<第171回国会 2009年6月25日 厚生労働委員会 第19号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 与野党そろって本当はやるべきものだと思っていたので非常に残念ですけれども、しかし質問させていただきます。
 それで、この児童扶養手当法の一部改正について、当然、父子家庭も含めるべきだというふうに思っていますので、今回の出されている法案は、我が党賛成であります。
 その上に立って、舛添大臣にお聞きをしたいと思うんですが、五月の予算委員会のときに我が党の山下議員が大臣に質問をいたしました。そのときに、父子家庭の場合、年収四百万円以上の世帯が四五%あるということを理由としておっしゃって、児童扶養手当、必要ないということを言われたわけです。
 しかし、問題にしているのはその四五%、四百万以上の四五%ではなくて、三百万以下の、三七%いらっしゃるわけで、そこに対して、結局、年収、受けている収入は変わらないのに、一人親世帯で、片方は母子家庭だから受け取れるけれども片方は父子だから受け取れないということ自体がやっぱりどう考えてもおかしいんじゃないかということを問題にしたわけで、それに対してなかなか聞いていて納得できる答弁でなかったので、再度それをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(舛添要一君) 今、蓮舫さんに対してもお答えをしたんですけれども、これ非常にそこのところは難しくて、先ほど、一人親の家庭もありますけれども、両親そろっていて生活保護で例えば苦しんでいる家庭があるとしますね、生活。仮にそういう立場に立ったら、なぜ母子家庭と父子家庭だけにやって、我々にそういうものをくれないんですかと、特別の加算をくれないんですかという意見もあり得るわけですよ。
 ですから、戦後すぐの、もう我々が子供のころ、みんな白い御飯食べれないというような、そういうときには大きな平均像でやることができた。だけれども、一定の豊かさを保った段階、水準に達した段階では、私は、やっぱり総合的にきめの細かい、手間暇掛かりますけれども、この家庭は例えば教育の面で子供さんが大変だからそこに重点的に、この家庭は別の面でということができれば、それは最適なんですね。
 ですから、今、私は、やっぱりこの背景にあるのは、基本的に格差が拡大している。非常に貧富の差が拡大し、まさに戦前、終戦直後まで戻ったとは言わないけれども、高度経済成長とは違った意味で、要するに格差の拡大というのは、非常に困った、貧しい方々にしわ寄せが非常に来ているので、そういうことの背景もあるというふうに思いますが。
 この前、一般的なデータを申し上げたので、もうそこから先は、むしろ私は、両親そろっているけれども、極論ですよ、極論しますよ、もうおやじが飲んだくれで、DVはやるし、ひどい家庭だと、こんなのなら、おやじいない方がもっといいよという家庭だってあり得るわけですね、極論で言えば。そういう人から、そういうところのお母さんから見たら、うちはおやじがいるがために母子加算ももらえなきゃ、もちろん父子加算ももらえない。これどうするのという声をどうするかということをちょっと疑問提起です。

○紙智子君 ほかとの、いろんなケースがあると、それとの整合性ということで言われるのであれば、やっぱりそういう困った人たちをすべて支援するというふうにしなきゃいけないんだと思うんですよ。だから、どうして母子家庭はいいけれどもほかは駄目かというと、やっぱり今の説明を聞いているだけでも、急を要している中ではどうもやっぱり納得できないなというのは率直に言ってあります。
 それから、父子家庭自身も、いろいろ調査している中で、財政的な支援、経済的な支援をやっぱり求めるというのは本当に多いわけですよね。港区がやった調査の中でも七割がそういうふうに言っているというので、区として独自にそういう対応策を取るということもやってきているわけで、そういう面でも必要だというふうに思うんです。
 今、蓮舫さんの方からもお話ありましたけれども、やっぱり正社員としてなかなか働き続けられないと。出張ができないとか残業ができないということでどうしても転職しなきゃいけないということに置かれてしまうというのは、母子家庭もそうですけれども、父子家庭もそういう状況というのがあって、どうしても働き方が非正規で働かざるを得ないということになっていて、とりわけ去年から今年にかけての派遣切りとか雇い止めの中で、不安定な状況の中で本当に苦労されているわけですよね。
 ですから、そういうことを考えますと、やっぱりどうしても必要だし、子供から見ると、父子家庭か母子家庭かなんというのは関係ないわけですよ。関係ないのに、結局、子供から見たら、一人親でもう精いっぱい頑張っているところにそういうふうな分け方をすると、貧困が、そういう差別が子供のところに行ってしまうというふうに思うんですね。
 そういうことからもここは改善する必要があるんだというふうに思うんですけど、ちょっと一言でいかがですか。

