<第171回国会 2009年6月17日 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第07号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、総務省が政策評価ということで出されたこともありまして、今回こういう形で調査会としてDV防止法の議論をできるというのは本当に良かったなと、いいことだなというふうに思っております。
 それで、最初に総務省の政策評価に関してなんですけど、神本先生が先ほど被害者や子供の情報管理の問題について御質問をされたのでちょっと重なりますので、私は被害者の住む場所の問題で、公営住宅の優先入居という問題です。
 それで、五十四の事業主体のうち、この評価によりますと、全く措置を講じていないというのが二事業主体で、一部しか実施していないというのが三十七事業主体と。それから、こうした住宅支援を受けられた被害者はわずか九%しかないということですよね。そういうのがあるというのは知らなかったという人がやっぱり非常に多いわけです。それで、今後受けたい支援というところに書いてあるのでは、被害者の七三%が住宅の確保だというふうに言っていて、確かにそうですよね、落ち着く場所がないと困るというのがありますから。
 それで、今後その優先入居を全体的に進めるためにどうしていくのか。本当は国土交通省に聞きたいと思ったら、今日はいらっしゃらないと。呼んでおけば良かったなと、ちょっと今残念なんですけど。これを一体どう対応していくのか。必要な情報提供を行うことも併せて、どう取り組むのかということについて、お答えをまずお願いします。
 どこになるのかな。国土交通がいないから。

○副大臣(増原義剛君) 公営住宅の話ですか。

○紙智子君 そうです。

○副大臣(増原義剛君) 伝えておきます。

○紙智子君 どこも対応しないんですか。全体を総括してというのはないんですか。総務省は調査をしただけ。

○政府参考人(板東久美子君) 住宅の問題は非常に御指摘のように重要な問題であると思っておりまして、これにつきましては、先ほど御紹介申し上げましたDV法を基に作っております関係省庁の基本方針の中でも、その住宅確保の問題についての配慮を盛り込んでいるところでございます。
 ちょっと関係省庁来ておりませんけれども、これについては、自治体などでの優先的な扱いということを含めまして、また住宅の確保についての努力を政府としてもしていきたいというふうに思っておりますので、関係省庁に伝えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 やっぱり基本的なところだと思うので、そこはちょっとよろしくお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、各機関での被害者の対応についてというので、この評価の中に書かれてあるので見ますと、被害者が相談した機関に対しての満足度というのが出ていますよね。それで、それを見ると、福祉事務所、支援センター、共同参画センターという順番で満足度は高い方なんですけど、その一方、警察と人権擁護機関というのは不満であるというのが多いんですよね。
 やっぱり被害者の目線に立って対応していくということで、その必要な情報を的確に提供する、そういう課題も含めて、いろいろ問題を提起されているというように思うんですね。DV防止法と被害者の対応について、担当者も替わるので理解できないということもあるわけですけど、それはやっぱりちゃんと替わるごとに徹底してもらわなきゃいけないというように思いますし、この関係機関の研修についてもしっかりやっていただくということなんですよね。
 その際に、被害者やシェルターの関係者、最初に逃げ込んでというか相談に乗っているところなんかがすごく実情もよく分かっていて、研修をやる際には是非、被害者、当事者ということと、それから、そういうところでもう何件もそういうケースを相談を受けて解決しながらやっているというところの当事者を是非呼んでいただいて、そこで研修の際に当たらせてほしいという要望も上がっているんですけど、この点について、警察庁、今日来ておられますよね、それと法務省と、お願いをします。

○政府参考人(園田一裕君) ただいまの御質問は被害者に対する対応の研修の仕方だというふうに思いますが、当然、警察におきましても……

○紙智子君 その研修の仕方という前に、そういうふうな順番になっていると、不満が多いというところについてもちょっと認識を言っていただいて。
○会長(田名部匡省君) 了解を得て。速記取っていますので。

