<第171回国会 2009年3月25日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第03号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 この二月に当委員会の派遣で根室に行きまして、現地の皆さんから様々な要求をお聞きしました。それで、まず、このときの北隣協の要望書から、北特法の七条関係と周辺海域漁業についてお聞きしたいと思います。
 北特法、今もありましたけれども、北特法の七条のところに、隣接地域の市や町が国から補助金等を受けて行う事業のかさ上げの要件が規定をされているわけですけれども、これ、根室市それから別海町についてはこれまでかさ上げ対象とは一度もなっていないわけです。前の根室市長も、四年前でしたけれども、この委員会に参考人として来られて、この七条が市の実情に合っていないということで改善を強く要請された経緯があります。
 それで、国土交通省は現状についてどのように認識されているか、まずお聞きしたいと思います。

○政府参考人(奥平聖君) お答え申し上げます。
 今先生おっしゃられたとおりでございます。北特法の七条に特定事業のかさ上げ措置の規定がございます。これは隣接地域一市四町が行う特定事業に対しまして、集中的かつ短期的にそれらを行う際に急激な負担増大を緩和するために設けられている措置でございまして、地元負担額が当該自治体の標準財政規模の一〇%を超える場合、その適用になるという規定でございます。
 この措置につきましては、これまでその要件に該当しました三町、中標津、標津、羅臼町でございますが、合計で約六億八千万円のかさ上げ実績がございまして、所要の成果を上げてきていると認識してございますが、先生御指摘のとおり根室市並びに別海町に関しましてはこれまで適用実績がないという実態でございます。
 なお、最近でございますが、平成十七年度から十八、十九年度、三か年間につきまして適用になる市町がないというのが最近の状況でございます。
 この理由としましては、近年、地方財政が逼迫しておりますとか、あるいは公共事業そのものが全体が縮減していると、こういう中で当該一市四町が自ら行う特定事業そのものが少なくなってきているというような状況の中で、このかさ上げ措置の適用が少なくなっているのではないかというふうに考えてございます。
 以上、現状認識でございます。

○紙智子君 ですから、やっぱり財政規模の一〇%というのはなかなか大規模な、人口も多いし財政規模が多いところは届かないわけですよね。だから制度はあっても使えないということできていたわけですけれども、現地の人たちは何かこれ、特別、領土のための補てんのためにというか、そこを応援するための制度というふうになっているけれども、全然そういうふうな意味合いを成さないということをかねてから言われていたわけですよ。
 それで、私も何度か取り上げてきたんですけれども、お話が先ほどありましたように、今超党派の議連でこの法改正が必要だということで検討を開始していると。与党の中で今それをやっているという話もありましたけれども、そういう中で、やっぱりこれを機に国土交通省としても自治体ごとの財政状況に応じてかさ上げか、あるいはさっき交付金という話もありましたけれども、要は現地の人たちから見ると沖縄並みにもっとやっぱり引き上げてほしいというのが痛切な声なわけで、そこのところ是非積極的に対応していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(奥平聖君) 今のような実態でございますので、現時点におきましては国交省といたしまして、この現行のかさ上げ措置の趣旨が生かされるようないろんな事業の進め方の工夫などをしまして、北海道や関係市町と十分相談しながらこの措置が活用されるように努めてまいったところでございますけれども、御指摘のとおり北隣協の要望の中にこの北特法の改正、さらに、その中に七条の項目につきまして枠組みの改正という要望がなされております。要望の内容を十分踏まえまして検討してまいりたいと考えてございます。

○紙智子君 本来、議員立法ということがあって、これまで質問のたびにそれは議員立法でありましてということだったんですけれども、やっぱりやむにやまれず議員立法でもって作ってやったということがあるわけで、本来、やっぱり領土に絡む問題ですから国が積極的にもっとやるべきだというふうに思います。
 次に、ロシアへの入漁料の問題についてお聞きします。
 日ロのサケ・マス漁業交渉での昨年のロシア二百海里の入漁料というのは約三十億円だったわけです。入漁料の負担が漁業者の経営を圧迫しています。〇九年、今年度の交渉の経過について、昨日、日本の二百海里のところが妥結したと聞きましたけれども、経過について、そしてこの間の漁業者負担について御説明いただきたいと思います。できるだけ短くお願いいたします。

○政府参考人(本村裕三君) お答えを申し上げます。
 本年の日ロサケ・マス漁業交渉につきましては、我が国二百海里水域内のロシア系サケ・マスに関する交渉が、日本時間で昨日の夕方でございますけれども、妥結をいたしました。漁獲量は二千八百五十五トン、漁業協力費は三億六千四百万から四億二千五百七十万の範囲とするなどの内容でございまして、こういうことで合意したということでございます。それから、引き続きロシア二百海里水域のロシア系サケ・マスの漁獲に関する政府間協議が開催されているところでございます。
 この日ロサケ・マス漁業交渉につきましては、委員御指摘ございましたように、この十年間を見てみますと、自国資源の活用についてのロシア側の関心が非常に強いということなどもございまして、毎年大変厳しい交渉が行われておりまして、漁獲割当て、操業隻数が減少しております。また、漁業者の入漁料の負担が増加しているという実態にもあるわけでございます。
 これから交渉もございますけれども、私どもといたしましては、関係漁業者の置かれております非常に厳しい状況を十分踏まえまして、またその要望も踏まえつつ、入漁料の水準、また漁獲割当て量等の操業条件につきまして、安定した操業の継続が可能となるようにロシア側に求めてまいる所存でございます。

