<第169回国会 2008年5月22日 農林水産委員会 第12号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は食品安全部長さんにも来ていただいていますので、輸入食品の検査体制についてお聞きします。
 この問題は、中国製ギョーザの薬物中毒事件を受けて、私ども日本共産党として、政府に対して輸入食品の検査体制の抜本的強化を申入れをいたしました。私も予算委員会で検査体制の抜本的強化を要求して、政府も検討を約束したわけです。その後、この輸入食品の検査率や人員体制など、どういう検討がされたのか、食品安全部長さんにお聞きしたいと思います。

○政府参考人(藤崎清道君) お答え申し上げます。
 輸入食品の監視・検査体制の強化でございますけれども、この基本的な方向につきましては、先生御指摘のように、検疫所における食品衛生監視員の増員ですとか、あるいは輸入時の検査件数、検査項目の拡充のために必要な最新の検査機器の導入、こういうことを行いながらその強化に努めてきたところでございます。平成二十年度におきましては、これ当初でございますけれども、食品衛生監視員を七名増員し、またモニタリング検査件数を約六百件増加するなどの拡充を行ったところでございます。
 今後の我々の取組でございますが、平成二十一年度の予算要求あるいは組織人員要求というものに向けまして、これから様々な点を勘案しながら、先ほど御指摘いただきましたような中国の冷凍ギョーザ事件などの新たな問題もございます、輸入加工食品の検査の強化など様々な課題がございますので、そういうことを勘案して、そのような問題に対応できるように人員並びに予算の要求をしていきたいと、このように考えております。

○紙智子君 問題は、現在の輸入食品の検査率がわずか一〇・七%、九割の輸入食品が無検査で輸入されているという実態なわけですね。いかにそこを抜本的に是正するかということだと思います。それは、日本が世界一の食料の純輸入国だと、そして食料自給率がわずか三九%しかないと。六割以上輸入に依存している中で、この輸入食品の安全性の確保という問題が食品の安全性の確保にとっては不可欠かつ最優先の課題であるからです。
 我が党は、この検査率については五〇%以上にすることを求めているわけですけれども、厚生労働省は具体的にその検査率を何年にどこまで引き上げるというふうに考えているのか、明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人(藤崎清道君) お答え申し上げます。
 検査率の考え方を申し上げます前に、まず輸入食品の安全性確保の枠組みを簡単に御説明させていただきたいと思うのですが、この輸入食品の安全性確保につきましては、食品安全基本法に定める国の内外における食品供給行程の各段階を通じて食品の安全性を確保するという理念に基づきまして様々な供給行程をチェックしていく、それぞれのところで安全を確保するということを通じて安全の確保を図っていくという考え方に立っておりまして、輸入食品もやはり同様でございます。
 そういう意味では、まず第一に、私どもがいつも申し上げておりますのは、輸出国自身がその国内における衛生管理というのをきちんとやっていただくということ、あるいは輸出時の検査をしていただく、あるいは日本国内の衛生法規あるいは基準というものをきちんと把握をしていただくと。さらには、輸入業者、日本の場合でございますが、輸入業者の方々が日本国内に安全な製品あるいはいろいろな食料品が輸入されるようにその安全性確保のための様々な措置をとっていただくと。これがまず基本になった上で、第二段階といたしまして、水際での私どもの検疫所におきます検査なども含めて対応していくと。そして、国内に流通した後には収去検査等々を行いまして、流通時点で問題がないかどうかというものをチェックしていくと、このような枠組みで考えております。
 そういう中で、輸入時の検査について検査率はどういう目標なのかというお尋ねでございます。
 これは、私ども検査率そのものを特定して設定していくという考え方はこれまで取っておりませんで、これはどういうことかと申しますと、輸入時の水際の検査というものがこれもまた三種類ございまして、先生御案内のとおりかもしれませんが、まずは輸入業者の方々が自主的に検査をしていただく、これは食品衛生法の三条に定めております自主検査、責務としてやっていただくという部分がございます。そういう部分の検査と、それから私どもが検疫所で国として年間計画に基づいて多種多様な輸入食品について食品衛生上の状況について幅広く監視することを目的としたモニタリング検査、こういうものと、そしてモニタリング検査において法違反が判明するなど法違反の可能性が高いと見込まれる食品等につきまして輸入者に対して命令をする検査命令と、こういう仕組みの中で全体として重点的、効果的に輸入時の検査を実施していくと、このような取組を行っております。
 したがって、今申し上げたようなことを行っておりますので、先ほど申し上げましたように、アプリオリに検査率をどうという形での設定というのはこれまでもいたしてきておりませんし、現時点でそのような考え方はないということでございます。

