<第166回国会 2007年3月8日 農林水産委員会 第1号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 現在ほど畜産、酪農をめぐって非常に厳しい状況に置かれているときはないんじゃないかというふうに思っています。
 酪農家の離農がどんどん進んできています。乳用牛の飼養農家数ですね、この十四年間で半減しました。それから、乳用牛の飼養頭数も、これ十四年間で見ますと四十四万六千頭減っているんですね。引き換えに、一戸当たりの飼養頭数が増えて、三十七・八頭から六十一・五頭まで拡大をしてきていると。それから、一頭当たりの乳量が今度は増えていて、六千七百二十四キロから七千八百九十三キロまで引き上げてきていると。
 酪農家にとってみますと、身を削って、そういう意味では、この間、規模拡大と合理化を連続してやってくる中で、何とかこの牛乳の生産を維持してきたわけです。
 しかし、この酪農経営の収益性というところから見るとどうかというと、これは搾乳牛が一頭当たりの所得で、十四年間で見ますと四万円減少しているんですね。それから、一日当たりの家族労働報酬、これが二〇〇六年で見ますと、十四年間でいうと最低なんです、一万二千三百九十八円と。前年から比較しても一〇%下がっているということなんですね。ですから、コストを下げて、本当に働いても働いても収入が減り続けると、正に今酪農版のワーキングプアと言える状況だというふうに思うんです。
 それで、加工原料乳の補給金の単価ですけれども、二〇〇二年以降でいうとこれは下げ続けなんですね、下がり続けている。それから、限度数量も同様に下がってきていると。こういう状況になっているのは、私は、やはり政府の酪農政策によってこういう事態がもたらされているというふうに思うわけですけれども、その点でまず大臣としての責任や反省点がおありでしょうか。

○副大臣(国井正幸君) 今、紙先生から御指摘のように、酪農家の皆さんの大変な御努力等もあって、おかげさまで家族労働報酬も順調に伸びてくることができたんでありますが、ただ、私も手元に資料を持っておりますが、十七年につきましては残念ながら家族労働報酬が減少したと、こういうことでございます。この原因等々については、今もお話ありましたように、やはり生乳の生産が順調だという部分もありまして、乳価が低下をして所得が減少したというふうなことでございます。
 したがって、今般も飼料価格の高騰等を含めて十五銭の加工乳の補給金の単価を乗せる諮問を今しているわけでございまして、何とか厳しいながらも努力をしていただいて、更に新規分野での、先ほど来申し上げておりますように、チーズ等新規需要の見込まれる部分に更に私どもも需要の開拓を期待していきたいと、このように考えております。

○紙智子君 今、お話の中で、加工原料乳の補給金の単価ということで、十五銭ですかね、十五銭、今日の日本農業新聞にも出ていたんですけど、私はそれでは今の酪農家の経営を守ることできないというふうに思うんですね。
 北海道などで釧根地域、酪農中心の地域なわけですけども、酪農家の方に聞きますと、大体年三百トン搾る人の場合、経産牛で四十五頭飼っているんですけど、全部で七十頭で、そういうところの場合聞きますと、二〇〇五年、二〇〇六年というふうに見ても乳量が一万四千キロ減っているんですね。それで、生乳の代金でキロ当たり、まあキロですけども、これは二円八十銭下がったんだと、それから補給金で五十銭下がって、合わせると三円三十銭下がったというんですね。結果として、七十頭牛を飼っている中では、年間でいうと百五十万減っているという話なんですよ。この人の場合はそんなに規模大きい方じゃないですけども、一千トン搾るような規模の農家だったら、じゃもっといいのかというと、そうじゃなくて、やはり減収でいうと大体三百万から四百万、年間の減収で、そのぐらい減っているという話なんですね。
 今お話があって、チーズのことも言われたんですけども、確かにチーズの工場を造って増産するということでは量は出せるかもしれないと、それは。ただ、先ほど来議論もありましたけど、やっぱりチーズに向けて出す乳価というのは四十円とか五十円とか低いということがあって、プールで農家には手渡るんだけども、そうすると下がっちゃうわけですね。やっぱり生乳で売るのと全然違うわけで、結局プール乳価ということになると、これは農家にとってみると下がってしまうと、減収になるということが言われているわけです。
 ですから、やっぱり補給金の単価ということでは、これはやっぱり十五銭じゃとてもじゃないけれども追い付かないというふうに思うんですけども、いかがでしょうか。