○紙智子君 はい。

○政府参考人(園田一裕君) 不満が多いという結果ということでございますけれども、先ほど数字にもございましたとおり、警察に対するいろんな配偶者暴力の関係の相談、非常に現在増加している状況にございます。そういう意味では、警察としてもこういう事案については、本当に事案の特性を踏まえて、被害者の立場に立って適切に対応していくという必要があると考えておりまして、いろんな研修、それから体制の強化、こういうものに努めているところでございます。
 特に、先ほど研修の問題で言われましたけれども、警察におきましては、この事案に対する研修については、基本的には警察官に採用したとき、それから各級、要するに階級が上がるごとに警察学校に入りますけれども、こういう段階ごとにこういうプログラム、配偶者暴力に対する対応の仕方とか、その事例等も含めて現在教育を行っているところでございます。
 それからまた、当然ながら、いろんな職場においても機会あるごとに、これを扱います地域警察官等々ございますので、機会あるごとに取扱要領とか、あるいは最近の不適切な事例とか、そういうものを紹介しながら研修を行っているところでございます。
 ただ、言われました当事者を交えてということについては、これはちょっとまだいろいろと、それぞれ、どういうふうなやり方があるかということもございますので現在のところ行っておりませんけれども、もしそういうことが適切だということであればまたいろんな研究をしてまいりたいというふうに考えております。

○政府参考人(富田善範君) 法務省の人権擁護機関では、全国の法務局、地方法務局及びその支局、三百二十八か所に人権相談所を設置して、配偶者からの暴力に関する相談を含め随時人権相談を受け付けております。また、全国共通ナビダイヤルの専用電話である女性の人権ホットラインを設置して女性の人権問題に関する相談に応じております。
 委員御指摘のとおり、私どもとしても相談者のニーズに的確に対応できるように常々指導しているところでございますが、不適切な対応がされた場合には、その日々の相談あるいは研修の機会に職員や委員に対する指導を徹底してまいりたいと思っております。
 法務省では、法務局、地方法務局の職員を対象とした研修、それから人権擁護委員に対しては新任委員研修、新任委員に対する委嘱時研修を始めとする各種研修を通じて人権擁護委員として職務遂行に必要な知識、技能の習得を図っているほか、男女共同参画問題研修等も行っております。委員御指摘の点も踏まえまして更にこの研修の充実を図り、相談者に満足していただけるような対応ができるよう、更に努力を重ねてまいりたいと思っております。


○紙智子君 じゃ、ちょっと、二回目ですけど。
 これからの課題の問題でちょっと更にお聞きしたいんですけど、先ほどもお話が出ていました若年層へのDV防止教育ということで、内閣府が平成十八年と十九年に全国の九府県市でDV予防教育の委託調査をやられていると思うんです。
 自治体の経験で、若年層の中にデートDVが広がっているという状況も明らかになったというふうに思うんですけど、その辺のところで、状況と対策というところでちょっと簡潔にお願いしたいと思うんです。

○政府参考人(板東久美子君) 恋人間の問題につきましては、お手元に配らせていただいております実態調査の中にも、これは若い方々を含めて、結婚していない相手との関係において暴力被害があったかどうかということについての問いがございますので、その辺りのものについては調査をしているところでございます。
 また、自治体の方で、先ほどお話がございましたモデル事業などを通じて関係のところに少しアンケートを出したりして実態を把握しているというケースはお聞きしておりますけれども、ちょっと今手元に資料がございませんので、どういう調査などをしたかというのは、ちょっと残念ながら、今御説明させていただくことはできないかと思います。
 今御指摘ございましたように、やはり若い人たちにおいても、こういった交際相手などとの関係で暴力の実態というのがかなりあると。それから、最近におきましては、携帯電話などを使って相手を拘束したり、あるいは相手の携帯を破壊したりということによって非常に精神的なダメージを与えるというような新しい形での、広い意味での精神的な暴力というのが出てきておりますので、こういったところも含めまして、やはり予防教育の中で若い人たちに対する指導というのを充実していかなくてはいけないというふうに思っているところでございます。

