<第169回国会 2008年4月10日 農林水産委員会 第7号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今回のこの生糸輸入調整法の廃止、これは生糸生産の国内事情に基づくものではなくて、昨年の十二月に閣議決定された独立行政法人整理合理化計画によって、農畜産業振興機構が現行の中期目標の期限の終了時にこの蚕糸関係の業務について廃止するとされたことによって持ち出されたものなんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) そのような決定を見るに至りました背景というのはございます。それは、誠に残念なことでありますけれども、蚕糸業をめぐります状況が著しく変化をしてきて、現行制度に基づく蚕糸業の経営安定の仕組みがもう有効に機能しなくなってきているということがございまして、このような実態に即した新しい蚕糸対策への転換が必要だと、そういう前提が、背景があるわけでございまして、そういう中にありまして、独立行政法人の整理合理化計画におきましても独立法人農畜産業振興機構の業務を見直すというふうにしたものでありまして、そちらの方の見直しがあるから蚕糸業のこのような制度を考え出したというものではございません。

○紙智子君 昨年の三月に今後の蚕糸業のあり方に関する検討会最終報告書というのが取りまとめられていますよね。これ、ありますよね。それで、国産ブランドの確立を基本的な方向とする今後の蚕糸業振興の基本戦略をこの中で打ち出しているわけです。それで、打ち出したばかりというか、この中で打ち出しているわけですけど、この最終報告の中でも生糸の輸入調整法の廃止、それから農畜産業振興機構の蚕糸関係業務の廃止などについては全く触れられていないですね。そして、提案もこの中でされていない。これはなぜなんでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) この検討会は、全体で八回にわたってそれぞれ生産から需要、織物業者を含めます、また流通業者を含めます専門家の皆さん方で蚕糸業の置かれた、めぐる状況の分析をしていただき、また繭、生糸の生産流通の課題は何かというようなことを突っ込んで議論をしていただき、そして川上・川下の提携システムでありますとか養蚕業への支援の在り方とか、そして国境措置の在り方などの検討を踏まえまして、委員がおっしゃられましたような報告書になったわけでございます。
 この報告書の中で具体的に今のようなシステムをつくり上げろといったわけではございませんけれども、消費者に、消費者の要望にこたえた製品が市場で評価され、蚕糸業の収益が適切に配分されることによって、繭、生糸の生産費が補償されることが基本であるという考え方、その考え方に即して、蚕糸業支援の負担の在り方と併せて検討していくことが必要だといって、その検討の方向を示しながら報告がなされていたわけでございます。
 そういう報告を受けまして、農林水産省におきまして、具体的にそれではどのような新しいシステムをつくっていくべきかということを議論をした結果で、今のような今後の具体策の検討に当たっての留意事項として、この報告書にありますように、生糸の輸入制度及び輸入糸調整金の在り方について、蚕糸業支援の負担の在り方と併せて検討をしたわけでございまして、政府部内でこれらを検討した結果、輸入糸の調整金を廃止して、これに伴って機構の蚕糸関係業務を廃止するという結論に至り、新しいシステムを組み立てることとしたわけでございます。

○紙智子君 政府部内でという話がありましたけれども、要するに、この蚕糸業振興の基本戦略話し合って、この中では、生糸の輸入調整法の存続、それから農畜産振興機構による蚕糸関係業務の継続というのは、この話のときには前提になっていたんじゃないですか、元々は。

○政府参考人(内藤邦男君) 再度申し上げますと、この検討会の最終報告書をよく読んでいただきますと、四のところに今後の展開方向書いてございます。そこに、川上・川下連携システムの構築ということがうたわれておりまして、先ほど大臣答弁しましたように、その第二パラのところで、生産、流通、販売それぞれの努力に見合った適切な収益配分がグループ内で行われ、それぞれの経営の安定が図られることにすることが重要であると、これが基本的な方向として議論されたわけでございます。
 そのためにはどうすればいいかということを、いろいろ具体的なのがその次に書かれてございまして、そうしますと、当然、今の仕組みとかなんとかについてもいろいろ考えなければいけないだろうということで、留意事項としまして、そのなお書きについて、輸入制度、輸入糸調整金の在り方については今後検討していくことが必要であるということでございますので、そういうことも視野には、検討していかなければいけないということで視野にはありましたけれども、その方向性、具体的なものについてはなお検討すべきであるということでございまして、決してそれが前提になっていたということではございません。

