<第166回国会 2007年5月28日 決算委員会 第10号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、ナキウサギの天然記念物の指定の問題でお聞きします。
 ナキウサギは、今から三万五千年から四万年前の氷河期にシベリアから北海道に渡ってきたと見られております。その後、北海道が海に囲まれていたため、涼しい山岳地帯などで生き残った氷河期の生き残りというふうに言われています。とても貴重な種であり、天然記念物の指定を望む声が高まっているわけですけれども、学術上貴重で、我が国の自然を記念するというこの天然記念物の基準を満たしているのか、まずこのことについてお答えをお願いします。

○政府参考人(高塩至君) お答えを申し上げます。
 今先生御指摘ございましたエゾナキウサギにつきましては、北海道の標高六百メートル以上の岩場に生息いたします体長十五センチから十八センチほどの哺乳類でございまして、お話ございましたように三、四万年前の氷河期の生き残りの動物と言われております。
 国の天然記念物の指定基準におきましては、指定に値します価値といたしまして、学術上貴重で、我が国の自然を記念するものという基準を定めておるわけでございますけれども、この基準に該当するか否かにつきましては、エゾナキウサギの生息地でございます北海道及び関係市町村におけます十分な調査検討を踏まえまして判断する必要があると考えております。
 文化庁といたしましては、北海道を始めといたします関係の地方公共団体におきます調査検討に対しまして必要な指導、助言を行いますとともに、その調査検討の結果や専門家の意見、また学術的研究の動向を総合的に勘案いたしながら基準の該当性について見極めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

○紙智子君 満たしているというふうに今おっしゃいましたでしょうか。済みません。

○政府参考人(高塩至君) その基準につきまして満たしているかにつきまして、今後の調査検討を踏まえて見極めてまいりたいと、こういうふうに申し上げたところでございます。

