<第174回国会 2010年3月23日 沖縄北方特別委員会 第3号


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 泡瀬干潟の埋立て問題についてお聞きします。
 今も議論がありましたけれども、前原大臣は先日、就任後二度目の沖縄訪問をされ、次期沖縄振興計画の重要性について、コンクリートから人へと、いかにソフト面を定着をさせ、文化、伝統、自然を含めた観光を沖縄の地場産業として発展の核にするのか我々は考えなければならないというふうに発言をされたと報じられています。これは非常に重要な方向性を述べられたというふうに思うんです。
   〔委員長退席、理事島尻安伊子君着席〕
 それで、泡瀬干潟の埋立て問題が重要な局面を迎えているんですが、この干潟は、約二百六十五ヘクタールの干潟と藻場が広がっている沖縄島では最大級の干潟ということです。環境省の日本の重要湿地五百に選定をされ、沖縄県は厳正な保護区域に位置付けていると。干潟と周辺海域では、市民グループがニライカナイゴウナなどの十種以上の新種や希少種の生息を確認しておりまして、海草の多様性ということでは日本一と言われているんですね。
 こうした泡瀬干潟の自然の重要性について、最初に大臣の御認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(前原誠司君) 紙委員にお答えをいたします。
 私は就任直後の記者会見において、この泡瀬干潟の一期工事については中断、二期工事については中止ということを述べさせていただきまして、現在一期工事が中断をされているところであります。また、私が申し上げただけでもなく、裁判によって、公金差止め訴訟について経済合理性の観点から判決が下されて、そして、今沖縄市、沖縄県で改めて計画の練り直しを行っていただいているところでございます。
 その大きなポイントというのは、やはり採算性とそして将来需要予測、経済合理性、こういったものも大変大事でございますし、あわせて、先ほど紙委員が御指摘をされたように、この泡瀬干潟というのは大変貴重な植物などが生息をしている大事なところだと思っております。
 私が二期工事は中止ということを申し上げたのは、一期工事に当たる地域においては干潟の約二%を占めるわけでありますけれども、二期工事までやってしまえばかなりのダメージになるということで、一期工事が仮に進んだ場合においても約二%の消滅でとどめることができるという観点から、二期工事については中止ということを申し上げたわけであります。
   〔理事島尻安伊子君退席、委員長着席〕
 そういう意味においては、この干潟の自然というものをできる限り残して、希少植物、希少動物、これを残していくということで私も努力をさせていただきたいと考えております。

○紙智子君 踏み込んでお話をされてくださったんですけれども、この干潟は底生生物やトカゲハゼなどの生息、生育の場でもあると。それから、干潮時には多くのシギやチドリ、サギ類が飛来をして、良好なえさ場であり休息の場にもなっていると。
 政府は、生物多様性国家戦略の下で各種の生態系保全、回復を掲げているわけですが、藻場、干潟は生物多様性保全にとっては非常に重要な位置付けを持っています。泡瀬の埋立て事業が貴重な干潟の生き物を失わせるということで住民らが起こした訴訟の結果、今お話があったように、昨年十月十五日に福岡高裁那覇支部は、埋立て計画を違法として、経済的合理性があると認めることはできないと、事業を進める前提として相当程度に手堅い検証が必要ということで、強い表現を用いて厳しい判決を下したわけです。
 それで、大臣、今お話しされたように、控訴審判決が出る直前に沖縄に行かれて、泡瀬埋立てについては一区は中断で二区中止と表明をされたんですけれども、裁判所が二度にわたって現時点で経済的合理性を欠くという判決をされたというこの中身についてはどう受け止められますか。

