<第166回国会 2007年4月24日 農林水産委員会 第8号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今、中央競馬そして地方競馬とも売上げが落ちていると。特に地方競馬それから馬産地が非常に厳しい経営状況にあるんですね。
 私もいろいろ話を聞いて回っているわけですけれども、先日はJRAの美浦のトレーニングセンターまで行ってきました。馬のプールというのがあって、馬がプールで泳いでいるのを見て、犬かきじゃなくて馬かきなんですが、本当に上手に泳ぐんですね。それで、人間もそうですけれども、足首に負担を掛けずに心肺機能を高めたり、筋肉をつくったり、あるいはリラックスということもあるという説明も受けて、感心して見てきたわけですけれども。それと、厩舎も行ってきまして、馬とともに働く人たちもかいま見てきたわけです。やっぱり、競馬が健全なスポーツ、そして国民のレジャーとして発展をしてほしいなというふうに思っているわけです。
 私の地元の北海道の日高地方というのは日本で最大の馬産地ということで、農業生産の八割を占めているんですね。ですから、関連産業含めて正に基幹産業で、これが下がっていきますと全体が下がっていくという、地域全体が沈んでしまうという、そういうことになっているわけです。
 それで、農水省は、前回の改正で競走馬生産振興事業をつくったわけですけれども、この間、生産地ではその補助金による選別的な担い手育成が強まっていて、零細な生産者というのは言わば半強制的に辞めざるを得ない方向になっているわけです。借換えの融資を受けたいけれども、今、自己資本比率八%達成というふうなことで、こういうこともあって農協の段階ではねられてしまって受けられないと。ですから、融資の実績は予算額に満たない規模に抑えられているわけです。
 そういうところに立って、今後の、農水省として軽種馬生産についてどのように考えているのか、まずお答え願いたいと思います。

○政府参考人(山田修路君) 今後の競走馬の生産対策についての御質問でございます。
 今委員からお話がありましたように、我が国の軽種馬の生産、特に北海道の産地におきまして、やはりいろんな制約の中で経営がなされているというふうに考えております。やはり、ほかの国に比べると歴史が浅いということもあって、技術水準にやはりまちまち、差があるということ。それから、血統のはやり廃り、あるいは個体差がありまして、価格が非常に、馬の価格の変動が大きいということで経営リスクが非常に高いという状況にもあります。それから、今お話がありましたが、零細経営が多数を占めるというような構造もありまして、規模拡大がなかなか進まないというような制約がございます。特に、最近では地方競馬の主催者が競馬事業から撤退をしたり、あるいは賞金の引下げによりまして馬主の競走馬に対する購買の意欲が低下をするというようなこともありまして、競走馬の需要が減少しております。生産頭数も減少し、農家経営をめぐる情勢は非常にやはり厳しいものがあるというふうに考えております。これにつきましては、今委員から御指摘がありました十六年の改正で、競走馬生産振興事業ということでその振興措置を講じております。
 今お話がありました、この事業についてもいろいろ問題があるという御指摘がございましたけれども、私どもとしては最近はその実績も大幅に増えてきているというふうに理解をしておりまして、今回の改正ではこの実施期限を三年延長をいたしまして平成二十四年度まで実施をするということで、こういった事業の活用を通じて馬産地の対策を進めていきたいと考えております。