○紙智子君 今御説明ありましたけれども、日本の二百海里内についても漁獲量が更に減って、一方でロシアに払う協力金が引き上げられているということですよね。それから、ロシアの二百海里内の操業についてもこの十年間の話がありまして、ちょっと出してもらったので一覧表で計算してみたら、漁獲割当てでいうと五七%減っているわけですよ。半分近くに落ち込んでいるし、操業隻数は四割に減っているんですね。それで、入漁料も大体そのぐらい減っているんだから四割、五割減っているのかなと思ったら、二五%しか減っていないんですよ。
 だから、単純計算で見ると、一隻当たりの負担額というのは、十年前には四千万円ぐらいだったのが今七千万円ぐらいなんですね。だから、本当にどれだけ重くなっているかということですし、決められた隻数すべてが出漁するわけじゃないので、去年のように燃油の関係で出漁できない隻数が出てくると更に一隻当たりの負担が増えるわけですよ。
 領土問題が未解決のために、言わば限られた領域の中で操業しなきゃいけないと。近年、資源も減っていて、水揚げの減少というのは地域経済をますます冷えさせてきているわけですよね。
 ですから、そういう中で、領土が不法占拠された中での漁業者への負担ということでありますから、やはり国の責任で何らかの補てん策を考えるべきじゃないかというふうに思うわけですけれども、担当大臣としての御所見をお願いいたします。

○国務大臣(佐藤勉君) 今先生からの御指摘にございました件でございますけれども、基本的に受益者である漁業者が負担すべきものであるというふうに答えが返ってまいりました。国としての直接助成をすることは困難であるというふうに承知をしております。
 水産庁において、入漁料の水準や漁獲割当て量等の操業条件について、安定した操業の継続が可能となるようにロシア側に求めていく方針であるというふうに伺っておりまして、私といたしましても、引き続き交渉の行方を注視してまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 領土交渉でやっぱりどれだけ頑張るかということなんですけれども、見ているとじりじりじりじりともう縮小されているというのが現実ですから、そこは本当に心してやってほしいことと、やっぱりその下で損害を受けているわけですから何らかの温かい対策が必要だというふうに、これも繰り返し言っていますけれども、またそのことを繰り返し言わさせていただきます。
 それから次に、法務局の根室支局と中標津出張所との統合問題についてお聞きします。
 根室支局には、北方四島の歯舞群島、色丹島、国後、択捉島に居住していた元居住者の戸籍副本を始め戸籍関係書類の一部が保管されていますけれども、政府の行革方針の下で、この法務局根室支局を中標津出張所と統合して、根室支局を廃止する方針が出されているわけです。根室支局にこの戸籍が保管されているということは、何よりも元居住者を始め北方領土返還運動に携わる多くの関係者の支えになってきたわけです。
 法務局の根室支局の存続を求める要望が国にも上がっているというのは大臣も御存じだと思います。大臣に登記簿をめぐる元居住者の深い思いについてお聞きしたいと思うんですけれども。
 これはいろいろ話がありまして、北方領土関係の登記簿というのは、国後、択捉それから色丹、得撫、占守、歯舞群島を含めて、土地でいうと百八十二冊、八千百四十八筆、建物で七十一冊、千九百十個、それで台帳は、土地で七十三冊、家屋で二十六冊、合わせて九十九冊と。
 この登記簿をめぐるエピソードというのは元島民や住民や関係者によってこれまで感動的に伝えられているんですけれども、敗戦の年に、当時、国後島に置いてあった根室区の裁判所泊出張所の書記として赴任していた浜清さんが、そのときの九月二日に、旧ソ連の進駐で騒然とする中で登記簿を安全に保管する道は根室に移すしかないということで決意をされて、上司に電報で指示を仰いだんですけれども、混乱していて回答がなかったと。それで、どんどんソ連軍は来るということで、それでソ連船と出くわす危険を覚悟して単独で船を雇って九月七日に根室に運んだと。元居住者の皆さんは、我々の財産の証拠を持ち帰ってもらって本当に有り難いと、もしそのまま置き去りにされていたらソ連軍によって焼かれてなくなっていたかもしれないということで感謝をされているということなんです。
 しかし、当時の状況から、この浜氏は上司から無断で引き揚げたことは許されないということで叱責を受けて実は辞職をされているんですね。しかし、当時の状況から、やっぱり決死の覚悟で根室に運んだというのは、これは本当に勇気のある行動だったんだということでたたえられているということなんですけれども、そんな大変な歴史を言わば現地で受け継がれてきたわけですよ。
 これに対しての大臣の感想をお聞きしたいのと、あと、ちょっと時間がないのでもう一点併せて聞きますけれども。
 私が言いたいのは、問題は、行政改革の名で機械的に法務局の統廃合を含めていいのかと。全国で唯一この北方四島の元住民の戸籍に関する登記業務の支局なわけです。我が国の領土返還運動の原点にこの登記簿が置かれているということに意味があるし、そこに住む人の感情や、やはり町の歴史や誇りというものを深く考慮すべきじゃないのかと。
 そういうことを含めて、まず感想と、それから大臣としてのコメントということでお聞きしたいと思います。

○国務大臣(佐藤勉君) 釧路地方法務局根室支局には北方四島に本籍を有していた方々の戸籍関係書類の一部が、北方四島とも関連が深い書類が保管されているというふうに伺っております。
 私も、先日訪れたときにこの話を資料館で切々とお話をいただいた経緯もございまして、よく感銘を受けたところでございます。根室支局が保管するこれらの書類は北方四島が我が国固有の領土であるということを示す資料であるとともに、当時、ソ連軍侵攻の混乱の中でこれらの書類を持ち帰った方々の御苦労をしのぶ貴重なものだと私自身は改めて感じているところでございます。
 いずれにいたしましても、法務省の組織の在り方については私の所管外でありますので答弁は差し控えたいというふうに思いますが、先生からのお話があったということは私からも法務省にお伝えをしてまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 終わります。