○副大臣(国井正幸君) 今回の補給金の単価の算定につきましても、今年、特別な作為を持ってしたわけではなくて、これまでのルールに基づいてしっかりと算定をさせていただいたつもりでございます。
 なお、やはり経営の安定を図るという側面から、具体的には、前年度の単価に過去三年間の生産コストの変動率、これを乗じた形で出させていただいているわけでございまして、私どもも更に努力をしながら生産者の皆さんとともに更に経営効率の向上に努めていく必要があるんではないかと、このように思っている次第でございます。

○紙智子君 まあ算定基準どおりにやっているというお話なんですけど、現実の実態は、この区域全体の農協に入っている組合員さんのところなんか見ても、大体四割が赤字になっているんですね。ですから、やっぱりそういうことで、本当に酪農経営を守っていくということのためには、これは従来のやっぱり枠を超えて対策を考えないといけない事態だというふうに思うんです。
 それから次に、飼料価格の高騰問題で、これもいろいろ議論、この間されているんですけれども、シカゴの商品の取引所のトウモロコシの価格、これは二〇〇五年の段階では二ドル台だったのが、今年一月末には四ドル超えたと。それから、お話ありましたけど、小麦にしても、二〇〇五年は三ドル台後半で推移したのが、今年一月は四・七ドルになったと。トウモロコシも小麦もオーストラリアの大干ばつが価格高騰に影響を与えているわけですけど、トウモロコシについては、ずっと言われているように、エタノールの生産の急増というので影響を与えていると。
 それで、いずれも地球温暖化ということが背景にも言われていて、オーストラリアでいえば、気象庁が、こういう事態になっている干ばつの問題はこれは地球温暖化の影響だというふうに指摘していますし、トウモロコシの方、エタノールの方も、言わば、なぜそれを生産増やしていっているかというと、やっぱり備えてですよね、温暖化に備えてということがあるわけですから、そういう地球温暖化ということでいえば、まあ構造的であるかないかという話もさっきありましたけど、やっぱりこれ構造的な問題が背景にあるというふうに思うわけです。
 飼料価格の高騰にそれが影響を与えているということでいえば、やはりこれが進行していくということの中で、これからの世界の穀物需給というのはこれは楽観できない状況にあるというふうに思うんですけれども、その点、大臣はどのように認識されていらっしゃいますか。
 大臣がいらっしゃるので、答えていただいて。

○副大臣(国井正幸君) 今おっしゃられた中身、本当に大切なことでございまして、国内における飼料の自給率の向上、やっぱりしっかりと図っていくということが必要なんだろうというふうに思っています。
 このバイオエタノールのトウモロコシが転用されている問題についても、評価はいろいろあると思うんです。これ地球の温暖化防止という側面からすると好ましいことでもありますが、しかし食べられるものを、食料をそちらに向けることに対しての是非論というのもあるわけでございまして、そういう意味で、我が国において農林水産省の中でも実はバイオエタノールのこの研究開発をやっているわけでありますが。
 一方で、サトウキビの問題も、これ糖みつを使ってもやっておりますが、それ以上に、人間が食べられないセルロース、これを使ったバイオエタノールの開発なんかも、今おっしゃられるような、一方が立てば一方が立たないというのではなくて、ともに環境問題もあるいは食料の、地球全体のですよ、食料事情も解決するためにはそういう全く新しい分野での技術開発というのも必要なんではないかなというふうなことで、我が国では今そういう努力を重ねているところでございます。

○紙智子君 大臣がいらっしゃらないかもしれないというので副大臣にしたので、是非、大臣、お答えいただきたいと思うんですけど。
 えさを海外に依存していると、こういういろんな環境の状況の変化の中で、日本の畜産、酪農の経営の安定も、さらにその存立の基盤も脅かされかねないということで、やはり日本の飼料自給率を一刻も早く上げなきゃいけないというふうに、そういう問題に直面するわけですよね。
 飼料自給率の引上げに全力を挙げなきゃいけないというふうに思うわけですけれども、これについて端的にどういうふうに引き上げるのかというところについてお話を願います。