○紙智子君 北海道の軽種馬の生産者からいいますと、これまで本当にいい馬をつくろうといってたくさん馬をつくって、そして搬出してきたと、言わば競馬事業全体を支えてきたという、そういう思いがあるわけです。中央競馬はもう毎年三千億近く国庫に納付しているわけですけれども、現地の声としては、その中では使途不明確な部分があると。それから、一般会計に畜産振興からは結局軽種馬にはお金が回ってないんじゃないかと。上納されたお金の中からいろいろ振り分けてというお話ありましたけど、畜産振興というけどそこには馬は入っていないというのがいつも出される声でもあるわけです。やっぱり古くからの生産農家は、この問題をもっと前に解決していれば今のようなひどい状況にならなかったんじゃないかという声も出ているわけです。
 賞金についても、かつては生産者が受けられた生産者賞が、今は生産牧場賞と牝馬所有者賞に分けられていて、この牧場賞の方が減少傾向にあるということなんですね。いずれこれも廃止されるんじゃないかということで、非常に心配だという声も出されているわけで、そうあってはならないということで、それちょっと一言求めておきたいというふうに思います。
 それと、地方競馬についてなんですけれども、北海道の累積赤字、これは二百二十六億円と、それから岩手は赤字の穴埋めのために三百三十億円ということで、この融資をめぐって県議会でも大きな問題、議論されているわけです。そういう状況の下で、今回のこの改正案がどれだけ効果があるのかなというふうに思うわけですね。
 競馬活性化計画の事業にしてもこの交付金の還付にしても、主催者が自ら施設整備を行わなければ結局何も受けられないという仕組みになっていると。そうすると、体力のある団体はいいんだけれども、経営の厳しい主催者にとっては今までと何ら変わりないというのが実態じゃないかと。しかし、地方競馬が本当に廃止されるかどうかという瀬戸際の中で、この問題というのはやっぱり地域の雇用にも大きく影響しますし、馬産地そのものにも重大な影響を与えるわけですよね。
 ですから、施設補助だけじゃなくて、もっとやっぱり地域の窮状に見合った地方競馬の支援を検討すべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(山田修路君) 地方競馬の支援についての御質問でございます。
 地方競馬がなかなか厳しい状況にあるということは委員の御指摘のとおりなんですけれども、この原因といいましょうか、いろんな分析ができるかと思いますけれども、一つには、各主催者が個別に競馬関係施設の設置を行うといったことから高コストな体質があるのではないかということ、それから第二点目には、主催者ごとにばらばらな日程、番組編成が行われていてレースの魅力がもう一つわかないというようなことがあります。それからさらに、実際に地方競馬をやっているその商圏といいましょうか、ファンが買ってくれる範囲というのが比較的狭い、限定されているというようなこともございます。こういった問題をやはり解決をするということが地方競馬の活性化につながっていくというふうに考えております。
 今回の改正によりまして、地方競馬全国協会を地方競馬主催者が意思と責任で運営をしていく地方共同法人というものに改組をしていきますとともに、主催者が共同して利用する施設の設置や、それから主催者間の開催日程、番組編成の調整等を行うという業務も追加をしたところでございますし、それから主催者が一層の事業収支の改善に取り組めるように、これまで連携計画制度で行っていたものを拡充をしまして競馬活性化計画制度にしていくというようなことや、納付金の納付ができる期間を三年から五年に延長するというようなこと、あるいは交付金の還付制度という手法も作ったわけでございまして、様々な選択肢を地方競馬主催者に提供をするというような措置も講じております。
 こういった様々な支援措置を有効に活用して、地方競馬主催者が連携をするということも行いながら、全体として改善されていくということを期待をしているというのが今回の改正でございます。

○紙智子君 北海道や岩手などの七団体から具体的な要求上がっていて、単年度収支が赤字のときの交付金の還付とか、あるいは公営企業金融公庫の納付金の猶予などを要求し続けてきていまして、これについては是非検討していただきたいということを申し上げたいと思います。
 それから、改正案の一つの柱になっています規制緩和についてなんですけれども、競馬の施行に関する規定の軽微な変更については、今後、大臣認可の手続を外すということなんですけれども、場外馬券の売場の設置についての変更というのはあるのかどうか。宮城県の例えば塩竈なんかで、場外設置をめぐって住民の反対の声も上がったりもしているんですけれども、この設置基準、これは大臣承認の仕組みに変更を加えるということはあるんでしょうか。

○政府参考人(山田修路君) ただいまお話がありました今回の改正では、国の規制や関与を緩和するという措置が含まれているわけでございますが、今御質問のありました場外馬券売場の設置基準につきましては、周辺の社会生活に支障を来さないように、また公正かつ円滑な勝馬投票券の発売という業務が行われるという観点からこの設置基準を作っております。
 現在の状況を見ますと、場外馬券売場の運営というのはこういった基準の下で適正に行われているというふうに判断をしておりまして、これを緩和することは考えていないところでございます。

