<第171回国会 2009年4月15日 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第05号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 地域コミュニティーの再生をテーマに滋賀県の調査や参考人からの意見を聴取してきましたが、長野県の小川の庄の取組や栄村の取組、宮城県の鳴子の米プロジェクト、由布院観光協会などを始め、それぞれの地域にある資源を生かし地域を元気にする取組を行うなど、厳しい条件に立ち向かって地域の暮らしを守るために自治体や住民自身がネットワークをつくって様々に努力をされてきた実践を聞いて、とても感銘を受け、学ばされました。
 同時に感じたことは、なぜ地域コミュニティーの再生が課題となる状況が生み出されたのかということです。
 地域で共同する力、その機能を維持するには、前提としてそこで生活する人々の暮らしが維持できる条件が整っていることが不可欠です。参考人から、危機感を持ってほしいという声が出されましたが、生活権や生存権が保障されない地域が拡大していることが、地域コミュニティーの維持が困難になる背景にあります。私たちはそこに目を向けるべきだと思います。
 限界集落の問題は言うまでもなく、病院がない、医者がいない、百キロ以上走らないと産科がなく子供も産めない、公共交通機関がなくなり買物も困難になるなど、ここ数年間で住み続けられなくなった地域が多く発生をしています。都市やその近郊でも、高齢化し限界集落化した団地での孤独死や、仕事をなくし収入の道を断たれたまま、だれにもみとられずに亡くなるケースもあります。特に地方の疲弊は深刻です。地域での生活を維持する基礎的な条件が後退、崩壊することで、地域での生活が立ち行かなくなり、地域そのものの維持が困難になっています。そのような窮状というのは、地域経済の崩壊、そして地方財政の崩壊、地域社会の崩壊ということが重なり合って生み出されています。
 農林漁業など地域の産業の衰退に伴う若年人口の流出と高齢化は、世帯数の減少をもたらし、集落機能の低下によって地域の共同生活を続けることができなくなっています。働く場があることが住民の定住や生活継続の基盤になるわけで、これは地方財政力にもかかわる問題だと思います。
 住民生活を支えて自治体財政の柱の一つになってきた地方交付税が大幅に削減され、公立病院の統廃合など住民サービスの切捨てにつながっている事態もあります。民間の病院や介護事業者が少ない農村部では、住民の暮らしを支える公共サービスの役割が大きいわけですが、財政危機による公共サービスの縮小が直接的に住民の生存権や生活権を脅かしています。
 地域づくり、地域再生のためには、参考人の皆さんがそれぞれ陳述されたような地域住民自身の取組、NPOや企業などと住民共同の力が必要であることは言うまでもありません。地域の実情に合った形で個人やNPOが育っていく必要があります。しかし、それは国の責任や自治体の責任をあいまいにして、財政が大変だからその肩代わりとしてあるものではないと思います。地域の共同や非営利協同を生み出す地域自体の力が低下しているのが現実であって、国や自治体は、住民任せにするのではなく、将来にわたってその地域に人が住み続けられるための政策やサービス提供、地域住民の生活が再生産されていくような仕組みの創設が必要だと考えます。
 まず一つは、地方財政の保障による地方自治体の役割という点で、住民の福祉の増進を図るという地方自治体の本来の使命と役割を発揮できるための財源の保障が必要です。
 地方交付税については、一方的な削減や制度改悪ではなく、制度本来の財源の保障、調整機能の充実によって住民の福祉や教育、暮らしを保障する総額を確保すること。それぞれ違う地域の実情に合った住民共同を支える行政の支援策が必要になります。地域の諸問題を調査分析をして、その政策的支援の可能性や方策を住民とともに探ることや、政策、計画策定に住民の参加を求め、連携し、ネットワークを構築していくことも必要だと考えます。
 地域経済の再生という点で、特に農業のことについて申し上げますと、鳴子の米プロジェクトに取り組んだ結城氏も指摘をしていましたけれども、今、食料生産を支えているのは農村の高齢者だと。
 この現実を受け止め、農業再生のためには、現に今農業を担って頑張っている農業経営を安定させるようにするとともに、若い働き手を育てることが待ったなしの課題になっています。何より急がれているのは、やはり農業経営が成り立つ再生産可能な価格政策、所得政策であり、小さな家族経営を含めて多様な形態の農業を支える国の政策が求められていること、新規の担い手を増やし育てるための財政措置を伴う対策が急がれていると思います。
 三つ目に、社会保障、地域医療の再生の問題ですが、医療の確保は地域生活の基礎的な条件ですが、それが大きく後退しています。
 地域医療のネットワークシステムづくりの重要性が示されましたが、医療資源自体が極端に乏しい地域が多数生み出されていることに緊急に対応しなければなりません。医師、看護師不足による病院や病棟の閉鎖は地方で特に深刻ですが、公立病院の改革ガイドラインは地域医療の後退を一層加速させる可能性が強くあります。公立病院の困難は、医師不足に加え、診療報酬の引下げ、公立病院に対する交付税の引下げなどが原因となっています。効率や採算面からではとらえられない、住民の人権や健康を守る観点から評価すべき公立施設の機能や役割を評価すべきだと。
 片山氏からは、社会保障費、医療費の抑制について、こんな愚策はないと厳しい批判が出されましたが、地域再生には抜本的な医療政策の転換が必要です。
 孤立、孤独の問題、この点では、多摩ニュータウンのように、住民の主体的な活動として孤立・孤独予防活動がされているところは少なくありませんが、地域で孤立し、健康問題や貧困などの問題を抱えた住民を把握し、積極的にアプローチする公的なシステムが地域社会に備わっていません。
 福祉亭の元山氏も、セーフティーネットづくりには福祉亭の力だけでは小さいので、専門家や公的な組織との連携の必要性を言われました。保健や社会福祉の専門職や行政職が孤立、孤独に陥っている住民を発見し、事態が悪化する前に積極的に対応するシステムの構築、住民の福祉活動と連携することが必要です。
 住民の見守り活動だけではなく、社会保障の制度からの貧困や低所得者の排除の構造を解決すること、保健、福祉の専門職の地域活動を政策的に保障することが重要だと考えます。
 その他、雇用、所得の保障、住まいの問題、移動の手段、交通機関の問題など、地域で暮らしを支える課題はたくさんあるわけですけれども、地方自治体や個人、NPOなど、地域での自主的、先進的な取組となる土台を支えるというのが国の果たすべき役割だと考えます。
 終わります。