<第168回国会 2007年10月25日 農林水産委員会 第2号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に大臣にお願いをしておきますけれども、私の持ち時間は十五分なので、答弁は極力簡潔に、結論の部分を中心にお願いをしたいと、中身は濃くということでよろしくお願いします。
 それで、品目横断的経営安定対策の問題でお聞きします。
 私、九月に群馬県の高崎市、それから北海道ということで、この制度が始まって実際どうなっているかということで調査をして歩きました。その中でやはり一番の問題になっているのは、生産者の多くが収入減になるということなんですね。品目横断的経営安定対策というのは、担い手を限定して、そこに政策を集中するということですよね。大規模の経営農家とそれから集落営農ということなんですけれども、そういう意味では北海道というのは規模が大きいからいいんじゃないかという話が当初ありました。これは北海道のための政策じゃないかという話があったんですけど、その北海道でも出ている声は、これまでの手取りの実感と懸け離れていると。小麦で十ヘクタール換算で百三十七万円もの手取りの減が見込まれている町もありますし、農協単位で見ても、例えば知床半島の付け根のところに斜里町というところがあるんですね。ここは小麦の生産なんですけれども、ここで品目横断対策をやって、四億円の減収になるというんですよ。四億円ですね、物すごい額なんですけど。
 それで、ここは父親の代にはやらなかったような工夫とかいろいろ努力していて、天日干しでもって本当に高品質の麦を作っているんですよ。若い人たち、担い手も結構頑張っているんですけれども、こういうところでそういう努力して、農林水産大臣賞だとか天皇杯なんかも受けているんですね。ところが、そういう努力してきたにもかかわらず減るということでは、一体何のための努力だったんだろうかと。本当に意欲をそぐような事態になっているということなんですね。
 それから一方、群馬県の小麦の産地であります高崎に行きましたけれども、こちらは規模はもう少し小さいんですけれども、きぬの波というしこしこ感のうどんの小麦作っていまして、頑張ってやっているんですけれども、ここでも現行の手取り水準も確保できないばかりか、必要経費も賄えないということが出されたんですよ。
 やっぱりこういう問題というのは、そもそもこの法案の審査の段階で私も何度も質問しましたけれども、そういう事態にならないかということは指摘してきたわけですよ。そして、麦、大豆作っても赤字になるといった場合には、もういよいよ赤字になるんだったら、米も大変だけれども、米の方がまだましだといって米にシフトするということになると、米の価格も下がっていくという心配ありませんかというふうに言ったんですね。ところが、そのときの答弁は、農水省は、いや、そうならないようにするから心配ありません、大丈夫ですという答弁が返ってきたわけですけれども、そうやって通しておいて、実際にどうなっているのかということを見ますと、やっぱり心配したとおりの事態が今あるじゃないかと。
 だから、本当に私は怒りで一杯なんですけれども、そういう事態をつくり出したことに対して農水大臣はどのように責任を感じておられるか、まずお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(若林正俊君) さて、簡単にとおっしゃられましたけれども、群馬県あるいは北海道、ある地域を挙げながら、しかもそれぞれの数字を挙げての減収が起こっている、さあ、どうするんだと、こういう話になりますと、やっぱりそれぞれについて、その地域はどういうことでありましょうか、その中の生産者というのはどんな状況であるんでしょうか、様々なことを考えながら一つ一つお答えをしないと何とも申し上げられないという意味で、限られた時間の中では本当に答弁に苦しむわけでございます。
 そして、この法案出したときに、大丈夫だと、そんなことにならないようにすると、こう言っていながら、実際は現場は大変なことになっているではないかと、その責任はどうなんだと、こう言われれば、それぞれの地域でこの新しい政策がしっかり受け入れられていないという現実は、キャラバン隊を派遣してのいろいろな調査の中で我々も感じていることでございますので、この政策をこれから実行に移していくまだ初年度で、端緒でございますけれども、この政策が有効に現場で活用されましてこれからの新しい農業の展望が開けるように、そのために改善すべきことは改善していかなきゃいけない、こういう思いでございまして、委員がおっしゃられました今キャラバンの結果を集約をしているところでございまして、私が対策本部長になりまして、農政全般、農政改革三対策緊急検討本部というものを立ち上げて、そこでいろいろ検討を今しているところでございます。
 そして、改善すべきこと、できることはできるだけ早く改善をしていきたい。来年度の予算にかかわるものであれば来年度の予算要求に反映するような形にしていきたい。いろいろとこれから対策をきめ細かく検討をしなきゃいけないと、こう思っておりますというふうにお答えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 担い手と言われる人も減収になっているということで、具体的にちょっと言いますけれども、高崎市では主に麦生産について調査したときに、まず出たのが支払の額の問題で、一俵につき七千円の経費が掛かるのに、JAの概算払は一俵五千四百円しかならないと。これでは生産の継続ができないというのが大体聞いた、どこでも出ていた問題なんですね。それで、しかも三回に分けて払われるものですから、来年の準備ということでは、これが非常に遅れてしまうと来年の種も含めて払えない、資金繰りだって大変だというので、JAの側も立替払という形で精一杯努力しているということなんですけれども、こうなった背景は、結局この交付金の交付が足掛け二年から三年ということでなっていることがあると思うんですね。地方キャラバンですか、皆さんもされてそういう結果をまとめているんだけど、その声の中にも指摘されていると思うんです、その問題は。
 それで、大臣、この麦生産者は来年の種代も確保できないということを言っているわけですけれども、これは早期支払もという話も聞いているんですけれども、これもあるんだけれども、問題はその交付金の基礎となる地域の単収ですね。これが近年の作柄水準と懸け離れているということがあるわけです。麦生産はこの品目横断的経営安定対策でむしろ危機にそういう意味では直面しているということなわけで、具体的に、じゃ、どうするのかというのが、今本当に早く出してやらないともうやらないと言い出しかねない。もう現に出ているという話もあるんですけれども、やらないと言っている人がね。そういう事態だというふうに思うんですけれども、これ具体的に、言える対策というか、今、どこまでやれるのかということを是非お答え願いたいと思います、短めに。

