<第168回国会 2007年11月6日 農林水産委員会 第5号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。前回に引き続きまして、また質問をさせていただきます。
 それで、農産物の輸入自由化とこの民主党の戸別所得補償法案ですね、この関係についてもう少し検討させていただきたいと。
 仮に、仮にWTO協定で完全自由化になったとした場合に、安い輸入農産品が入ってくると当然のことながら国産農産物の価格が大幅に下がると。国内の農業者の所得にストレートに影響を受けることになるわけですけれども、そのときに、この法案でその時点で発動できませんよね。というのは、販売価格という、さっきも話がありましたけれども、全国平均の販売価格を統計的に確定するということになるとやっぱり一年間掛かりますから、そういう点ではタイムラグがあるんじゃないかと。すぐそれに対して発動というふうにはならないんじゃないかと思うんですけれども、これについていかがですか。

○平野達男君 まず、すぐに発動できるか、今その前提としてWTOドーハ・ラウンドが決着して関税が一気にゼロになっちゃったというようなことの想定だったと思います。そういう前提で話をするのが妥当かどうかよく分かりませんが、少なくとも、例えば米についていきなりゼロになったということになりますとこれは大変なことになります。まずそういうことを前提として議論するというのは余り意味のあることではないんではないかというふうに思っています。
 関税が引き下がることによって、繰り返しになりますけれども、まず所得補償します、関税が下がります。その結果として、先ほど来何回も申し述べておりますけれども、これ以上自給率が低下する、農村が疲弊するというような状況だけは絶対に避けねばなりません。関税が下がったとしても、これは選択肢の問題ですよ、選択肢の問題ですよ、所得補償をすることによって農業が守られるというのであれば、交渉の結果としてそうなったんであれば受け入れる余地はあるのかもしれません。だけれども、これは関税を引き下げることを容認するんじゃないですよ。しかし、関税が引き下がって所得補償をしても、これでも駄目だという場合には、日本は何としても関税を守らないかぬと思います。いろんなそういう選択肢を、選択肢というか、そういう状況状況によって判断をすることだというふうに思っています。
 ちなみに、繰り返しになって、冒頭の話へ戻りますが、いきなり関税がゼロになるということは、日本のやっぱり交渉官としてはそんなことは絶対受け入れないと思いますし、あり得ないというふうに思っていますので、そこのところの前提に立っての議論はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 なかなか想定しづらい、いきなりというのはねという話ではあるわけですけれども、しかしながら、守るべきは守ると言いつつも、やっぱりWTO、FTAについて一応その推進の立場ということもありまして、交渉によってどういう事態かということもあるわけですけれども、もちろん我々も当然ストップしようという立場ではありますけれども。
 聞きたかったのは、例えば販売価格と生産費の差額について支給するという法律ですよね。そういうことでやった場合にも一年後に出るということになるわけですから、そうすると、その間は、一年間はどこからも出ないと。農家にとってみればそうですね。生産者はそういう事態になると。その間、じゃ、どうするのかという話なわけで、大変になってしまうと離農する農家も出てこざるを得ないんじゃないかと。
 そうすると、生産費と販売価格の差額を補てんしていくというこの法律で自給率を引き上げるというふうに言ったとしても、これは初年度から、もしそうなった場合ですけれども、初年度から自給率は下がる事態になるんじゃないのかなと思いますが。

○平野達男君 そういう緊急事態が起こったときのために政府があって、多分大臣がおられるんだと思います。
 今の米の米価の下落についての緊急対策、あれがいいかどうかというのは私もいろいろ御意見はございますが、論評は差し控えさせていただきまして、そういう対策を取っていまして、そういう緊急事態については法律でない緊急対策として何かの発動をするということになるんだろうと私は想像いたします。

○紙智子君 そうすると、緊急対策なんだということなわけで、この法律とはまた別枠でということになるわけですよね。
 つまり、結局、生産費と販売価格との差額を補てんすることによって食料自給率を引き上げるというこの法案の仕組みというのは、やっぱり現状の国境措置がこれが維持されていて初めて成り立つものじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○平野達男君 そのことについても再三御答弁申し上げましたけれども、今のこの法律の枠組みは、WTO交渉でいえばガット・ウルグアイ・ラウンドの枠組み、それを前提にして考えていまして、それが大きく変わったときの状況については今のところ想定外だということであります。

