<第169回国会 2008年6月4日 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第8号>


(1回目)
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 この調査会、超党派でこのDV法を作り上げて、そして二〇〇一年に成立をさせ、その後も関係者の皆さんの意見を聴きながら、二〇〇四年、昨年と改正を続けてこられたということには心から敬意を表したいと思います。それで、立法府と関係者がみんなで作って育ててきている法律なわけですけれども、改正の要求もまだまだあって、それにやっぱりこたえていかなきゃいけないというように思うんです。
 それで、最初に内閣府にお聞きしたいんですが、私が質問しようと思っていたことを先に質問されているのもありまして、ちょっと確認もしたいんですけれども、市町村における配偶者暴力相談支援センターの設置ということで、これが努力義務になって、非常に重要だと思うんですけれども、増設されてアクセスしやすくなったということですとか、やっぱり被害者の保護も進むことになるわけです。
 それで、この実効性を上げるためには市町村のやる気だけということでもいかないので、やはり人と予算という問題があって、先ほど副大臣が後押しということで特別交付税という話をされたので、これは力強いと思っているわけですけれども、ちょっと改めて、確認の意味でそこのところを御認識をお伺いしたいと思います。

○副大臣(中川義雄君) 先ほど特別交付税という言い方をしたのは、一般の交付税ではこれはちょっとまずい。積極的に活動をしようという市町村とそうでない市町村では違うわけですから、一般の交付税ですと、してもしなくてもすべての町村に一定の乗数に基づいて事前払いになるわけであります。
 しかし、私は、先ほど特別交付税と言ったのは、特別交付税は決算払いでありまして、実際にやった、こういうことをしたということを出した上で財政当局に申請すれば、財政当局がそれに応ずるよう、我々、総務省としっかりと打合せしたいと思っています。
 ですから、こういうことを実施したところはきちっと支援を受けるという体制にした方が私はいいと思って、先ほど特別交付税という言い方をしたわけであります。

○紙智子君 分かりました。
 私の地元の札幌市で話を聞きますと、やっぱり政令都市でさえも単独で事業を進めるというのは非常に大変だということを言っていまして、是非国としてきちんとした運営費の裏付けをしてほしいということが出ておりまして、補助金の要請などの要望が出されていました。それで、被害者保護が全国どこでも一定の水準でできるようにするためにも、国からの補助ということは不可欠の課題でもあるんです。
 それで、厚生労働省にもお聞きしたいんですけれども、シェルター関係者の一番大きな要望は、何といいましても被害者保護の最前線で頑張っている民間シェルターへの一時保護の委託費それから運営費への助成なんです。
 それで、一時保護委託費の総額支給実績の状況、現状がどうなっているかということを一つ聞きたいのと、それからもう一つは、委託単価の抜本的な増額についても更に検討していただけないかという要望が挙がっているんですけれども、これについてお願いいたします。

○政府参考人(村木厚子君) お答え申し上げます。
 一時保護委託費の予算でございますが、本年度、二十年度の予算で三億三千百万円でございます。前年の十九年度が二億八千万円ということでございましたので、総額としては、まあこれでもまだ不十分ということではありましょうが、増額をしております。
 これは、先生おっしゃいましたように、非常にこの委託費の増額については御希望が多かったところでございます。それで、二十年度はこの単価につきまして、被害者一人一日当たりでございますが、十四日以内のものにつきましては、これまで六千四百九十円であった単価を七千六百五十円、それから十四日を超えての部分ですが、ここの上がり幅の方が大きゅうございますが、五千百十円であったものを七千五百円に引上げを図ったところでございます。
 まだ不十分なところもあるかと思いますが、今年度予算的には努力をさせていただいたところでございます。

