<第170回国会 2008年11月26日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第03号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、米海兵隊が陸上自衛隊や矢臼別演習場で行う実弾射撃訓練を今年から公開しないと北海道や別海町などの周辺四町に通知してきた問題について防衛省にお聞きしたいと思います。
 訓練が始まる事前に北海道と厚岸、浜中、別海、標茶町の四町でつくっている矢臼別演習場関係機関連絡会議が北海道の防衛局に五項目要請をしています。一つは訓練を固定化させず分散化実施する。二つ目は夜間の実弾射撃訓練を行わず日曜祭日の訓練は自粛。三つ目は情報の事前通知。規模や時間など詳細な訓練情報を早期に通知する。四つ目は安全管理、規律に万全の対応を期す。五つ目は騒音対策ということです。
 これに対して、訓練情報については今後ともできる限り情報提供に努力するという回答があったわけですよ。ところがその直後に、米軍から記者会見や地元説明を行わないと。訓練の公開を行わないと一方的な通知がされてそのまま訓練が始まったわけです。現地でも全くこれ無視されているということで強い怒りを持って防衛省に対して申入れをしているわけですけれども、防衛省はこの米側の通知をそのまま流したということでは米側のこういう一方的な対応に対して認めているということになるんじゃないですか。いかがでしょうか。

○政府参考人(井上源三君) ただいまお尋ねの矢臼別演習場でのいわゆる一〇四号線越えの移転訓練についてでございますけれども、アメリカ側はこの訓練にかかわります情報提供の方法を、これまでの訓練公開及び記者会見に代えまして、海兵隊のホームページ上に詳細な訓練状況を掲載をする、そして想定される質問回答を掲載をする、また、質問などがあればメールで対応するという措置に変更することとしたというふうに承知をいたしているものでございます。
 これにつきましては、地元の地方公共団体や報道関係者から、今回の米側の措置に対しまして、訓練公開、記者会見など訓練にかかわります情報の提供を求める要請がなされているところでございます。
 防衛省といたしましては、アメリカ側に対しまして、こうした地元地方公共団体などからの申入れにつきまして、地元の状況、問題意識を十分に説明をした上でその内容を明確に伝えているところでございます。

○紙智子君 ただ伝えているだけなんですか。ホームページで公開なんていうけどね、最初のところは日本訳になっていますけど、そのほかのところは英訳のままですよ。勝手に開いて読んでくださいなんていう失礼な話はないと思うんですよ。それに対して、ただ言われるままに、ああそうですかと言って認めちゃうんですか。おかしいと思うんですよね。
 現地は酪農地帯ですよ。だから、そもそも訓練自体やめてほしいと思っているわけですよ。そういうときに、住民の不安や懸念を少しでも解消するために詳細な訓練情報が提供されて、そして公開されるというのは、米側が行うべき最小限の責任だと思うんですよ。
 外務大臣にお聞きしたいんですが、こういう強い不信を国民、住民に抱かせるようなことを容認するのかどうかと。米側は通知を撤回して、本来訓練を公開するというのが筋だと思うんです。この訓練については、今年で十二巡目です。ほかの演習場で言うと一回から三回の計画中止があるんですけれども、矢臼別は毎回実施していて、この二年間は連続して矢臼別のみでやっているわけですよ。そうすると、訓練の分散、移転という前提が崩れて、結局矢臼別演習場に固定化されるんじゃないかという不安を道民は持っているわけです。
 しかも、沖縄の訓練と同質同量だと言いながら、この間、砲撃以外の実戦訓練、夜間訓練の強行、軍事展開期間の延長、更に前回から小火器の実弾訓練も追加して、今回から最新型砲による演習も強化していると。どんどんこれ拡大強化されているんじゃないかと思うわけですよ。地元の北海道からも今までどおりちゃんと情報公開させてほしいんだという要請がされているわけで、政府としてやっぱり米側にきちんと交渉すべきじゃないでしょうか。外務大臣、お願いいたします。

