<第171回国会 2009年5月26日 予算委員会 第25号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 政府の新型インフルエンザ対策の基本的対処方針が改定をされましたが、その中に経済的な損失への対策は触れられておりません。しかし、非常に深刻な事態がなっていて、支援が求められています。とりわけ関西中心に、修学旅行や一般旅行を含めて二府四県で三十六万人のキャンセルが相次いでいると、四十三億円の損失ということです。
   〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕
 それで、学校側のキャンセル料が発生した場合には国としてその負担をするということでの方向が報道されているわけですけれども、まずこれを与謝野財務大臣に確認をしたいと思います。お願いします。

○国務大臣(与謝野馨君) 先生御指摘のように、新型インフルエンザ発生のため学校において修学旅行の中止などの対応を取った場合に自治体等にどのような損失が生じるのか、まず文部科学省において実態を十分に把握する必要があると考えております。
 その中で、例えば公立学校の修学旅行の中止に伴うキャンセル料を各自治体の判断により自治体の負担とする場合には、現在御審議をいただいている補正予算の中に盛り込まれております地域活性化・経済危機対策臨時交付金総額一兆円を活用することも可能でございます。

○紙智子君 旅館関係も大変でありまして、これは近畿の国際観光旅館連盟やそれから全国旅館生活衛生同業組合からも陳情が上がっているわけです。こういう事態によって資金繰りが悪化をして倒産することがないようにということで緊急融資などの対策を求めているわけですが、これに対しての国土交通省とそれから経済産業省の対策について大臣にお聞きしたいと思います。
 それと併せて、商店街、飲食業など全く人通りがなく客が入らないというので、これも何らかの対策をという要望が上がっていますので、経産大臣に併せてお願いします。

○国務大臣(二階俊博君) 今議員がお尋ねの近畿地方、いわゆる関西の被害状況というものは日に日に増えておるような状況であり、各県知事やそれぞれの地域からもいろいろと要望が相次いでいるところであります。
 昨日十七件のキャンセルがあったという兵庫県の温泉旅館の報告でありますが、本日既に四十件に増加していると。そして、関西方面からの受入れ予定であった修学旅行の延期、中止が相次いでおるということで、これは大分県の旅館業からの悲鳴が聞こえてまいります。こうしたことは随分たくさん各方面に起こっておるわけでございまして、今この病原菌の発生等がまだまだそういうことに及んでいない地域におきましても、旅行、観光の面で風評被害といいますか、少し過剰な対策のために客が全く減ってしまっておるというような事実が発生しておるわけであります。
 今、与謝野大臣からもお答えがありましたが、私も、ちょうど三日ぐらい前であったか、関西地域の自民党の国会議員がお集まりの席にお伺いしてまいりましたが、やはり関係者の皆さんも大変な状況を訴えておられるわけであります。
 私は、この状況は災害が急に発生したのと全く同じことでありますから、それでなくても経済界が非常に深刻な打撃を受けておるそのときに追い打ちを掛けるようにこのような問題が発生したわけであります。与謝野大臣とも十分連携をして、あらゆる手段を講じて関係業界を救済できるように努力をしたいと、このように考えておるところでございます。
 商店街は、人通りがもうぱったり消えてなくなったような地域もあるということ。京都あるいはその関西の各方面の商店街からそういう声が寄せられておりますが、これらにつきましても取りあえずは融資の面で対応していけるようにまず考えていきたい、そこから先の対策については、今後またいかなる対応ができるか考えてみたいと思います。
 かつて沖縄でも問題が発生したときに、沖縄への観光客云々ということが、間違った報道が、報道といいますか連絡がなされたものですから、これまたぱたっと観光客が途絶えた例があります。
 ですから、そんなことのないようにするために、私どもは、過剰な反応、そして風評被害、そういうことに対しても、やはりお互いに心を痛めながら対応していくということが大事だと思っております。