○紙智子君 そうなりますと、前回も私ちょっとこの質問をして答弁が返ってきたわけですけれども、そのときにも、例えばWTOでもって一定の譲歩を迫られてしまって下がったと。関税で守るのと関税だけではなくて所得補償というふうなことで言われたんだけれども、関税で守られない場合は直接支払という形でという話をされていたように私は記憶していて、そういう説明の場合は、WTO交渉で関税が下がってもこの法案で対処できるというのはちょっと違ってくるんじゃないかなというふうに思うわけですよ。
 国境措置がなくなってしまうと、これはやっぱりこの法案でも日本農業の維持発展、食料自給率を上げるということはできなくなるんじゃないかというふうに思うんですけれども、これはどうでしょう。

○平野達男君 まず、もう御承知のように、関税と直接支払の違いは何かというと、関税の場合について、関税の、米の例を取って考えれば分かるわけでありますけれども、ミニマムアクセス以外に米が入ってこないということであれば米の国際価格で国内市場価格が形成されるわけではない、理屈上は。その結果として、米価は国際価格に比べてかなりちょっと高い水準に置かれます。その高い水準に置かれたやつを、消費者が米を買いますから、その高い価格を払って米を買うと。その販売によって農業生産が持続されるという、そういう構図ですね。
 関税が下がりますと、国際価格が国内の農産物の価格にもろに効いてまいります。つまり、価格が国際価格に直接の影響下にさらされるということですから価格が下がります。その場合に何をするか。直接支払でそれで農業が守れるんであれば、直接支払で守れるという選択肢はあり得ると言ったんです。
 ところが、何ぼ直接支払やったとしても、例えば関税がゼロになったときに向こうがダンピング掛けてきて、市場を開拓するために、もう何ぼでもいいから、とにかく安いから、市場をまず席巻するというような措置に出てこないとも限らないです。そこで、品質で対抗できるという話もございますけれども、それがもし深刻な大きな影響が与えるということであれば、これは先ほど言いましたように、何回も言いましたように、関税を引き下げるということは体を張って守らないかぬと思います、関税を守るということは。
 核は、私は、もう特に私の思い入れが強過ぎるかもしれませんけれども、こんなに自給率下がって、繰り返しになりますけれども、農村が疲弊しているという中で、これ以上のダメージを受けるような措置というのはやっぱり何としても国を挙げて、政治の決断として、決断だけじゃなくて行動力をやっぱり示して、守るべきは守っていくんだということだということについては多分考え方は一致しているんじゃないかと思います。

○紙智子君 そうすると、考え方ということで一致しているという話があるんですけれども、やっぱり国境措置ということでいうと、これがなくなってしまったときには、この今の出している民主党さんの法案でやっぱり自給率を上げていくとか維持ということは難しいという点では同じということで考えてよろしいですか。

○平野達男君 理屈上は自給率を上げるということは十分可能です。ただ、違いは何かといいますと、もし今麦なんかを、例えばマークアップ全部やめるとか関税をゼロにするとかいうことで完全に国際市場の麦価のあれで形成されるということにすると、補てんの価格がどんと増えてまいります。だから、予算が掛かる、お金が掛かってくるということです。だから、ここは直接支払にすれば、繰り返しになりますけれども、農業を生産するためにはその農業を維持するためにだれかがコストを負担しなくちゃならない、それは農産物を買うときの消費者が払うのか、あるいは場合によったら税金としてのお金を払うかというその選択なわけです。
 繰り返しますけれども、直接支払で守れない場合もあるんです、何ぼお金やったとしても。向こうはダンピング輸出なんか掛けてくるかもしれませんから。そういったことに対しては、やっぱり関税の障壁を張って絶対これは駄目だということで守らなくちゃならないということで、その基本は、繰り返しになって恐縮ですけれども、農業、農村を守るということが大前提に立っているということです。
 それから、WTO、FTAについては、これも何回も申し上げましたけれども、国際交渉をやるときはもう絶対頑張ってくると言って政府はやります。当たり前です。何としても、要するにWTOの実を取りながら日本の農業を守りたいとみんな言っていますから。言って行きますけれども、農業交渉、交渉事でありますから、結果として多少の譲歩を迫られてきたという歴史があるわけでして、それは多分民主党政権になったとしても、絶対今のウルグアイ・ラウンドの枠組みを一歩たりとも崩しません、米の関税については一%も下げませんと言って臨むのはいいんだけど、そのようにやれるというふうに約束するというのは、民主党政権でも多分、もちろん自民党政権でもこれはできないというふうに思います。そういったダイナミズムの中でいろいろ考えていく必要があるということを言っているわけです。