○国務大臣(前原誠司君) 今、紙委員が御指摘ありましたように、これまでの裁判では、土地利用計画の経済合理性の見通しについて厳しい判断が下されたと認識をしております。高裁判決では土地利用計画の見直しに必要な調査のための公金支出は認められたことから、現在沖縄市が鋭意新しい土地利用計画の策定を行っておられるものと承知をしております。
 いずれにいたしましても、裁判所がこういう厳しい判決を下されたということを踏まえて、私どもも東門沖縄市長に対しては、経済合理性そしてその計画の実行可能性についてしっかりとした案を御提示をいただきたいと、こういうことを重ねてこの間も沖縄に行きましたときに東門市長さんにもお願いをしたところでございまして、今その沖縄県沖縄市からの打ち返しを待っているところでございます。

○紙智子君 環境裁判とか行政裁判で自治体の支出が差し止められたのは極めて画期的なものなわけです。それで、泡瀬干潟でやられようとしていることは貴重な干潟の埋立てであり、採算性の検証も極めて困難と。ですから、この判決を真摯に受け止めるならば、本来沖縄市は、この事業を無理に進めるのではなくて、勇気を持って撤退すべきだというふうに思うわけです。
 ところが、沖縄市の今検討調査委員会が発表した新しい土地利用計画案というのは、サッカー場それから五千人規模の会議場それから三百室の規模の中級のホテルとそれから医療施設、ショッピングセンターを配置して、概算の事業費で三月の発表時点で一千五十億円というふうになっているわけです。同じような施設は近隣にもありまして、言わば旧案の縮小版とも言える中身なわけです。需要予測や経済効果の分析はこれからだという話です。
 沖縄で前原大臣は、見通しを大幅に下回り新たな借金を生む公共事業が多かった、税金をどう使うべきなのか優先順位を付けていかなければならない、さらに、夢を持っておられるのは分かるけれども、観光事業の競争が激しい沖縄で本当にペイできるのかと述べられていたわけですね。
 それで、新しい案というのはまさにそういう意味では大臣が懸念されているような内容で、これ、厳しく判断せざるを得なくなるんじゃありませんか。

○国務大臣(前原誠司君) 一回目に沖縄に伺ったときに、今、紙委員がおっしゃったように、東門市長に対してそのような中身のことを申し上げましたし、二度目にお会いした先般も同じような中身の話を私はさせていただきました。
 いずれにいたしましても、現在、そういった裁判所の判断それから私どもが申し上げている条件を踏まえて、事業の投資効果あるいは需要見通し、採算性、こういったことをしっかりと沖縄市では御検討いただいていると考えておりますので、その沖縄市がどういう御判断をされて、どういう計画をお示しになるかということを我々としては待たせていただきたいと考えております。

○紙智子君 指摘されたように、経済合理性がなく市民が納得できないような案は当然認められないということですよね。

○国務大臣(前原誠司君) どこに線を引くかというのはなかなか厳しい判断が求められると思っております。司法判断も下されているし、我々も国費というものを投入する以上は、経済合理性、採算性そして厳しい需要予測というものに基づいた計画をお立てくださいということを言わざるを得ません。しかし、日本は地方自治を基本的な考え方としているわけでありますので、沖縄市がそういう計画を立てられる段において、どういう我々としては御協力ができるのかできないのかということで、一義的には、沖縄市が沖縄県と御相談をされて、どういう案を出してこられるかということでございます。
 しかし、繰り返しになって恐縮でありますが、裁判所でも厳しい判断が下された、私も採算性、経済合理性、需要予測については厳しい前提に基づいてやってくださいということを申し上げているわけでありますので、それは真摯に受け止めていただいていると思っております。

