<第166回国会 2007年5月29日 農林水産委員会 第14号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、松岡利勝農水大臣の御冥福を心からお祈りしたいと思います。
 質問いたします。
 水産基本法は、我が国の漁業生産の拡大を図ることを基本に、国民に水産物を供給するとしています。このたび水産白書では、世界的な水産物の需要の拡大でいわゆる買い負けが起きていて、これまでのように輸入に頼れない情勢を述べています。四割から五割の水産物を輸入に頼る輸入大国日本は、資源の保護、持続的な利用を図りつつ、漁業経営をしっかり守って水産でも自給率向上に本格的に取り組むということが緊急の国民的課題だというふうに思います。その立場から、まず沖合・遠洋漁業の問題について質問いたします。
 私も漁業経営者の皆さんからいろいろ話を聞くわけですが、漁船が古くて更新したくてもできない、今の水揚げでは建造する頭金が出ないという状況になっているわけです。魚価の低迷や資源の衰退、低位水準にあって、今の水揚げ額では船の更新ができないと。
 水産庁は、現在の資源水準の下で許可隻数、この水準をどのように見ているのか。沖底、巻き網などの大臣許可隻数等、水準が適正なものなのか、資源に対して過剰になっているのか、その点はどう研究し分析をされているのか、端的にお答え願います。

○政府参考人(白須敏朗君) ただいま委員のお話の沖底などの指定漁業の関係でございます。この関係につきましては、水産資源の多くがいまだに低位水準にあるという、資源の状況につきましてはそういった状況でございます。したがいまして、基本的には漁獲努力量の抑制に努めるということが基本的な方針でございまして、したがいまして、今回の指定漁業の許可の一斉更新に当たりましては、いずれの漁業種類につきましても前回の公示隻数よりも削減するということで、前回の公示隻数よりもその後に減船、廃業したものを除きまして公示をいたしたところでございます。

○紙智子君 資源が減っているというのはどこでも出てくる、聞くわけですけれども、少ない資源の奪い合いということになるとみんな共倒れになってしまうわけです。資源回復、増大は漁業者自身の切実な課題なわけです。いろいろと規制措置をとって努力はしているんですけれども、なかなかはかばかしくないと。我が党は特に大型の底引きトロール船を規制すべきだということを主張しているんですけれども、それも、減船やあるいは休漁や規制措置など、資源を回復し増大させるための措置が円滑に行われるような補償措置を併せて要求をしています。減船で現状のスクラップ化への助成程度の措置では、やっぱりやめるにやめられないという事態なんですね。やめられないでやっているわけですけれども、この補償措置が拡充されれば手を挙げる人もいるというふうに聞いているわけです。
 資源に見合った生産構造ということであれば、沖合や遠洋漁業の経営を対象にした資源回復のための減船や休漁の場合、補償制度を拡大するようにすべきじゃないかと思うんですけれども、制度の説明は結構ですので、拡充するかどうかということについてお答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(白須敏朗君) お話のとおり、現在、急速に資源の回復が必要となる魚種を対象といたしまして、資源回復計画、策定しているわけでございます。
 この資源回復計画の中で、ただいま委員からもお話ございました、正に休漁でございますとかあるいは減船、そういった漁獲努力量の削減によりまして資源の回復に努めているわけでございますが、その支援という意味で漁業者がこの資源回復計画に基づいて行う休漁あるいは減船に対します支援というものも、私ども予算もしっかりと組みまして行っているところでございますので、こういった現在の支援を適切に講ずるということで資源回復計画の取組を円滑に促進してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○紙智子君 それは、適切にと言うんですが、拡大していくということでよろしいんですか。

○政府参考人(白須敏朗君) 現在の支援措置によりまして、資源回復計画に基づく休漁、減船に対する支援を引き続き行ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○紙智子君 漁業法の改正案で、指定漁業許可に当たり経営状況の勘案ということを盛り込んでいるわけです。減船等の助成措置もしないで、これ、赤字続きの経営を落としていくということになるんじゃないかと。ただ倒れていくのを待っているということになりませんかね。これは副大臣、どうですか。