○紙智子君 生糸の輸入調整法は、第十二条と第十三条、ここで、外国産繭と外国産絹糸の輸入急増によるこの生糸生産被害防止のための規制措置がとれる規定がありますよね。これらの規定と輸入調整機能を持っているこの生糸輸入調整法を廃止するということは、今本当に存亡の危機にある日本の生糸の生産にとってプラスになるものではないと思うんですね。廃止してプラスになるということであれば、どういうことがプラスになるのかということを明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人(内藤邦男君) 委員御指摘のように、確かに十二条、十三条で売買の措置がございますけれども、昨今の輸入状況それから国産の繭、生糸と輸入生糸との競争関係等を勘案しますと、既にこういった方法によって国内の生糸の安定あるいは価格の安定を図っていくということは非常に難しくなってきているというのが実情でございます。
 したがいまして、むしろそういった価格、そういった形で、国境措置あるいは繭代補てんという形で経営の安定を図っていくということが難しいという、そういう実態を踏まえまして、私ども今度の仕組みを考えたわけでございます。今度のように、こういう川上・川下連携をしまして、付加価値を高め、そして消費者にきちんとその評価をしていただくようにすれば、当然高く売れるわけでございます。そうすれば、原料代、原料である繭についても、当然今以上の繭代が確保できる。また、絹織物業者にしましても、製品輸入と対抗していくという意味においては、国産の繭を使ったという希少性、あるいはそういった消費者に訴えるということをアピールしまして、より高い価格で買っていただけるようなものを作っていく。そうすれば当然川下、当然そうすれば、こういった連携をすることによって繭の生産者、それから絹織物業者、双方にそれぞれメリットがある、それぞれ所得を上げることができる、そういう方向を目指していこうというものでございます。