○政府参考人(高橋博君) 今委員御指摘の麦の関係につきましても、大臣からの御指示によりまして各地域の状況について伺っているところでございます。その中で、資金繰りの関係の話につきまして、各地域からこれは共通的に出てまいっております。
 このため、先般、大臣が今回のキャラバンについての取りまとめを御発表いただいた際に、併せてこの資金繰りの関係で、緑ゲタの支払時期につきまして、従来、年末、十二月を目途にしておりましたものについてはできるだけ早期に払うような事務手続を始めろというような御指示をいただきました。これを受けまして、私どもといたしましては、今月、十月もう下旬でございますけれども、この時期から全国で順次この緑ゲタの支払につきまして手続を開始をしているところでございます。

○紙智子君 十二月の予定が十月ということでは、これ自体は現地にとってみれば少しでも助かると思うんですけど、このほかにも、時間がないので二つまとめてちょっと質問をしますけれども。
 そのほかにもいろいろ出ていまして、例えば書類の煩雑さという問題もあるんですね。過去実績を確定するために農地の台帳を調べなきゃいけないと。担当者が調べるとびっくりすることの連続だというんですよ。相続分割で名義が変わっていたり死亡した人の相続人が不明だという例も少なくないと。担当者がプライベートなことまで立ち入らないと分からないということもあって、非常に大変だと。結局、過去実績があっても証明できないというのもたくさんあるというんですよ。現場では、この農地の台帳を基準にそんなにこだわる必要があるんだろうかと、県や市町村で掌握している実績でいいんじゃないかという声もあるんですね。その点、どういうふうに思うのかということと。
 それから、麦の流通経費というのがこれまた生産者の肩に掛かってくるというので、ただでさえもう減っているという中で、流通経費も聞くと、麦のまず品代で二千二百円というのが最初あるんですけど、それから千百円の手数料が引かれるというわけですよ、まあ乾燥したりとかということも含めていると思うんですけれども。そうすると、手元に来るのはもう千円ぐらいになっちゃうということで、こういうところまで生産者が負担しなきゃならないというのはおかしいんじゃないかと、国が負担してもらいたいという話も出ています。この点についてもちょっと答えてもらいたいということと。
 もう一つ、北海道の空知で出た問題なんですけど、麦や大豆の等級格差が問題になっているんですね。それで、例えば一等の麦は三千円、二等の麦はいきなり半額になると。それで、品質格差がすごく多いわけなんですけれども、二等を作っていると、だから安いものですから赤字になっちゃうということなんですね。一等を作りたいんだけれども、しかし需要と供給ということでいいますと、製粉会社の方が求めているのは、色が多少悪くても、やっぱりコストを安くするために二等を集めていくという事態があるわけですね。
 それから、大豆の場合も同じようなことがあって、お豆腐屋さんはどうせつぶすわけですから、見た目は気にならないので、三等から下のものを持っていくわけですよ、コストを安くするために。三等を作ろうとすると、これはもう黄ゲタはもうないですから、農家にとっては大変なわけですよね。一等を作れば、今度はそんな高いものは買えないというので豆腐屋さんは買わないという、こういう矛盾を一体どうしたらいいのかと。政策として出されている交付金までこういう等級の格差を付ける必要があるのか疑問だという声が出ているんですけど。
 ちょっとこれら含めて、短くというと厳しいかもしれませんけれども、お答え願いたいと思います。

