<第164回国会閉会後 2006年7月20日 農林水産委員会 第1号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、七月十日に米国から輸入された箱入り米国産七面鳥肉等、これに牛肉加工品、ローストビーフですけれども、混載されていた事例についてお聞きしたいと思います。
 米国政府は、これについてはささいな問題だとしているんですけれども、確かめてみますと、この米国産牛肉の輸入禁止措置がなされた二〇〇三年の十二月以降、米国産牛肉及び牛肉加工品の輸入が今回を入れますと四回繰り返されているんですね。本来、この米国農務省の食品安全検査局、FSISの輸出証明書が添付されなければ輸入されないはずなんです。それが四回も違反して繰り返されているということは、これ、ささいな問題じゃなくて重大な問題だと思うんですね。違反された輸出施設の名前も明らかにすべきだし、どうして輸出証明書が添付されたのか。これどういうふうに調べていますか。

○政府参考人(中川坦君) 今回の事例についてまず申し上げますけれども、米国産の七面鳥肉とそれから豚のハムのコンテナに、今、先生がおっしゃいましたが、ローストビーフが一箱混載をされていたということでありまして、そのこと自体は大変遺憾なことだというふうに思います。
 この件につきましては、FSIS、米国農務省の食品検査局が現在日本側の要請を受けて調査を継続しておりますけれども、まずFSISの方から連絡がありましたのは、当該牛肉加工品は加工工場のベルトコンベヤーから七面鳥の箱がパレットに搭載をされる際に不注意で混載されたものというふうな報告を受けております。
 しかしながら、この輸入が認められていないものが日本向けに積み出されたということは、これは事実であります。米国政府に対しまして、このことにつきまして必要な改善措置をとるようにということはもう既に申入れをしております。
 今回、全体でいきますと、七面鳥の肉が箱では千二百箱余ありました。それから、豚のハムが二千箱余ありました。これが一つのコンテナに入っていたわけです。これを、その中に一つの箱があったということで、これは日本の水際で一つのコンテナに入っていた約三千箱のものを見ている中で違反が見付かったということでございまして、水際できちっとやっているということの証左にもなりますけれども、まず、アメリカ側でこういう事故が起こった、間違った処理がされたということに対しては、冒頭も申し上げましたが、大変に遺憾なことでありますし、その原因がどこにあったのかということは、今、至急調査をするようにということで要請をしたところでございます。
 委員御指摘のように、過去三回ございました。それぞれその都度、こういうことについては十分注意をしてもらいたい、改善措置をしてもらいたいということはこれまでも言ってきたところでございます。

○紙智子君 輸出証明書が添付されなければ、これそういうふうにならないはずなんですけど、どういう仕組みで、向こうは間違ったという話なんだけど、証明書が添付されなかったわけじゃなくてされていたわけですよね。それをだから確認しているはずなんだけど、それがどうしてそういう事態、数の問題じゃないと思うんですね、そこがちょっとよく分からないし、そこはどういうふうに解明されているんですかね。

○政府参考人(中川坦君) 詳細はまだよく分かりませんけれども、向こう側の証明書の中にローストビーフ一箱とあって、それに証明をしていたわけではないんです。つまり、七面鳥の肉が千二百何十箱と、それからハムが約二千箱ということについて証明をしたと。そのときに、トータル三千箱あるものについて一つ紛れ込んでいたところを確かにアメリカ側の検査官は見付けてなかった、見落としたというのはあると思いますけれども、その違反物品を証明したわけではございません。

○紙智子君 今年一月の二十日に成田で発見されて脊柱が入っていたと。何でこんなことになったんだということで、二度とそうならないようにということでやっている最中にまたこういう事態になるということはどういうことなのかなというふうに思うわけですよ。
 それで、輸出証明書が添付されていたわけじゃないと。ということは、添付されないで入ったというのは、どういうことで入ったのかなというのがこれまた不思議なわけですよね。これについて、やはりきちっとそういうことでもって輸出をした施設についても名前を明らかにすべきだと思うんですけど、これどうですか。