○紙智子君 だから目標を設定しないというんですよね。今までもずっとそういうふうに言い続けてきていて、確かに企業がきちっとやるとかというのはそれはもっと強めなきゃいけないというのはそのとおりだと思いますけれども、でも、そんなことはもう十年も前からずっと言っていることですよ。自主検査をやるんだと言っていて今のこの現状なわけですから、やっぱり国がどうやって目標を決めてそこに向かってやるかということでないと、そんなあいまいな答弁ではとても国民の期待にこたえられないと思いますよ。
 やっぱり輸入食品の検査率を引き上げるためには、現在三百四十一名の食品衛生監視員を抜本的に増員しなきゃいけないと思うんですよ。なぜかといえば、やっぱり食品の検査というのは検査機器に試料を入れる、その前処理というのはすごく大変というか、大事なわけですよね。この前処理の行程が重要で、それはやっぱり人の手でなかったらできないわけですよね。今年は七人増員したというんですけれども、この程度の人員増だけでは今検査率を飛躍的に引き上げるということはできないと思うんですよ。
 やっぱり検査率を向上させるというためには人は増やさなきゃいけないと、これはそうですよね。間違いないですよね。ちょっと確認します。

○政府参考人(藤崎清道君) お答え申し上げます。
 検査率を上げていく、国が行うモニタリングの検査を上げていくということであれば、当然その業務量というものはやはり増えるだろうと、そういうことであればその分の人が必要であろうと、これは先生おっしゃるとおりだと思います。

○紙智子君 だから、今の三百四十一人の衛生監視員の体制でも現場は大変ですよ。この間、横浜にも行ってきましたけれども、実際に残留抗生物質の検査でも、この対象となる肉とか魚介類入ってくるわけですけれども、ほとんど冷凍食品で来ますよね。すごく大きなブロックでも入ってくるわけです。そうすると、本当にそれを砕いて細かくしてやっていく作業でもう汗だくで、大変な重労働ですよ。それをやって、午前中にとにかくもうそれに掛かりっきりになって、その後、化学検査だとかというところに入っていくわけですけれども、数名の食品衛生監視員でそれを処理しているのが実態なわけです。
 それから、今回のような中毒事件が起こった場合は残業残業でもって連続して、本当にへとへとの状態でやらなきゃいけないと。深夜に及ぶことも度々になるというのが現場の状況です。
 仮に現在の人員を十倍にして三千人というような体制になったとすれば、人件費は多めに見てもわずか三百億円ですよ。だから、安全ということで考えて言うならば、例えば自衛隊が三十万人いるわけですけど、人件費で二兆円の水準ですよね。これは国防のためだと言うかもしれないけど、食料の安全、そのための体制ということで確保できるのであれば国民は十分納得できると思うんですよ。
 厚生労働省としてどうかということをお聞きしたいんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(藤崎清道君) お答え申し上げます。
 まず、やはり必要な検査をどれだけ行うことにつきまして、毎年輸入監視指導計画というのを立ててございますけれども、先ほど申し上げましたような観点からどれぐらいの検査が必要なのかということを出していくということになろうかと思います。その上で、検査の数が増えていけばやはりその分だけ人が必要になるところもございます。
 そういう意味で増ということは考えられるわけですが、私どもとしては検査の効率ということも併せて追求をいたしておりまして、具体的に申し上げますと、食品衛生監視員の数を確保していくということを考えますときには、検査件数、検査項目数、届出審査件数、輸入相談件数などの先ほど申し上げました数的な要因に加えまして、検査技術の高度化ですとか審査の複雑化などの質的な要因を考慮する、さらにはコンピューターシステムによる審査支援機能の向上等の効率化の要因もございますので、こういうことを勘案しながら、増えていく検査にどう対応していくのか、こういうことで総合的に判断をしていく必要があるというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、今私の方で申し上げられますことは、この輸入食品の安全確保ということは本当に重要なことでございますので、必要な検査を賄えるような体制を取っていくために必要な人員を確保していくということで、平成二十一年度の要求に向けて、食品衛生監視員の増員に向けて検討してまいりたいと、このように考えておるところでございます。

○紙智子君 ちょこちょこ増やすだけではやっぱり駄目ですよね。もっとやっぱり抜本的なことを考えていかないと、福田内閣としてもう強化するんだということを言っているにもかかわらずいまだにそういうことを言っているようじゃ、本当に信頼を得ることできないと思うんです。
 最後に、農水大臣、今ちょっとやり取りもさせていただいたんですけれども、実際には所管外ということになるかもしれませんけれども、しかし三九%の自給率の下で食の安全、安心というところから、大臣の感想なり、一言いただきたいと思います。

○国務大臣(若林正俊君) 食品の安全というのは本当に最重要事項だと思います。
 農林水産省としては、植物あるいは動物の病害虫とか、そういう国内の農業生産に悪影響を及ぼすおそれが非常に高いそういうものは水際でチェックするということでありまして、人の食品の安全性については食品衛生法に基づいて厚生省が行うということでお願いをしているわけでございます。その意味では厚生省、大変御苦労いただいて努力をしておられますが、一層水際におきます食品の検査体制というものをできるだけ充実していただいて、安心できる食品が国内で流通できるようにしていただきたいと思います。
 こういう特に輸入食品につきましては、厚生労働省、農林水産省が、それぞれ分担があるわけでございますが、それぞれの立場で水際検査をきちんと実施していくということが重要だと考えております。