○紙智子君 我が党は、やっぱりすべてもう自由に入ってこれるようにしてやったとして、所得補償一本だけではもう全然、幾らお金が掛かるか分からないということになってしまうわけで、もう破綻してしまうというふうに思っております。そういう点では、国境措置が今の維持されてこそというふうになっているということでは、そういうところは一致しているというふうに思いますけれども、確認をさしていただきたいと思います。
 それから、これも前回実はもう質問したんですけれども、もう一度ちょっと質問いたしますけれども、食料自給率を上げるということにとって欠かせない飼料自給率の引上げとその段取りですね。そして、その飼料作物の対象品目、前回もお聞きしたんですけど、ちょっと十分お話しいただけなかったので、もう一回詳しく明らかにしていただきたいと思います。

○平野達男君 この法案では標準的な生産費と市場価格の差を基本としたと、何回も言って恐縮ですけれども、それがこの法案の中のキーワードというか核でありまして、飼料作物についても、デントコーンでありますとかそういった作物は対象になり得ますので、そういった概念で、考え方で所得補償をするということはあると思っています。ただ、粗飼なんかについては国産の粗飼料の方が外国産よりも安いという実態もあるようですから、そういうことであればそういった牧草についてはならない場合もあるというふうに考えていまして、今手元の中に具体的な生産費とか市場価格のデータがございませんので確たることは申し上げられませんが、考え方としてはそうなり得るということであります。

○紙智子君 飼料作物といった場合に、例えば飼料米ですね、飼料の米、こういうことなんかも、今例えば牧草、耕作放棄地などに作付けをしてやるということに注目が今当たってもきていまして、そういうので考えていったときに、やっぱり一定のお金も掛かってくるわけで、一兆円という予算なんかも法案の中で出ているわけですけれども、その飼料作物の自給率ということなんかも含めて考えたときに、どうやってそれを増やしていくのかというところについて、なかなかこれ見ているだけだと分からないものですから。

○平野達男君 これは、例えば一兆円の中で飼料作物の生産振興にどれだけの予算が回るのかというような数字が示されればこれは説明がしやすいと思うんですが、この今回の法律については、米を始めとしてすべての作物について、その補償額については専門家の意見等々を聴きながら定めるということになっておりまして、今の段階では決まっておりません。いずれ、とりあえずは一兆の枠を設定しますから、その予算の枠内で、これは正に予算の範囲内という法律になっていますけれども、それを有効に使いながら国内の飼料についても振興を図っていくという考えだということです。

○紙智子君 それからもう一つ、これは他党からもこの間質問が出されている問題ですけれども、米の生産数量目標の問題についてです。
 それで、我が党は、米の減反ということでいいますと、これは目標割当てを強制するということではなくて、やはり減反して代わりに転作する、作るもの、これによる収入のやっぱり水準がある程度見通しが立って、ああ、これなら大丈夫だなといって初めて転作というか、できるわけだと思うんです。そういうことで生産の誘導をすべきであるという考えにありますけれども、この民主党さんの今度の法案でいいますと、先ほどもちょっとやり取りありましたけれども、米の生産数量目標については、これを受けなければ米の生産に関する所得補償がもらえないということで、ちょっと確認の意味でもう一度お願いします。