○国務大臣(金子一義君) 財務大臣、経産大臣がもう答弁させていただきましたとおり、観光地は残念ながら大変な影響を受けている、特に関西圏、京都も大変な影響を受けているというお話をお地元、首長を含めて伺っております。
 そういう中での資金繰りでございますが、日本政策金融公庫融資といったような、政府系金融機関で特別相談窓口を設けていただいております。それから、財務大臣が先ほどお話ありました、今御審議いただいている補正予算案の中に、地域活性化・経済危機対策臨時交付金、これも修学旅行のキャンセル代にも活用できるというふうに聞いておりまして、これが実際に使えるように各関係省庁とも相談してまいりたいと思いますし、旅行業者や宿泊業者にもこういう制度の周知を徹底してまいりたいと思っております。

○紙智子君 言わば行政措置によって要請が上がって中止になったという経過がありますから、緊急融資というだけではなくて、やはり損失補てんなども含めたきめ細かい手当てを是非考えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、今回の運用指針の基本的考え方で、目的のところに、感染の更なる拡大を防ぐことと、それから、重症化しやすい人が感染して重篤な状況になることを防ぐということに努力を集中するという、これは当然のことだというふうに思うんです。
 ただ、海外でも感染して亡くなっている例、特に妊産婦の問題が明記されていないというのは問題だと思うんです。妊産婦は免疫力が落ちていて、感染した場合には重症化しやすいわけで、妊産婦が重篤な状況にならないように政府としてもこれは努力を傾ける必要があるというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(舛添要一君) 基礎疾患を有する者などということで、この方針を決定したときに都道府県に対して妊婦がその中に含まれますよという通知を既に出しているところでありますので、今後とも周知徹底したいと思います。

○紙智子君 などでは駄目だと思うんですね。その一連の中の並列的にということではなくて、やはりアメリカの事例からいっても、その分析がされていますけれども、非常にやっぱり深刻な事態になっているわけで、WHOも特に注意すべき感染者として妊婦とそれから糖尿病患者を挙げて、そこにはタミフルなどのインフルエンザ治療薬の早期投与を明記しているわけですよ。そういうやっぱり位置付けじゃなければいけないんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(舛添要一君) アメリカで亡くなった妊婦は一人だけです。私は様々な専門家の意見を徴した中に、妊婦を入れるかどうかで反対の意見もございました。しかしながら、CDCもWHOもそういう見解がありますから、列記の中に確実な糖尿病とぜんそくを入れて、それ以外については、こういうことも注意しなさいということは全医療機関に通知をしておりますので、そしてまた今この場でお答えしていますので、妊婦の方々、大変それは注意していただきたいと思います。

○紙智子君 是非、位置付けているというのであれば、きちっと書くということを今後検討もしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、透析医療の問題についてなんですけれども、この間、日本透析医学会からも要請が出されています。新型インフルエンザに感染した慢性透析患者の受入れについて、段階を踏まえて、予想される事態に対応できる透析医療体制について検討して必要な内容を要請していると思うんですけれども、どういう中身で要請されているのか、そして、それに対する対応についてお答えください。

○国務大臣(舛添要一君) 透析患者の方も当然基礎疾患を有する方々の中に入ります。とりわけ病院の診療において新型インフルエンザのウイルスに暴露されないような形の体制を取っていただきたいと。
 その他様々な防護服の問題とかいうようなことも御要望ありますけど、基本的には、今私が申し上げたように、万全の体制を取って新しい新型ウイルスに感染しないように、これは医師会含め関係団体に要請をして万全の体制を整えたいというふうに思っております。

○紙智子君 透析の患者さんは治療を止められないですよね。とにかく続けなきゃいけないということがありますし、感染時に重篤となるということではそういうハイリスクを負っていますから、是非関係者の皆さんの話をよく聞き取って対応していただきたいということを申し上げたいと思います。
 それから、重篤化を防ぐという点でも予防ワクチンの製造が急がれるわけですけれども、これ見通しについてはどうでしょうか。