○政府参考人(中川坦君) 今回の事件、まず冒頭のところ、どうして入ったのかは今正に原因究明をしているところでございます。それから、これは入ったというよりも水際で見付けて止めているわけでありまして、その企業がどうであったか、今回のこの施設は先ほどから出ております三十五の対日の牛肉輸出認定施設ではありません。七面鳥なり豚のハムを加工しているところでございますけれども、まあそれはともかくといたしまして、原因はどうであるかということはきちっと確認をしなければいけません。
 それから、この企業の企業名を公表すべきではないかという御質問でありますけれども、この時点で企業名まで公表することにつきましては、一つはいろんな情報公開法の世界でのルールからいいまして私どもは現在これをやるということは考えておりませんし、それから、まずは当該、当事者に、その当該企業に対してこういうことを公表するということであれば、その意向といいましょうか、まずは相手方にそのことについて受け入れるかどうかということを確認する手順がございます。
 ですから、今はそれもいたしておりませんが、直ちに公表するということは私ども適切じゃないというふうには考えております。

○紙智子君 そういう企業の名前を明らかにしないという問題はほかの問題でもあって、これ自体も非常に問題だなというふうに思いますけれども。いずれにしても、これ究明をきちっとして、どういう訳でそうなったのかということについてはできるだけ早くこの委員会にも提出をしていただきたいと、資料をというふうに思いますけど、よろしいですね。
 それじゃ、次にお聞きしますけれども、今回の米国への事前査察についてです。それで、二十三日までということなんですけれども、この事前査察に当たって、私、前国会でも質問したんですけれども、ノンコンプライアンスレコード、食肉処理場におけるBSEの対策の言ってみれば違反、それを記録しているものですけれども、これについては十分読み込んで査察を行っているんでしょうか。

○政府参考人(松本義幸君) 現在、日本側が米国で行っております対日輸出認定施設に対する現地調査でございますけれども、過去のBSE関係規制に対しますノンコンプライアンスレコード等の状況を踏まえて、各認定施設における対日輸出牛肉の処理のためのSRMの除去、分別管理、内部監査などの手順の文書化の状況ですとか実施記録等について調査を行いまして、米国における対日輸出プログラムの遵守体制の検証を行っているところでございます。
 また、施設におけるBSE関係規制に関しますノンコンプライアンスレコードにつきましても、過去のものだけではなくて、直近の発行状況や改善状況についても確認をしているところでございます。

○紙智子君 過去のものもちゃんと見ているということですか。

○政府参考人(松本義幸君) その施設が過去にどのような指摘を受けたかということも十分踏まえつつ、直近のものについてどのような、指摘を受けていないかどうかと、受けているのであればどのような改善を行ったかということで確認をしているというところでございます。

○紙智子君 ノンコンプライアンスレコードから違反が常習的に行われていたということで繰り返されてきたと。やっぱりその根本問題といいますか、ポイントというのがある程度こう明らかになってくると思うんですね。
 それで、どこがどのように問題でそういうことが繰り返されたのかと。そこをどう改善しているのかということ、当然やっぱり査察の際のポイントになるというふうに思うんですよ。その点はどういう点というふうにごらんになっているんですかね。

○政府参考人(松本義幸君) 今回の事前調査につきましては非常に幅広くやっておりますので、その議員御指摘のノンコンプライアンスレコード等についても、過去のそういう指摘を受けたところが、この施設が過去にどういう点で受けたかということも事前にちゃんと持っていて、先ほど申し上げましたけれども、現在一番直近でそれを受けていないかどうかということについて聞いておりますし、また全般的な判断として、特定危険部位の除去ですとか、とにかくHACCPプランに基づきますきちっと手続を取っておるかと、また文書に残しておるかどうかと、また輸出プログラムに基づくいろんなマニュアルをちゃんと整備しているかどうかということについて、チェックリストをもって細大漏らさずチェックしてきておるというところでございます。

○紙智子君 先日ちょっとそのことについて聞いたんですけど、いや、そういう視点ではというふうに言われていまして、いや、本当なのかなと思って、今。間違いないですか。

○政府参考人(松本義幸君) そういう視点でということになりますと、ちょっとそこのそういう視点がどういうことかちょっとあれですけれども、そういう過去のものから、また現在どのような対応を取っておるかということを含めて、幅広く調査をやっておるというところでございます。