○紙智子君 ナキウサギは大雪や沙流川原始林以外にも生息をしているということもありまして、種としての指定が必要だということでの声が上がっています。北海道が昨年十月から、空知・上川支庁の管内市町村にこのエゾナキウサギ保護に関する市町村の意向調査というのをやっています。
 そうしますと、生息していると答えた二十五市町村のうちの九市町村が天然記念物指定が必要だと答えております。まだ決めていない七市町村からも賛同の声が出されております。例えば上川町などは、種指定が望ましい、あるいは富良野市は、ナキウサギは他の天然記念物の動物と比べて何ら遜色ない、ただ、学術調査が不十分であるし、国や道が聴き取りやアンケートだけに頼らず主体的に取り組むべきだ、といった要望が出されているんです。
 それで、文部科学省として、今後現地調査を行うなど、こうした要望にもこたえて指定に向けた積極的な対応を取っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(高塩至君) お答え申し上げます。
 今先生から御指摘ございましたように、昨年の秋に北海道教育委員会におきまして、エゾナキウサギの保護に関する関係市町村の意向調査というものを実施いたしまして、本年の一月にその結果がまとめられまして、私ども文化庁にも報告が行われたところでございます。
 先生から御紹介ございましたように、その意向調査におきましては、エゾナキウサギの保護必要性を回答した市町村が複数あったというふうに私どもも承知しているものでございます。今お話ございましたように、大雪山山系それから沙流川流域地域におきましては、地域そのものがいわゆる天然記念物の指定になっておりますので、その保護地区におきましては特段種の指定をいたさなくてもいわゆる動物の捕獲というものが制限されるというふうになっているわけでございますけれども、それ以外の地域にもこのエゾナキウサギというものが生息しているということは先生御指摘のとおりでございます。
 このエゾナキウサギを天然記念物として指定するためには、文化審議会の文化財分科会に諮問を行う必要がございますけれども、その際には、エゾナキウサギの天然記念物としての保護の必要性、それから指定を行った場合の保護、管理の在り方、さらには、規制に伴う公益の調整などの点につきましての検討が必要でございまして、北海道教育委員会を中心といたしまして、自然保護部局を含めました地方公共団体が連携いたしまして総合的な検討を行う必要があるというふうに考えているところでございまして、文化庁といたしましては、この保護に向けまして必要な総合的な検討が道その他地方公共団体において実施されますよう、必要な指導、助言を行ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○紙智子君 この問題で長年にわたって活動しているナキウサギふぁんくらぶってあるんですけれども、四万三千の署名を集めて大臣に提出をされていると思うんです。
 指定されることになりますと、例えばその生息地である土地の改変なんかの際に、例えば大規模林道などを、そういうときに際して大臣の許可が必要になるということではナキウサギの保護が確実に進むことにもつながるということで、是非とも国として積極的に取り組んでいただきたいということをこれは要望をしておきたいと思います。
 次に、自衛隊のセクシュアルハラスメントの問題についてお聞きします。
 今月八日に、二十代の現職の女性自衛官が、職場でのセクシュアルハラスメントとその後の上司の対応を問題として国賠訴訟を提起しました。
 この女性隊員は、昨年の九月、階級が上の男性隊員に呼び出されて、夜勤中、泥酔していたこの男性から基地内で暴行やわいせつ行為を受けて、強姦未遂致傷罪に当たる重大なセクハラ行為を受けました。代理人から話を聞いたんですけれども、非常に深刻な問題だというふうに思っています。あってはならない許されない事件なわけです。
 それで、資料をお配りしていると思うんですけれども、一枚目を見てほしいんです。この資料は、防衛庁の九八年のセクシュアルハラスメント・アンケート調査なんですけれども、職場の人から、一番上のところですけれども、性的関係の強要を受けたことがあると答えた女性は一八・七%、それから一番下の方になりますけれども、強姦、暴行、未遂を含む、経験がある女性は七・四%ということになっています。数字だけだと何となくよく分かりにくいんですけれども、女性自衛官約一万人ということですから、それでもってこの率で見てみますと、性的関係強要というのは千八百人以上、強姦や暴行、未遂については七百四十人という数字になって、これは本当に重大だというふうに思うわけです。
 防衛省の調査はこの一回だけというふうに聞いております。人事院は、やっぱり一般職に対して同様の調査を九九年のセクハラ防止規則制定の前後に二回やっています。それで、実態把握ですとか制度の周知度、どれだけ徹底しているか、施行後の意識の変化などの分析も行っているわけです。防衛省は一回だけということなんですけど、施行後にもこの実態を把握して分析する必要性について感じなかったのかということについてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(増田好平君) お答えをさせていただきます。
 私ども防衛省の調査でございますけれども、これは、平成九年に男女雇用機会均等法が改正されまして、平成十一年四月からセクハラの防止に関する事業主の配慮義務が規定されたことを受けまして、当時防衛庁として、防衛庁職員を対象としたセクハラ防止対策を検討するためにセクハラに対する意識等の調査を目的に平成十年にアンケートを一回実施したところでございます。
 今先生御指摘の、いわゆる一般職の方は施行前、施行後、二回やっているではないかと、なぜ防衛庁の方は一回しかやっていないのかという御下問かと存じますけれども、私どもとしては、今申し述べたようにセクハラ防止対策を検討するための意識調査ということで、当時一回行っているということでございます。
 なお、今後いろいろな形で、今般また男女雇用機会均等法も改正をされておりますので、そういったこの時期をとらえましてまた実態調査をするということも一つの選択肢かなというふうには思っているところでございます。