○政府参考人(高橋博君) まず、申請書類の煩雑さにつきましては、制度初年度であるということと、やはり貴重な税財源をベース、財源といたします国費によります交付であるということで、ここについて一定のやはりきちんとした手続が必要であるということは御理解いただきたいと思います。ただ、当然のことながら、二年目以降は簡素化すべきものは当然、初年度で必要であっても二年目以降必要でないものもあるわけでありますし、さらに私どもも、この手続合理化についてはもう常にこれの改善を図ってまいりたいというふうに思っているところでございます。
 それから、麦の流通経費について国費をということでございますけれども、要は、民間で取引されている手数料を国が面倒を見るということについては、ちょっと私どもとしては担当の関係ではございませんけれども、いかがなものであるかというふうに思うわけでございます。
 それから次に、品質によります価格差でございます。日本の麦、大豆につきましては、どうしても諸外国に比べて非常にまだ品質的には劣る部分が多いということでございます。お米の場合はもう既に世界に冠たる品質を持っているわけでございますけれども、このような加工原材料用についてはまだまだこの部分について、一部確かに優秀なのもございますけれども、全般的には品質が劣る。したがって、この品質の向上を図るためにこの黄色のゲタというものがあるわけでございまして、この趣旨をひっくり返すようなことについてはいかがなことかというふうに思っている次第でございます。

○紙智子君 もっとこのほかにも様々な問題があるんですけれども、今、対策委員会の中で順次できるものから出していくということなので、やっぱりできるだけ早くそういう改善ということで出していただきたいんですけれども、私はやっぱり制度そのものに大きな無理があるというふうに思っています。予算委員会では米価の暴落の問題を質問しましたけれども、本当に深刻だと思うんですね。
 それで、この品目横断的経営安定対策も相まって、全国のやっぱり農業、農村が今本当に混乱し、悲鳴を上げているというふうに思うんです。やっぱり問題の所在は、この食料自給率を引き上げる、あるいは農村を活性化させるということの鉄則ということでは、農産物の価格支持制度というのは今まであったんですけれども、WTO基準に合わせるためにこれを放棄して、市場原理主義と。制度も、これ非常に欠陥だらけの品目横断的経営安定対策ということを導入したというところがそもそもやっぱり問題だというふうに思うわけです。これ自体を転換しなければ、もう手先だけでいろいろなことをやっていたとしても、本当にもたないと、日本農業はもうあと何年ももたないんじゃないかというふうに思うわけですよ。
 ですから、食料自給率はそういう意味では下がり続けていく方向だというふうにもう本当に深刻に思っているわけで、これ自体を本当に抜本的な転換をするということがどうしても必要だというふうに私は思いますけれども、大臣、最後にいかがでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) 御意見としてお伺いをしておきたいと思いますが、我々の農業政策の基本は食料・農業・農村基本法に基づいてそれを進めていくというところにあるわけでございます。共産党はこれ自身にも反対をされたわけでございますから、そういう意味ではなかなかかみ合わないところがあるのはやむを得ないと思うんですけれども、御意見は御意見としてお伺いをいたします。

○紙智子君 終わります。