○紙智子君 次に、競馬会と子会社、関係会社との随意契約の問題でお聞きしたいと思います。
 前回の改正のときも、質問の中で、総務省行政監察の結果を基に指摘をさせていただいたわけです。そのときに農水省は、JRAの子会社、関係会社とのリース契約等について随意契約の見直しを指導するという話をされました。トータリゼータシステムですとか、それからスターティングシステム、各馬一斉にそろってスタートするというところですとか、それから競馬場の施設整備、保守管理、これはエレベーターの管理だというふうにお聞きしましたけれども、あとJRAホームページの運用管理等々、子会社が一〇〇%契約というものが依然として多いわけですよね。これ、どのように指導されているんでしょうか。

○政府参考人(山田修路君) この随意契約から競争契約の移行ということでございますが、日本中央競馬会では競馬場の建築から物品の納入までいろんな取引を行っておりますけれども、やはり競馬が公正に行われていく必要があるという観点でいいますと、例えば偽造防止措置を馬券について講じなければいけないというようなことで、その馬券の作成業務というものはやはり公正確保の必要から非常に不可欠な、特定の者にやっていただく必要がある業務であると考えております。
 それから、例えば場外馬券売場の賃貸借契約などについてはその当該施設を借りるしか方法がありませんので、やはりその性格上、競争性のない取引というものがあります。こういったものについてはやはり随意契約とならざるを得ない部分がありますけれども、こういった随意契約とならざるを得ないような取引以外のものにつきましては、十七年十二月に閣議決定をされました行政改革の重要方針に記載をされておりますように、二十二年までのできるだけ早い時期に競争入札に移行させるという方針でございます。
 現在、日本中央競馬会において契約内容を精査して、この閣議決定で決定された内容を実現するように検討しているところでございます。

○紙智子君 公正確保上という話をよくされるわけですけれども、そういうふうに言うとそこだけ聖域になってしまうという面もあると思うんですね。そこも含めてこの見直しをするのかどうかということもあるわけですけど、競馬会から、子会社、関係会社に、十二社あるわけです、ここには役員が天下っているわけですよね。七十四人中五十二人が天下っているわけです。このトータリゼータ株式会社というのは常勤の役員では七名中四名ですし、それからスターティングシステムは二名ともですし、競馬施設については六名中五名がこの競馬会の天下りになっているわけです。随意契約であっても天下りがないならまだ話が分かるんだけれども、この役員の七割が競馬会の天下りということになると、これはちょっと納得できないというふうに思うんですね。競馬会自体が農水省の事務次官を始め有力な天下り先になっていて、理事十二名中四名が農水省なわけですよ。随意契約九四%という非常に高い率で、これは中央省庁の平均八割と比べても高いと。
 世間は、やっぱり農水省と競馬会と子会社が癒着して不透明な契約にメスが入らないんじゃないかという声も上げているわけです。行政監察の中でも、公正確保に配慮しつつ見直すと言っているわけで、なかなか、進めるとは言うんだけれども、数値として変わっていかないということではやっぱりいけないんじゃないかと。
 経営委員会が今回つくるわけだけれども、ここのところにメスが入るのか、入れるのかどうなのかと、ここについてもなかなか変えられないんじゃないのかというふうに思うんですけど、どうでしょうか。

○政府参考人(山田修路君) 競争入札への移行の観点につきましては、やはり競馬の実施、運営という観点から、どうしても相手方が特定される業務がございます。そういう意味で、こういったものについてはやはり引き続き随意契約で実施をしていかざるを得ない部分があるということを御理解いただきたいと思います。それ以外の部分については、先ほど言いましたように、閣議決定に従ってできるだけ速やかに実施できるように検討をするということでございます。
 現在におきましても、もう既に一部は実行に移しているところでございまして、競馬場周辺の清掃あるいは交通整理といったことは、これはもちろん他の機関、子会社でなくても実施できるわけですから、こういったものについては契約方法を変更するというようなことで既に実施をしているところでございます。

○紙智子君 どれが本当に適切にやられているかどうかということはやっぱり明らかにならないといけない。随意契約をずっとやっていれば、なかなかその中身というのは判断ができないという問題があるわけで、これはやっぱり見直すべきだというふうに思うんです。経営委員会ができても余り手が付けられない部分もあるという一方で、競馬関係で働いている人たちへの影響がどうなのかということもお聞きしたいと思うんですけど。
 この間、競馬会も労務諸費について削減をして、馬券発売の従事員の経費というのは、平成十二年に比較しますと大体六割ぐらい激減しているわけです。今は定年退職数を見込んで自動発券機を導入しているんですけれども、今後、経営委員会の目標設定でスリム化を進めるということになった場合、それが最優先されるとどんどん自動発券機が導入を進められることになるんじゃないかと。
 また、経営委員会が、厩舎ですね、こちらの方のコストカットということで数値目標を持ち込むということになると、これまで以上に各種の手当の削減が進められて厩務員の労働条件の低下ももたらすんじゃないかと、こういう懸念があるわけですけど、この点についてはどうでしょうか。

