<第166回国会 2007年3月19日 予算委員会 第12号>


○委員長(尾辻秀久君) 次に、紙智子君の質疑を行います。紙智子君。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今、医療の現場では看護師不足の事態が深刻です。日勤で残業し、数時間の休息で寝る間もなくまた夜勤に入ると。月に三回も休日を出勤した、熱が出ても点滴を打って出勤したなど、医療の安全を脅かす勤務状況になっています。病棟閉鎖や訪問看護ステーションの休止など、地域医療への影響も大変深刻です。北海道の羅臼町の国保病院では、看護師不足で、夜間、休日の休止を、停止しました。一部の大病院が大量に看護師確保に乗り出して、そのしわ寄せで地方の中堅病院などで看護師不足に拍車が掛かっています。こうなった要因がどこにあるとお考えでしょうか。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 看護師さんにつきましては、先般、七対一入院基本料というものを創設いたしました。これは、急性期医療の充実の点から、必要な看護配置を適切に評価するという目的で導入したものでございますけれども、先般、この状況につきまして、一月の末でございますけれども、中医協から建議をいただいたわけでございますが、その指摘にもございますとおり、非常に短期間で数多く七対一の基本料の適用病院になるんだという届出が行われたという事実がございます。それからまた、今春に向けまして国立大学病院等を中心として積極的な看護師さんの採用活動が行われていること、それからまた、改定の趣旨に必ずしも合致しているか疑問なしとしない病院におきましても七対一入院基本料の届出が行われていること、こういうようなことがあるという御指摘を受けまして、この中医協においても、この事態、状況については、看護職員という貴重な医療資源が限られていることを考慮すると深い憂慮を禁じざるを得ないと、こういう御指摘をいただきまして、この七対一入院基本料もこの地域医療における看護師確保に影響を与えた可能性があると、このように判断をいたしております。

○紙智子君 この七対一の配置基準を設けたことは手厚い看護を求める国民の願いにこたえるものだと思いますけれども、問題は、看護師の絶対的な不足の下で看護師を増やすための何らの具体的な改善策もなく、総額で一兆円とも言われる診療報酬の大幅削減をしたことにあります。この診療報酬の引下げの中で、七対一の配置にすれば病院の受ける収入も増えるようにしたわけですから、収入が減って苦しい病院が看護師を増やそうとするのは当然だと思うんです。
 しかし、競争ともなりますと、これは窮地に立たされるのは地方であり、中小の病院です。北海道では、患者十三人に看護師一人以上の基準を満たさない、そういう医療機関が四割あります。基準を満たさなければ病院の受け取る収入は更に減らされると。で、経営危機になるわけです。こういう形で地方や中小の病院を追い込んで、医療の空白、命の格差を広げる結果になっているわけです。
 この七・一導入以前の厚生労働省の需給見通しでも四万人余りの不足が見込まれていたわけで、今回の今日の状況というのは当然予測できたはずではありませんか。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 看護師さんの職員確保に関しましては、私どもとしても、従来、各般の施策について積極的な取組をいたしているわけでございます。従来から、養成力の確保ということを基本としまして、何といっても離職の防止と、一度看護師さんの養成所を卒業されまして医療現場に入られた方の中にかなりの率で離職をされる方も多いものですから、これを何とかとどめたいと、こういうようなことに今注力をいたしているところでございます。
 それから、潜在的看護婦と言われている、一度看護師の業に就いていらっしゃる言わば経験者が離職をされている、そういうような方々の能力をもう一度発揮をしていただく、現場で発揮をしていただくということのために再就業の促進の働き掛けをいたしている等、総合的な支援を行っているところでございますけれども、今後更にこれを進めてまいりたい、このように考えるところでございます。
 特に来年度予算におきましては、多様な勤務形態で働くという看護職員の方々を雇用する医療機関の事例を収集、分析いたしまして、そういう出産や育児等の看護職員の生活環境に応じた勤務形態、こういうようなものについても支援をいたしたい、このように考えております。

○紙智子君 この七対一の基準は、やはり行き届いた看護のためには後退させるべきではないというように思うわけです。
 高齢化が進んで医療の技術が進展をする中で、安全、安心の医療、看護のために現場の看護師さんは本当に頑張っていると思うわけですね。しかし、医師、看護師不足の中で、現場は本当に過酷な状況にあると思うわけです。最近の傾向としては、平均の在院日数が急速に短縮していると、そして入院患者の入れ替わりが激しいと。患者の重症化が進んで、業務量は増えているわけです。過密労働、退職、そして看護師不足の悪循環ということが言えるわけですけれども、やはり安全、安心な医療確保のためにこの手厚い配置基準は前提であって、本当に多くの病院がこの基準を満たしてゆとりのある看護ができるように看護師を増やすべきだというふうに思うわけです。そのために、厚生労働省自身が実態を把握するという必要があるんじゃないでしょうか。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 看護師さんの実態把握につきましてはかなりの程度私どもも日ごろからその掌握に努めておりまして、届出病床規模別、設置主体別の七対一入院基本料に関しては、そうした届出の状況も把握をいたしておりますし、設置主体別の今年の看護職員の募集、内定の状況等も明らかに既になっているところでございます。
 これらの実態把握を踏まえまして、また平成二十年度の診療報酬改定におきまして、看護職員の配置数を満たした病院はすべて認めるという現在の基準を見直して、本当に入院患者が手厚い看護を必要としている病院に限り認めるというようなことでこの状況の改善を図っていくことも予定をいたしているところでございます。

○紙智子君 それじゃ逆行しちゃうんですよね。
 そもそも需給見通しが余りにも現実と食い違っていたわけですから、それ自体見直すべきじゃないかと思うわけです。
 我が党は、こういう問題解決のためには、今述べた実態調査をちゃんとやって、一つは、安全で行き届いた看護ができるように、すべての看護配置基準の病院について診療報酬を二〇〇七年度からでも緊急に引き上げるべきだと。それから、国民の願いはもっと看護師さんが増えてゆとりを持った仕事ができるようにしてほしいということですから、どの医療機関でも七対一の基準を継続、取得できるようにするべきだと。そして、さらに、看護師の絶対的不足を打開するために、養成数を増やすなどの抜本的な対策を緊急に講じることが必要だというふうに思います。
 大臣、いかがですか。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 私も現場の状況もいろんな先生方から聞いておるわけですけれども、一番大事なのは離職の防止ということでございます。それから再就職の促進と、こういうことでございます。
 これには一体どういうことが必要なんだろうかと。やっぱり看護師さんの中の看護婦さん、昔の、こういう方々には結婚、出産というような重大な転機がありまして、それを機にいろいろと離職をされるというようなこともございますので、是非院内の保育所の充実を図りたい。この点についてはかなりの程度実は既に普及をいたしておりますが、まだまだこうした面を充実することによって、今申した離職の防止であるとかあるいは再就職の促進であるとかといったようなことで看護師さんの充実を図っていく、そういう道が我々は存在すると、このように思っておりまして、その方面の施策を今後とも進めてまいりたいと、このように考えております。

○紙智子君 二〇〇六年に国は離職の防止と言うけれども、実際には公立、日赤などの院内保育所の運営費の補助金も廃止しているわけですよ。増やすというんだったら、やっぱりそこを復活させるとかいうことも含めてやらなきゃいけないと思いますし、やっぱり、そもそも医療費にお金を掛けな過ぎるという問題があると思うんです。看護師にしても配置基準そのものが少ないわけで、やはり国民の命を守るということでは最もここにお金を掛けなきゃいけない分野であって、財源を十分に配置すべきだということを主張しまして、私の質問を終わります。