○紙智子君 今大臣は市の計画を見てということなんですけど、本来きっぱりとこれはやめるべきだというふうに思います。
 そもそもこの泡瀬干潟の埋立ての発端というのは、中城新港地区の工業団地、特別自由貿易地域の設定にあるわけです。そこに隣接して大型船が着岸できる深い護岸を建設をして航路をつくる、そのしゅんせつ工事で出てくる土砂を埋め立てるために始まったものなんですよね。ですから、その利用計画が後を追いかけるというのが、これ、根本的な問題の本質だというふうに思うんです。
 前原大臣は市の計画の採算性を検証することを強調しているんですけれども、国自身の東埠頭の建設の妥当性が問われている問題だと思うんですよ。特別自由貿易地域のための東埠頭建設とそれに基づくしゅんせつ工事の採算性の見通しがあるのかということなんですね。
 それで、資料をお配りしたので御覧いただきたいんですけれども、企業誘致目標は七十五社だと、対して立地企業数は二十三社、これまでに転出した企業数は十四社。二十三社のうち土地を買った企業というのはわずか三社にすぎないんですよ。四社は買取り条件付貸付と、残りの十六社は国が建物を三億円掛けて建ててやったところに賃貸で入居しているというものです。
 この一月に当委員会で特別自由貿易地域を視察してきたわけですけれども、幾つかは建設されているんだけれども、しかし本当に広い埋立ての地域がやっぱり使われずに残ったままというふうになっているわけです。ですから、特別自由貿易地域というのは土地も売れてない、そして企業立地も進んでいないというのが現状じゃないのかと。ここに新たに東埠頭を造る必要があるのでしょうか。

○国務大臣(前原誠司君) まず、事実関係として申し上げますと、確かに、新港の建設、しゅんせつ工事のいわゆる残土をこの泡瀬干潟の一期工事の埋立てに使っているということはそのとおりでございます。
 ただ、我々はこの新港地区での整備事業は継続していきたいと思っておりますし、仮にですよ、仮に泡瀬干潟における、泡瀬における沖縄市の第一期工事がやめられるといたしましても、我々は別の捨て場所、処分の場所を探して新港のしゅんせつ工事は続けるということは明確に申し上げておきたいと思います。
 それと同時に、委員がおっしゃったように、いわゆる東埠頭の方の特別自由貿易地域、これはなかなか埋まっておりません。買取りだけで見ると二・一%、買取り条件付きを入れても七・二%、それから賃貸を入れると一二・三%、沖縄IT津梁パーク一九・四%を入れてようやく三八・九%ということで六割が全くの未分譲ということでございまして、そういう意味では、余り使われてないという御指摘は委員のおっしゃるとおりでございます。
 他方、西埠頭についてはかなりの企業が埋まっているのは、これは委員御承知のとおりだと思います。私も先般沖縄に行ったときに、この特別自由貿易地域と併せて訪問させていただきましたけれども、西埠頭においては計画取扱量約百十万トンに対して平成二十年では約九十三万トンで計画の八三%となっておりまして、過去五年間では二十五万トンの増加傾向があるということでございまして、伸びていて大体需要予測に近づいてきているということであります。
 また、私が東埠頭の会社を幾つか訪れましたけれども、そこで伺ったのは、とにかく東埠頭から今那覇まで持っていかれているんですね、那覇の港まで持っていかれて、そしてそこからシッピングをしているということで、是非目の前の東埠頭のしゅんせつ工事を早くやって使えるようにという御要望がございました。
 そういう意味においては、初め、このきっかけのところは残土の、いわゆるしゅんせつ残土の埋立て場所が泡瀬干潟の第一期工事でございましたけれども、それとは切り離してこの新港についてはしっかりと進めていきたいと、このように考えております。

