<第173回国会 2009年11月18日 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第1号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今、子供の貧困という問題が非常に大きい社会問題になってきていると思うんですね。それで、今日の文部科学省の説明の中に、昨今の経済状況の下で子供が経済的理由で十分に教育が受けられなくなる懸念がされていると、それから教育費の負担が少子化の大きな要因になっているということでの報告がありました。
 そこで、この問題について少しお聞きしたいと思います。
 最初に厚生労働省にお聞きするんですけれども、国民生活基礎調査というのがありますよね。それで、十八歳未満の子供の世帯の平均年収が一九九六年で七百八十二万円だったのが二〇〇七年の年には六百九十一万円ということで、九十万円近くこれが減っているわけですよね。特に三百万未満の世帯の比率ということで見ると、九六年八・八%だったのが二〇〇八年一四・〇%ということですから、十二年間で五・二%も増えているわけです。
 それで、子育て世代でこの貧困が広がっているということも言えるというように思うんです。子育て世代で広がっていると、更に。その要因について、厚生労働省としてどのような分析をされているのかということをお聞きしたいと思います。

○政府参考人(香取照幸君) お答え申し上げます。
 今先生御指摘のありましたのは国民生活基礎調査のデータだというふうに思っております。御指摘ありましたように、平成八年から平成十九年までに、十八歳未満の子供のいる、児童の世帯の所得が七百八十一・六万から六百九十一・四万ということで、約九十万程度減少しているということと……

○紙智子君 それは今言ったので、短くしてください。

○政府参考人(香取照幸君) これにつきましては、実は同じデータで全世帯についての同じような調査がございまして、こちらは平成八年から十九年までの間に六百六十四万から五百五十六万ということで、約百五万所得が減少していると。また、三百万未満の世帯につきましても割合が二四・四%から三一・二%に拡大しているということで、子供の世帯に限らず、世帯全体として同様な所得の低下あるいは三百万未満の所得の方の増加というのが出ているということで、私ども、この国民生活基礎調査のデータあるいは関連データからだけで子供の世帯についてのみ特に何か経済全体の動向以外に理由があるかということについては、この少なくともデータの中からはなかなか要因分析ができないのではないかというふうに考えております。

○紙智子君 私は、やっぱり全世帯という話をされたんだけれども、ちゃんと分析すべきだと思うんですよ。だって、調査しているんだから、調査からこれはどういう傾向なのかと、背景にどういうことがあるのかということを分析しなければ、本当の意味でちゃんとした対策を取ることできないと思うんですよ。それが、是非きちっとした分析をやってほしいということが一点です。それ、後でまたお答えいただきますけれども。
 それから、併せて文部科学省にお聞きしたいんですが、子どもの学習費調査というのをやっていますよね。それで、年収が四百万円以下の世帯が、公立小学校に通う子供一人について学校に支払う教育費並びに学校以外に支出している教育費用というのが二十五万円、公立の中学校の場合は三十七万円、公立高校は四十四万円となっています。小学校の場合だと、年収にすると年収の六・三%なんですよね。それから中学校は九・二%、それから公立高校は一〇・九%なんですよ。
 デフレの傾向が続いたという中で学習費の総額は微増ということなんですけれども、これらについても、なぜそうなっているのかという要因について分析をされているかどうか。

○副大臣(中川正春君) 要因分析ですか。

○紙智子君 背景や、なぜ全体がそんなふうになっているのかということについてですね。

○会長(田名部匡省君) 中川文部科学副大臣、速記取っているんですから。

○副大臣(中川正春君) その背景というのはどういう意味、例えばどういうことを想定されているんですか。

○紙智子君 ですから、子供の学校の教育に係っての負担が言わば年収で見てこんなに高い比率で大きくなっているというのはどうしてなのかと。元はもっと比率は少なかったと思うんですよ。

