<第170回国会 2008年11月13日 農林水産委員会 第02号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 一昨日の大臣の発言を受けて、まず直面している問題から質問したいと思います。
 最初に、麦の計画輸入制度の食品衛生法違反問題についてお聞きします。
 農林水産省は十月三十一日に、輸入時に発生した食品衛生法違反の輸入小麦の調査結果についてというのを発表して、特に問題はなかったとされました。しかし、輸入小麦の事故処理報告書は十八件、総合食料局長に出されているにもかかわらず、食品衛生法違反としては四件しかないわけです。この差は何だろうかと調べてみましたところ、これらの輸入小麦はすべて厚生労働省に輸入届がされていないものでした。要するに、計画輸入制度に乗って輸入された小麦なわけです。
 計画輸入制度というのは、一度輸入届を出せば一年間はその都度の輸入届は出さなくてもいいというもので、これは輸入者にとっては便利な制度です。しかし、この制度でも食品衛生法違反のおそれがあるもの、ないしは食品衛生法違反のものは、厚生労働省に通知することが義務付けられているわけです。ところが、厚生労働省に通知されず同省が全く関知できないまま事故処理がなされていたわけです。
 その事故の中身を見ますと、お配りした資料を見てほしいんですけれども、その資料のように、油漏れで異臭がして焼却処分をしたとか、オイル漏れで廃棄したとか、明らかにこれ食品衛生法違反と思われるものがあるだけでなく、水ぬれとなっているものも食品衛生法上は腐敗、変敗ということで、明らかに法違反となっているものもあるわけです。当然、輸入商社はこれ厚生労働省に通知する義務があるものです。これは要するに、小麦の輸入に関しては食品衛生法違反が常態化していると言ってもいい状況だと思うんですね。
 そこで、厚生労働省にお聞きしますけれども、これに対してどう受け止めて、どのように対応を考えていますでしょうか。

○政府参考人(中尾昭弘君) お答えいたします。
 農林水産省が輸入小麦を事故品と認めた事例の中で、委員御指摘の、厚生労働省が食品衛生法違反と認めた事例に掲上されていないものがあるということにつきましては、現在、輸入通関手続が実施された検疫所に対しまして、関係の輸入者が食品衛生法の規定に基づく届出等の手続を適正に実施したかどうかということについて調査を現在行っております。厚生労働省といたしましては、この調査の結果に基づきまして適切な措置をとっていきたいと考えております。

○紙智子君 確認をいたします。調査をしているということですね。
 それで、ちょっと確認をしたいんですけれども、輸入業者が食品衛生法違反かあるいはそのおそれがあるという場合、これ厚生労働省に通告していなければ、これは食品衛生法の違反ということですよね。

○政府参考人(中尾昭弘君) 食品衛生法の施行規則におきまして、計画輸入の場合におきましても、事故が発生した場合にはその事故発生の届出をするということが規定されておりますので、輸入者といたしましては事故が発生したときには届出を行う必要があるということでございます。これは食品衛生法施行規則の定めに規定しておりますので、その施行規則の違反という形になるわけでございます。

○紙智子君 そこで、石破大臣にお聞きしますけれども、この問題は輸入商社と厚生労働省の問題だけでは済まされない問題だと思います。
 計画輸入制度というのは、これ厚生労働省に輸入届が出されないものですから、いつ船が入ってくるかということは分からないわけです。厚生労働省には知らされていないと。しかし、農林水産省は全部分かっているわけです。輸入小麦に事故があれば、まず真っ先に現場に飛んでいくのは穀物検定協会と農政事務所の職員が駆け付けると。それで事故小麦の仕分をするわけです。そのときに農水省が厚生労働省に連絡をすれば、一本でも電話すればこのような事態は防げるわけですね。もちろん、第一義的に義務報告があるのは輸入商社ですけれども、だからといって農水省は関係ないというわけじゃなくて、やっぱりそこを縦割りじゃなく双方が本当に一緒になって食の安全、安心をやっていかなきゃいけないということからしても、この事態というのはやはり直していかなきゃいけないことじゃないかということを思うわけですけれども、大臣、改善するおつもりはありますか。

○政府参考人(町田勝弘君) 事実関係でございますので、私の方から答えさせていただきます。
 輸入計画制度につきましては、先ほど委員御指摘のような制度でございます。しかしながら、厚生労働省の審議官から御答弁ありましたように、食品衛生法に基づきまして、商社は輸入時に事故が発見された場合には検疫所にその概要を記載した届出書を提出するということになっているところでございます。こうしたことから、水ぬれ等が発生した場合にも、検疫所に相談をいたしまして、食品衛生法上の事故に該当する場合にはその届出を行っているというふうに承知しております。これは私ども、商社にまた改めて確認したところ、きちっと相談をし、必要な場合は届出を行っている、これが一点でございます。
 また、計画輸入制度とは別に、検疫所におきましてはモニタリング検査を行っております。これが円滑に実施できるよう、毎月、農林水産省より厚生労働省に対しまして輸入計画の一覧を提供しているところでございます。