○紙智子君 やはり、こういう問題というのはきちっと検証しないと徹底されていかないということがあるんですね。
 それで、防衛省自体が、人事院と比べても非常にそういう意味では、一回意識調査やったのみということですから、そもそもやっぱり十分でないというふうに思うわけです。同じ国家公務員なわけですから、最低限同程度の対策は取るべきだというふうに思うんですね。まして重大な被害がたくさんあるわけですから、そういう職場でもあるわけですから、やらなきゃいけないだろうと思うわけです。今年の二月、陸士長が女性隊員への強制わいせつ罪で懲役一年六か月、執行猶予三年、懲戒免職になっているわけです。
 それで、大臣、この研修の効果も含めて、改めてこうした実態調査をすべきじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(久間章生君) 昔と違って最近は女性隊員も増えてきておるわけでありますから、一般公務員と同じとは言いませんけれども、我々としてもそういう意識を少し改めてやっぱり隊内におけるそういう問題については積極的に対応していかなきゃならない、そういうような認識を持っております。
 今、先ほどおっしゃいました事件は、まだ、こういうセクハラの問題以上のことかもしれませんので、これはこれから先の事件の推移を見守らないといけないと思いますけれども、いずれにしましても、アンケート調査も含めて、これから先どういう形でそういうようなことをなくしていくか、その辺、我々としても対応していきたいと思っております。
 この問題、非常に難しいのは、セクハラと一言に言いますけれども、片一方の方はそういうような意識がない、片一方の方はセクハラを受けたと言う、そういうようなケースも現実には非常に多いわけで、意識の面でまだ、これはセクハラになるんだぞという、そういう教育を先にやらなきゃならない、そういう面も多いんじゃないかなと、そう思う点もございまして、私たちも自分自身を自戒しながら、そういうような意識の改革を努めてやらないと、何げなく言った言葉が物すごく相手に対してショックを与えているというそういうケースも結構多いわけでございまして、そういう点では、具体的な今挙げられた事件になるようなやつはこれはもう事件として許せないわけでございますんで、それとはまた別の意味で、軽いと思いながらでもこれはセクハラが相手に対して心理的に物すごく圧力になっているという、そういう点についてこれから先十分に意識しながら、どういう方法が一番いいのか研究していこうと思っております。

○紙智子君 制度がこれ実際に始まってからもう大分たつわけですから、今の時点でちょっと今のような大臣の答弁ですと、やっぱりまだ甘いというふうに言わざるを得ないんですね。本当に深刻な問題としてとらえなきゃいけないというふうに思うわけです。
 それで、次に、もう一枚の資料を見ていただきたいんですけれども、これをよく見ていただくと、やはり幹部自衛官が起こす傾向が高いわけですよ。自衛隊のセクシュアルハラスメントということでいいますと、圧倒的に男性が多い、上からの命令には必ず従わなきゃいけないという、上命下服の厳格な縦社会なわけです。そういう下で上官が起こしているという特徴があるわけですね。
 こうした中で、防衛省の訓令あるいは運用通達、こういうものも出されていて、セクハラが起こってしまった場合の対応で迅速適切な対応ということで求めているわけです。実際、それが本当にきちっと対処されているのかということもまた見なければならないわけですけれども、今回の起こった訴状では、原告は昨年九月の事件の後、直ちにこれは上司に相談をしているわけです。今年の二月二十七日になってようやっと警務隊が動き出して、この原告の被害届が正式に受理されると。ですから、半年間、事実上これは放置されていたということになるわけですね。
 それからまた、今年の三月です。三等陸佐が停職八日間というふうになった事例でいいますと、これはセクハラがあったのは一昨年、二〇〇五年の七月ごろなんです。複数の女性隊員が身体を触られるなど被害を受けたわけですけれども、陸上自衛隊の警務隊がこの三佐を逮捕したのは今年の一月です。ですから、被害から一年半たってようやく逮捕と。
 これらを見ますと、迅速適切でないし、加害者に甘い対応というのがかなりあるんじゃないかと思うわけですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(増田好平君) 今先生御指摘のように、私どものセクシュアルハラスメントに関する訓令なりまたその運用通達の中で、迅速適切な対応を取らなければならないということを決めておりまして、基本的にはそういう方針で対応しているところでございます。
 ただ、先生から具体例を挙げて、時間がたち過ぎているのではないかという御指摘ございましたけれども、少なくとも先生が御指摘になりました北海道の事案については、今訴訟が始まっているという点、また刑事事件の捜査という観点でも捜査をしているところでございますので、一々の事実関係についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 その事態そのものということも含めて、もう一つの最近の例も言ったわけですから、やっぱりかなり甘い対応があるんじゃないかということについて、大臣、いかがですか。

