<第174回国会 2010年2月24日 少子高齢化・共生社会に関する調査会>


○ 「コミュニティの再生」のうち少子高齢化と コミュニティの役割(育児・介護の社会化によるコミュニティの維持)

参考人
 特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン代表理事、特定非営利活動法人プレーパークせたがや理事長 西郷 泰之君
 特定非営利活動法人フローレンス代表理事 駒崎 弘樹君
 介護情報館/有料老人ホーム・シニア住宅情報館館長 中村寿美子君

○会長(田名部匡省君) 紙智子君。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 それで、私は三人の方にお聞きしたいのは、ちょっと答えの中でもうダブっちゃっているところもあるかもしれないんですけれども、NPOの活動というのは社会や地域の課題を解決する、そういうための活動であったり、あるいは政府をある意味で監視するという活動であったり、さらには政府や行政が把握できない情報に基づいて政策提言をするとか、非常に大事な役割を果たしているというふうに思うんですね。
 ところが、現実には、行政事務の言わば委託先としてだけ見る傾向や、あるいは自治体の財政状況が良くないということで、行政が直営でやるよりもNPOなどに委託した方が安価だというふうな、そういう発想があるという指摘もあるわけです。それで、こういう指摘についてまずどのようにお考えかということが一つです。
 それからもう一つは、行政とのかかわり方で、私たちとしてはNPOの社会的な役割というのはきちっと認めて、行政と対等、平等の立場で多面的な協力関係を築くことが大事だというふうに思っているんですけれども、そのために必要なことがどういうことかということです。
 この調査室からいただいた資料の中で八ページのところに、これはホームスタートのことが書かれているんですけれども、イギリスではホームスタートの本部や支部の収入の約七割が国や自治体の助成ということで書いてあるわけですけれども、このNPOの活動への国の支援の在り方ということでは、こういう資金面だけにとどまらずというか、どういうことが必要なのかということについてお話しいただきたいということが一つ。
 あわせて、もう一つ質問だけ先にさせてもらうんですけれども、介護の質とか保育の質にかかわってなんですけれども、その質を確保するための人材の確保、それからスタッフの労働条件というのは密接にかかわりのあることだと思うんですね。それで、人材を確保するための努力、それからスタッフの雇用形態ですとか労働時間や賃金というのがどうなっているのかなということを三人それぞれからお聞きしたいと思います。

○参考人(西郷泰之君) 四点いただきましたので、まず一つは、NPOが安上がりに使われているのではないかということは私もしみじみ感じたりしておりまして、確かにそれは事実としてあるんではないかなと思います。
 それで、二番目の御質問との関係で、要はそういった行政とNPOなどとの協働の仕方というのがシステムとしてできていないから、要は委託とか補助とかいう関係でしかないんじゃないかというふうにも思っております。
 それで、私が最後に説明をし残したものが、私の資料の一番最後の、プレーパークの一番最後のページに書かせていただいております。
 公私協働の枠組みが必要だということでありまして、今は、やはりガバナンスの問題なんですが、行政、それが市町村であれ都道府県であれですけれども、行政がやはり決定権を持っているということです。それで、事業内容についても、その事業の実施、中止も含めて最終的な決定権を持っていて、NPOと一緒にやるということです。
 ですから、NPOはいろいろ意見は言うけれども何も聞き入れられないということもよくあります。私は、行政の、この間、子供の、次世代の計画を全市町村、都道府県で作って、この四月から実施ということになっているわけですが、あの計画策定の委員会、各市町村とか都道府県で委員をやったりしていろいろ提案はするんですが、まあお金がなくてできないとか、それはそれで分かりますけれども、その提案したのにもかかわらず全然行政が動かないというのによく遭遇してきました。
 これはちょっと前のブレア政権下でのシステムなので、別にこれが最新で最もすばらしいものとは私は思っていません。こういった協働の仕組みについて専門の研究をしているわけではありませんので、例えばということで聞いていただきたいんですが、シュアスタートという方法がありました。そのシュアスタートというのは、ブレア政権下で取り組まれたイギリス版の子育て支援、とりわけ低所得階層の方たちを重点化した子育て支援の政策です。
 現在は、ブレア政権になって一般化していくという形になって、法律制度も変わってきていますが、そのシュアスタートは、行政と民間とで、自分たちのところでシュアスタートのプログラムを実施したいというふうに手を挙げさせて、そこに国が膨大なお金を投下して、その地域を変えてしまうという取組です。その膨大なお金の管理は行政が行います。
 ですけれども、そのお金の使い方とか事業の中身とかについては、協議体があって、ボードというのがあって、その協議体が決めて、そこで協議体で決まったことについては行政も民間の団体も、合議ですからどっちが上とか下ではなく、合議でのガバナンスの構成ということになっています。
 というように、単純に税金をすべてNPOに自由に使わせろと、それはなかなか不思議な話で、そうはいかないとは思いますけれども、ただ、そこまでいかなくても、行政と民間の協働のテーブルづくりというのをいろいろと工夫していただくと、我々NPOもやりがいがあるかなというふうにも思っています。
 そして、ホームスタートについては、イギリスの場合は七割ぐらいが国からの補助ということになっていますけれども、日本の場合は、国からいただくということも、つまり税金からいただくということも考えてはいますが、税金に頼らずという、先ほどのお話ではありませんが、そういうスタンスも持っています。企業からいただいたりとか、会費を集めたりとか、いろいろなイベントをやってお金をつくったりとかいう、住民による活動をしてお金を集めていこうということで、でも、そうはいってもなかなかお金は単純に集まらないので、半分ぐらいは行政からの公的な支援が必要かとは思いますけれども、そんな形で考えています。
 そして、最後にスタッフのことですが、ホームスタートの場合はボランティアですので、有給のワーカーではありません。
 ただ、ボランティアはただですから、そんなに集まるのかという御質問がよくあります。今どきほとんどの子育て支援関係でも有給で、先ほど来の話の中では、ファミリー・サポート・センター事業も、低価格ではあるものの有償です。全くの無償というのはほとんど今ない中で、無償でできるのか、来てくれるのか、ボランティアがいるのかという心配をよくいただきますが、私も最初は心配でしたが、かなり来てくださいます。無償でもやりがいがあるからやりたいんだ、手伝いたいんだというふうに来てくださいます。
 ただ、そういういい人たちだからといってボランティアに向くかというと、必ずしもそうではありませんので、ボランティアについても七段階のチェックというか支援というかをしていって、場合によっては、その七段階を経てもうまく活動に取り組めない、取り組める可能性が低い、家庭を傷つけてしまうという可能性があれば御遠慮願うということも含めて、質ということは担保しようとしています。
 以上です。