○紙智子君 今お答えあったんですけれども、現実には掛かっている費用の大体半分ぐらいなんだそうです。それで、被害者一人一人に、行ってみますと、電話掛かってくるわけですけれども、非常に丁寧に、一人一人本当に丁寧なケアをしていて、長時間、何度もあるわけですよね。ですから、本当にそれに対応して、しかもいろんな、例えば自立のために役所に行かなくちゃいけない、手続取りに行かなきゃいけないというようなことになると、そういったことも含めて同行していきますし、それから遠いところとの連絡を取ったりとか、そういうことなんかも含めると本当に時間とお金が掛かっていて、もう手弁当でやっているというのが今現状で、だからそういう意味では、やっぱり委託費だけでは到底運営費は賄えないということで、寄附金だとか会員の会費なんかで賄っているんですけれども、もう台所は火の車というのが実態だと思うんです。
 ですから、こういう状況を、今も非常に希望が多いということをおっしゃられて御存じだとは思うんですけれども、是非実態に見合った援助、運営費の補助を検討していただきたいなと、更にアップしていただきたいなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(村木厚子君) 私ども一生懸命努力はしておりますが、特に私ども厚生労働省で予算化をするときにはどうしても一時保護ということに着目をした委託費という形で出ておりますので、そこをまず単価アップをするということで努力をしております。
 恐らく、それだけではなくて、相談ですとかシェルターの基盤になるような運営費のところにそれぞれの民間団体大変御苦労されているというところで、自治体でも随分財政支援をしてくださっている自治体もあるようでございますので、こういったところが何がしかの形で支援ができるようになればということで、内閣府の方でも特別交付税の要求なども毎年していただいているというふうに伺っております。
 そういったことで、関係の省庁とも協力をしながら、更なる施策の充実について一生懸命やっていきたいと考えております。

○紙智子君 あと、内閣府が昨年、恋人間のDVについて、いわゆるデートDVですね、調査研究をまとめたわけですけれども、これもなかなか深刻で、例えば北海道なんかの場合でも低年齢化という問題も指摘されているんですけれども、札幌市の例えば女子中学生が、交際中のこれは高校生ですね、男子高校生に別れ話をした際に、憤慨してガラス瓶を壁に投げ付けて、死んでやるということで脅されて別れられないということで、保護者からそういう相談が入ってきたりとか、その他ほかにもいろいろ、本当に若いところでそういう事態にもなっているということがあって、スペース・おんの近藤恵子さんが代表を務められているところでお話しだったんですけれども、相談窓口は受皿にはなるんだけれども、職場や学校や家庭などの関係機関をつなぐ救済システムがまだできていないと。そういった意味では、学校での予防教育も非常に必要だという話もされているんですよね。
 ですから、実際にそういうことで教材作りですとかやっていたり、あるいは取り組んだところでは、何がDVなのかということそのものの認識が分からない中で、それが分かるだけでも全然違うということも出されていて、是非こういうことを内閣府としても今後の取組として強めていく必要あると思うんですけれども、どのようにされているでしょうか。

○政府参考人(板東久美子君) 今御質問のように、子供たちから、若い層からの予防教育というのは非常に重要だと思っております。
 若い世代の理解を深めるための様々な取組をしているところでございまして、今委員の方からも御紹介いただきましたように、昨年は、配偶者暴力に関する問題を取り上げているシンポジウムの中で、若い世代の恋人間の暴力の問題などを取り上げまして、若い方々の理解を更に深めようという取組もしたわけでございます。
 予防啓発プログラムの作成ということにも取り組んでおりまして、平成十八年度、十九年度におきまして、若年層を対象とした予防啓発プログラムの開発を自治体に委嘱をして、幾つかの自治体で調査研究を行っていただいたということがございます。
 平成二十年度、今年度におきましては、こうした自治体における調査研究の結果を踏まえまして、予防啓発に対する教材の作成をしていこうと。それを提供し、学校現場やいろいろな場所において取組を進めていきたいというふうに思っております。関係者と連携を強めていきたいというふうに思っているところでございます。

(2回目)
○紙智子君 加害者対策について、まずちょっと内閣府にお聞きしたいと思うんです。
 一昨年、徳島で、接近禁止の保護命令を発令されていた加害者が妻を刺殺した事件、これはもう本当に衝撃だったわけですけれども、今年も一月に、実家に逃げ帰っていた妻が、被害届を出して三日後に夫から殺される事件も起きたわけですよね。こういう悲惨な事件をいかにして食い止めるかというのがすごく大事なわけですけれども、加害者対策もそういう意味ではすごく大事だと思うんです。
 それで、まずは犯罪なんだと、罪とやっぱり向き合わせるという、適切な逮捕ということも必要だと思いますし、そこをまずやるというのは前提だと思うんですけれども。
 同時に、昨年のDV法の改正案の審議のときにも議論になっているんですけれども、警察とDVセンターが協力をして、保護命令発令の期間中にこの加害者に対しての研修を行うことが考えられないかという、再教育プログラムなどの義務付けということで検討するべきじゃないかというのがやり取りされていて、それに対して立法者の南野議員がこれに答えて、加害者の更生のための指導の方法について調査研究の推進に努めるというふうに御答弁をされていたわけです。
 それで、基本方針にもあるんですけれども、内閣府はこの加害者対策の調査研究の重要性についてどういうふうに認識をされているのか、また、警察などほかの機関と連携した教育プログラムについて関係省庁の中心となって検討すべきじゃないかと思うんですけれども、これについてお願いします。