○高橋千秋君 生産数量目標に従っていただいて、その制度に参加をしていただく方に払うという、そういうことには変わりがございません。

○紙智子君 そうしますと、生産者にとって、例えば米の生産数量目標ですね、この目標が当初考えていたよりももう減ると、少なくなってしまうということになったときに、ほかの作物に転作しようと思っても、それによって所得が減ってしまうというふうになる場合に、この生産数量目標で取り組めないという事態が出てくると思うんですけれども、これについてはどうするのか。ちょっとその法案というか、中身でそれについて特に何ら示されていないということもあるものですから、これはいかがですか。

○平野達男君 今の委員の御質問は、多分、政府が今やっている需給調整、あるいは私どもが生産のメリット措置を与えたとしても出てくる問題だろうというふうに思います。
 要するに、米を作らないで水田に何を作物を作るか。そのときに生産者は、まず作りやすさと併せて、どっちがやっぱり、まあ俗な言葉で言えば、もうかるんだろうかという経営の観点から判断するはずです。そのときに、米については、我々の措置の中では一定の所得補償をしていきますから、収入はある程度単位面積当たりで確保されます。しかし、将来的に見たときに、需要が減ってきますと米の作付面積も減ってきますね。減ってくることも予想されるわけです、需給調整やりますから。じゃ、そのときに、減ってきたときに、その作付けしなかったところに何を植えるかということについては、これは大変本当に大きな問題だろうと思います。
 我々は、転作作物としていわゆる生産費と市場価格の差額を基本とした補てんプラス今の産地づくり交付金的な、かつていう生産調整奨励金ですか、何だか、そういった名称なんかでやっていたと思いますが、米に代わる農産物の生産要素を加味するということで、それに一定の別な加算を、加算と考えていますけれども、加算をすることで、米並みというふうにいくかどうか分かりませんが、まあある程度の、米を作ったときの所得との差を補正するような措置をしながらそういった作物の振興を図っていく必要があるというふうに考えています。
 しかし、ただ問題は、いずれにせよコストが掛かるということでありまして、二兆円も三兆円もこれに使えるというふうにはなかなかこれまたうちらも、今の段階で発議者としては想定できませんので、まずは一兆円を確保しながら、その予算を上手に使いながら振興していくということだろうというふうに思っています。

○紙智子君 米に代わる農産物の生産、今でいうと産地づくり交付金的なものをやるという話なんですけれども、その加算措置の水準とかその中身について明確になっていないんですけれども、それどうするのかなと。これ、例えば政令だとか、どういう形でやろうとしているのかということについて、いかがですか。

○平野達男君 法律では、これは省令ですね、あっ、政令ですか、政令に委任しておりますけれども、これも大変同じ答弁を何回もやって恐縮ですけれども、こういった単価の設定については我々議員がえいやっということで決めるわけにもなかなかいかないということもございます。まず専門家の意見等々あるいはそのデータの収集等もありますので、そういったことをやりながらやって最終的に決めていくんだということ、このことについては是非御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 それじゃ、法案をめぐってはまたこの次に自給率の問題などを含めて議論したいと思います。
 それで、この後、ちょっと政府に対しての質問に変わります。
 それで、赤福それから白い恋人などの期限表示の偽装問題が相次いで起こっていると。組織ぐるみの偽装ということで、これ本当に消費者にとっても与えたショックは大きいですし許されないなというふうに思うわけですけれども、この期限表示の信頼性が本当に今大きく損なわれているというふうに思うわけです。
 それで、この期限表示の信頼性をどう取り戻すかということなんですけれども、まず流通している商品ですね、これを見て期限表示が偽装されているかどうかというのを商品を見て分かるかどうか、いかがでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) 食品の供給事業者が表示を偽装した場合、外見だけで消費者がその真偽を判断するということは一般的には困難だと思います。食品の表示については、したがって、期限表示を含めまして事業者が具体的な根拠を持って正確に表示する責任を負っていると、関係する法令を遵守し適正な表示を行う必要があるというのが基本だと考えております。
 農林水産省としては、そういう前提の中で、今、食品表示一一〇番というものを設けておりますが、この一一〇番への国民の皆さんからの情報提供、これが非常に増えております。このような情報提供に迅速かつ的確に対応するということがまず行われなければならないと考えております。二番目は、農林水産省の職員による小売店舗などの日常的な巡回調査をしっかりと実施すると。三番目は、問題を把握した場合には立入検査により書類等の根拠を精査して表示の真偽を確認するということで担保していこうとしているわけであります。
 こうした調査の結果、不適正な表示が確認された場合には、JAS法に基づく指示、公表を行うなど厳正に対処しているところでありまして、引き続き食品表示の監視活動を徹底することによりまして消費者の信頼を確保してまいりたいと、このように考えております。