○副大臣(橋本聖子君) 現在、米軍が北海道矢臼別演習場で実施しております沖縄県の県道一〇四号線越えの実弾射撃訓練の移転訓練についてですけれども、先ほど防衛省の方からもお話がありましたけれども、米軍ホームページ上で訓練の概要等について公開をされているものの、これまでのところ、訓練そのものの公開や地元に対する直接の説明等は行われていないものというふうに外務省も承知をしております。
 ですけれども、地元からは訓練の公開あるいは直接の説明機会について御要望をいただいておりますので、私自身も先生と同じように地元でもありますので、その地元の状況というものをしっかりと勘案しながら、外務省といたしましても既に米側と要望を勘案するようにということで連絡を今取り合っているところでありますので、そういった努力はしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 十一月の十九日に北海道、それから宮城、山梨、静岡、大分県、関係県がみんなこの公開してない問題に対して情報公開を求めていますよね。要請しているわけです。今話しているところだというお話でしたけれども、やはり厳しく交渉すべきですし、それが訓練移転をやっぱり受け入れさせた政府の責任だというふうに思うんですよ。だから、そこをしっかりやっていただきたいというふうに思います。
 次、質問に移りますけれども、領土交渉についてです。
 それで、APECの首脳会議で日ロ首脳会談が行われて、メドべージェフ大統領と麻生総理の会談が行われたと。来年、一連の首脳レベルの会談を念頭にそこに向けて必要な作業をしていくことで一致したということなんですけれども、メドベージェフ大統領が解決を次世代にゆだねることは考えていないと、そういう解決の意思を示したということなんですけれども、その際、並々ならぬ考えが必要であるが、そのような考えは既存の文書から引き出さなければならないと述べたと。
 これ先ほども質問がされておりましたけれども、改めて確認をしたいんですが、この意味について、どういうことなのかということを外務大臣、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(中曽根弘文君) 先日のペルーのリマでのAPEC首脳会議の際に行われました日ロこの首脳会談、これは大変率直で、また内容の濃い意見交換が行われたわけでございますが、平和条約締結交渉につきましては、今回のこの会談では、今委員がおっしゃいましたように、メドベージェフ大統領からは領土問題の解決を次世代にゆだねることは考えていないと、そして首脳の善意と政治的な意思があればこの問題は解決できる旨の発言があったわけでございます。この発言は、今年七月のサミットの際にも行われました日ロ首脳会談、これに続けてメドベージェフ大統領から領土問題の最終的解決に向けた強い決意というものが改めて示されたものと私どもは認識をしております。
 そして、サミットの際の日ロ首脳会談でメドベージェフ大統領が示しましたこの領土問題の最終的解決に向けた今申し上げました決意というものは、これまで必ずしも事務レベルの交渉に反映をされていなかったということでございましたけれども、今回の首脳会談を経まして、今後、平和条約の具体的な進展が図られることを私たちは期待をしております。
 そして、十一月の五日に私がラブロフ外務大臣と会談をいたしましたけれども、そのときも、北方四島の帰属の問題を最終的に解決するために前進をすると、そういう決意で両外相は一致したわけでありまして、政府といたしましては、これらの一連の首脳の会談、また私との会談、外相会談、またこれから引き続いて両国の首脳会談が来年もまた行われると思いますけれども、ロシアとの粘り強い、また強い意思を持った交渉を行って一日も早い返還を実現したいと、そういうふうに思っております。

○紙智子君 私は、いろいろ新聞の記事等ありますけれども、楽観的、希望的観測ではやっぱり進まないというふうに思うんですね。
 これまでの交渉においても日本の側から譲歩してきた弱点もあるというふうに思っているわけです。歯舞、色丹というのは元々は北海道の一部だったわけです。千島放棄の条項の対象とはなり得ない島々だったわけです。それが、サンフランシスコ平和条約の批准の国会で、日本政府自身がこの千島列島の中には歯舞、色丹は含まれないと当時明言していたわけです。ですから、この二島については平和条約の締結を待つことなく速やかな返還を要求しても当然のものだったわけです。
 ところが、イルクーツク声明ですね、これで一九五六年の日ソ共同宣言を平和条約締結に関する交渉のプロセスの出発点を設定した基本的法的文書と確認をしたことによって、歯舞、色丹の引渡しについては両国間の平和条約が締結された後ということで明記された。これによって平和条約以前に歯舞、色丹の返還問題を解決する道筋を閉ざしてしまって、逆にロシア側に歯舞、色丹の返還を領土交渉の終着点にしようとの思惑に言わば根拠を与えるものになったという点では、我が党はイルクーツクの声明そのものは重大な後退であったというふうに指摘をしていたわけです。
 これまでの延長線のまま交渉を続けても新たな前進を開けるというふうには思えないわけで、交渉に当たって、やはりどういう大義やどういう論拠を持って臨むのかということが必要だ、大事だと思っているわけですけれども、そのことについていかがでしょうか。

