<第171回国会 2009年7月1日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第06号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 主任研究員の確保の問題は今もお話がありまして、前回、ブレナー理事長が来られたときにも、ブレナーさんの任期は夏までということなんですけれども、それ以降も含めて開学までには五十人にはできるんだという話がありまして、本当に大丈夫なのかというのは同じ思いなんですけれども、今やり取りがありましたのでこれはちょっとおいて、その次から質問をしたいと思うんですけれども、奨学金や学費の減免などの問題です。
 それで、主任研究員の確保ができるかどうかというのは非常に大事なわけですけれども、その次に、院生を集めることができるかどうかと、これが大きな課題だというように思うわけですよね。それで、学部を持たない大学院大学というのは、院生の確保ということで見るとどこも大変な状況だと。それで、世界最高水準を目指す大学院大学ということになりますと、やっぱり学費も米国の有名私立大学並みじゃないかということになると、年間二百五十万ぐらいとか、そういう話も聞いているわけですけれども、そういう点からも、じゃ二百五十万払ってやるという人たちがどれだけ集まるのかということを考えてしまうわけです。
 大体、学費でいうと年間どれぐらいの水準になるのかということ、それから充実した奨学金制度や学費の減免制度というのも不可欠なわけですけれども、これらについて検討されているのかどうかということを、これ局長にお聞きしたいと思うんです。
 それで、その後大臣にお聞きしたいんですけれども、沖縄の振興、沖縄の人材を育成するということに結び付けるという観点から、この問題では、是非学費の安い沖縄枠というものも設けるとか、あるいは沖縄の学生を対象にした奨学金ということなんかも併せて検討していただきたいという声があるわけですけど、これについてどうかというのは大臣の方からということでお願いします。

○政府参考人(清水治君) まず、学費でございますが、国内外の主要な研究系の大学の例を参考にしながら適正な金額を設定するよう検討が進められてございます。他方で、御指摘のように、海外の大学においても、特に博士課程の学生に対しましては、授業料の減免あるいは奨学金の支給、あるいはリサーチアシスタントとして雇用するというような形での支援が多く見られるということでございまして、海外の大学と競争の中で優秀な学生を獲得するためには、学生支援も重要な課題と認識しているところでございます。

○国務大臣(佐藤勉君) 今先生からおっしゃられた点、重要な点だと思いますし、沖縄にできて沖縄の方が一人もいなかったなんという話でもないような気がいたします。しっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 先ほど資金の確保の問題をめぐって、またこれも議論があったところですけれども、企業の共同研究、委託研究という問題についてです。
 それで、前回、ブレナー理事長が、業界からの委託研究はコストが安いので、むしろ共同研究を進めることで非常に強力な基盤づくりができるというふうにお話をされていたわけです。
 それで、これまで、じゃ機構が民間企業と行ってきた共同研究というのは一体どうなっているのかなということで、資料をいただいて実績を見てみますと、平成十七年から平成二十一年の三月まで、ここまでに共同研究は七件と。NECソフト、それから日立、本田技研、それからTDKなど契約をしているわけですけれども、これらのうち企業側からの経費が支払われた共同研究というのは本田技研の一件のみなんですね。五件は企業からは一円も提供を受けていないと。逆に、機構から日立には五百万円支払っているのもあるんですよね。
 それで、共同研究のほとんどがこれ研究経費を受けていないというのは、どういう理由によるものなんでしょうか。

○政府参考人(清水治君) 民間企業との共同研究でございますが、まずその意義につきましては、この大学院大学、現在の機構の研究者と企業の研究者が共通の研究課題について共同で取り組む、相互に刺激し合って、単独でやるよりはより優れた研究成果を生まれることが目指すということでございます。
 その際の研究資金については、企業が用意する場合もありますし、企業と研究機関双方で用意したり、あるいは研究機関が用意するという場合もございます。それは個々の共同研究の契約によるわけでございますが、資金提供以外にも機器、資材の提供ですとかあるいは研究施設の提供など、協力の在り方についてはいろいろな形態がございます。
 いずれにいたしましても、こういった共同研究を積み重ねまして、産業界との有効な研究のネットワークを構築していくことが大事だと考えております。