○紙智子君 商品を見ただけでは偽装というのはよく分からない、困難であるということなんですけれども、例えば原産地表示の場合は、外国産を国産と偽った場合はこれは調べれば分かるわけですよね。DNA鑑定だとか科学検査で分かっていくというのがあるわけですけれども、期限の表示についてはこれは偽装表示を科学的な検査で摘発するというのはできないと思うんです。
 それで、期限表示については製造業者が今責任を持って表示するということになっていると。要するに、これ業者任せになっているんですよね、自覚的に決めるという仕組みですから。これではやっぱりいつまでたっても偽装が続くことになると思うんですよ、今のその表示の在り方で見ますと。
 それで、私は、やっぱりこの事態を変える決め手といいますかその大事な中身として言えば、製造年月日の表示の義務付け、これを今やっぱりやるべき、復活すべきだというふうに思うんですね。元々あったわけですけど、これ復活すべきだと。
 商品に製造年月日とそれから消費期限だとか賞味期限だとかいうことで併記するということをやって、それで消費者がそれを判断すると、判断に任せればいいと思うわけです。赤福は製造年月日も偽装していたということですから結局はできないんじゃないかと、それを規制できないんじゃないかということも言うかもしれませんけれども、現在製造年月日というのはあくまでもこれ任意なんですよね。だから、法律で禁止されていないものですから物すごく軽い扱いで、それでそれを言い訳にしてやってきているということがあるので、そういう意味では、法律で厳格に位置付けをすればかなりこれは訂正されてくると、改善されると。製造年月日が明記されているわけですから、これ期限の表示の偽装というのはできなくなるんじゃないかというふうに思うんです。
 それで、農水省、厚生労働省それぞれ検討すべきだというふうに思うんですけれども、最初にちょっと厚生労働省の方からお答えをお願いします。

○大臣政務官(伊藤渉君) この件につきましては、食品衛生法及びJAS法において当初製造年月日表示を義務付けておりました。委員御存じのとおりでございます。
 その中で、技術の進歩により、消費者にとっては製造年月日からどの程度日もちするのか適切に判断することが困難であること、また、過度に厳しい日付管理による事業者の深夜、早朝の操業や返品、廃棄等の原因ともなっていたこと、また、国際的な食品規格コーデックスにおいても期限表示が採用されており、これとの調和が求められていたこと、こうしたことなどから製造年月日表示から期限表示に転換することが適当とされ、平成七年四月から期限表示を義務付けているところでございます。
 期限表示に加え製造年月日の表示を義務付けることにつきましては、一つは、消費者にとって期限表示があれば商品の日もちを判断することが可能と考えられること、また、もう一つは、EUやアメリカにおきましても双方の表示の義務付けは行われていないことから適当ではないと考えております。なお、今現在、委員のおっしゃったとおり、事業者自ら製造年月日を任意に表示することについて妨げるものではございませんので、こうした任意の表示も含め、食品表示の指導、監視活動を強化し、適正に図ってまいる考えでございます。

