに高校の無償化というような施策については歓迎なんですけれども、授業料免除というのは今までもありましたので、本当に一番低所得の世帯にとっては有り難いけどすごくメリットがあるわけではないという、ごめんなさい、何かちょっと、もちろん有り難いんですけれども、それで一番救われるというところではないかなというふうには思っております。
 あとやっぱり、この間も座談会をしたんですけれども、引きこもっている、あるいは不登校である、あるいは、というような方たちには直接の恩恵がないというようなこともありました。うちの会員でずっと不登校でいた子は、やっぱり特別のものがないと、その後単位制の高校に何とか引っかかって入れたんですけれども、単位制の高校というのは自分で意欲を持って単位を取らない限りは卒業できません。二年間たっても十単位しか取ってないんです。
 こうすると、サポート校というのが民間にありまして、そのサポート校に行かなきゃいけないんです。これは年間で七十万だそうです。母子家庭割引があって十万円割り引いてくれたそうなんですけれども、こういう特別なニーズがどうしても生じてしまうんですね。そのことに対してはやっぱりまだまだちょっと薄いのかなというようなことがあって、フリースクールに行っているような子供たちにとってもそうかなと思います。
 ただ、基本的な、子供に目を向けるという今の施策全体に対してはこれからもっと進めてくださいというような気持ちでおります。
 やっぱり、子供たちを何とかしてやらせたいと思うと親は頑張ります。それが、例えば塾代を出そうと思って掛け持ちの仕事を増やしたとか、そういう形になってしまうんですね、ほかに何もないわけですから。それは本当に、親が自分の老後など考える余裕は全くないわけです。ですので、今の母子家庭の問題はそのまま高齢者の貧困の問題に移行してしまうというような構造になっております。
 本当に、私はたまたま子供一人ですので、大学まで何とかやって、それも親族の援助があって、それで学費を払わなくなった途端に本当にちょっと息をついたわけです。でも、子供がまだ小さかったり、二人、三人いてという親は本当に死に物狂いで、私の年齢でも働いております。そうなると、老後の準備なんか全くできないというようなことになるのかなというふうに思います。
 子供たちは、本当にどこからもそういう支援がなければ、そのまま高校中退などでほうり出されていくような子たちもいます。その子たちが本当に次の困窮する世代をつくってしまっている。これはもう本当に社会問題なのかなというふうに思っています。

○紙智子君 ありがとうございました。

○会長(田名部匡省君) いいですか。

○紙智子君 はい、結構です。ありがとうございました。