<第169回国会 2008年4月10日 農林水産委員会 第7号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。今日は、全農さん、全中さん、四人の参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。
 既に各委員の方から、このたびの米価下落に伴う緊急対策、そして今後の対策、生産調整にかかわっての質問などが行われています。
 それで、我が党も、昨年米価が下落した際にやはり緊急の対策として政府に対して備蓄の積み増しということが必要じゃないかということで、米価ずっと下がってきて、もう生産費を割る事態ですよね。平均価格で二千円も下回るという事態になっている中で、これ以上下がったらもう本当に続けられないという生産者の声もある中で、やっぱり何らかの対策を取らないと大変だということで、質問を去年予算委員会でしました。
 そのときに農水大臣は、備蓄制度そのものは価格調整の仕組みじゃないと言いつつも、すき間があるということで、七十七万トンまで買い入れているわけだけれども百万トンまで買えるというふうになっているわけだから、そこを使って、その範囲内でという形で、二十三万トンですか、余裕あるということだったわけで、そのことと併せて政府米の放出もこの際やめたらどうかという話もしまして、それも制度の中で、運用の中でということで、そういうことで対策は取られて歯止めが掛かったということについては、私はこれ良かったなと思っているわけです。
 ただ、私自身もそのやり取りして、最終的には三十四万トンになったというこのやっぱり過程というか、どういうふうな経過でそういうふうに決まったのかということもよく見えなかったですし、その意味では、その決定の経過ですとか明らかにされていくことだとか、それからやっぱり税金が投入されているわけですから、それが実際どうだったのかという検証や、それからどういう効果があったのかとか、こういうことがちゃんと透明性を持って説明されないといけないことだというふうに思います。そういう意味では、先ほどもやり取りがあって、やっぱりその処理が約束どおりにいかなかったという問題などについては厳しく総括をして、これからの教訓にしていかなきゃいけないだろうと思います。
 ちょっと何度も繰り返されているんですけれども、主に教訓にしなきゃいけない点について、全農さんにまずお伺いしたいと思います。

○参考人(米本博一君) 教訓と言われるわけでございますが、十一月九日にふるい下でやろうと決めた後、組織、各県にそういう方針を示して、県でまた農協を集めてカントリーエレベーターのふるい下だとか、それから県によっては農協ごとに目標数量を決めてみんなでとにかく集めようと。農家に茶わん一杯持ってきてもらおうみたいなこともやったり、いろいろ運動でやってまいりました。
 ただ、運動でやってまいりましたが、先ほど言いましたように、我々の集める農家にお支払いする価格は六千円プラス千円の七千円と、こういうことの中で、それ以上に相場も上がったということの中で、とにかく頑張ろうということだけで三月まで来てしまったわけでございますが、それだけではやはりやり切れなかったということです。そこのところが一番の総括かというふうに思っております。

○紙智子君 これからの対策の問題も話いろいろされていて、二十年度産の計画生産の実効ということもお話しされているわけです。
 生産調整というのは、なかなかやっぱり現実は本当に大変だというふうに思いますね。これまでもずっとそういうことというのはあるわけですけど、やっぱりいろいろ苦労する背景というのはあるわけですけれども、現実には、減反ということでいえば大変な面もいろいろあるんですけれども、見通しとしてはどういうふうに思われていますでしょうか。これは全農さんと全中さんに、両方にお聞きします。

○参考人(冨士重夫君) JAグループでは、一月に全県の中央会会長会議を開きまして、二十年産に向けた計画生産の徹底と水田農業の確立に向けたJAグループの取組方針ということで、グループ全体の二十年産に向けたこの計画生産の取組の方針を決定しております。その方針に基づきまして、今、全都道府県、全JAでの二十年産米の計画生産の達成を目指して、JA、県、全国段階においてかつてないような今取組を展開しておる最中でございます。
 それぞれ各段階で、推進体制、人の体制をきちんと整備して、それから各県、各地域ごとに重点転作作物を設定する。それから重点推進地域ということを設定するということなどして、各県ごとに行動計画というものを立てて、その進捗状況を播種前でありますとか播種後だとか、そういう形で時期別にそれぞれ行動計画を点検しながら生産調整の達成に向けて、今全力を挙げて取り組んでおります。
 いずれにいたしましても、二十年産米計画生産の実効確保を図り、需給と価格を安定させることが極めて重要だというふうに認識しております。そういう意味で、行政、関係機関と連携して、より一層計画生産の徹底に向けて全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○参考人(米本博一君) 全農としては、とにかく生産調整ができなければ、今は需給で価格が決まる仕組みだと、政府米の買入れはもう百万トンの水準になっているということでありますから、そういうことになりますんで、そういうことをまず農家に理解をしていただかなきゃならないんだというふうに思っています。
 そういう上で、じゃ、転作作物をまず作っていただく。麦、大豆、今から、だから大豆が中心に拡大になると思います。その大豆の取扱いを全農できちっとやると、だから安心して作ってくださいということもやらなきゃなりません。
 それから、えさ米でございます。えさ米は初めて入った試験的取組でございますんで、理解を得ることが大事でありますが、えさ米も作っても、近くに畜産農家がいればその方とやれるわけでございますが、そういうような米だけの地帯もございます。そういうところは全農の方で全国スキームをつくって、全農のえさ工場もございます、商系のえさ工場にも協力していただいて、そういうスキームもつくって、安心して作っていただいても大丈夫だというような生産、集荷、そういう供給体制を組みたい。
 それから、ホールクロップサイレージだとか、そういうのをやろうとすると、専用農機みたいなのが要ります。これをどうすればいいのかというようなお問い合わせもあります。こういうところ、それから営農体系がどうなるかという質問もあったり、やります。全農は事業連でございますんで、まさにそういうところの、私は米担当常務でございますが、米穀事業だけじゃなくて畜産、生産資材、園芸農産、それから肥料農薬、こういう各部門を横断したそういう本部をつくりました。そういうところで農家のそういう転作をするというところを支援してまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 我が党は、三月七日の日に農業再生プランというのを発表しました。これは全中さんにもお届けしていろいろ説明させていただいたんですけれども、この中でやっぱり生産調整について、米については転作作物への手厚い支援と並行して実施するということを提言しているわけです。
 それで、さっきもちょっと話あったんですけど、まずは需給というか、米を食べるというか消費そのものがすごく下がっていて、ピークのときの五二%までということがあるので、米の需給拡大に力を入れると、これは本当に大事なことだというふうに思っているんですよね。それを優先しつつ、その生産調整を行う場合は、未達成とか未達成地域に、補助金カットだとかこういうふうなやり方ではなくて、今もちょっと紹介がありましたけど、転作作物の条件を思い切って有利にして、農家が自主的、自発的に選択できるようなそういうやっぱり方向が必要だということと、加えて、水田、稲作が適している我が国の条件を生かして、今話もあったけれども、家畜用のえさにできる発酵飼料の稲ですとか飼料米とか、こういう実用化に力を注いでいくというのを提案をしています。
 そして、これについては、今もお話ありましたけれども、全中さんも全農さんも飼料米の問題も、今日も日本農業新聞に載っていましたけど、取り組んでいくという方向で進めやすくなるんだろうと思うんですけど、これを発展させていくということでは何が必要かということについて双方から一言ずつお願いいたします。