○政府参考人(板東久美子君) 加害者の更生のための調査研究につきましては非常に重要な施策であると思っておりますので、我々といたしましては、先ほどもちょっと御紹介をさせていただきましたけれども、諸外国における実態の調査とかあるいは国内で実施をしました試行、そういった結果を分析をしているところでございます。
 これについては、配偶者からの暴力の加害者更生に関する検討委員会というのも以前設けまして、そういった加害者更生プログラムの可能性と限界ということで検討をしたわけでございますけれども、その結果といたしまして、平成十八年六月に報告書も出しております。その中で、こういった加害者更生の問題非常に重要なんですが、プログラムについて、必ずしも効果だけではなくいろいろな課題もあるということも浮かび上がってきておりまして、この問題は重要であるというのは御指摘のとおりだと思っておりますので、更に調査研究の推進を図っていきたいというふうに思っております。
 基本方針の方においても、御指摘ございますように、この調査研究の推進ということを盛り込ませていただいているところでございます。

○紙智子君 警察庁にお聞きしたいと思います。
 保護命令が発令された加害者に対して、DVの犯罪性や保護命令の内容などについて加害者に徹底するために、各警察署は加害者にどのような対応や接触をしているのでしょうか。

○政府参考人(井上美昭君) 基本的には、これは罪になりますよとか、あなたはこういう状態で警告を受けていますよということを相手方にしっかり認識をさせることが大事だということでありまして、そういうふうに指導をしておるところでございます。

○紙智子君 あらゆる機会をとらえて、加害者に対してはDVの犯罪性について知らせていくというのは非常に大事だと思うんですけれども、加害者に接することが最も多いというのは、やっぱり警察、多いわけですよね。
 それで、昨年の審議でも出されていましたけれども、警察とDVセンターが協力して教育プログラムを行ってほしいという要望があります。この教育プログラムを義務化するというためには法改正というのが必要になるわけですけれども、例えば保護命令が発令された加害者、又はその配偶者への暴行や傷害などで逮捕された加害者や、保護命令違反で逮捕された加害者、ここに対して、勾留されている期間も利用などして、そして加害者教育を行うことを検討すべきじゃないのかと、そういう指摘について警察庁としてはどのように受け止めておられるでしょうか。

○政府参考人(井上美昭君) 刑事訴訟法において、やはり逮捕、勾留というのは捜査のための期間というふうに決められておりまして、それを大きく外れるわけにもいかないというのも事実だろうと、こういうふうに考えております。しかし、取調べの段階において罪であることを認識させたり、警告のときに、これは駄目なんだよということは大事なことだろうと、こういうふうに思っております。
 ちょっとそれを超えたということにつきましてはこれから議論がやはり必要な部分ではないかと、これは個人的な意見でありますが、そういうふうに感じております。

○紙智子君 政府全体が調査研究、ここに是非協力をして、そういう方向で検討いただきたいなと思うんです。
 保護命令の発令件数が、平成十五年の段階で千四百六十八件が、平成十九年に二千百八十六件に対して、保護命令違反の検挙数というのは、平成十五年が四十一件、平成十九年が八十五件というふうになっているわけですね。違反者が少ないのであればいいわけですけれども、保護命令違反に対して警察が厳しく対応してないんじゃないかという批判も出ているんですけれども、これ厳しく対処していただきたいという声があるんですけれども、これについて一言最後にお聞きします。

○政府参考人(井上美昭君) 保護命令違反検挙の件数は、例えば平成十八年は五十三件でありますが、平成十九年は委員御指摘のように八十五件ということで、かなり増えておるところでございます。
 基本的には、犯罪ありと思料するときには警察として厳正に対応するというのは基本でございますので、今後も徹底してまいりたい、かように考えておるところでございます。

○紙智子君 終わります。