○会長(田名部匡省君) 答弁は簡潔にお願いいたします。

○参考人(駒崎弘樹君) はい、分かりました。それでは簡潔に。
 後段の御質問に関しては、賃金の話ですが、期間の定めのないという意味においては、弊社では全員正社員で雇用しております。
 その前段に関して、NPOは下請になるのではないかということに関して、簡単に三つのお話をします。
 一つ目はイギリスの話、二つ目はアメリカの話、三つ目は日本の話です。
 一つ目は、イギリスの話が参考になると思います。イギリスではサードセクター庁というものがありまして、サードセクターというのは、NPOとか、そうしたところを管轄する庁ですね。サードセクター庁というのがありまして、そこに担当大臣がいます。非常に力を入れています。NPOが下請化しないように、様々なお約束というのをNPO業界としています。これらの名前をコンパクトと言います。協約という意味です。コンパクトというものを業界と結んでいます。
 その中のメーンのトピックとしてあるのがフルコストリカバリーという考え方です、フルコストリカバリー。つまり、人件費を含めて必要な経費をきちんと見ますよというような原則をフルコストリカバリーと言います。イギリスでは常識です。日本では常識ではない。それがありますよということで、こうしたものをきちんと日本でもやっていけば、おっしゃるような問題というのはクリアされるでしょうということが一つ。
   〔会長退席、理事下田敦子君着席〕
 二つ目、アメリカの話です。
 まず、日本で下請化してしまうのはなぜか。それは、行政の仕事が仕様書というものですべてはしの上げ下げまで決められているからです。これをプロセス管理と言います。アメリカの例えばニューヨークにあるセントラルパークという公園はNPOに委託されているんですけれども、プロセスは管理していません。年間何万人の市民が憩えるようにしてください、年間このぐらいのイベントをやってくださいというようなアウトプットで管理しています。結果で管理しているんですね。やり方は自由に任せますよというふうになっています。
 日本は逆です。結果は知りませんと。でも、言われたようにこれだけ配置してこのぐらいの面積でやってくださいねというプロセスを管理するんですね。ですから、このプロセス管理からアウトプット管理というふうに契約法を変えれば、かなりNPOが創造性を発揮して非常に大きな効果を出せるんではないかなというふうに思います。
 最後に、日本の場合においては、こうしたフルコストリカバリーの原則もなければ、ずっとプロセス管理をされてしまっている。そして、さらに寄附控除もない。こういった手かせ足かせがはめられた状況で活動をしているということで、非常に生産性がそがれている状況にあるということを皆さんに知っていただけたらなと思います。
 以上です。

○理事(下田敦子君) それでは、中村参考人にお願いを申し上げます。
 御答弁は簡略にお願い申し上げます。

○参考人(中村寿美子君) 介護の質と労働条件にお答えしたいと思います。
 皆様のお手元に配付させていただきました私の「こんな介護で幸せですか?」、それはちょうど去年の今ごろ小学館から出しました。全部自分が原稿を書きました。それを読んでいただくと介護の質のところもお分かりいただけると思います。
 実際に私は今有料老人ホーム五十社、三百五十ホームぐらいを自分が現場を歩いて、そして、あっ、ここ駄目だなと思うと、非常にうまくいっているところにまず社長から見学に行ってもらって、そして現場から直していただいています。
 介護というのは本当に現場なんですね。幾らマニュアルがきちっとできていても、幾ら面接でいい人を雇ったとしても、現場が命なんですね。ですから、私も現場を歩きます。トップの人が現場を歩かなければ介護の質は上がらないんですね。そこが今後も問題だと思います。
 それから、労働条件でございますが、これは私が申し上げることもなく、今、介護の人材はもう大変な状況でございます。これは実は、お読みいただいたかどうか分かりませんが、この介護というのをもう少しきちっと介護学に育て、そして新しい産業として、もうどうかすると産業革命を起こすぐらいのことを今後していかないと労働条件も良くならない。それから、この介護の現場で働きたいという人も増えない。それから、介護保険もパンクしちゃう。マイナスの方にずっと動いてしまうと思うんですね。
 ですから、日本は福祉大学が幾つかございますが、福祉大学の卒業生も私のところに実は勉強に来るんですね。なぜかというと、もう使っている教科書が何十年も前の教科書のままで、今の介護を教えてくれないんだよと。それで、これからは有料老人ホームの世界になるのに有料のことなんかこれっぽっちも教わってこない。いわゆる今までの福祉のことしか勉強していない。だから、大学の教科書も書き換えなきゃいけない時期ではないかなと。そうでないと介護の質も上がらないと思います。