○国務大臣(松岡利勝君) 紙先生のこの飼料自給率、えさの自給率の引上げ、具体的にどのように進めるかということでございますが、これは先ほど和田ひろ子先生からもお尋ねがございましたし、またその他の先生方からも今日は御指摘があったわけでございます。
 いずれにいたしましても、飼料自給率の向上というのは最大の私ども課題でございます。これを引き上げることが食料自給率の向上にもつながってまいるわけでございますし、国土の有効活用、そしてまた資源循環型の畜産を確立をしていく、そういった観点からも是非これは最大限に取り組まなければならないと、このように認識をいたしております。
 そこで、今、食料・農業・農村基本計画におきましては、平成十五年度に二四%でありましたこのえさの自給率、これを平成二十七年度には一〇%以上伸ばしまして三五%に向上させていこうと、これを目標にして今取り組んでいるところでございます。
 この目標を達成するためには、十七年度に飼料自給率向上戦略会議、これを設置をいたしたところでございまして、ここにおけます議論等を踏まえまして、飼料基盤の整備、それから稲発酵粗飼料、これはもうずっと以前からやってきているわけでありますが、いわゆるホールクロップサイレージ、これの生産利用の拡大、それからまた大体一千万トン近く生産されております稲わらの広域流通の促進、それからまた水田や耕作放棄地を活用いたしました放牧の推進、それからもうずっと今日も野村先生からも御指摘ございました食品残渣、こういったことの未利用なものの資源をどうやってこれをえさ化していくか、飼料化していくか、こういったことも私ども積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
 いずれにいたしましても、畜産政策の中で最大の課題だと思っておりますので、国、地方公共団体、農業団体、それから消費者団体等も一体となって適切な役割分担の下で国を挙げてこれが取り組んでいかれるようにしていきたい、このように思っております。

○紙智子君 ちょっと後ろが詰まってきたので、ちょっと合わせて質問したいんですけれども、今その基本計画で戦略的にということで十七年度から二十七年という話されたんですけれども、実は基本計画で二〇〇三年のときにこの飼料作物の作付面積を二〇一五年までに増やすという計画があったわけだけれども、これ自体、それを作って立てたんだけれども、結局その出発の時点から下がっちゃったわけですよね、三万ヘクタール下回っちゃったわけですよ。そこのところは言わないんですけれどもね。
 だから、そうすると、本当に今言われたようなことで果たして進んでいくのかなというのは非常に疑問に思うわけです。私はもっと思い切った財政負担を前提とした抜本的な取組をしなければ自給率、飼料の自給率は上がらないんじゃないかというふうに思うわけです。
 先日、農水省に飼料米を仮に転作面積で八十五万ヘクタール、それから耕作放棄地三十八万五千ヘクタール、ここに植えた場合に飼料自給率がどれだけ上がるか試算をしていただいたんです。その結果、現在の飼料自給率二五%ですけれども、五一%に上がるということなんですね。飼料米は配合飼料にも使えるというのもありますし、酪農だけじゃなくて畜産にも使えると。食料安全保障にとっても大変大事だということなので、転作面積すべてに飼料米を植えるということではなくて、耕作されていない転作水田の十一万二千ヘクタール、それから耕作放棄地の三十八万四千ヘクタールに飼料米を植えるだけでも、これ飼料自給率は一〇%引き上げることができるというふうに思うんですけれども、このぐらい思い切った取組をやる必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(国井正幸君) 御指摘のように、当省で先生の御指摘いただいて試算をさせていただいた結果は、今御案内のとおり一〇%から向上するというふうに数字上出るようでございます。したがって、これも有効な施策だというふうに思いますが、ただ全部をできるかというと、なかなかやっぱり条件等々によってなかなかできにくいところもあろうと思います。
 しかし、やはり有効な施策であることは間違いありませんので、是非進めていきたいというふうに思っております。
 なお、あわせて、新しい多収穫の品種等々は、これはバイオマス利用等も含めてでありますが、これはやっぱり科学技術の粋を駆使して開発していく必要があるというふうに思いますので、今後とも重要な施策として検討はさせていただきたいと、このように思っております。

○委員長(加治屋義人君) 時間が過ぎておりますので、答弁を簡単に、また質疑もまとめていただきたいと思います。

○紙智子君 じゃ、時間ということですので。
 今、有効だということで、その後やられるということで、私たちも、一遍に百やれというのはできないかもしれないけれども、とにかく今はゼロなわけですから、そこをやっぱり実際やって、そしてうんと広げていくということが大事だと思っていますので、そこをよろしくお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。