<第166回国会 2007年3月20日 農林水産委員会 第3号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 鳥インフルエンザの問題で質問をいたします。
 一月十一日に宮崎県で鳥インフルエンザが発生して三か月以上が経過しました。それで、二月二十八日にはそれぞれの移動制限措置も終わって、課題は原因究明と補償措置及び制度改正ということに移っています。
 そこで、それぞれについてお聞きしたいと思います。
 まず原因究明ですけれども、現在の状況と感染経路の確定のめどについて明らかにしてください。

○政府参考人(町田勝弘君) 感染経路の究明についてでございます。
 今般の一連の発生につきましては、一月十六日に専門家から成る究明チームを設置いたしまして、現地におけます情報収集やウイルスの遺伝子解析を実施するなど、感染経路の究明に当たっているところでございます。
 これまでの検討でございますが、分離されたウイルスにつきましてはいずれも中国、モンゴル、韓国などで分離されたウイルスと同じ系統でありまして、国内への侵入は渡り鳥が関与していることが想定されること、また鶏舎内へのウイルスの持込みにつきましては人による可能性よりも野鳥、ネズミなどの野生生物が関与していることが想定される、こういった整理がなされたところでございます。
 この感染経路の究明につきましては、引き続き専門家の意見も伺いながら、四事例の相互の疫学的な関連性、また野鳥のウイルスの保有状況、飛来範囲などの調査、分離ウイルスの鶏などに対する感受性試験、こういったことを実施することとしております。
 農林水産省といたしましては、これらの調査結果も踏まえ、宮崎県、岡山県、環境省及び動物衛生研究所と連携して感染経路の早期究明に努めてまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 次に補償措置ですけれども、発生農家及び移動制限区域内の農家に対する支援状況及び宮崎県、岡山県及び関係市町村の財政負担に対する特別交付税措置について、どのように進展をしているのか、残されている問題はないのか、明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人(町田勝弘君) まず、発生農場に対する手当金でございますが、宮崎県清武町、日向市及び岡山県高梁市の発生農場につきましては既に国から県に交付をいたしております。また、宮崎県新富町の発生農場につきましては現在県段階で申請作業中であると承知しております。
 また、移動制限区域内にある周辺農場に対する助成金につきましては、現在、両県において売上減少額等を調査しているところであると聞いております。
 農林水産省といたしましては、両県とも十分連携して、早期に交付できるよう適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

○政府参考人(津曲俊英君) 鳥インフルエンザの発生に伴い、各関係県においては、移動制限区域内の農家に対して損失補償、感染した鶏の殺処分、風評被害対策等に多額の財政需要が生じているところであります。このうち、移動制限区域内の農家に対する損失補償など、蔓延防止対策に関する県の負担につきましては、その八割を特別交付税により措置しているところであります。
 関係県から経費負担の実情などをお聞きした上で、これまで確定した負担分につきましては平成十八年度の特別交付税において措置することとし、本日決定し、財政運営に支障が生じないように対処したところであります。

○紙智子君 それでは、今回の鳥インフルエンザの発生なんですけれども、これは全国一のブロイラー産地で発生したという点ではこれまでの日本で発生してきた鳥インフルエンザとはちょっと異なる様々な問題を提起しているというふうに思います。それで、それが現在の家畜伝染病予防法が予期しない課題も明らかにしたと言えるんじゃないかと思うわけです。
 まず、移動制限区域内の農家に対する補償についてなんですが、今ブロイラーの平均的な経営規模というのは五万羽ぐらいまで大きくなっているわけですけど、この宮崎では更に規模が大きい経営が主流になっています。そのために、補償対象になっていない電気代ですとかガス代、暖房燃料代、薬剤費など、これ経営としては無視できない相当な持ち出しになっていると。九万羽を経営している農家では二十日間の出荷延長に伴うそれらの合計額ということで算出しているんですけれども、百三十万になるということですね、二十日間で百三十万持ち出しと。これだけ巨額な経費ということになると、これは経営にも与える打撃も大きいということで、鳥インフルエンザが発生しても、この移動制限区域内の大きな規模の経営農家が慌てないで済むためにはこうした経費も補償する体制を確立するべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(町田勝弘君) 移動制限に起因いたします売上減少額、また飼料費の増加額の相当額を都道府県が交付する場合には、家畜伝染病予防法に基づきまして国が二分の一相当額を負担するということとなっているところでございます。
 御指摘の光熱動力費でございますが、移動制限に起因する費用の増加額を明確に区分して把握するということは容易ではないということ、またブロイラー経営に占めます費用の割合も約四%であるということから、補償の対象とはしていないところでございます。
 なお、この光熱動力費等の運転資金につきましては、低利資金融資でございます家畜疾病経営維持資金による支援の対象とされているところでございます。