○国務大臣(久間章生君) 先ほど冒頭にも言いましたように、私たち自身も含めて、こういうやつに対するもう少し神経過敏に対応すべき、そういう時代背景をよくわきまえておかなきゃいけないという、それをこれから先は自分も自戒しながらと同時に制度的にも、今おっしゃるように、対応が少し遅いんじゃないかという、そういう御指摘を賜ることのないようにしていきたいと、そう思っております。

○紙智子君 通達で、これは防衛庁の通達ですけれども、職員に対してどういうふうに言っているかというと、セクシュアルハラスメントの問題が起きたら行動をためらわないこと、トラブルメーカーというレッテルを張られたくない、恥ずかしいなどと考えがちだが、被害を深刻なものにしない、他に被害者をつくらない、さらにはセクシュアルハラスメントをなくすことは自分だけの問題ではなく、良い勤務環境の形成に重要であるとの考えに立って、勇気を出して行動することが求められるというふうに行動を呼び掛けているわけです。
 ところが、現場でどうなっているかというと、今回訴訟を起こした事案についていいますと、相談した被害者に、その後、外出許可が下りなくなったりしているわけです。それから、退職強要を受けている。そして、被害者が厄介者扱いされる事態になっているわけです。こんな扱いされたら、だれもセクハラが起きたときに相談もできなくなってしまうんじゃないかと。
 これまでの処分事例で、本当に一つ一つ適切な対応がされているのか、被害を受けた人が異端者、厄介者扱いされた例がないのか、長期間対策を取らないで放置されたものがないのかなども、これは部内で精査をして公表すべきじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

○政府参考人(増田好平君) いわゆるセクハラ、セクシュアルハラスメントに関する問題につきましては、部内におきましてセクハラの相談員というものを置いております。各部隊ごとにそれぞれ置いております。その種の事案があったら必ず相談できる体制をつくっておるところでございます。過去五年間の実績で申し上げれば、セクハラ相談員にセクハラの相談があったものは三百八十件程度ございました。そのうち、処分まで行っておるものは五十二件でございます。
 もちろん、何といいますか、適切に対応しなければいけないとは思っておりますけれども、私どもとしては、それぞれ一つ一つの事案について懲戒なり手続をきちっと行ってそういう処分に至っておるということを御理解願いたいと思います。

○紙智子君 相談員を置いていて、やっているというのが今のお答えなんですけれども、実際でも現実に起こっている問題は、相談しても、ちょっと自分に相談されても困るということを担当者が言っているという事例も出ているわけで、やっぱりそこはちゃんと一つ一つ、これでもう済んでいるということじゃなしに、もう一度やっぱりそこのところを点検するということが必要じゃないでしょうか。どうですか。

○政府参考人(増田好平君) 私ども、そういう体制をいろいろと取っておりますけれども、当然、一つ一つ事案の処理ごとに反省すべきところは反省し、また改善すべきところは改善するように努めているところでございます。

○紙智子君 セクハラの相談を受ける側の対応がひどい場合、二次被害、三次被害というふうになる場合もあるわけです。是非精査して、相談を受ける幹部の研修にも役立てるという観点で検討すべきだと思います。
 次に、防衛省の処分が適切かどうかということなんですけれども、この本、「軍事組織とジェンダー 自衛隊の女性たち」という本、出ているんですね。これは、防衛庁の協力も得て、女性自衛官のインタビューも行って書いている、佐藤文香さんという、現在一橋大学の准教授なんですけれども、この方が書いた本です。この中で、酒を飲んだ上官曹長にセクシュアルハラスメントを受け、精神的な苦痛により一か月の入院後に退職をした女性に対し、この曹長に停職一日の懲戒処分、上司は注意処分で済んでいるわけです。このほかにもいろいろ書いてあるんですけれども、この佐藤氏は、これらの処分の適切さには疑問も感じるって書いているんですね。
 こういう指摘に対して、大臣、どう受け止められますか。