○紙智子君 ちょっと今の答弁どうなのかなと思うんですよね。
 それで、大学と民間企業との共同研究というのは、必要経費は企業から支払われるというのが通常なわけですよね。いろいろある中の一つということじゃないと思うんですよ。例えば、東京大学でいいますと、民間等共同研究取扱規則というのがあって、ここで定めているんですけれども、通常、大学側は施設設備を提供し、その維持管理に必要な経費を負担し、企業が消耗品、光熱水道費等の直接的な経費を負担するということになっているわけですよね。機構が日立グループの会社の施設維持管理費や光熱水費、消耗品まで支払ったというのは、これは本来、共同研究の契約の在り方として適切とは言えないと思うんですよ。何か、もらうんじゃなくて出してあげてというのはちょっと違うんじゃないかと。
 そして、大学院大学が財政基盤を強化して運営していけるのかどうかと、この問題にも結び付いてくるわけですよね。今のこういう状況のままでは不安は消えないわけで、果たしてこれで本当に財政的な基盤つくってやっていけるのかというふうに思いますし、やっぱり大企業がきちんと研究経費を支払う共同研究を獲得していく必要があるんじゃないかと。これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(佐藤勉君) 詳しい話はちょっと私承知しておりませんので後でまたよく詳しく伺いたいと思いますが、先生の御趣旨はごもっともだと思います。したがいまして、今後、そういうことのないようにちゃんとチェックをして、もちろん利益になることはちゃんとその大学側に還元をさせていただくということにさせていただきたいと思います。

○紙智子君 今、きちっと調査をして報告をするというお話もありましたので、それきっちりやっていただきたいと思うんです。
 それで、ブレナー理事長が言われているような共同研究で強力な基盤をつくるためには、企業が研究の直接経費だけでなく、さらに、大学院の運営を支える間接経費を多く提供することも必要だということなんですよね。この間、間接経費の実績では、共同研究の本田技研が約二千三百万円の研究経費に対して間接経費が七百万と。それから、委託研究のNECは研究費四百八十万円に対して間接経費は百四十五万円ということですから、大体割合で見るといずれも三〇%程度なんですよね。
 米国ではこの率というのがすごく高いわけですよね、間接経費の率は。尾身大臣がかつて米国などを視察してまとめられた報告書を見ると、二〇〇二年のものですけれども、スタンフォード大学がオーバーヘッド、間接経費ということですけれども、直接研究費の五七%です。それから、マサチューセッツ工科大学が六五・五%、ハーバード大学が六三%というふうになっているわけですよ。
 米国では、企業が大学に共同研究、委託研究を求める場合には、研究費だけではなくて大学の運営を支える経費も負担するというのが当然だというふうに言われているわけです。やはり、今後、この沖縄大学院大学が共同研究を進めるに当たっては、日本の大企業も少なくともこういう米国並みの間接経費を提供し、運営を支えることが求められるんじゃないかと思うんですけど、この点、大臣の所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(佐藤勉君) 先生おっしゃるとおりだと思います。私もそう思います。
 企業としては研究機関が要らないというメリットも出るわけでありますから、そのパーセンテージについてはちょっと私詳しくつまびらかなことは分かりませんけれども、当然それなりの経費はいただいて運営をしていくというのが趣旨ではないかというふうに思いますし、最初が肝心でありますから、そういう面も含めてしっかりとした体制をしてまいりたいと思います。

○紙智子君 一覧表でその資料をいただいたときにちょっとびっくりしたわけですよね、全然、空欄になっていて、どこからも受け取っていないのかって、二件しかなかったということなので。是非そこのところはしっかりと位置付けてやっていただきたいと思うんです。
 それから、政府は知的クラスターの形成ということをずっと言われているわけですけれども、日本国内ではこれまでのところは、緒に就いたばかりということもあるわけですけれども、余り成功してないということが現実問題としてあるわけです。
 それで、経産省の委託調査で、今年三月に発表されています大学発ベンチャーに関する基礎調査実施報告書というのがあるわけですけれども、ここでは、企業業績としては営業利益は依然赤字が続いているというふうにされているわけです。単年度黒字、累積損失なしとしている大学発ベンチャーは二〇・一%で五十五社というふうになっています。
 沖縄振興につなげるために大学院大学と地元の中小企業の連携と、これも先ほどいろいろ御議論あったところですけれども、やっぱりこれは是非必要だというふうに思うわけです。
 ブレナー理事長が、中小企業に科学技術がないため、どこの国にとっても今後の課題なんだということを言われていたんですけれども、是非ここをやっぱり地元の中小業者との連携を強めていただきたいということについて、最後にそのことを大臣の意見を伺って、質問にしたいと思います。

○国務大臣(佐藤勉君) 中小企業にとりましては大変厳しい経営環境の中で今経営をしているということになります。したがって、研究経費等々、ややもすれば捻出できないということなのかなというふうに思います。
 一方、大企業においては余裕もあってというところもあるかもしれませんけれども、やはり地元の中小企業にとって研究が必要だとすれば、私は国の関与もあってしかるべきかなというふうに思いますし、そういう関与も含めて中小企業を支援するという立場で、内閣府が所管をするのか、これは経済産業省が所管をするのか文科省が所管をするのかよく検討しなければいけない点はありますけれども、そういう面で地元の中小企業を支援するという観点から、私は、積極的に果敢に参加をしていただいて、利益になるならないはここは除外視をして、中小企業の発展という観点からこの大学院大学でのいろんな研究開発というものは積極的に取り組むべきではないかなというふうに私自身は思っております。

○紙智子君 終わります。