質問主意書

質問第七〇号

旧北部軍司令部防空指揮所保存に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十一月三十日


紙   智  子   


       参議院議長 江 田 五 月 殿

<旧北部軍司令部防空指揮所保存に関する質問主意書>


 札幌市豊平区月寒に所在する旧北部軍司令部防空指揮所は、北海道における貴重な軍事遺跡であり、地元の月寒地区町内会連合会を始め産業考古学会など各種歴史関係団体が保存を強く求めているものである。ところが、国は当該施設跡地に国家公務員宿舎を建設するため建物を急ぎ解体しようとしている。
 札幌市内に残存する数少ない戦跡である旧北部軍司令部防空指揮所の保存を求める観点から、以下質問する。

一 札幌市教育委員会は、二〇〇二年十二月、文化庁に対し保存のための詳細調査を求めているが、文化庁が選定する全国五十箇所の詳細調査対象には入らない状況である。しかしながら、その文化財としての価値が否定されたものではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 札幌市豊平区月寒地区は、明治時代からの歩兵第二十五連隊の駐屯地であり、付近一帯に司令官官舎(現つきさっぷ郷土資料館)、錬兵場(競輪競技場)、給水塔(西岡水源池)などが存在し、これら軍施設について民間団体が克明な調査を続けてきた。旧北部軍司令部防空指揮所はその中でもシンボル的な建物である。北部軍司令部本部などは残存しないものの、旧防空指揮所は歴史の証人として価値あるものと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 当該土地、建物は北海道財務局の管理財産であり、「国有財産の有効活用に関する報告書」(二〇〇七年六月)に基づき、国家公務員の合同宿舎建設予定地となっている。建設計画の事業完成年度は二〇一五年度であり、札幌の国家公務員宿舎建設については、まだ予算措置もされていない。にもかかわらず、国は本年度中に建物の解体を行うために解体工事の請負入札などの手続を進めている。当該土地面積は、約三万一千五百平方メートルもあり、その端にある旧北部軍司令部防空指揮所の敷地面積は全面積の三十分の一の一千平方メートルに満たない。旧北部軍司令部防空指揮所を残したままでも十分に国家公務員宿舎建設は可能であり、国家公務員宿舎建設と旧北部軍司令部防空指揮所保存の両立が可能であると考えるが、政府の見解を示されたい。また、両立の可能性について国は検討したことがあるか明らかにし、両立ができないとするのであれば、その理由を示されたい。

四 国は、解体工事請負契約の締結を中断して解体物件を見直し、旧防空指揮所を除外して入札公告をやり直すべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。


答弁書

答弁書第七〇号

内閣参質一六八第七〇号
  平成十九年十二月十一日

内閣総理大臣 福 田 康 夫   


       参議院議長 江 田 五 月 殿

参議院議員紙智子君提出旧北部軍司令部防空指揮所保存に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

<参議院議員紙智子君提出旧北部軍司令部防空指揮所保存に関する質問に対する答弁書>


一について

 文化庁では、我が国近代の歴史を理解する上で欠くことのできない重要な遺跡について適切な保護を図るため、平成八年度より専門家からなる「近代遺跡の調査等に関する検討会」(以下「検討会」という。)を設け、近代遺跡に関する調査を実施している。このうち、軍事に関する遺跡については、平成十七年三月までの検討会において、各都道府県教育委員会から報告のあった約六百の遺跡から、歴史的役割、保存状況等に照らし、詳細な調査が必要と認められる五十件の遺跡が選定されたところであるが、文部科学省としては、当該五十件の遺跡以外の遺跡について、文化財としての価値が否定されたものとは考えていない。

二について

 文部科学省としては、御指摘の旧北部軍司令部防空指揮所(以下「当該建物」という。)は、旧北部軍司令部の施設の一部の遺跡にとどまることから、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)に基づき国として史跡に指定し、保存すべきものであるとは考えていないが、札幌市における昭和初期の歴史的資料として一定の価値はあるものと考えている。
 このため、文化庁では、札幌市に対し、当該建物の記録を作成するよう助言し、札幌市において、記録作成のための調査が行われたものと承知している。

三について

 財務省としては、旧陸上自衛隊札幌駐屯地月寒送信所(以下「当該敷地」という。)における国家公務員宿舎の建設については、当該敷地の形状及び建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)等による建物の容積率、高さ等に関する規制を踏まえ、具体的な棟の配置等を検討したところであるが、その結果、当該建物が所在する場所を利用せずに当該敷地において所要の国家公務員宿舎の戸数を確保することは困難であると判断したものである。

四について

 財務省としては、当該敷地については、「国有財産の有効活用に関する報告書」(平成十九年六月十五日国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議報告)の附表二において示された計画に従い、国家公務員宿舎の建設を円滑に行うため、あらかじめ今年度内に当該建物を含む既存の工作物を解体することが必要であり、入札公告をやり直すことは困難であると考えている。