○政府参考人(白須敏朗君) いずれにしても、これは周辺水域での資源状況の悪化ということがあるわけでございまして、したがって緊急に資源の回復が必要となる魚種を対象といたしまして資源回復計画を策定しているということでございます。
 したがって、この資源回復計画に基づいて休漁あるいは減船、そういった漁獲努力量の削減というものが行われるわけでございまして、そういった漁業者がその資源回復計画に基づいて行う、ただいま委員からお話がございましたようなそういう減船でございます、こういったものに対する正に残存漁業者の共補償に対する支援というものが制度化をされているわけでございますので、私どもとしては、引き続きましてこういった資源回復計画に基づく減船、これに対する共補償の支援というものをしっかりと行ってまいりたいと考えている次第でございます。

○紙智子君 共補償の範囲ということになるのかなというのを聞いたんですけれども、やっぱり続けられるような形での対策を取っていかないと続けられないと思いますので、そこはお考えいただきたいと思います。
 それから、資源問題で、沿岸の漁業者から根こそぎ漁獲をする大型トロールの規制が要望されて、両者のトラブルがあちこちで発生しているわけです。しかし、国はそれに対して積極的な解決の役割発揮してないという批判もまた出ているわけですね。
 水産庁は、一斉更新処理方針、この中で、問題解決に向けて積極的な関与を行い調整の推進を図るというふうにしているわけです。この話合いを定期的に持つというのはこれ当然のことなんですけれども、国がやはり資源保存管理強化の立場からこの漁法や区域などの規制がどうあるべきかという方向を示してやらないと、結局この話合いが平行線になってしまうと思うんですね。もっと立ち入ってやる必要があるというふうに話聞いていて思うんですよ。
 ただ両者がいて、話合いの場にいるというだけじゃなくて、よくよく話聞きますと、例えばマツカワなんかは、放流すると沿岸じゃなくて深いところに行って、そこで大きくなるまでしばらくいるという性質なんですね。その大きくなっている途中で全部根こそぎ取られちゃうと、戻ってきてまた産卵ということができないことになってしまうわけですよ。そういうときに、資源を確保するということの立場からこれはやっぱり取らないようにするとか、沖に戻ってきて産卵するようなものについてはやっぱりちゃんと取らないで沖で任せると、沖じゃなくて前浜に任せると。
 そういう形でのルールを、やっぱり立ち入って農水省として方針持って、その話合いの場にちゃんと適切に指導するというふうなことがないと、結局いつもいつも毎回のようにもめるということなんで、そこはよろしくお願いしたいというふうに思うわけです。この点、どうでしょうか。

○政府参考人(白須敏朗君) そこは委員の御指摘のとおりというふうに思っておりまして、私どもとしても、単にこの話合いの場の設定でございますとか、あるいは仲介をするということだけじゃございませんで、今委員からお話ございましたように、その話合いの結果、やはり公的規制ということで、しっかりとそこはそれぞれが了解の下で一定の規制を設けるということが必要な場合多いかというふうに考えているわけでございまして、そういった意味で話合いの結果公的規制とすることが合意をされるということが望ましいわけでございます。したがいまして、そういうものについては順次、それぞれ地域によって内容は異なるわけでございますが、公的規制に転換をしてまいったというものも多いわけでございます。
 したがいまして、私どもとしても、今回のこの五年に一度の指定漁業の一斉更新を期にやるわけでございますが、決してこの一斉更新のときだけじゃございませんで、引き続いていろんな場でこういった沿岸あるいは沖合との調整においてのルール作りというものについては私どもも積極的に乗り出していって、公的規制にできる限り転換をしてまいりたいと考えている次第でございます。