○国務大臣(舛添要一君) 貧困の再生産、これは絶対避けないといけないです。ですから、補正予算の中でも例えば再就職の支援や何かをやっているんで、いろんな政策があるということが重要だというふうに思っております。

○紙智子君 それと、二〇〇二年の法改正で、五年間受給したら児童扶養手当が一部支給停止と、これも今やり取りはありましたけれども、それで関係者の反対運動があって事実上凍結となって、一定事由に該当する場合は適用除外だと。それでも停止されている家庭が出ているわけですよね。
 昨年十二月の支払のときで児童扶養手当の一部給付が停止されているわけですけど、これ、最初ちょっと事務方にお聞きすると言っていたんですけど、時間がなくなったので併せて聞きますが、これが三千五百十四人が一部停止になっているわけですよ。それで、手当の必要な人、必要じゃないからそうなったんじゃなくて、必要な人でも、いろんな事情で証明書が取れないとか、あるいは手続をすることができないために切られるということがあってはいけないんだと思うんです。
 それで、やはり就労意欲などの証明書をさせたり、適用除外の手続をさせるということは、これやめるべきではないのかと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(舛添要一君) 体が悪いとかそういう特別な事情がないのに、就職活動もしないしのんべんだらりと言葉は悪いけれどもやっているということに対してのある意味では歯止めをやっているわけですが、ただ、今の状況は、職探しても見付からないという状況がやっぱりあるんだろうと思います。ですから、これはむしろ、今ハローワーク含めて一生懸命雇用をどうつくるかとやっている。こっち側からむしろアプローチすべきではないかというふうに思っております。