○参考人(冨士重夫君) 二十年産米においての飼料用米につきましては、去年措置されました地域水田農業活性化緊急対策への五百億でありますが、これとあと、二月の畜産のときに措置されました飼料用米導入定着化緊急対策事業、これを活用して全国一元的な生産から集荷、販売までのスキームを構築して取り組んでいきたいというふうに考えております。
 そして、将来的にではありますが、今世界的に穀物需給が逼迫する中で、我が国における自給飼料生産というものも極めて重要であります。この転作の水田、我が国の貴重な財産である水田を最大限活用すると、そして水田で、ホールクロップサイレージ、飼料用稲というのはいわゆる連作障害を起こさない形で、稲作で転作ができるという意味で、この飼料用米なりホールクロップサイレージを戦略的に位置付けていくことが極めて重要だと思っております。
 そういう意味で、飼料用米、非主食用の拡大ということに戦略を持って継続的に取り組んでいくことが極めて大事だというふうに思っております。

○参考人(米本博一君) 飼料用米をやるに当たって、今年はまず農家の理解を得て試験的にという形にやっぱりなってくるのかなと。ただ、これ今主食用の米が余っているから飼料用米だというだけの発想でやっていくと、飼料用米を作る農家、それから使われる畜産農家、それぞれいろいろ工夫をして、やっぱり飼料用米を使うと肉の質が変わったり、いろいろやるから、配合飼料の設計も変えたりいろいろ工夫をしながらやっているわけでございます。
 だから、そういうのを考えると、これが短期的な形での取組でなくて、いろいろ今年一年やる中で課題も恐らく出てくると思います。ただ、それでもう課題が出てきたからやめるということじゃなくて、もう少し中期的な、五年、場合によっては十年のスパンも含めて、我が国の水田を守ってやっぱり我が国の自給率を上げていくというような、そういう視点も含めて国民の理解と当然生産者の理解も得てやっていくということが大事だと思っておりますし、そういうような観点で進めていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 せっかくの機会なのでもう一つお聞かせ願いたい、意見を聞きたいと思うんですけど、我が党の再生プランの中で食料主権ということについて押し出しています。それで、食料主権ということでいうと、各国が輸出のためではなくて自国民のための食料生産を最優先にして、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利と。
 それで、食料自給率が今日本は三九%ということなわけですけれども、必要な国境措置を撤廃をして国内生産の縮小を放置したままにしておいたら、重大な危機に直面するというふうに思うわけです。今各国でもこの食料主権を保障する貿易ルールの確立ということが流れとしても出てきているわけですけれども、この立場に立ってWTOの農業協定見直しがされる必要があるんじゃないかというふうに思うわけですけど、これについての御意見を、全中さんと全農さんからお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(冨士重夫君) 先生おっしゃるように、JAグループでも世界各国の多様な農業の共存という基本的な考え方の下で、公正でバランスの取れた農産物の貿易ルールを求めてきております。
 そういう取組の中で、昨年六月には全中を含みます世界五十四か国の農業者の代表がWTO農業交渉に向けた共通のポジションとして共同宣言を採択する取組を行いました。その中で、すべてのWTO加盟国が十分な国内生産を維持し、食料安全保障を確立する権利を有する、すなわち各国の食料主権が尊重されるべきであるということをこの五十四か国の共同宣言の中で確認をしております。
 地球規模で人口増加、食料供給、気象変動、農地面積、限られた農地面積等々考えれば、食料輸入国もその持てる農業生産力を維持向上させなければ世界的なレベルで食料需要を賄うということはできないというふうに考えます。そういう意味で、JAグループとしてもこの食料主権の考え方を基に、WTOやEPA交渉を進めるべきだというふうに考えております。

○参考人(米本博一君) 全農もJAグループの一員として、今全中が述べたとおりでございます。

○紙智子君 ありがとうございました。