○紙智子君 西港湾の利用状況がだんだん増えてきているという話されるんですけれども、しかし、貨物量、入港船舶共にこれ港湾計画を下回っているというのが現状なわけです。それで、入港船舶は最大で一千三百四十八隻と、外航船舶は九百八十五隻を見込んでいたのに対して、大型船舶ですね、外国船ですけれども、ほとんど入っていないのが特徴ですし、定期航路もないわけです。ですから、東埠頭のしゅんせつ工事を続けて、これ西港湾の二倍の規模の新港を造るという計画なわけですけれども、その西港湾の貨物量を更に減らして効率を下げることになってしまうんじゃないかということも心配されるわけですけれどもね。むしろ、西港の方をもっと充実させて、まだ稼働率全部じゃないですから、そのときに今東港で大きいのを造ると逆に減るんじゃないかという、そういうことは、心配になるんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(前原誠司君) こういった新たなものを造るときは、今、紙委員のおっしゃったような鶏が先か卵が先かという議論が必ず行われますし、そういった議論は私は必要だと思っております。
 しかし、いずれにいたしましても、東の港湾に面している特別自由貿易地域においては、先ほど申し上げたようにまだ未分譲が六割以上もあるということを考えたときに、やはりこれを誘致をしていくためには港の整備というものは私は不可分だろうと、このように思っております。西についても、先ほど申し上げたように、だんだんだんだん増えてきて計画量の今八三%まで来ておりますので、それを高める努力をすると同時に、この六割の未分譲に誘致をするためにも今の新港計画というのは続けていきたいと、このように考えております。

○紙智子君 今の大臣の発言を聞いていますと、民主党の沖縄ビジョン、これともちょっと違ってくるなというふうに思っているんですけれども。沖縄ビジョン二〇〇八年では、今ずっとるる私が指摘したことと同じことを書いているわけですよ。それで、埋立事業は特別自由貿易地域新港地域のしゅんせつ土砂の受入れ場としての事業となっており、見直す必要があると、計画は頓挫しているというふうに書いているわけです。この時点から現状はもうほとんど何も変わっていないわけですよ。ですから、これはきっぱりと見直すべきではないかと思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(前原誠司君) ですから、先ほど御答弁をいたしましたように、リンクはさせていないと、もう既に。もちろん、沖縄市から第一期を継続する、どういう計画でやるかというお話があって、その中身は厳しく検討をさせていただきますけれども、継続をするということになったときには、それは新港のしゅんせつ土砂を埋立てに使わせていただきますけれども、仮にそれがなかった場合においても、我々は別の処分場所というものを見付けて、この新港の建設というものは引き続きやらせていただきたいと。つまりは、マニフェストと矛盾していないと私は思うんですが、つまりは、そういう事業として結び付けていることが破綻をしているということだと思います、委員の御趣旨も含めて。
 我々は、それはもう切り離して、第一期工事についてはどういう案が出てくるかということを、是か否かというものをしっかりと厳しく検証をさせていただく。しかし、この新港については特別自由貿易地域の活用を更に促進するためにこれはやっていくということを申し上げているわけであります。

○紙智子君 最初の段階で述べられていたこと、それから沖縄に度々行かれてお話しになっている中で、やっぱりこの事業をやった結果、採算が合わずにその負担というのは結局は県民のところに行かざるを得ないわけで、そういう形で港湾を整備して巨大な釣堀と言われるところというのは各地にあるわけですよね。
 それで、冒頭でも紹介しましたけれども、大臣は今後の振興計画については文化、伝統、自然を含めた観光の重要性ということに触れているわけですけれども、その沖縄で、例えば一九九七年までの二十年間の間に実はずっとこうやって、開発が進められてきているといういい側面もあるんですけれども、逆に物すごく巨大な規模で干潟が失われてきているわけですよ。干潟が二十年間で八百二十三ヘクタール消滅をしている一方で、コンクリート化が進んできているというふうに言えると思うんですね。
 ですから、今こそ、コンクリートから人へというのであれば、その公約を実行して、埋立ての事業はストップするべきだということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。答弁があれば、済みません。

○国務大臣(前原誠司君) じゃ、一言だけ。
 干潟の大切さ、そして残していかなくてはいけないという御認識は私も共有をしております。だからこそ、一期は中断、二期は中止ということを政権発足当初に申し上げたわけでございます。
 いずれにいたしましても、一期が仮にやられたとしても、干潟の消滅面積は全体の二%でありまして、二%というものをどうとらえるかということによりますけれども、泡瀬干潟は基本的には残すという方向で取り組ませていただきたいと考えております。