<第168回国会 2007年12月13日 農林水産委員会 第8号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 質問の時間をお与えくださいましてありがとうございます。早速、それでは提案者に質問をしたいと思います。
 私ども日本共産党は、野生鳥獣による農作物などの大きな被害が出ている実態がある下で、その被害防止対策というのがこれ必要だと、当然だというふうに思います。そのための対策は、駆除一辺倒の対応ではなくて、野生鳥獣の生息地の管理や鳥獣の保護管理計画に基づいて駆除と保護管理が総合的に取り組まれなければならないというふうに考えているわけですが、この点についての提案者のお考えをお聞きしたいと思います。

○衆議院議員(宮腰光寛君) 今回の特措法につきましては、鳥獣保護法と相まって、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止を実現しようとするものであります。
 したがいまして、本法案におきましては、農林水産大臣の定める基本指針については鳥獣保護法の基本指針と、また、市町村が定める被害防止計画につきましては、都道府県の定める鳥獣保護事業計画や特定鳥獣保護管理計画とそれぞれ整合性の取れたものでなければならないこととしております。
 御指摘の総合的な取組の重要性につきましては提案者としても十分に認識しているところでありまして、被害防止計画には、捕獲ばかりではなくて、防護さくの設置等鳥獣の捕獲以外の被害防止施策についても定めるものとしております。さらに、総合的かつ効果的に被害防止施策を実施するため、被害の状況、鳥獣の生息状況等を把握するための調査に関する規定を設けるほか、その原因の究明等に関する規定も設けております。また、人と鳥獣の共存に配慮した生息環境の整備及び保全に関する規定や、被害防止施策を講じるに当たって生物の多様性の確保に留意すること等の規定を設けております。それに加えて、附則において、鳥獣保護法の改正を行い、鳥獣の生息状況等についての定期的な調査に関する規定を設けたところであります。
 以上のように、提案者といたしましては、今回の特措法と鳥獣保護法が相まって、総合的かつ効果的な被害防止対策が講ぜられることとなると考えております。

○紙智子君 もう少しお聞きします。
 荒廃している奥山や里地などの生息地の管理、それから十分な予算を伴う効果的な防除対策、今一定触れられたところもありますけれども、野生鳥獣保護管理のための専門家の育成ですとか、農業共済による被害補償制度の拡充、それから野生鳥獣との共生を旨とした被害補償制度の確立などの総合的な被害防止対策が必要だというふうに思うんですけれども、この点については今後の対応をどのようにされるおつもりでしょうか。

○衆議院議員(宮腰光寛君) 紙委員御指摘のとおり、鳥獣による被害を効果的に防止するためには、被害防除や鳥獣の生息地管理及び被害対策に関する専門家の育成等の取組を総合的に実施していくことが重要であると考えております。
 このため、農林水産省においても、鳥獣害対策予算につきまして、十九年度予算で一・九億円だったものを二十年度予算要求においては二十八億円と大幅に拡充をし、被害の現場である市町村が防護さくの設置等の被害対策に総合的に取り組むことができる事業を要求していると承知しております。また、特別交付税制度の拡充により市町村の負担軽減を図ることとしております。そのほか、普及指導員や市町村職員等を対象とした技術研修会の開催等、被害現場における専門家の育成確保を一層推進すべきであると考えております。
 そして、御指摘の農業共済による被害補償制度につきましては、現在、鳥獣による被害を補償するための支払が大幅に増えていると認識しておりますが、農業共済制度が今後ともしっかりと持続していくためにも、農業被害の発生そのものを防止すべく、総合的な被害防止対策を実施していくことが重要であるというふうに考えております。

○紙智子君 今回の鳥獣被害特措法によりまして、鳥獣捕獲の許可の権限が都道府県から今度は市町村へということで委譲されるわけです。市町村が防止計画を策定をして、そしてその判断で捕獲できるようにすると。そうなりますと、捕獲駆除一辺倒になるおそれも危惧されているわけです。
 鳥獣被害の著しい地域でそれぞれの市町村が徹底的な駆除を進めるということになりますと、鳥獣保護法に基づく総合的な保護の管理の施策、これが機能しなくなるのではないかという心配もあるわけです。その点、どのようにお考えでしょうか。

○衆議院議員(宮腰光寛君) この法律案につきましては、趣旨説明でも御説明いたしましたとおり、日々鳥獣による農林水産業等に係る被害に苦しんでおり、その対策に腐心しております市町村が主体的に被害防止施策に取り組むことができるようにすることを基本とするものであります。
 農林水産業等に係る被害の防止についての鳥獣の捕獲の許可権限につきましては、現在も相当程度市町村に権限が委譲されているところでありますけれども、現地調査等におきましても、いまだ委譲されていない市町村やその地域の農林漁業団体から強い要望が出されていると聞いております。
 本法案におきましては、そのような状況を踏まえ、鳥獣の捕獲の許可権限が市町村に委譲されることができる仕組みを設けておりますが、許可権限の委譲については都道府県知事の同意が必要であること、また、鳥獣の保護を図る観点から、必要があるときは都道府県知事が指示を行うことができるなど、その適正化が図られることとなっております。
 そして、捕獲以外の手段も被害防止施策の重要な柱として位置付けていること、鳥獣保護事業計画との整合性の確保につきましては先ほど述べたとおりでありまして、さらに環境大臣も意見を述べることができるなど、鳥獣保護法に基づく保護管理の各種施策とバランスが取れたものになっているというふうに考えております。

○紙智子君 私どもといたしましては、この市町村の被害防止計画の策定については、都道府県の鳥獣保護事業計画に基づいて、野生鳥獣の専門家や研究者も参画をして科学的に作成をし、野生鳥獣の個体数の調整を含む特定鳥獣保護管理計画に沿ったものにすべきであると、そして、捕獲の実施に当たっても、鳥獣の専門家の意見を聴いて都道府県や関係自治体と協議をし慎重に行われなければならないというふうに考えておりますが、その点についていかがでしょうか。

○衆議院議員(宮腰光寛君) 市町村の被害防止計画の作成につきましては、先ほど申し上げましたとおり適切に行われるものと考えておりまして、その実施に当たっては、必要に応じ都道府県や関係自治体との連携協力が行われることになるものと考えております。
 なお、適切かつ効果的な被害の防止のためには、その関連する業務に携わる者が知識、経験を有していることが重要であることから、衆議院農林水産委員会におきまして、政府及び地方公共団体は研修の機会の提供、技術的指導を行う者の育成その他の当該業務に携わる者の資質の向上を図るために必要な措置を講ずる旨の決議を付したところでありまして、御理解をいただきたいというふうに思います。

○紙智子君 法律が通りましたらこれで終わりということではなくて、様々な懸念があるわけですから、払拭されるように今後とも努力を心から要請いたしまして、質問といたします。