○紙智子君 お配りした資料をちょっと見てほしいわけですけれども、これを見ても、実際に現実の問題として食品衛生法違反というふうになっていないものの中でも、実際にこれ水ぬれ、ヒートダメージとか、それから廃棄になっているものですとかオイル漏れ、それから異臭、油漏れと。これは明らかに違反というものなわけですよ。ところが、これが実際には厚生労働省の方にはなかったわけですから、実際、抜けているということなわけですから、そういう事態を防ぐためには、双方がやっぱりお互いに連絡を取り合ってやるというふうに改善するべきじゃないかということを申し上げたのであって、大臣、これについて一言お願いいたします。

○国務大臣(石破茂君) 今局長からお答えしたとおりでございますが、委員御指摘のように、それをしなければ本当に安全が保てないかということを考えてみましたときに、やはり商社と検疫所、そこの連携きちんと保たれるということがまず第一義的に履行されるべきものであろうというふうに思っております。
 当省として、どのような観点からこれに更に有効な手が打てるか、それは検討をしてまいりたいと思いますが、第一義的に、やはりそれを行う商社が検疫所ときちんとした連携を取るということがまず果たされるべきだと考えております。

○紙智子君 商社が第一義的というのは、私もそれは否定しません、そのとおりです。ただ、実際に抜けることがあり得るわけで、そのときに現場にいる農水省が一言連絡すればそれで防げるということを申し上げているわけで、そこは是非検討いただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
 次に、事故米穀の不正規流通問題について質問いたします。
 大臣は一昨日の報告で、流通ルートについて解明できるものはすべて解明を終えたところであり、消費者の方々に心配をお掛けする状況はなくなったと考えていると述べて、これで幕引きであるかのような印象を与えたわけですけれども、これは私はとんでもないことだと思います。
 なぜなら、総合食料局長に提出をされた過去五年間の輸入米の事故処理報告書を入手したわけですけれども、この報告件数というのは四十六件、その事故数量は約一万一千トンあるわけです。これについて食用への転用がなかったのかどうかと、本当になかったのかということについてよく見なきゃいけないわけですし、この間も議論になっていましたけれども、ほとんど需要がないとされている工業用ののりや合板の接着向けの事故米について報告書はあるわけですけれども、この中で見ても、三笠フーズ向けの百六十五トンを含めて千八十六トンあるわけです。この事故米が食用に転用されていない保証がどこにあるのかと思うわけですね。
 それで、大臣はなぜ、三笠フーズのルートだとかはやっていると思うんですけれども、なぜこの事故米についての調べ、調査をやらないんでしょうか。

○政府参考人(町田勝弘君) 事故米に関します流通ルートの解明につきましては、三笠ルートを始めとする国が売却した事故米ルート解明にまず全力を尽くすということで、十月三十一日に流通ルートの解明状況の全体像を公表したところでございます。
 御指摘をいただきました商社ルートにつきましては、十一月中を目途に厚生労働省との連携の下で解明を進めているところでございまして、この点につきましては、十月三十一日に省の事故米対策本部で発表させていただいた進捗状況にも記載させていただいているところでございます。

○紙智子君 それじゃ、確認しますけれども、要するに、引き続きこうしたところも対象にして調査を進めるということでよろしいんでしょうか。

○政府参考人(町田勝弘君) 商社ルートの方につきましては、十月末には輸入小麦につきまして、先ほどお話しありましたように、食品衛生法違反についての事故品のものを対象に調査をしております。米につきましても、食品衛生法違反、このものについて商社ルートを今調査を厚生労働省さんと一緒に進めているところでございます。