○副大臣(中川正春君) 昔は。で、その比率が上がってきていると。その背景ですね。
 恐らく、そのコストを負担していくそれぞれのセクターというか部分の要因分析をしなきゃいけないんだろう、どこの部分が増えているのかということ。例えば、学校の中なのか、それとも外に要因をしているのかというような、そういうところを分析しなきゃいけないんだろうと思うんですが、さっき確認したんですけれども、そこまではできていないということであります。
 ただ、もう一つ言えるのは、さっき四百万未満のことを指摘されましたけれども、それぞれ所得階層によって統計が出ております。それで、この数字見ていると、やっぱり所得が上がっていけばいくほど子供に使うお金も大きいということ。例えば小学校でいけば、さっき四百万未満でいくと二十五万ということだったわけですが、一千万の所得階層でいくと、これが四十五万四千円になっているというふうなこと。これぐらいの割合で、所得に応じて子供に対する支出も増えていると。これは当然予測されることでありますが、そういう傾向は出ております。
 もう一つ言えば、これをさっきの要因別に見ていくと、小学校の場合なんかは、学校そのもので必要な経費というよりも学校の外、端的に言えば、習い物とか塾とかいうようなところへ向いて使っていくお金というのが増えていくということだと思っています。

○紙智子君 ちょっと数字を見ていて、実際には物価というのは下がっているんですけれども、ところが比率が増えていっているということの中身というのは、よくこれも正確にというか分析もし、やっぱり傾向というか把握して必要なことは対策を取らなきゃいけないんだと思うんです。
 それで、文科副大臣にお聞きしますけれども、教育費が保護者に与えている影響というのは、このこと以外ということでいうと、例えば、ある市では実験実習材料費、この中で、例えば被服材料とか彫刻材料、焼き物材料、木工・金工材料等は私費で負担するとなっているんですよ。理由は、実習の成果物は児童や生徒個人のものになるからだというふうになっているとか。
 それから、ある市では学校納付金というのがあって、その中に学年費という内容があるんですけれども、この学年費にはテストの印刷費が含まれていて、一人当たり三千円を超す金額になっていると。子供たちの学習評価にかかわる中間テストとか期末テストとか、このテストの代金なんですよね。
 それで、何でこんなことになっているのかというと、結局、言われている理由としては、自治体の予算が少ないので保護者が負担せざるを得ない状況があるんだと、そういう実情があるんだということを言っているんですけれども、これは中川副大臣は御存じだったでしょうか。

○副大臣(中川正春君) そうした個別の話までは私も理解していなかったんですが、全体の傾向として、しかし統計資料を見ていると、学校の中でのそうした負担というのはほとんど横ばいなんですよ、統計資料で出てくるものは。それよりも学校の外で使っていくお金の方がいわゆる漸増してきているという傾向がありまして、個々にはいろいろそういう現象が起こっているんだろうと思うんですが、今のところそういう理解をしています。

○紙智子君 ちょっと時間になるので、また後ほど、やれなかったところはまたやりたいと思うんですけれども。
 それで、やっぱり私自身もこの実態というか、びっくりしたんですよね。何でそんなところまで私費でやらなきゃならないんだろうかというのがあったんだけれども、やっぱり親の負担が増えているということ、それから、それがそうなっていることの原因としては、自治体の財源が大変だとか学校そのものの運営も大変だということがあるんじゃないかということも思うものですから、是非そういうことを踏まえて対策も必要じゃないかということをお話しをさせていただいて、また後ほど時間があればしたいと思います。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございます。
 一回目でちょっとし切れなかったこともあるので、最初に私が質問をした中に、三百万未満の世帯の比率が大きく伸び、大きく広がっているという話をさせていただいたんですけれども、どうしてなのかなということを考えますと、その時期というか、やっぱり働き方の問題でいえば、非正規という働き方が随分広がってくるわけですけれども、そういう中で不安定雇用ってすごく増大すると。
 だから、いつか、予測しないで首切りに遭ったりとか、そういう状況の中で、経済的にも大変な中で、そういう影響もあるのかなと思って見るわけですけれども、確たる分析とかがないわけですよね。ですから、そういうことに対してのちゃんとした分析をする必要があるんじゃないかということでお話しさせていただいたので、それに対する回答を後でいただきたいんですけれども、そのことが一つ。
 それからもう一つ、先ほど自殺の話もされていまして、それで私も実は先日、養護の先生からいろいろお話聞く機会があって、保健室に来る子供たちのそういう悩みに答えるときに、本当に抱え切れないような本当に悩みを抱えてきていて、中にはもう何回もリストカットしている子供たちもいると。
 そういうやっぱり精神的な状況も含めて、悩みを抱えながらそういう悩みをどう解決していいのかという、また先生の方も一人で思い悩みながらもっと集団の力でやっていきたいという話もされているんですけれども、そういう今の状況ということで見ると、やはり親の貧困と格差という問題が、あるいは地方自治体の財政難ということが子供の生活に与えている影響というのは本当に大きいと思うし、やっぱりこういう貧困が広がっていくということは、将来の子供たちの未来にとっても本当に何としてもそうさせてはならないという思いがするわけですけれども。
 そのときに、やっぱり貧困をもたらせている働き方の問題ですとか、あるいは教育費がうんと親にのしかかってきている問題ですとか、あるいは地方財政の在り方の問題ですとか、こういう問題、一つ一つの問題を本当に抜本的に手を入れて改めていくということが必要じゃないかというふうに思うんです。
 そういう点での、あと一つ最後になりますけれども、大島内閣府副大臣に、それらについての見解をお伺いしたいと思います。

