<第166回国会 2007年5月22日 農林水産委員会 第12号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、先月の四月十七日に宮城県と福島県のちょうど県境のところの沿岸で発生したロシアの貨物船の座礁の事故対策についてお聞きしたいと思います。
 もう一か月以上になるわけです。依然として船体から油膜が流れて、漁業被害や環境汚染を引き起こしていると。それで、この後もし、まだ中に六十トン燃料の油があるわけですけど、この重油が流出した場合は大災害になるということになると思うんです。元々、波が非常に荒い地域でもありますけれども、早ければ七月には台風も来ると。もう早速台風が発生しているということでもありますから、そういう事態が心配されるわけです。やはり一刻も早い船体の撤去と、それからやはり燃料油の抜取りですね、これを急がなきゃいけないというふうに思うんです。ところが、船主側の作業会社選定が遅れて、この十九日にやっと決まると。海上保安庁は船体撤去の命令を出したんだけれども、この期限が一年後というのでは余りにも遅いと思うんです。
 それで、海上保安庁に最初にお聞きするんですけれども、まず一つは、今週中にもサルベージ会社も来て会議が開かれるということなんですが、もうすぐ海水浴のシーズンにも入るし、シラスの漁も始まるということでありまして、大災害を防止するためにも台風の季節の前に作業の完了をさせなきゃいけないだろうと。少なくとも油の抜取りはもうどんなに遅くても七月までにはこれはもう完了してほしいんだということで現地の声もあって、そういう意味で、海上保安庁としてこうした遅くとも七月までという現地の切実な要求をやらせる立場で業者を指導するつもりがあるかどうかということがまず一点です。
 それからもう一つなんですけど、業者にそれができないということであれば、海上汚染等防止法四十二条、できたばかりですけれども、二十五、二十六にありますが、緊急に防除措置が必要な場合、海上災害防止センターにやらせることができるというのがあるんですが、これを発動するというような強い姿勢で臨むべきではないかと思うんです。
 この二点についてお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(石橋幹夫君) ただいま先生御指摘のありましたように、現在、原因者である船舶所有者において、ジェーン号の機関室内の油防除、あるいは浮流油の防除作業、これも実施しているところではありますけれども、さらに、今先生御指摘にありましたように、五月十九日にサルベージの業者が決定いたしまして、今後、その油の抜取り及び撤去作業に向けた作業が実施されることになります。保安庁としても引き続き、地元自治体あるいは漁業関係者等で構成されております連絡調整会議等を通じて、船体撤去等に関する情報の適切な共有を努めるとともに、船舶所有者等に対して必要な指導を行うなど、的確に対応をしていきたいと思います。
 なお、その現場の気象、海象あるいはその乗り上げの状況等、これから調査が入りますので、その状況を受けてできるだけ迅速に、特に油の除去作業については進めていきたいと思っています。

○紙智子君 二点目。

○政府参考人(石橋幹夫君) その状況次第ですね。今後その、今後というか、もう今日、明日中にも打合せが行われますので、その状況を把握しながら対応していきたいと思っております。

○紙智子君 ということは、その状況によってはこの四十二条の発動も含めてということですね。

○政府参考人(石橋幹夫君) はい。

○紙智子君 ちょっと、大臣には通告していなかったんですけれども、大臣からも、今の状況お知りだと思いますけれども、これについて、関係の地域の漁民は今まともに漁にも出られないと、そして今後の被害、非常に心配しているという中で、大臣としても一刻も早い対応を業者に要請していくということで、是非一言お願いしたいと思います。

○政府参考人(白須敏朗君) 今委員からもお話ございました宮城県沖の座礁の関係でございますが、この流出した油の影響によりまして、特にコウナゴ漁、これが最盛期だということで、休漁し、あるいは福島県では四月二十日に漁期を終了したというふうに聞いているわけでございます。
 また、座礁船付近にはシャコあるいはカレイ、ヒラメ、ナマコ、ウニ、ホッキガイ、そういった漁場もございまして、これら漁場への影響も、あるいは漁業者への影響も懸念されておるということは私どもも十分承知をいたしておるわけでございます。
 したがいまして、水産庁といたしましても、引き続きまして関係機関としっかりと連携を図りまして、情報収集に努めるなど、適切に対応してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○国務大臣(松岡利勝君) 今長官が申し上げたとおりでございますが、いずれにいたしましても、農林水産省といたしましても、この問題の解決、また一日も早い漁民の皆様方の操業が実現できますように全力を尽くして取り組んでまいりたいと思います。

○紙智子君 それじゃ、法案について質問いたします。
 国が直轄で漁場整備事業をできるようにしているわけですけれども、その場合に、著しい効果があるときというふうになっているわけですね。この著しい効果があるときという、この判断をだれがどういう手続でやるのかということなんですが、この調査研究を、成果を基に水産庁のしかるべき審議会で検討して提案するとか、そういうふうにするのか、知事や漁業調整委員会の意見を聴く前に、この著しい効果という判断、これをやっぱり判断をして提案をする手続を省令などで定める必要があるんじゃないだろうかというふうに思うんです。これについて、まず一つですね。
 それから、もう一つ続けてちょっとお聞きしますけれども、漁港施設を民間に貸付け可能にする法案というのは、漁業者の利益になる方向で活用されるように期待をするわけですけれども、一方、途中で例えばトラブルが起こったと、それで当初の認定条件に合わなくなった場合に、この必要な措置の勧告、取消しができるというふうになっているわけですね。そういう場合に、あらかじめ農水省が定める貸付けの基準の中に勧告や取消しの措置に速やかに従う義務を明記すべきではないかというふうに思うんです。
 この二点について、回答をお願いします。