○紙智子君 次に、資源状況に見合う生産構造をつくる上で、水産庁が始めた漁船漁業構造改革というのは一定の期待が持たれているわけです。漁協などの事業主体に用船料を助成して生産体制の改革を行うもうかる漁業創設支援事業ですね、それに漁協が調達した漁船をリースする事業なわけですけれども、まず、これらの対象がほんの一部なわけです。五年間で五十件以上のプロジェクト実施を目標にしているんですけれども、企業的な中小漁業経営体というのは約七千ですよね。大臣許可の指定漁業の許可隻も二千数百隻あるわけです。そこで五十隻というのは余りにも少ないんじゃないかと。
 また、使い勝手が悪いという意見があって、用船料の助成事業では、漁獲物の販売代金が助成額に満たなかった場合、販売代金だけでなく、その差額の半分を更に返還しなきゃならないというのがあるわけですね。今の漁業状況を見ますとそれはかなりの確率であり得ることで、結局漁協が持つのか船主が持つのかと、新たな出費が掛かるわけです。
 リース事業も、船を持てる体力のある漁協とその中で長期リース料が払える漁業経営というのはやはりほんの一部だと思うんですね。ですから、構造改革と称する事業はやっぱりごく一部の優良な経営と漁協しかできないんじゃないかと思うんですけれども、この点どうですか。

○政府参考人(白須敏朗君) まずは、やはりこれは地域におきまして、あるいはまたそれぞれ漁業種類ごとに、それぞれ皆さんで話合いをしていただきまして、そこの地域なり漁業種類全体として改革に取り組むというふうな合意をいただいて、そこが新たな漁船漁業の構造改革というものに乗っかっていくというのが一つの姿であろうというふうに考えているわけでございます。
 その場合、ただいま委員からお話しのような、決してこれは一部特定の優良な大規模なものだけが乗っかるということじゃございませんで、やはりそれは、いろいろございましたけれども、やはり地域が自らそれぞれ改革に取り組んでいくというふうな意欲と、また具体的にそれぞれの浜の皆さん方の御了解がいただけるかどうかというのが一つの大きなポイントになってこようかというふうに考えております。
 またさらに、先ほどお話ございましたが、決してこの五十億といいますか、これだけでやるということじゃございませんで、これは一つの大きなインセンティブといいますか、全体としてこういう流れを加速していくための呼び水といったような効果でございまして、こういうものをきっかけとして地域が自ら独自に行う場合もございましょうし、私どもとしては、これを具体的なモデルとしてそれを地域に広めることによって、皆さん方がそういう意欲を持ってもうかる漁業を目指して努力をされるということを私どもとしては支援をしてまいりたいと考えている次第でございます。

○紙智子君 多くのところが活用できるようにしていただきたいと思います。
 それから、選択と集中という方向がこの経営安定対策にも表れているんですけれども、新たな水産基本計画で打ち出された漁業経営安定対策の導入は沿岸漁民からも期待されているわけですけれども、同時に、予算の関係で当初より小規模になったと、対象となる漁家が少ないという声も出されているわけです。
 漁業保険事業に関する検討会報告では、経営安定対策の対象となる漁家の所得要件、それから主業・年齢要件、対象とならない者の要件も示しているわけです。対象とならない者について示された、経営改善の取組を行っても他産業並みの所得に達することを見込むことが困難な経営レベルというふうになっているわけですけれども、これどういう経営体なのか、それで客観的な基準を示してほしいと思うんです。そして、この要件で実施された場合に、沿岸の漁民十二万経営体のうちどの程度の漁民が新たな経営安定対策の対象になるんでしょうか。