○紙智子君 それであれば、やっぱり今までやってきている、わざわざ就労証明だとか、障害があるとか病気だとか、こういう証明の手続を取らせるようなことはやめるべきだというふうに思うんです。
 やっぱり日本の母親世帯の多くがこの児童扶養手当を受給しているというのは、就労意欲がないからじゃなくて、必死に働いても、児童扶養手当の所得の制限を超えるような収入を得ることができないことなんですよね。それがあるからだと思うんですよ。
 ですから、既に精いっぱい働いている母親たちにもっと働けというふうに迫るということは、母親自身の体力ももたなくなると、健康を害するということにつながりますし、そのことは子供たちにも更なる負担と犠牲を強いることになるというふうに思いますので、是非見直しをしていただきたいということを述べさせていただきます。
 最後に、一言回答をいただいて、質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(舛添要一君) 本当に困っている方々をみんなで助けようということに反対する国民はいないと思いますから、よく議論をしたいと思っております。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 十分の質問時間ですので、答弁の方はできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。
 それで、生活保護の母子加算が就業支援の転換ということを理由にして廃止をされて、十万の一人親世帯、約十八万人の子供たちが一層の貧困を強いられているわけです。中でも、働きたくても働けないと、こういう家庭がもう困窮を極めていると思うんですね。三万人が何の代替措置もとらずに二万数千円の母子加算が廃止をされたわけですけれども、それがどういうことなのかということを、私、少し具体的にお話をしたいと思うんですよ。
 それで、今、生存権をめぐって札幌地裁に提訴している川口さんの場合。実は、私、この方は直接お宅を訪問していろいろ事情を聞かせていただきましたし、テレビでも一度放送されて、全国放送で御覧になっている方多いと思うんですけれども、子供さんが四人いらっしゃるんですね。この四人のうち三人が障害を持っているわけですよ。そして、二人は施設に入所されていると。そして三男が重度の障害なんですけれども、この子と、それから中学生の長女とお母さんと住んでいるわけですね。それで、三男の介護をしなきゃいけないから働きに出れないわけですよ。そういう中で、とにかく、三男の方ももうかなり体が大きいですから、介護をしている間に本人も腰を痛めているんですね。椎間板ヘルニアで自分も治療しなきゃいけないと。
 そういう状況の中で中学生の長女と一緒に協力しながらやっているんですけれども、二〇〇七年の三月まで二万五千百円あったこの加算が、ゼロになったわけですよね。食事以外削るところはないということで、とにかく自分は食事を一日一回というふうに切り詰めて、それでも子供たちに満足な、食べさせられないというふうに言っているわけです。だから、働きたくても働けない状況に追い込まれている、こういう一人親の家庭にとって、生活保護というのは最後のとりでになっているわけですよね。
 心身ともに本当にダメージを受けていて、そういう中で、働けない一人親、こういう家庭はどうやってここを乗り越えたらいいのかと。もうほっておいたら、もうもたないですよ。どうしたらいいんですか、これは。大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(舛添要一君) 個々は様々なケースがそれはあると思いますけれども、今のその生活保護の水準でいうと、まあこれ地域によって違いますけれども、東京の区部でいいますと、例えば、母子家庭で未就労の場合でも高校生と小学生、子供のときには月額約二十七万、小学生の子供一人の場合でも月額約二十一万円ということは、それぞれ三百二十万円、二百五十万円と、この最低は保障されております。
 さらに、その上で、先ほど来申し上げていますように、例えば子供の学習支援のためにクラブ活動に対する費用を小学生で二千五百五十円とか高校生で五千十円、こういうのをやっていますし、それから、今の病気のような話のときには、これは生活保護の場合にはきちんとそれは対応しておりますんで、午前中にも申し上げましたけれども、普通のタックスペイヤーというか納税者が、それは国民は困った人をみんな助けようと思っていますが、そこまでだったら納得できるという線でないといけないと思いますし、それから、この母子加算云々だけの話ではなくて、今の場合はまさにおっしゃったように就労ということが非常に必要ですから、それは雇用をつくり出す、七千億円の基金もそのためにつくったわけですから、様々な施策をやっていきたいと思っております。

○紙智子君 いろいろなことをやっているというふうにおっしゃいました、障害者の加算とか医療の問題とか。でも、それは母子加算に代わるものじゃないんですよ。
 それで、やっぱり生活保護を受ける際のハードルってすごく高くて、子供の進学や将来のことを考えると、大体一人親の方は日中と夜ともう二つとか三つの仕事を掛け持ちなんですよね。とにかくそうやってもう無理を重ねているわけです。
 先日、札幌でお話聞いた女性の場合は、子供が小学三年のときに離婚されたわけですけれども、朝から夕方まで介護の仕事をやって、その後は夜もコンビニで十時まで働くと。ずっとそうやって働き続けて、子供さんが中学三年になったときにとうとう体壊しちゃったんですね。こういうふうに、自立するために必死に働いて体を壊している人や、DVの被害者や、あるいは障害があったり病気の子供がいるということに対して、経済的自立だけを強調して一律に母子加算を切るというのは母親にとっては本当につらい話で、こんなふうに言っていますよ、まるで懲罰受けているようだと。こういうふうに言わせなきゃいけないような事態というのは本当におかしいと思うんですよ。
 やっぱりより困難に置かれている子供や家庭、家族を排除するようなことがあってはならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(舛添要一君) いや、だから、そういう様々なケースに対しては、それはケースワーカーにしろ、市町村の生活保護の担当の方にしろ、きめの細かい手を差し伸べなさいということを言っているわけであります。
 ですから、全体の大きな政策を決めるときに、納税者の御納得がいただけるような水準がどこにあるのかと。そして、先ほど来申し上げていますように、五年を掛けて段階的にやっているけど、ここに来て極めて厳しい状況だというのは、様々な経済情勢も反映している、雇用情勢も反映している、こういうところに対しての手当てもきちんとやっているということであります。