○紙智子君 韓国が同じように今、査察を行っているわけですね。それで、韓国と日本でいうと、認定されている施設というのは重なるところがかなりあるということで、そういう中で日本の認定施設のうち七施設、これを韓国は韓国への米国産の牛肉の輸出不適合の施設だということで指摘しているわけですよね。
 聞きますけれども、日本の査察で現時点で、あした、あさってまでですよね、現時点で不適合な施設が出ていますか。

○政府参考人(中川坦君) 現在まで三十二施設一応見たというところまでは先ほどもお答えいたしましたけれども、それぞれ三つのチームに分かれてやっております。それ、どういう視点から見るか、もちろんあらかじめきちっと確認をし合って行ったわけですけれども、いったんそれぞれ分かれて行って見てきた者が一堂に会しまして、それからそれぞれの施設で確認をといいますか、見付けたこと、あるいは疑問に思った点について二十一日に今度アメリカ政府とそれぞれ具体的に確認をするという行為を経た上で日本に戻ってきまして、そしてそれぞれの問題があった場合には、その問題があったところをこれはどのくらいのところに位置するかということも含めて日本側で判断をしたいというふうに思っております。
 ですから、端的に言いますと、今、委員は不適合といいますか、そういうものがあったかどうかという御質問でありますけれども、それに端的にお答えすることは、まだそういう判断ができる状況ではございません。日本に調査団が戻って、そしてきちっとした判断をしたいというふうに思っております。

○紙智子君 日本に帰ってくるまでは、一度もそういう点では向こうではやり取りないんですか。

○政府参考人(中川坦君) 現場現場で相手方に質問をしたり、どうだという意見交換も含めてそれはしておりますけれども、最終的に、途中の段階はともあれ、最終的な判断というのはやはり日本に戻ってきてきちっと全体像をとらえた上で最終的には大臣まで御報告をして判断をすべきものだというふうに思っております。

○紙智子君 同じBSEのその対策をめぐる問題で、韓国にとっては施設からその米国産牛肉を輸出するには問題があるというふうに言って日本には問題がないと言うことはちょっとあり得ないなというか、おかしいなと思うんですよね。戻ってきてから判断するということで、今のところはよく分からないという状況だと言うんですけれども。
 それで、食べるのは同じ人間が食べるわけですし、多少韓国と日本で食事事情が違うかもしれないといっても、そのBSE対策ということについてはどういうリスクがあるかということではそんな違いがないと思うんですよ。だから、そういう中で、韓国では七施設が不適切という中で日本は全然ないのかなというのは率直に言って非常に疑問に思うわけです。日本政府の査察がそういう意味では米国に対していささかも甘いものであってはいけないと思いますし、そこのところはしっかりやっておられるんでしょうか。

○政府参考人(中川坦君) まず最後のところは、当然日本は日本の視点でもって食の安全をきちっと確保していく、消費者に信頼を、安心をしていただくというそういう視点からそれぞれの調査団の団員はきちっと対応しているものというふうに思っております。出発に当たっては、当然きちっと見てくるようにというのは私からもそこは指示もしてございます。
 ところで、韓国との関係で先生いろいろとおっしゃいましたけれども、このことにつきましては実は韓国政府、アメリカ政府から正式な情報というのは残念ながら我々得られておりません。で、七施設というのも、アメリカのある私企業の経営者が記者会見をした中で、韓国は三十七施設見てきた中で七つ問題視をしておるというふうなことが記者会見で言ったということが報道されているわけでございます。その際に、あくまでもこれはその報道の中身でありますけれども、韓国が問題にしているのは、カナダからアメリカに入ってきた牛由来の肉とそれからアメリカ由来の肉がきちっと区別をされてないということが一つの問題点、指摘点であったというふうに報道されております。
 この点がそうだということであればということで申し上げますけれども、日本の場合はカナダからは一定の条件で適合したものは入れております。貿易はしております。それに対しましては、韓国はカナダからはまだ全然輸入を認めておりません。したがって、アメリカから入ってくる肉にカナダ由来のものが入っているということはそれ自身大きな問題になります。日本の場合は、カナダからの牛がアメリカに入った場合もそれが、カナダは個体識別制度がありますから、その識別制度によって二十か月以下ということがきちっと特定をされれば、その牛をつぶして肉にして日本に入ってくる、特定危険部位は当然除く。それが二十か月ということが確認できているということであれば、ルールとしてはおかしいことではありません。
 そういったふうに、カナダと韓国、カナダと日本、あるいはアメリカと韓国、アメリカと日本というふうに、それぞれルールといいましょうか輸入再開に当たっての条件が違っておりますので、それぞれの輸入国側から見てルール違反であれば当然問題視をしていかなければいけないというふうに思っております。
 そういう意味で、繰り返しになりますが、日本は、アメリカと合意したそのルールがきちっと守られるようにという視点で、今現地の三十五の施設を見ているところでございます。