○紙智子君 委託研究を行った自治体の経験のところでちょっと読ませていただいたわけですけど、デートDVの相談を受けている先生が半数近くいる、そして付き合ったことのある高校生の三分の一が何らかの暴力を受けたことがある、身近で暴力を見聞きした経験も二割の人があると。
 そういう形で広がっているということがありますし、最近のニュースの中で、先週末ですか、大阪の富田林市で男子高校生の殺人事件が起きて、それで、詳細はちょっとよく明らかになっていないんですけれども、殺された男子高校生が女子高校生を困らせているということで、加害少年がそのことを感じていたということなどを、報道を聞くと背景にそういったことなんかもあるのではないかというふうに思うわけですけど。
 そういった意味で、先ほど千葉先生もお話しになっておられたように、DVの本質についてきちんと知らせて対応できるような教育というのが非常に大事で、やっぱりDV防止法で予防教育の義務化ということについてはきちんと位置付ける必要があるんだと思うんですよ。
 今、DV法は配偶者というふうになっているんですけど、こういうような広がりがあるという中では、法改正が必要になってくるんだと思うんだけれども、やっぱり配偶者等というような形で含めていくというふうにする必要があるんじゃないのかなということも思うわけです。
 それと、配偶者暴力の相談支援センターの機能のうち、特に自立支援にかかわる役割は民間が多くを担っているわけですよね。例えば、一時保護の後の、ステップハウスというんですか、その後も母親と子供同士が集まれる、さっきちょっと福島さんがお話もされていたんですけれども、そういうところもあって、長期にやっぱり取組を支援していける、一時保護の委託というだけじゃなくて、自立支援に向けたトータルな被害者に対する支援を既にずっと実績も持っている民間に委託することも検討していいのではないのかなというふうに思うんですけれども、この点について、これは厚生労働省になるんですかね、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(北村彰君) お答え申し上げます。
 婦人相談所などに一時保護された後の被害の回復あるいは自立に向けた支援の関係でございます。一時保護所におきましていろいろな自立生活に向けた様々な支援に取り組んでいるところでございますけれども、さらに退所後の支援ということでございます。
 いろいろな施設への入所支援あるいは入所した後の自立支援、それから就業・自立支援、そういったような各種の支援を行っているところでございます。そういう様々な関係機関による包括的な支援を効率的に行うために、先ほどお話にありました民間団体を含め関係機関のネットワークの構築をしていく、こういうことも大事だと思っておりまして、私ども、そういったネットワーク構築のための事業なども実施しておるところでございます。
 こういったような様々な取組を通じまして、個々のDV被害者の状況に応じましてきめ細かな自立支援の一層の充実に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 是非そこのところをもっと踏み込んでやっていただきたいというふうに思います。
 それで、保護命令制度についてなんですけれども、これまでも一応拡充はされてきているんですけれども、接近禁止命令で六か月、住居から退去で二か月という期間を延長をしてほしいという要望が上がっているわけですよね。再申請をした場合にやっぱり認められにくいというのが当事者の実感でもあるということなんですね。それで、被害者が加害者から逃れて体を休めて安定をさせる、再出発をしていくと。そのためにはやっぱり保護命令の期間が短いという声があるわけです。
 やっぱり被害者のそういう立場にもっと寄り添っていかなきゃいけないだろうと思うんですけれども、民間シェルターの皆さんなんかはそういう意味ではずっとやってきていて、そこでの財政支援もやっぱりもっと強める必要があるんだろうと思うんです。
 それで、加害者対策も必要ですし、是非この調査会で来年に向けて、このDV防止法の改正に向けて、さっき言った点も含めてまた取り組んでいけたらいいなと、是非やっていきたいということを申し上げまして、私の方の質問を終わります。