○紙智子君 現地の方が細かくちゃんと計算して、計算が困難というんですけど、計算して、これこれにこれだけ掛かってそれで大変なんだということを話をされているわけですから、やっぱりそこをちゃんと見ていただいて、すぐにもう無理ですということではなくして、検討いただきたいなと。現地で我が党の議員団が現地でやっぱりそういう具体的な話を聞いて寄せられているものでもありますので、是非検討していただきたいなというふうに思うわけです。
 それからもう一つの問題ですけれども、移動制限区域内の食鳥処理場に対する補償の問題です。
 これだけのブロイラー主産地になると、産地と食鳥処理場というのはこれ一体となって形成されているというふうに思うんですね。それで、今回、移動制限区域内に三か所この食鳥処理場が存在をして、操業停止状態になったわけです。億単位の大変大きな損害を受けたと。当然国として被害補償を考えなければ、食鳥処理場としては、これからいつ鳥インフルエンザが発生するか分からないという中で、これ一たび起こると移動制限が掛かって損害が発生すると。その被害も補償されないということになると、もう最初から、その産地から十キロ以上離れたところでやらなきゃいけなくなるという事態になりかねないわけですよね。そうなると、産地と一体に形成されている、この生産と処理との関係を壊すことになるんじゃないのかと思うわけです。その点で、この食鳥処理場の被害補償について、新たな検討課題だというふうに思われませんか。

○政府参考人(山田修路君) 委員のお話がありました食鳥処理場の関係でございますが、今回の発生事例のうちで二月一日に発生が確認されました宮崎県新富町では、委員からお話がありましたように、発生農場から半径十キロ以内の移動制限区域内に含まれる食鳥処理場が三か所ございました。これが一時的に操業停止状態になったわけでございます。二月八日には周辺五から十キロの区域が搬出制限区域となりまして、生きた鶏の搬入が可能となりましたので、この区域にあります一か所の処理場はこの時点で全面的に操業が再開されました。また、残る二か所の食鳥処理場につきましては、移動制限区域外の食鳥処理場で内蔵除去等の処理を行った鶏肉を搬入して加工作業を確保するといった取組が二月の上旬から実施されるとともに、移動制限が解除された三月一日以降は通常どおりの操業ということになっております。
 食鳥処理場など関係業者の経営状態が悪化する場合につきましては、政府系の中小企業金融機関によります運転資金の融資や、その運転資金の貸付けの円滑化を図るための県の信用保証協会にある保証等がセーフティーネット措置として講ぜられております。これらが円滑に活用されるよう関係者に周知をしているという状況にございます。

○紙智子君 こういう大規模なところでというのは今まではなかなか直面してこなかったわけですけど、そういう事態ということでは是非この後の検討課題に入れていただきたいなというふうに思います。
 それから、自治体の負担の問題なんですけれども、鳥インフルエンザは突発的に発生すると。それで、当該自治体にとっては財政負担がどうのこうのと言ってられないで、もうすぐに手だてというか対処しなきゃいけなくなるわけですよね。それで、しかしながら、この移動制限区域内の農家に対する助成措置ということでいうと、都道府県が二分の一の負担を持つということになるだけではなくて、防疫措置の経費も二分の一負担ということですよね。これに対して、今の、現在の対応は、特別交付税で地方自治体の負担分の一定割合を見ようということでなされているわけですけれども、特別交付税で見る場合は、割合なんかは事前に決められているわけじゃないわけです。ふたを開けてみないと分からないと。だから、自治体から見ると、あるんだけれども一体どれだけ出るのかというのは常に不安な状態なわけですよね。これについて、特別交付税の負担割合を省令に明記すべきではないかというふうに思うわけですけれども、これはいかがでしょうか。

○政府参考人(津曲俊英君) 特別交付税は、今お話がございましたように、画一的な普通交付税の算定方法によって捕捉されなかった災害などの特別の財政需要を算定対象としているところでありますが、その算定に当たりましては、できるだけ特別交付税に関する省令に算定ルールを明記しているところでございます。
 この鳥インフルエンザ対策につきましては、委員の御指摘のところもこれまでございましたけれども、この発生件数の推移に伴いましておおむね固まってきたということから、平成十八年度の特別交付税の算定におきましては、算定ルールを明確化する観点から省令を改正し、対象経費、今お話がありましたその八割、五割でございますけれども、対象経費及び措置割合を明記したところであります。