○政府参考人(白須敏朗君) まず、第一点のお尋ねの、国による漁場整備におきまして著しい効果があるという判断をだれがどのようにして行うのかというお尋ねでございます。
 今般、国が漁場整備を行うこととなります排他的経済水域につきましては、これまで整備がほとんど行われてこなかった海域ということでございます。この排他的経済水域におきましては、海流あるいは地形の状況というものが十分に把握されていないというふうなことで、これまで知見が十分にないということがあるわけでございます。また、もう一点、沿岸域と比較をいたしまして、いわゆる排他的経済水域でございますので、水深が深い場所で行うということになりますので、資源の増殖効果、そういったものの把握なり分析が必要であるということでございますので、施行に当たりましては、慎重に事業効果につきまして検討を行うことが必要であるというふうに考えております。
 したがいまして、この事業の実施に当たりましては、国が都道府県の類似事業の効果の調査、あるいはまた水産総合研究センター、そういった研究機関の知見の収集を行いますとともに、必要に応じまして現地調査を実施をいたしまして、資源の増養殖効果、そういったものを分析をいたしまして、国が判断をするというふうにしているわけでございます。
 それからもう一点、漁港施設を民間に貸付けをいたしまして、途中で認定条件に合わなくなった場合の措置というお尋ねでございます。
 今回、この漁港法の改正によりまして、民間事業者に漁港施設の貸付けを行う場合には、認定要件といたしまして、まず事業につきましては、事業内容が漁港における衛生管理の方法の改善又は集出荷その他の流通業務の効率化に特に資するということ、また二点目として、当該漁港の利用を阻害しないことというふうな要件を一つ定めるわけでございます。また、民間事業者の要件といたしましては、事業を実施するために必要な資力及び信用を有しているということ、それから、貸付けを受けます漁港施設の機能の高度化に関する知識及び技術を有していることといったようなことを定めることにしているわけでございます。
 したがいまして、認定を受けました事業者がただいま申し上げましたような基準に適合しなくなりました場合には、漁港管理者は当該認定者に対しまして基準を満たすように必要な措置をとることを勧告することができるわけでございます。またさらに、その勧告をした上で必要な措置がとられなかった場合にはその認定を取り消すことができると、そういう旨を規定をいたしているわけでございまして、したがいまして、こういった規定に基づきまして適正な運営がなされるように措置をとるというふうにしているわけでございます。

○紙智子君 途中でやめるという場合もあるかもしれないんですが、そのときにやっぱり放置されて結局は迷惑が掛かるようなことにならないようにしなきゃいけないというように思うので、そこをしっかりやっていただきたいということですね。
 それから、関連して、カキやホタテの貝殻による漁場整備についてなんですけれども、増殖や海藻の育成で効果が確かめられていると。事業のガイドラインができたわけですけれども、この間、もう三陸地方の関係者から期待の声が出されています。循環型社会実現という点でもこれ重要だと、関係者からは、試験的な段階というふうにも言えるので、小規模でも国の財政的な支援を求めたいということですとか、関連して、貝殻にくっ付く海藻などの残渣とかくずの処理対策の研究なども出されているわけです。
 これらの声を踏まえて、この貝殻による漁場整備事業をこの後どのように普及を図っていくのか、これについて、大臣、できるだけ短く、もう一点あるので、短くお願いします。

○国務大臣(松岡利勝君) カキ、ホタテガイなどの漁業、養殖業の生産活動に伴いまして、副産物として発生する貝殻の量が年間約五十万トンというふうに推定されております。これらの再利用ということでございますが、従来から土壌改良剤、また養鶏用飼料、その原料として利用されていますが、漁場整備への活用の要望も強い、このように聞いております。
 そこで、魚礁事業で貝殻の活用が進められておりますが、それに加えて、今年の三月からは、貝殻を増殖場造成の材料として適切に利用するため、そのガイドラインを取りまとめたところでございまして、これに則して新たな活用に取り組んでいるところでございますし、循環型社会の構築に向けまして貝殻の活用もこれも十分に図ってまいる、地方公共団体等とも十分に連携をしながら進めてまいりたいと、このように思っております。

○紙智子君 最後にお伺いします。
 漁港の衛生的な施設整備にも漁民の方が努力されているんですけれども、どこかでノロウイルスが発生するということになると、これは風評被害などを含めて、カキ業者は泣かされるわけです。生産段階でのノロウイルス対策ということでは漁民も努力をしていますし、国や県のプロジェクトの研究も進んできたわけです。同時に、下水処理の水からウイルスを出さないと、これをブロックするということで、これに一層の調査研究が必要だというふうに思うんですね。
 水産庁として、平成十四年度から漁業集落排水施設からのノロウイルス不活化の調査検討をしているということなんですけれども、なかなかこれ難しい状況もあるということを聞いているんですけれども、この中で、紫外線を当てることで殺菌の効果がある程度有効じゃないかという方向も出されているというふうに聞いているわけです。一〇〇%不活化というのは困難であるとしても、一定の有効性が確認されているということであれば、やっぱりこれ、今後、これを糸口にして技術開発というのは期待されるというふうに思うんです。
 それも含めて、排水中のノロウイルス不活化の研究をこの後どういうふうに強化していくのか、大臣、お願いします。

○国務大臣(松岡利勝君) これは、今お話があったとおりだろうと思っております。
 現時点では、ノロウイルスを不活化、要は増加する機能を失わせることですが、させる方策として紫外線照射による方法が比較的有効ではないかと、こういったことの方向性が示されているというふうに聞いております。
 しかしながら、ノロウイルスの基礎的性質についてはまだ明らかとなっていない部分も相当あると、こういうことでございますので、引き続き他の基礎研究の動向等を見据えながら私どもといたしましても調査研究を継続して進めてまいって、早い研究の成果を上げたいと、このように思っております。

○紙智子君 終わります。