○紙智子君 その過去の経緯というのは、議論はあったというのは当時の議事録読んでいますから分かります。一九九五年以降、それまであった製造年月日を取ってしまったと。そのときに、やっぱり議論になっていた中で、いろいろ労働がどうのという話もあるんですけれども、やっぱり一番大きなものは、アメリカが、結局当時の缶詰の輸出なども含めて、そういう大きな圧力が働いていたということがあると思うんですよ。
 そのときと今、違うわけですから、これだけやっぱり偽装が相次いでいる中で、今やっぱり変えるべきときだというふうに思いますし、この間の、福田総理がこれ十一月の二日の閣僚懇の中でも、今までの仕事は生産第一の視点でつくられてきたので、国民生活、安全、安心の視点が政策の中心になっていないと。消費者、生活者の視点に立って所管法令の総点検を行い、急を要する課題については年内に対策を打ち出すようにと指示をしているわけですよね。五日の国民生活審議会の場でもこういう発言をしているわけですよ。
 ですから、やっぱり今こそ、そういうことも含めて見直しを掛けて、しっかりとしたその対策を打つべきだし、見直しのちょうどいい時期でもあるということで、農水大臣いかがでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) 委員も御指摘になりましたように、かつて製造年月日の表示を義務付けておりました。委員はアメリカからの圧力でこれをやめたんだというようなお話がございましたが、私の方はそう考えていないわけでございまして、このことによりましていろいろな問題が生じておりました。そこで、学識経験者の御意見を聴くということで、食品衛生法につきましては食品衛生調査会、またJASにつきましてはJAS調査会、それぞれ公的な調査会で学識経験者、関係者の意見を慎重に聴取し、いろいろな議論を承った中で今のような形の消費期限表示が適当だと、品質保持期限を表示するというふうに変えてきた経緯がございます。
 製造年月日表示は、商品によってはそれ自身、消費者も判断し得るのがあるんですけれども、先ほど厚生省の方から御答弁を申し上げましたけれども、非常に技術が進歩してきておりますし、商品も多様化してきております。そういう中で、その日もちといいましょうか、それの、どの程度の日もちをするのかということを適切に判断するのは非常に困難な商品が出回ってきております。その意味では、やはり先ほど申し上げましたように、製造業者自身の責任としてこれをきっちり賞味期限を、消費期限を表示させるということを徹底をすると。そしてまた、そのことがもしも、相次いで今発生しておりますけれども、不当な虚偽の表示というようなことになりましたら、そのことをしっかり公示されると、製造業者についてはもう営業の存続が困難になるというほど致命的な打撃を受けるわけでございます。場合によって罰則の適用もあるというようなことでございますから、やはり消費者の厳しい批判を受けることになるということを製造業者、販売業者に徹底をする、そういうコンプライアンスをしっかりと認識して、企業の持続可能性というのはここに懸かっているんだということを徹底するということが何としても必要なんだと、このような認識でおります。
 なお、総理からのお話がございましたことにつきましては承知いたしております。総理の方からは、食品に限らずすべての行政について、食べる、働く、作る、守る、暮らすといったような分野の法律、制度、事業などについてそれが十分かどうかということを総点検をしてもらいたいという指示を受けておりまして、今のお話の中にあります、農林水産省としては、食品であります食べる、それから暮らしの中で国民生活の基本とかかわる分野でございますので、緊急に講ずべき施策を検討をすることといたしておりまして、既に食品の安全性に関しましては先月、総理の指示の前でございますが、食品の信頼確保・向上対策の推進本部というのを省内に立ち上げまして、既に具体的な取組の検討を開始しているところでございますので、消費者あるいは地方の声をしっかりと受け止めながら現場感覚に即した検討を進めていきたいと思っておりますが、委員の御提案のような形で両方を併記することを法律上義務付けるということを今の私の段階でさような方向で検討するというふうに申し上げるわけにはまいりません。

○紙智子君 消費者の皆さん、消費者団体の皆さんからずっとちゃんと明記すべきなんだということが要求として出されて今日まで来ているわけです。ですから、総理が言われるような消費者、生活者の視点からということで再点検ということである以上、やっぱりそういう声を真摯に受け止めて、これだけやっぱり現に偽装が続いて繰り返されてきたわけですし、結局、企業の側のことをおもんぱかって、そこはやっぱりきつくなり過ぎないようにということを言われるんですけれども、しかし、現にこうやって繰り返されてきている以上、やっぱり今ここできっちりと見直しを掛けていくというか再点検をする必要があるんじゃないかということを、ちょっと引き続きこれはこれからも取り組んでいくということを私も申し上げまして、質問を終わります。