○副大臣(大島敦君) 内閣府としての見解は、先生おっしゃるとおり、分析は今後進めていくことになるのかなと、分析はまだ整っていないと思います。
 ただ、私が、要は皮膚感覚として申し上げられるとすれば、やはり二〇〇〇年以降、二〇〇二年以降が特になんですけれども、経済成長率はプラスに転じて非常に景気が良かった時代が続いたんですけれども、御承知のとおり、非正規労働の方が本当に増えて、来年の四月以降の課題でもあるんですけれども、一番最初の卒業した時点で正規労働で入れないと、もうずっと非正規という働き方が継続せざるを得ないという状況が今もあると思っていまして、今の三十代の方がそうですよね。
 ですから、ここで特に労働分配率を考えれば、多分、共産党さんが去年主張されていた大企業に内部留保があるからという議論は、私の記憶だともっと前の四、五年前に、多分、第一経済生命研究所の研究員の方が同種の論文を書かれておりまして、当時、大企業の中に内部留保が何十兆円あるかという試算をされて、それを要は分配すれば景気が良くなり、格差が解決するという趣旨の論文を書かれたかと記憶しております。
 ですから、その時代の政策がしっかりとして、この格差社会、あるいは労働分配率、あるいは同一価値労働同一賃金が実現できていれば、今のこういう問題というのは大分防げたかなと思っております。ですから、今私たちとしてはここに着目をして、要はできるだけ、これは細川律夫副大臣のテーマでもあるんですけれども、働き方の問題というのはやはり考えていかなければいけないなと思います。
 あとは細川先生の方に譲りたいと思います。

○紙智子君 お願いします、細川副大臣。

○副大臣(細川律夫君) 今、紙委員からの御指摘というのは非常に大事なことだろうというふうに思います。
 とりわけ、格差が拡大をして、そして貧困、貧しい家庭の子供たちが多くなってきて貧困が言わば固定化して、その子供たちが更にずっと貧困になっていくんではないかという、こういう心配があるわけです。
 それを解決するためには、まず子供たちにとって大事なことは、まずその子供たちを、社会全体でその子供たちが健やかに育つように応援をしていくという、そういうことで子ども手当なんかを出すと、こういうことになっていくわけなんですけれども、それともう一つは、やはり今御指摘のあったような非正規労働者もこれまたたくさん生じてきておりまして、今は三人に一人ぐらいなんですけれども、その非正規労働者の人たちの収入が一般的に低いと、こういうことで、その問題もしっかり解決をしていかなければというふうに思っております。
 このことが厚生労働省としては一番今大きな課題でありまして、このことについてはしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

○紙智子君 ありがとうございます。
 教育の無償ということがずっと言われているんですけれども、現実問題としては有名無実化している事態だと思っていまして、そういうことを含めて、子ども手当もいいんですけれども、やっぱりその根本となるところを手を付けて、そこから解決していくということが必要ではないのかなと。
 教育費そのものも非常に負担が大変で、払えないために学校をやめなきゃいけないという状況があったり、養護の先生のお話だと、御飯も食べれなくて、昼休みの時間になったら、みんなが御飯を食べるときになったら保健室に来ていると、そういう事態があったり、朝御飯も食べないで来たりとか、そういう本当に胸の痛くなる事態があるだけに、やっぱりそういうこと自身を底上げしていくというような基本の対策というのを本当に考えていかなきゃいけないんだろうと思います。
 そういう意味で、少しでも前に向けて前進できるようにということをお願いをしたいと思います。
 終わります。