○政府参考人(増田好平君) 私どもとしては、懲戒処分についてはそれぞれ懲戒手続を厳正に行って処分をしているというふうに考えているところでございます。
 今、先生から停職一日は軽いのではないかという御指摘がございましたけれども、私どもの懲戒処分の中で停職と申しますのは、一番下が戒告でございますけれども、戒告、減給、停職ということで、かなり重い処分でございます、一日といえども。そういった意味で、何といいますか、先生から見れば軽過ぎるのではないかという御指摘かもしれませんが、私どもとしては厳正な処分を行っていると理解しているところでございます。

○紙智子君 ちょっとその認識が本当に、基準が違うなというふうに思うわけですよね。
 それで、ほかの省の場合どうなのかということでいろいろ見たんですけれども、他省庁の類似の処分例でいいますと、例えば郵政公社は、女性職員にキスをした特定局長は停職一か月、抱き付いて同様の行為をした課長代理は停職二か月、飲酒酩酊の上同様の行為をした特定局長は停職六か月で辞職をしているわけです。
 それに対して自衛隊では、もう今言いましたように、被害者を退職にまで追い込みながらわずか停職一日と。甘いですよね、本当に。そして、自衛隊の停職はほとんどが数日間、最高でも三十日です。他省庁が最低でも一か月以上で十二か月まであるのとは全然違って、もう本当に違うわけですよね。国家公務員の中で明らかに自衛隊の処分というのは軽過ぎるというふうに思うわけです。
 防衛省は、セクシュアルハラスメントが重大な人権侵害なんだという認識がなさ過ぎると思うんですね。大臣、大臣はこのセクシュアルハラスメントが重大な人権侵害だというふうに思われませんか。

○国務大臣(久間章生君) セクシュアルハラスメントといってもいろんなやつがありますから、全部が全部本当に人権に対してという、私なんかも、時々久しぶりに会った人に、あなたは最近は随分太ったねと言うと、ほかの人からそういうことを言っちゃいけないんですよというふうに言われますから、とにかく言葉には注意せぬといかぬなと思う反面、そういうような軽いやつから、今お話しになったような例まで幾つもあるわけでございまして、そういうのを総じて見たときに、確かに男性社会であっただけに今までのその処分がほかの省庁と比べてそれでよかったのかどうか、これは私たちとしても大いにやっぱり検討してみる必要があろうかと思います。
 そういう意味では、これから先、今度の事案について若干ちょっとここで申し上げるわけにいきませんけれども、訴状どおりかどうかというのも含めまして、いろいろと事案が進んでおりますから、そういうのを見た結果、私たちはもう少しセクシュアルハラスメントが、少なくとも自衛隊内でそういうことの起きない環境づくりをそういう処分も含めて研究していこうと思っております。
 ただ、一言だけ言わせてもらいますと、一日の減給といいましても、ほかの世界と比べまして一回でも減給処分を受けたというのは、今みたいに特に平和な時代においては物すごくこれは影響するわけでありまして、いろんな昇進その他では、もうこれは受けていない人と受けている人では、たった一日の違いがもう数段の差になってくるという、そういう世界でもあるということをひとつ、またほかの世界とちょっと若干違う点もございますので、その辺については強調しておきます。