○紙智子君 そうしましたら、次に、お配りした資料、@のところを見ていただきたいと思います。
 これは、平成十九年三月に出された総合食料局長通知で、物品の事故処理要領です。ここに、「事故品については、極力主食用に充当する」という記述があるということ。それからその次に、「主食用不適として認定した米穀(以下「事故米穀」という。)」という文書。それから、その隣の四十二ページの(2)のところですけれども、「事故米穀を主食用として卸売業者に売却する場合」という記述があることを発見をして明らかにしたわけですけれども、これは非常に反響がありました。この事故品については極力主食用に充当するという考え方ですね。
 これは資料Aの方をちょっと見てほしいんですけれども、これは昭和四十年のときの食糧庁長官の通知で物品の事故処理要領ですけれども、言ってみればこの当時の文書を踏襲して今日に来ているわけですけれども、その当初の文書にもない考え方なわけです。なぜこの考え方を十九年の文書に盛り込まれたのか、当時の総合食料局長の岡島官房長、今日来ておられますので、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(岡島正明君) まず、委員御指摘の資料、配られました資料の@の物品の事故処理要領、これは、そこにありますとおり平成十九年三月三十日付けで新たに通知したところでございますけれども、なぜこういうものを新たに通知したかと申しますと、先ほど資料のAにございました、昭和四十年に出されましたこの物品の事故処理要領、そこから平成十九年四月一日に実は食糧管理特別会計が廃止されて、新たに食料安定供給特別会計の設置、あるいは農産物価格安定法の廃止に伴い所要の改正が必要となったということで、旧来のいわゆる物品の事故処理要領を廃止しまして新たな要領を定めたということでございます。
 次に、今御指摘のありました「極力主食用に充当するものとし、」という文言につきましては、確かに昭和四十年、これもたしか四十年に最初に通知を出したと、食糧庁長官が通知出したと思いますけれども、資料Aにありますとおり、物品の事故処理要領におきましては極力主食用に充当するということについては記載されていないわけですけれども、平成十九年三月三十日付けで廃止したその当時におきましては、その極力主食用に売却することという文言は入っておりました。したがいまして、まさに実務的に、特別会計が変わるということから、旧来の通知を廃止して新たなものを制定したということでございます。
 その際に、問題になりました事故品と事故米穀を区別して使用していたところ、事故品と記載すべきところを事故米穀として誤って規定していた箇所があったということでございまして、これはもう本当に十分なチェックをせずに通知を発出してしまったということでございまして、申し訳なく思っております。

○紙智子君 ちょっと最初のところと最後のところは私も今聞いたところではよく分かりませんけど、後でまたお聞きしたいと思いますけど、要するに、袋が破損をしたり、虫や異物が入っていたり、ぬれていたり、色が変わっていると、こういう事故品を極力主食用に回せという考え方を言わば盛り込んでいる局長通達が出されたと。ということは、末端の農政事務所で食用に転用防止といっても、これはやっぱり力が入らなくなるんじゃないかというのは想像できるわけですよね。
 三笠フーズの事件で、なぜあのように不十分な調査で、不正規流通がつかめなかったのかということが問題になったわけですけれども、現場の担当者の意識ということももちろん問題になっているけれども、それだけじゃなくて局長の考え方のところから問題があったんじゃないかというふうに私は思うわけですよ。
 こういう文書を出された責任について大臣はどのように思われているのか、そして、局長の責任についてどのようにされるおつもりなのか、お答え願います。

○国務大臣(石破茂君) これは十分にチェックをすればこんなことは起こらないと私は判断いたします。
 紙を見てみますと、本当にミスで書き違えた、すなわち事故品と書かなきゃいかぬところを事故米穀と誤って書いちゃったので、今委員がおっしゃるようなことを現場の農政事務所の担当者が思ってもそれはやむを得ないというか、ゆえなしとしないというか、そういうところがあるではないか、そのとおりでございます。
 これは基本的に、そういうようなことがなぜきちんとチェックをされなかったのか、事務体制のミスであると同時に、そういう安全にかかわる者としての認識、意識が欠如しておったということだと思っております。それぞれの者が責任を有しており、そこについての判断というものはきちんとしなければいけないと思います。今断定的なことを申し上げることはできませんが、やはりそれが単純な事務的なミスでしたということで済まされる問題だとは思っておりません。

○紙智子君 納得できないんですよね。いやミスだったんですと、本当にそうなのかというふうに思うわけです。
 それで、私この問題を指摘したらその後すぐに事故米穀というのは誤記でしたという文書を、総合食料局長名で文書が出されたわけですよね。誤記だと、書き間違いだったんだというわけですけれども、しかし、この文書は昭和四十年の食糧庁長官通知を踏襲した文書で、もう一度その資料のAのところを見てほしいんですけれども、三十ページの4の「売却計画」の中ごろのところに線引っ張ってあります。ここに書いてありますけれども、そこにも、なお事故米穀を主食配給用として卸売業者に売却する場合というふうに明記されているわけですよ。誤記だと言うんだったら、この昭和四十年の食糧庁長官の通知も誤記になるし、そういうことはないんじゃないのかと。
 しかも、資料の@の局長通知というのは十九年の三月の三十日に出されて、二か月後、五月二十三日に一部修正されていますよね。そのときにも、かなり一つ一つの言葉については丹念に見直しを掛けているんですよ。だから、二回もじゃ見逃したのかということになるわけですけれども、これはどうなんですか。