○政府参考人(兼原信克君) お答えいたします。
 政府といたしましては、北方四島につきましては、サンフランシスコ平和条約第二条(c)項に言う千島列島に含まれていないというのが政府の立場でございます。この立場を踏まえまして、平和条約締結交渉に関しましては、日ロ間の合意文書として、ソ連時代の五六年の日ソ共同宣言、ソ連崩壊後、九三年の東京宣言、九八年のモスクワ宣言、二〇〇〇年の平和条約問題に関する日ロ首脳の声明、二〇〇一年のイルクーツク声明、二〇〇三年の日ロ行動計画、これを踏まえて粘り強くロシア側とこの北方四島の返還を目指して努力してまいる所存でございます。

○紙智子君 今の答弁ではなかなか、よく分からない答弁なんですよね。根本問題としてやっぱりはっきりさしておかなきゃいけないと思うのは、こうした問題が起こっている問題は、当初のスターリンですね、スターリンの体制の下で、領土不拡大の原則を踏みにじって一方的に千島、そして歯舞、色丹をソ連に併合してきたことから起こった問題なわけで、そのことというのはきっちり踏まえてやっぱりやっていくということを、薄めてしまったら駄目だし、このことをやっぱりはっきり持ってやっていかなきゃいけないんだというふうに思うんです。
 いずれ帰れる日を夢見て、本当にこの元島民の皆さんにとっては、もう既に年齢的には平均年齢が七十五歳ということで、もう余りにも長く待ち過ぎてきているということがあって、一日も早く希望を見出したいという思いでおられるわけです。
 それで、佐藤北方担当大臣も二十二日に行かれたということで、御覧になられたし、いろいろ御意見も伺ったと思うんですけれども、今、実は、私は是非お聞きしたいと思っているのは、そういう長年領土返還運動を担ってきた根室市にとって今大きな困難にぶつかっていると思うんです。それは、北海道が支庁再編で十四の支庁を九つの総合振興局とその下に五つの振興局に再編すると、そういう条例を、納得を得ないままというか、強行してしまったんですね。これは領土返還運動の拠点としての自覚を持ってこれまで先頭に立ってきた根室市にとっては大きな衝撃なんです。それで、領土問題というのは国の主権にかかわる問題で、この政府の基本方針の下で運動を支えてきた根室市が事実上振興局に格下げされるということは、当事者にとっては本当に納得いくものでないと思うんです。
 今回の支庁再編は拙速に運び過ぎたんじゃないかという批判もある中で、やっぱり私はいったんこれは撤回をして再検討すべきだと思っているわけですけれども、担当大臣として、現地の根室市が本当に元気に領土問題に引き続き返還運動を進められるように十分話し合って、そういう意見が尊重されるようにしていく必要があるというふうに思われませんでしょうか。

○国務大臣(佐藤勉君) 今おっしゃられるように、北方領土の返還運動は、これらの元島民の皆様方や後継者の皆様、そして根室支庁管内、区内の一市四町の関係者の皆様が先頭に立って全国に展開しているものと認識をさしていただいております。この根室支庁管内での活動は北方領土返還運動の中心的な役割を担っておりまして、この活動が維持、継続されることが北方領土返還の運動全体として重要だというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、北海道としても地元の理解を得る努力をしているというふうに伺っておりますし、道と市、町との対話を注視してまいりたいというふうに思っております。

○委員長(市川一朗君) 紙君、時間です。

○紙智子君 時間なので一言だけ。
 やはり財政問題だけでは片付けられない、国の主権が懸かった問題なので、やっぱり適切な意見を国としても言っていただきたいということを最後に申し上げて、終わります。