○紙智子君 それでは次ですけれども、本来、鳥インフルエンザの問題は人類にも脅威を与える国家的な問題だということで、本来国がきちんと責任を負うべき問題ではないかと。国民に惨禍をもたらしてはならないという考え方に立てば、今、国二分の一、都道府県二分の一という考え方なんですけど、これ自体ちょっと問題ではないかなと。もっとやっぱり国が責任持つべきじゃないかというふうに思うわけです。
 それで、私たちの党として、これまでも国は三分の二を負担すべきじゃないかということで修正案を出したことがありましたけれども、このことについて是非真剣に検討すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(町田勝弘君) 御指摘のとおり、今防疫に要する費用につきましては、国、県、それぞれ二分の一ずつの負担ということになっているわけでございます。この負担割合の考え方でございますが、家畜伝染病の防疫措置につきましては、全国的かつ統一的に行う必要があるということでございます。ただ、その一方で、同時に、地域の畜産振興の上からも重要であるということから、国と県で二分の一ずつ負担するとしているところでございます。

○紙智子君 そういうふうに言われるんですけど、実際に被害に遭った知事さんなんかも、前回ですかね、山口の知事さんなんかも、できたらやっぱり国の方でもうちょっとやってほしいということも出されていますし、それが現実の声だというふうに思うんですよ。そこは是非引き続き、やっぱり国の負担を増やしていく方向で検討していただきたいというふうに思います。
 あと、この家畜伝染病予防法、作られているのが昭和二十六年にできているということで、非常に古い法律なわけですよね。当時でいえば、養鶏やブロイラーの現状は農家が庭先で本当に鶏を飼育するという零細の経営体が大部分だったわけです。それから、鳥インフルエンザのような人類に脅威を及ぼすような疾病も現在のように明確になってなかったという状況だったと思うんですね。それが前回、山口で発生し、その後、大分でも発生し、京都ですね、いうことで発生して、古い家畜伝染病予防法では対応できないという問題点が明らかになってきているということがあるわけです。やっぱり法改正が、そういう議論の末にというか、前回なんかも相当議論されて法改正が一定されたということがあるわけです。
 今回、ブロイラー産地として全国一の主産地でこの鳥インフルエンザが発生したと。主産地というか、もう全国一というところでの発生ということが今回初めてなわけですけれども、これまで見てきたような問題点が明らかになってきたわけで、それらをやっぱり真剣に検討して、諸問題に対応できる家畜伝染病予防法に更に改正をしていくというのは農水省としてもやはり義務ではないかと、時代のそういう変化に合わせて改正していくというのはやっぱり農水省としての義務ではないかというふうに思うわけですけれども、これについていかがでしょうか。

○国務大臣(松岡利勝君) 紙先生の御指摘の家畜伝染病予防法につきましては、確かに昭和二十六年の制定でございます。それからいろいろとプロセスがございまして、平成十六年の高病原性鳥インフルエンザの発生を受けまして、またその時点でその状況を踏まえまして改正を行ったところでございまして、これまでも必要な見直しは行ってきたと、そして、その時代その時代、状況に対応してまいったと、このように思っております。
 また、高病原性鳥インフルエンザの具体的な防疫対応につきましては、平成十六年の十一月に防疫指針を公表しまして、その後、茨城県における発生事例を踏まえまして必要な見直しを更に行ったところでもございます。
 私どもの農林水産省といたしましては、今回の宮崎県や岡山県の発生事例を受けまして、直ちに家畜伝染病予防法の改正に着手すべき事項はないというふうに考えておりますが、今回の国や県の対応を十分検証いたしまして、専門家の御意見もお伺いしながら、必要があれば防疫指針等の見直しを行ってまいる、そのような考えでおります。

○紙智子君 この間、鳥インフルエンザというこういう大変なことに直面して、議論もしてきているわけですけれども、やはり、鳥から人へと、人から人という、そういうことなんかも非常に心配されている中で、今回の対応で見ると、かなり素早く対応されているということはあったと思うんですけれども、引き続き、やっぱり緊張感を持って、手遅れにならないように手当てを尽くしていくということで、是非全力を挙げていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。