○政府参考人(山田修路君) 従事員の方あるいは厩舎関係者の方々、これも大変競馬会あるいは競馬関係の競馬サークルの中で非常に重要な役割を果たしていると考えておりまして、こういう人たちがやはり自信を持って生活していけるということは重要なことだというふうに思っております。
 一方で、世の中のどこの組織もそうですけれども、やはり経営を合理化しスリム化しながら実施をしていく必要があるというふうな状況でございますので、それは全体の競馬関係者の中で努力をしていただくという中で、それぞれの立場も守っていくというようなことを相互にやっていかざるを得ないのではないかというふうに考えております。

○紙智子君 じゃ、最後に大臣にお伺いしますけど、今そういう答弁もあったわけですけど、やっぱりこの経営委員会が効率化最優先という形でコストカットを実現したけれども、結局、今まで競馬を支えてきた、そういう携わってきた人たちの労働条件が極端に悪化したり、そういうことがあってはならないんだと思うんです。
 仮に、一時的に支出が減っちゃったということがあったとしても、やっぱり効率優先で支えてきた人自身が大変な事態になるということがないように、これまでもそういう話合いというか、ずっと積み重ねてきているわけですけれども、そこは競馬の発展を阻害することにならないようにするためにも確保すべきだというように思うんですけれども、これについて大臣の答弁をいただきたいと思います。

○委員長(加治屋義人君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(松岡利勝君) はい。
 今局長からも答弁があったと思いますが、いろんな関係者の一致した協力、それによって成り立っているわけでありますから、どこか一つのところだけにしわ寄せが行くような、それはやっぱりあってはならないことだと思っております。
 全体的に経営の改善や改革は必要でありますし、そういった中で今先生御指摘のような方々の立場というものもこれまた大変重要でございますので、それが全体の中でしっかり守られていくような、そういったことについては農林水産省としてもできるだけの後押しをしていきたいと思っております。

○紙智子君 終わります。

○委員長(加治屋義人君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、競馬法及び日本中央競馬会法の一部改正案について反対の討論をいたします。
 反対の理由は、日本中央競馬会に経営委員会を設置し、経営の基本方針、目標等の決定、役員の職務執行の監督、目標達成状況の評価などを行わせるということは、日本中央競馬会に民間的経営手法をより強化する仕組みをつくるもので、公営ギャンブルの営利追求を強める方向と見られるからです。
 農水省は提案理由を、経営責任を明確にする仕組みをつくるとしていますが、経営委員会が売上げの数値目標を設定することを可能にし、業務の運営状況が悪化した場合で、担当役員に引き続き当該職務を行わせることが適切でない場合は、大臣及び理事長がその役員を解任できるとする規定を設けることは、実質的には、下げ止まらない売上げと国庫納付金を食い止め、増収させるために、一層のリストラや合理化を推し進めることになりかねません。それは、競馬事業の振興のために尽力し続けてきた従業員や厩務員などの働く人々が長年にわたり労使で確認し培ってきた労働条件の切下げにさえ踏み込みかねないものです。
 競馬会と子会社、関係会社との不透明な随意契約については、公正・中立性の確保という大義名分の下、平成二十二年以降も継続することを農水省は認めており、政府の進める行政改革がいかに国民要求と懸け離れたものかを示すものであり、認められません。
 競馬事業は曲がり角にありますが、今目先のコストカット、効率化だけに取り組むならば、長い目で見て競馬振興、馬事文化の振興には逆行するものであると懸念します。交付金猶予の延長等一部改善も見られますが、わずかであり、全体として反対せざるを得ません。
 日本共産党は、競馬が健全なスポーツとして発展することを願い、また馬産地、地方競馬への支援充実を願うものです。より根本的な発展方向への議論の場を設けるべきであることを付け加えて、討論といたします。