○紙智子君 どうも私はそういうふうに思えないんですけどね。やっぱり、結局じり貧の方向に行くんじゃないかという気がしますし、補正予算で三十五億円措置しているんだけど、結局、これ法案廃止の言わば手切れ金のようなものじゃないのかなというふうに思うわけです。継続的にこれが日本の生糸の生産を守り発展させる措置だというふうには思えないわけですね。
 それから、農畜産業の振興機構に代わって業務を行うのが今度は大日本蚕糸会ということですよね。この大日本蚕糸会のホームページ見てみますと、財政基盤としても決して盤石ではないと思うんですよ。この中のホームページに書いてあるのを見ますと、結局貸しビル業で収入を得ているわけですよね。ビル自身がもう老朽化もしてきていると。そういう中で将来的には厳しいということも見解として出されているわけです。
 だから、本来でいえば、やっぱり国が責任を持ってやるべきなんじゃないのかと。国が責任を持ってやるべきにもかかわらず、こういう形で、さっき手を引くように見えるんじゃないかという話もありましたけれども、このままやるということになると日本の生糸の生産というのは滅びてしまいかねないんじゃないかというふうに思うわけですけど、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) 今、委員がホームページで索引されてお話がありましたとおりで、大日本蚕糸会は、昔の蚕糸会館、有楽町のあれを建て替えまして、そのビルの貸し料によってその基盤を維持しているわけでございます。それによりまして研究所も二つ抱えて、もう精いっぱいの努力をしていると。おっしゃるように、いずれのときかビル自身も建て替えたりするような状況が必要になってくると思いますが、それらは、蚕糸関係の皆さん方がその大日本蚕糸会が果たしております役割というようなものを御理解いただきながらみんなで支えていかなきゃいけないことだと思っております。
 今回の事業を、これは公募によって大日本蚕糸会が手を挙げ、そして審査をした結果、やはりいろいろな知見を有し、かつまたそれだけの能力のあるのは大日本蚕糸会しかやはりいないなという判断で大日本蚕糸会にこれらの新しい事業をしてもらうようにしたわけでございます。この事業、三十五億円から成る事業では、実は役員だとかそういうような報酬などはこの事業からは一切充てないと、大日本蚕糸会は今までの経営の中で運用をしていきまして、あとは、この事業に伴う旅費でありますとかあるいは研究費でありますとか、そしてこれらを業務を執行するに要する経費に充てるというふうに仕組んだわけでございまして、大日本蚕糸会の方も意を決してこの事業を責任を持ってやろうという、そういう意欲で取り組んでいくという、そういう決意を持っているわけでございます。
 その意味で、それらの今置かれたような蚕糸関係の業務を考えますと、今までの機構でありますとか、あるいはまた委員がおっしゃられたような政府が直接やるとかいうようなことではとても対応し切れないような多方面にわたりますコーディネート、産地から消費、絹織物、織物あるいは製品作りから流通の問屋、小売、そういうような幅広いものをコーディネートしていくという、そういう役割を国あるいは国のかかわる独立行政法人でこれをやるのはとても無理だという判断をいたしておりまして、その意味では、この明治以来、長い間の知識、経験、そしてまたいろんな指導、研究の実績のある民間の団体として大日本蚕糸会が実施することが、より効率的に実施することが可能であり、そういう知見を有効に活用することによって高い事業効果が得られるということを考えまして、民間団体にこれを行うようにしたところでございます。
 この三十五億円が、委員がおっしゃるように、これをもって手切れ金にするということではないかという手厳しいお話がございました。私の方としてはそんなことを今考えているわけではございませんが、これだけの三十五億円の資金を有効に活用をいたしまして、対策を計画的に実施を図ることによりまして、今言いました川上から川下に至るまでの連携を強化して、高付加価値の製品を作り上げてお互い分配していくことによりまして、養蚕農家が安定的に養蚕を続けられるようにしていきたい、そういう意味で、言わば当初のこれが軌道に乗るまでの資金として三十五億円を措置したものでございます。

○紙智子君 今回のこの法案の廃止ということが蚕糸業界そのものにとってやっぱりプラスにはならないというふうに思います。そういう意味では、やっぱり賛成できないなということを申し上げまして、質問を終わります。

○委員長(郡司彰君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○紙智子君 生糸の輸入に係る調整等に関する法律を廃止する法案に反対の立場で討論いたします。
 反対の第一の理由は、生糸輸入調整法は、生糸の輸入調整を行い、輸入に際し、関税相当量を課すことによって国内生糸生産を保護する機能を持っています。さらに、第十二条と第十三条で、外国産繭と外国産絹糸の輸入急増による生糸生産被害防止のための規制措置がとられる規定を持っています。
 これらの規定と輸入調整機能を持っている生糸輸入調整法を廃止することは、日本の存亡の危機にある生糸生産にプラスになるものではなく、賛成することはできないということです。
 反対の第二の理由は、今回の生糸輸入調整法廃止は、生糸生産の国内事情に基づくものではなく、昨年十二月に閣議決定された独立行政法人整理合理化計画によって、農畜産業振興機構が現行の中期目標期間の終了時に蚕糸関係業務について廃止するとされたことによって持ち出されたものであるということです。
 昨年三月には、今後の蚕糸業のあり方に関する検討会最終報告書が取りまとめられ、国産ブランドの確立を基本的な方向とする今後の蚕糸業振興の基本戦略を打ち出したばかりでした。この最終報告書でも、生糸輸入調整法廃止や農畜産業振興機構の蚕糸関係業務の廃止等は全く触れられていないし、提案もされていません。要するに、今後の蚕糸業振興の基本戦略では、生糸輸入調整法の存続と農畜産業振興機構による蚕糸関係業務の継続が前提となっていた。今回の廃止法は、このような蚕糸業振興にとっても障害を与えるものであり、賛成することはできません。
 以上の反対の理由を述べて、討論といたします。