○政府参考人(白須敏朗君) ただいまお話しの経営安定対策という点でございますが、正に私どもとしても二十年度を目途に導入すべく現在検討を行っておるということでございます。
 そこで、ただいまお話しの対象者についての具体的な要件についてのお尋ねでございますが、正にこれは現在検討中ということなんでございますが、一つといたしましては、やはり漁業就業者それから漁船の急速な減少、そして高齢化ということによりまして、やはり我が国漁業の全体としての生産構造、急速に脆弱化が予想されるということがまず前提としてあるわけでございます。
 そういう中で、国民に対する水産物の安定供給を確保していくといいますためには、やはり何といいましても他産業並みの所得を安定的に確保していく、そういった意味での自立的、安定的な経営レベルに達した効率的かつ安定的な漁業経営というものを早急に育成、確保していく、こういったことによりまして漁業生産の大宗が担われ、それによって資源状況に見合った持続可能な生産構造が実現されるということが何よりも必要であろうというふうに考えているわけでございます。
 したがいまして、こういった観点から、新しい経営対策におきましては、他産業並みの所得というものを安定的に確保することが可能な経営レベル、そういうものを目指す経営体を対象とすることが適当であるというふうに考えているわけでございますが、ただいまお話ございました、じゃ具体的に対象となる漁業者がどれくらいになるのかという点につきましては、正に現在検討をいたしている最中でございまして、その対象者の要件、どういうふうに定めていくかによって変わってくるものでございまして、現時点におきましては未定であるというお答えを申し上げる次第でございます。

○紙智子君 沿岸漁民のうち主業的漁家は約四割の四万八千です。ここから更に所得で絞り込むことになるんじゃないかと。北海道でも対象となるのは三割ぐらいだと言われているんです。余りにもこれは少ないと。ただでさえ減少した漁業者を更に絞り込んで減少に拍車を掛けることになるんじゃないかと思うんですね。
 それから、沿岸漁業の場合、漁協の組合員で同じ漁場を利用して漁を行っているわけです。そういう漁業者の中でこの経営安定対策がもらえる人とそうでない人が出てくることになるわけです。集団的な漁場を利用して資源の再生を図ってきた取組に亀裂を生んで、資源管理にも悪影響を与えることになるんじゃないかということ。
 ちょっと時間がないのでもう一つ併せて聞きますけれども、今回の経営安定対策は、漁業共済を活用して、その上に漁業者の個人が拠出する積立方式というふうになっています。しかし、漁業共済の中には、個人単位でなくて漁協単位で加入しているものもあるわけですね。例えば昆布の共済というのはそうなんですね。もうひっくるめて入るというふうになっていて、北海道で昆布というのは沿岸漁業の基礎で、もう命綱というふうに現場では言われているわけですけれども、この昆布が経営安定対策の対象から外れることになったら大変だと、そういう声も、不安もあります。
 漁協単位で加入している場合この経営安定対策はどうなるのかということで、ちょっと併せて今お聞きした点についてお答え願いたいと思います。

○政府参考人(白須敏朗君) いずれにいたしましても、今回のこの新しい経営安定対策、やはり将来の我が国の生産構造、これを可能な限り早急にしっかりとしたものにしていこうということでございますので、そういった他産業並みの安定的な所得の確保といったような、そういうふうな効率的かつ安定的な漁業経営というものが今後の漁業生産の大宗を担うということを私どもとしても描いているわけでございまして、そういうふうなことによります持続可能な生産構造を実現するという観点から対象者としては検討をしてまいりたいと考えている次第でございます。
 また、ただいまの昆布の関係でございますけれども、この新しい漁業経営安定対策、いずれにしても、現在の、委員からもお話ございました漁業共済の仕組みの上に現行のこの経営安定機能を補完して、これと一体のものとして設計するということでございまして、そういった意味では様々な場面で一層の経営の安定が図られる、漁業者の積極的な経営改善の取組を支えることが可能になるというふうに考えているわけでございますが、いずれにしても、ただいまのような具体的なそういったお尋ねについては、この事業の正に詳細設計を今後慎重に検討していく中で解決をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○紙智子君 昆布は外れることはないですよね。ちょっとその辺は。

○政府参考人(白須敏朗君) 申し上げておりますように、正にそこは今後の事業の詳細設計にかかわる部分でございますので、今後慎重に検討させていただきたいというふうに考えております。

○紙智子君 是非これを外れないようにお願いしたいと思いますということを申し上げまして、質問を終わります。