<第169回国会 2008年5月20日 農林水産委員会 第11号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、ミニマムアクセス米の問題についてお聞きします。
 平成十九年度の第十回MA一般輸入米の入札で、入札予定数量六万二千五百二トンのうち、四万一千五百二トンについては入札がなくて不成立、二万一千トンについては価格が高騰しているために価格が折り合わず不落札になったわけです。要するに、これは日本に米を売る国がなく、また売りたい国も価格が高過ぎて日本も買えない実態のためにミニマムアクセス米の輸入ができなかったわけですけれども、その点、まず間違いがないかということと、この事態を政府としてはどのように見て受け止めているのか、見解についてお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(若林正俊君) ちょうど政府がミニマムアクセス米で国際的な日本としての輸入義務を負っているものの義務を果たすための量を確保すると、それには輸入機会を提供するということでございます。その輸入機会の提供ということで、長粒種をベースにした、タイの米の価格をベースにしたお米を買入れをしようということで入札に入ったところ、今おっしゃられたような形でこれが落札できなかったと。
 率直に言って、世界中でほかのお米がないかというと、私はないとは断言できないんですよ。しかし、我々は、今入れたMA米を国内で消費することが前提ですから、入れたものを飼料用の米だとかあるいはその他の加工用に回すということを前提にすると、そういう長粒種の安いお米を入れたいという意味でそういう入札を掛けたわけでありますので、ちょうどアジアの方が二倍、三倍と高騰しているときでありますので応札が得られなかったということでございます。
 そういう意味で、なかなかデリケートな話になるんですけど、全く世界で今、本当に日本が欲しいという逼迫した状況の中で米の買入れが難しくなっているというわけでも実はないと私は思っておるんです。

○紙智子君 この事態というのは、現在の穀物価格の高騰、また世界的な食料危機問題の中で起こっている問題なわけです。
 それで、世界的な米の価格は、麦や大豆、小麦や大豆、トウモロコシの価格の高騰のレベルを超えるほど米について言いますと高騰しているわけです。
 先ごろのミャンマーでサイクロンがありましたけど、この被害でミャンマーの米の主産地が甚大な被害を受けるということになっていますし、そういう中で一層価格高騰を招こうとしているということですね。それから、アメリカでも、スーパーなどで米の販売制限を行う事態になっているわけです。フィリピンでは、米が庶民の間に手に入らなくなっていると。そういう中で米不足が深刻な事態になっているわけですね。
 こういうときに日本がミニマムアクセス米は義務輸入なんだとして輸入を続けるということになりますと、更なる価格の高騰を招くとともに、世界的な米の需給を逼迫させることになるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) 米の市場というのは特殊性がありまして、麦や大豆などに比べまして、まずは生産量に比して貿易量が非常に少ないという特徴があるんですね。そういう意味で、少しの変動によって価格変動が起きやすいという状況がございます。
 そういう状況の中で、今回、どうも投機的資金が大分入ったというふうに指摘する向きもあるんですけれども、異常な高騰ぶりを示しております。このアジアにおける米価格の今の状態の高騰ぶりというのが、他の小麦や大豆などと同じように少し高止まりをするのかどうかということについては、まだはっきりした見通しを私たちは持っておりません。どのような状況になるか、しばらく様子を見てみなければ分からないと思います。
 しかし、いずれにいたしましても、そのことによって大変途上国で貧困層の人たちが困っているという事情にあるわけでございます。そういう中で日本があえてここでそういう地域の米を買うということは価格を更につり上げるという、そういう弊害を生むわけでございますから、そういう国際的な米需給に悪影響を与えることがないように留意しなければいけないと思うのです。
 だからといって、今後ともこれを中止せざるを得ない、中止しなければならなくなるとは思っておりません。

○紙智子君 本来、このミニマムアクセスというのは輸入機会の提供ということなんですよね、輸入義務ではないというふうに思うんです。政府は、国家貿易だから輸入義務なんだと、義務だ、義務だということを言ってきたわけですけれども、そういう規定はそもそもWTO協定の中にはどこを見ても書いていないんですね。あくまでもやっぱり輸入機会の提供なわけです。だから、欧米などは未消化が多いわけですよね。こういう、だから根拠のない輸入義務に基づいてミニマムアクセス米の輸入を強行して、この世界的な米需給を更に逼迫させてアジアの諸国民に被害を与えるようなことは、これは中止することはないと言うんですけれども、やっぱりやめるべきじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(若林正俊君) 今当面は見送っているわけでございまして、今のような価格高騰を招いている国際的な需給事情というのは十分留意しながら運用していくということだと思います。
 だからといって、新年度始まっておりますけれども、二十年度におきますミニマムアクセス米の我が国が国際的に約束をした輸入というものにつきまして、これを履行しなければならないという義務は一方で負っていることは事実でございまして、これらの国際的に約束をして負っている義務をいずれの機会かにこれを履行しなければならない状況というのは引き続きあるわけでございますので、国際市場の状況を慎重に見極めながら対処してまいりたい、このように考えております。

○紙智子君 国際的に負っている約束はやらなきゃいけないというお話されるんですけど、しかし、この状況がやっぱりこれからどうなるかということについてはそう簡単にもう来年から、再来年から収まるというわけではないわけで、非常にそういう意味では不安定な中で、例えば、国際的な約束だというけれども、これは十八日の日経新聞ですけれども、EUなどはそういう大きな変化を踏まえて食料高騰に対応して減反政策を撤廃するということを今これ、ここは小麦ですけれども、そういう対応なんかも出てきているわけですから、今のやっぱり状況をとらえて考え直すべきではないかと思うんです。
 それから、ミニマムアクセス米は、これ一九九五年の四月から二〇〇六年の三月末までの十一年間に全部で七百二十三万トン輸入されました。その在庫の経費には一千七百二十六億円です。援助用の仕向けのための国の負担としては九百十五億円ということですから、合わせますと二千六百四十一億円の税金が投入されたわけです。これが根拠のない義務輸入ということで、その結果、国民が負担しなければならなくなったものなわけです。こういうミニマムアクセス米の在り方というのはやっぱり見直すべきではないかと思うんです。
 我が党は農業再生プランの中でこの義務的な輸入の中止を求めているわけですけれども、是非検討すべきではないんでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) これは国際協定に基づいて国際約束として日本が負っている義務でありまして、検討して日本がいろいろ事情があるからやめたと日本が言ってやめられるような性質のものではございません。

○紙智子君 このことは我が党だけが言っているわけじゃないんですよね。先日、五月十二日の日本農業新聞ですけれども、ここでは、MA米異変と、日本の輸入、時代に逆行というふうに書いていて、焦って調達するのは禁物なんだと。しょうちゅうだとかみそだとか使われるMA米だけど、国内ではそもそも不人気で、在庫が百五十二万トンあって、一トンの保管に年間一万円掛かるので、保管料だけでざっと百五十億円だと。これ以上無駄なお金を掛けてはならないんだと。国際的な批判も呼ぶ可能性もあるんだということを日本農業新聞でも言っているわけです。
 多くの生産者の中でもやっぱりそういう声が上がっている中で、絶対変えられないということじゃなくて、やっぱり協定そのものの見直しが必要になってくるところでは必要な見直しをすべきだということを申し上げまして、時間になったかなと思うので、終わらせていただきます。