○国務大臣(舛添要一君) 五月末にアメリカのCDCからワクチン製造用の株が届きます。CDC、WHO、季節性のインフルエンザとこの新型インフルエンザでどれぐらいの比率で製造するのか、まだ結論を出していません。日々刻々情勢を見ながらこの比率を決めたいというように思っていますけれども、六月上旬ぐらいには何とか決めたいということで、今専門家の知見を集めているところであります。

○紙智子君 遅くとも毒性が強まって第二波が来ることを想定してそれに間に合うように全力を挙げていただきたいというふうに思います。
   〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕
 それから、ワクチンの配布も、基礎疾患や妊産婦に優先するなどの社会的コンセンサスをこれやはり得られるように、事前に政府として取組をしておく必要があると思いますけれども、これについていかがですか。

○国務大臣(舛添要一君) これはどういう順序で接種するか、これはやっぱり国民的議論が必要だと思います。若い人からの方がいいのか、お年召された方がいいのか、いろんな議論があると思いますんで、これは国民的な議論をしたいと思っております。

○紙智子君 発熱外来について、今回患者が増加した地域では一般外来でも受診できるように広げたわけです。それによって新型インフルエンザが疑われる患者と一般の患者が交わらないようにということなんですけれども、そうすると、例えば窓口では当然マスクをして対応しなきゃいけないとなるんですけれども、不可欠のところで、医療機関でマスクが手に入らないという事態が起こっているわけです。
 こういうところへの対策を、どのように対策をされているのか。

○国務大臣(舛添要一君) 本当にこのマスクの不足というのは、私も実際町で、買いに行ってみて一軒だけしか在庫あるとこなかったというようなことがありますんで、これ関西の首長さんからも要請を受けております。メーカーさんにも至急増産するようにということを申し上げてお願いをしておりますし、例えば兵庫県、これ非常に足りないということで、一万三千個、マスク含めて個人防護具も厚生労働省から送付したところでありますんで、必要なところには必要なマスク含めて防護具が行くように今後とも努力をしたいと思っております。

○紙智子君 一番必要なところに迅速に行き渡るということで是非対策をしていただきたいと思います。
 それから、大臣は、日本は島国であるという地勢上から日本の検疫の有効性ということで強調をされていました。それはそのとおりだというふうに思うんですね。
 同時に、四月二十八日の、これは閣議後の会見で、検疫官の数が足りるのかどうか、非常に懸念を持っている、専門的な知識と能力がないと検疫官は務まらず、急に増やすわけにはいかない、どういう形で各地にいる検疫官を集中させたらいいのかというふうに語っておられました。
 今回、一部で、検疫は無駄だとか、あるいは必要ないかのような議論もありましたけれども、これからのことを考えますと、やはりその検疫を有効にするためには、一つは体制の抜本的な強化ということと、それから必要なボーダー規制もされなければいけないというふうに思うわけです。
 それで、想定される第二波、強毒性のH5N1タイプの新型インフルエンザでは人為的被害というものはもっと甚大になるわけで、そういう中で三百六十人体制に戻しているわけですけれども、そのままでいいのか。それから、今後に向けて検疫の有効性について、これも国民的なコンセンサスを得る努力を政府として行うべきだと思いますが、これについてお聞きしたいと思います。

○国務大臣(舛添要一君) 私は検疫は一定の有効性があると思っています。検疫を緩めた後も、乗務員、これ機内発症の可能性ありというんで機内検疫をしました。昨日も、ブースの検疫でアメリカ国籍の方二名でしたか、これを発見することができました。
 そういう中で、検疫官の話ですけれども、国全体の定員削減、検疫所全体で昨年度から今年度にかけて十八人の削減ということでありますが、その中で十人何とか増やしております。これは医師や看護師の免許を持った方々にこれまで応援してもらいましたけれども、やはりこういう危機管理に対して、国民の安心と安全を守るためにきちんと人を手当てするということは重要だと考えておりますので、今後そういう努力をしていきたいと思っております。

○紙智子君 終わります。