○政府参考人(町田勝弘君) この四十年当時の通知でございます。お話がありましたが、ここにおいては、事故品も事故米穀も同じ意味で使っていたということでございます。ここの中で、そういったことから事故米穀を主食用に回すといった表現が出てきたんだというふうに思います。
 先ほど岡島官房長から話がありましたが、昨年三月直したときに、事故品と事故米穀を区分して規定をしたということでございます。主食、食用に適するものでないと、主食用として不適とした米穀を事故米穀と規定したわけでございます。その中で、事故米穀を主食用として卸売業者に売却する云々というのはこれは誤記であるというふうに、明らかな誤記だというふうに思いました。報道をいただくまで私自身気付かなかったことはこれは申し訳ないと思っておりますが、直ちにここの部分をきちっと改めた通知を改めて発出させていただいたところでございます。

○紙智子君 そういうふうに言われるとまたちょっと矛盾してくるわけですよね。実際に事故品だということで書き換えるということになると、それを当てはめて文書を読むとまたこれが矛盾してくるわけですよ。
 それで、この事故米穀を事故品に置き換えるということですけれども、事故品については、最初の文書のところでは極力主食用に充当することになっているわけです。この事故品は、事故米穀を除くというわけですから、例えば倉庫で地震が来て袋が落ちてばあっと破れてしまったと、散らばったと。こういうものはまた集めて使う分には決して毒にはならないわけですよね。そういうものが主体なんだという説明もあるわけですけれども、そうすると、本来「とう精」や「再調整」、難しい言葉で書いてあるので私も何だろうと思って調べたわけですけれども、玄米などをついて表面を削り取っていくということですよね、搗精。それから「再調整」というのは異物を除いていくという作業だと思うんですけれども、「とう精」や「再調整」をする必要がないわけですよ、ただ落ちただけのものだったら。
 事故品ということでやって読んでいきますと、その資料@の(2)のその線のところで読むと、それを卸売業者に売却する際に「とう精」又は「再調整」を行うために値引きをして売却をするという規定になっているわけですよ。つまり、本はうんと削り込まなければ主食用に回せないような米、異物を除去する作業が必要な米が想定されているわけですよ。この文書は。だから、事故米穀でよかったんだと思うんですよ、元々。そういうことでしょう。
 そして逆に、じゃ搗精しなければならない事故品というものはどういうものなのかというと、そのままでは食用に回せない相当表面が汚染されていた米ということですから、それが事故品だということになると、そういう米も極力主食用に充当するということになってしまうわけですよ。
 だから、これ大臣、矛盾しているんですよね。どう思われますか。

○政府参考人(町田勝弘君) この四十年当時の事故米穀、これは委員御指摘のとおり、単なる袋の破れと、そういったものも含んでいたわけでございます。こういったものは食品衛生上問題がありませんので、主食用にも販売し得るという整理でございます。
 ただ、その一方で、食品衛生上問題なのは非食用の用途に制限して売ってきたということでございます。
 今御指摘いただきました「とう精」、「再調整」、一体これは何だということでございますが、これは米を、古米でございますのでどうしても古米のにおいがひどく残ってしまうと。そういった場合は通常の精米程度で搗精してもにおいが残るので、もっと削り込むといったようなこと。あるいは、お米の表皮が、肌ずれというんでしょうか、ちょっと傷んで著しいと。そういったものについては、通常の歩留りはこれ九一%でございますが、それよりも精米度合いを高めて歩留りが結果的に下がると、例えば八五%になるということになりますと通常の歩留りと差が出ますので、そういった場合は値引きをするということでございます。
 御指摘いただいたカビ米でございますが、これはさっきの整理でいえば食品衛生上問題があるので食品、食用に販売することはできないわけでございますので、この規定はカビ米を、何かカビを除去すると、そういったことを想定したというか考えた規定ではもちろんございません。

○紙智子君 どう読んでもやっぱり誤記ということではなかったんじゃないかというように思うわけですよ。
 それで、やっぱり後からこれを間違いだったということを変えるものですからなかなかこの前後、合わなくなってつながらなくなると、つじつまが合わなくなるわけで、私の立場として、共産党の立場としては、やっぱりその事故品というものをそもそも極力主食用にということ自体がやっぱり問題だというふうに思うわけですけれどもね。
 いずれにしても、こういう対応をめぐっても大臣は、一昨日ですか、とにかくその場しのぎの対応はしないんだということを言われているわけだけれども、まさにこのことというのはその場しのぎだと思うんですよ。そういうことをやっていたんじゃ本当の意味で国民の信頼を回復することはできませんし、ちゃんと真剣に反省をし、どこが問題なのかということを改めていくということでやっていただかなきゃいけないというふうに思います。
 ちょっとこの後、防止策やその他の問題もあるんですけれども、時間になってしまいましたので、後のことは次回、また続きやらせていただきたいと思います。
 これで終わります。