○紙智子君 ちょっと、やっぱり大臣の認識がそれだから駄目だと思うんですね。被害を受けた方の立場に立って、それをはっきりさせないといけないというふうに思いますし、是非、研究するということなんですけれども、この処分の在り方も見直しを是非やっていただきたいというふうに思います。
 それで、この提訴された事案についてなんですけれども、加害者の男性隊員はこれまで異動になることもなくその場所に、同じ基地にいて、被害者は一日に一度はこの加害者と顔を合わせなきゃいけない状態が続いているんです。それで非常に苦痛になっているわけです。防衛省のセクハラ防止の運用通達の中でも、このセクハラの内容がかなり深刻な場合で、被害者と加害者を同じ職場で勤務させることが適当でない場合は、当事者の人事異動等の措置をとることも必要というふうに書いているわけです。被害者は、事件後直ちに上司に加害者を退職させるか配転してほしいというふうに訴えたわけだけれども、何の措置もとられないで今まで来ているわけですね。
 ちょっと信じ難いと思うんですけれども、それがなぜなのかなと思うんですけれども。結局おかしいと思うんですね、強姦されそうになって、女性が毎日その人と顔を合わせなきゃいけないと。食堂が一階にあるものだから、御飯食べに行けないという状況になる、どこかで会うかもしれないわけですから。外出するときは一階を通らなきゃいけない、そうするとどこかで鉢合わせということになると、もう本当に嫌だということで行けないでいるという状態があるわけですよ。
 ですから、そういうことも是非想像していただいて、この今すぐにでも分けるというか、配転させると。配転させるのに手続掛かるというんであれば、とにかくまず一緒にいなくても済むように、それも、今は被害を受けた女性の方が離されているという状況なんですよ、逆転しているんですよ。加害者の方が言ってみれば普通どおりの生活を送っていて、被害を受けた方がもう何というんですか、一緒に食事できないとかというふうになっていますから、そこはそうならないように是非対処してほしいというふうに思います。
 これ、どうですか。

○国務大臣(久間章生君) これは例え話であれかもしれませんけれども、セクハラじゃございませんが、二人が上下の関係がありまして、ずっといろんな関係が続いていて、下の方がもう嫌で、それでとうとう最後は自殺にまで追いやられたわけですね。そして、その遺族の方から私に手紙が来まして、とにかくあれだけ別に異動させてほしいと言っておったのに異動できなかったんかといって、もちろん私の前のことの話ですけれども、そんな話がございました。いろいろ調べてみますと、まあ職種は対になって動かないと本当にできないような職種だったもんですから、そういう不幸なことになってしまって、私は本当にそれを聞いて残念でなりませんでしたが。
 いずれにしましても、今言われたようなことも含めて、今ちょっとこれは事件になっていますし、それでまた、先生の方に話が来ている内容と必ずしもまたちょっと、同じといいますかね、そのとおりでないのかもしれませんので、いろんな角度からこれについては前向きに、前向きにといいますか、実態を、それが本当に真実がどうなんだということも含めて、今一生懸命追求しているところでございますんで、推移を見守っていただきたいと思います。

○紙智子君 最後に、今回提訴した原告に対する不利益の取扱いについてなんですけれども、訴訟の翌日、原告に対して、物置として使われている部屋に移動を命じているんですね、その現場で。それとか、インターネットの2ちゃんねるに原告について、訴訟で訴えたものですから公になったということもあって、2ちゃんねるに物すごいひどい書き込みが一杯されているわけです。そういうものをあえて上司がみんなが見えるところに持ってきて置いておくと、そういうことなんかやって嫌がらせが続いているわけです。物すごいそういう雰囲気が蔓延しているということで、被害者の方は本来救われなきゃいけないはずなのに、そうではなくてどんどん追い詰められていって、不整脈が出たり、健康状況も悪化しているわけです。その隊においては、国を相手に裁判をしたと、とんでもないことをしてくれたと言わんばかりの、そういう対応に置かれているということでは、本当に許されない人権無視の状況に置かれていると思うんですね。
 直ちにこれをやめさせていただきたいということを大臣に最後にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(久間章生君) 少なくともそういう嫌がらせと思われるような、そういうようなことは断じてあってはならないと思いますから、それもどういうものなのか、もう少し、内容等についてあれですけれども、いろんな資料等があったとかいう話も仄聞するところ、皆無じゃないと思いますんで、それは先生のおっしゃる話が、物置云々というのはどうか分かりませんけれども、そういうような書き込みのあった書類が机の上へ置いてあったとか、そういうようなもの、もしあったとすれば明らかな嫌がらせでありますから、そういうことを踏まえながら、ひとつ裁判にもなっておりますので、そういう推移を見ながら対処していこうと思っております。

○紙智子君 いずれにしても、とにかくやっぱり対応が非常に遅れているということでもありますから、そこはしっかりと対応していただきたいことを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わります。