○紙智子君 納税者の納得とおっしゃいますけど、多くの世論はどうしてこういうものをほっておくのかというふうになっていると思うんですよ。だから、やっぱり一人一人の実情を見ていただきたいというふうに思うんです。
 それで、次に法案の提出者にお聞きしたいと思います。
 政府は就労促進費で代替措置を取っていると言うんですけれども、それでも二万数千円が一万円とか五千円に減るわけですよ。それによって生活がどうなったということになると、例えば札幌の方で、十六歳になったときにもう支給停止になったと。子供の教育費を確保するために切り詰めるだけ切り詰めて、とにかく本当に自分自身の食べるものを削り、子供にもできるだけこう回したいと思うけれども十分に行かないと。で、ある男の子が、そのお母さんの子供が言うそうですよ。進学本当はしたいんだけれども、それは言わずに、お母さん、僕いいよと、いいからねというふうに言われるというんですね。こんなつらい話はないわけです。
 それで、母子加算というのは、一人親家庭であるがゆえに特別に必要な出費を補うためにあったもので、最低生活費に上乗せさせたものじゃないと思うんですよ。そういう意味で、こういうことが子供の貧困にももうつながっていくと、将来の行き先も決めてしまうということは本当に重大な問題だと思っていまして、この点についてお聞きしたいんですけれども、この子供の貧困をずっと連鎖させていくという問題をどう考えるのか。そして、今回の法改正の意義についてお聞きしたいと思います。

○委員以外の議員(小池晃君) お答えいたします。
 今御指摘がありましたとおり、母子加算の廃止は、母子家庭の子供の就学の機会も奪い、貧困の連鎖を拡大していると思います。
 先ほどより政府からきめの細かい対応が必要なんだという答弁が繰り返されているんですが、それは母子加算の上に更にきめ細かく加算をしていけばいいわけであって、母子加算廃止の理由にはならないというふうに思います。
 母子加算廃止に伴って、今御指摘がありましたように、政府はひとり親世帯就労促進費を導入いたしましたが、これは一万円ということで、母子加算二万三千二百六十円の半分にもなりませんし、そもそも今お話があったような病気や障害で働けない世帯には支給をされません。しかも、収入が三万円以下になると五千円に減額されるわけで、この不況の中で解雇が広がっていますけれども、収入の道が閉ざされると行政の助けも打ち切られるという、極めて矛盾した仕組みになっております。この結果、長男が修学旅行に行かないと言っている、高校は卒業させたいと思っているんだけれども、将来が狭まってしまうとか、あるいは生活の不安から高校二年の長男が学校をやめて定時制へ入ろうか悩んでいるという声も寄せられております。
 そもそも今回の母子加算の廃止ですが、消費実態調査を基にして、一般の母子世帯と比較して生活保護費の方が高いからという理由で行われたわけですが、これも先ほどから議論があるように、このデータそのものには様々な問題があって、根拠はもう完全に崩れているというふうに言わざるを得ません。仮に生活保護費の方が高かったとしても、憲法二十五条の最低生活保障の具体化である生活保護水準以下で暮らしている母子世帯が生活保護を受給できていないことこそ行政の怠慢を示しているものであって、母子加算を廃止する理由には全くならないというふうに思います。
 そもそも政府自身が認めておりましたように、母子加算というのは、配偶者が欠けた状態にある者が児童を養育しなければならないことに対応して、通常以上の労働に伴う被服費、片親がいないことにより精神的負担を持つ児童の健全な育成を図るための費用というふうにされていたのであって、貧困の再生産、貧困の連鎖防止が必要というのであれば、まさに母子加算の復活こそ必要だというふうに思います。
 付け加えれば、経済危機対策の中で最も苦しい人を応援することこそ求められる経済対策であって、先ほど九十億円という話もありました。よく言われるように、アニメの殿堂百十七億円ということに使うのが経済対策なのか、やっぱりそういうお金があるんであれば一番苦しい暮らしを強いられている人に使うべきではないか。総事業費一兆円を超えるという外郭環状道路一メートル一億円と、こういったところに経済対策でお金を使うというのは全く間違いであるというふうに思いますので、是非この法案を成立させたいというふうに思っております。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございました。
 今回のこの法改正で少しでも改善され、そして少しでも希望が持てるように、そのことを願って、質問を終わります。