○紙智子君 何となく逃げられている感じがするんですけど、要するに、日本に帰ってくるまではよく分からないということ自体も私は非常に問題だというふうに思うんですよ。だって、ノンコンプライアンスレコードの中身を読んでいきますと、結局、実際に違反が繰り返されている中身というのは、例えば危険部位の部分が全部取り除かれていないとか、それから、背割りだとかということでのこぎりで切っていくんだけど、これ一回一回本当は消毒したり洗ったりして次のところにというふうになっているのに、それをそのまま洗わないで次々とやっていっている違反が繰り返されているとか、そういうことが実際に載っているわけですよ、同じ工場の中でですね。
 そういう問題が何で起こるのかと。どこに問題があってそういうことが起こったのか。それがもう繰り返されないようになったのかどうなのかということをちゃんと点検しているのかなというふうに思うわけですよ。それは、されているのかされていないのか見て分からないのかということなんですよ。そういうことがちゃんと点検されているのかということを私はお聞きしたかったわけですよね、繰り返されないように。どうですか。

○政府参考人(松本義幸君) 先ほど申し上げましたように、委員御指摘の過去の部分で繰り返しているというところでありますけれども、そういうことが現在どうであるかということで、直近のノンコンプライアンスレコードの状況も聞いて調査をやっているということでありますので、もし繰り返すようなことがあれば、ノンコンプライアンスレコードがたくさん出ているということになろうかと思いますけれども、そういうのも含めて現在調査をやっているというところでございます。

○紙智子君 余り納得いかないんですけれども、次に行きます。
 抜き打ち検査、査察についてなんですけれども、六月二十一日の日米共同記者発表で、米国農務省による抜き打ち検査の同行という項目がありますね。先ほど福本先生が質問されていて、ちょっとそれを聞いていてもう一度確認したいと思ったんですけれども、その抜き打ち査察というのは二種類あるという話されましたよね、先ほど。言われませんでしたか。

○政府参考人(中川坦君) 査察が二種類です。

○紙智子君 査察、二種類、抜き打ち。
 それで、その抜き打ち査察ということ、記者発表の中で、同行するという項目、この抜き打ち査察というのは相手方に全く連絡することなく査察をするということなんですか。

○政府参考人(中川坦君) 言葉としましては、事前に通報しない査察ということにアメリカの文書でもなっておりますから、常識的には事前に通告をしないということだと思いますけれども、この具体的な抜き打ち査察の方法なり手続につきましては、これからアメリカ側ときちっと詰めていくと、実際に日本もそこで同行していくということになりますと、そこのところはこれから詰めをしていかなければいけないというふうに思っております。
 二種類あると申し上げたのは、通常、AMSというアメリカ農務省の認証を担当している部局が、査察をする際に、普通は事前にいつ行くということを通知をして行く、それが従来の仕組みだったわけですけれども、一月のあの事故を踏まえまして、さらにその監査といいましょうか査察というか、そういうチェック機能を強化するという意味で事前アンアナウンスト、事前に相手方に知らせない査察も導入することとしたということでございます。その事前に通報しない、細部はまだ分かりませんけれども、それに日本も参加をしたい、同行したいということで今申入れをして、実現を努力しているということであります。

○紙智子君 これからアメリカとの間で詰めていくということですよね。

○政府参考人(中川坦君) はい。

○紙智子君 つまり、事前に通告をしないでいきなり入ると、こういうやり方をアメリカがやろうとするんだけれども、これに一緒に日本も同行させてほしいと。これは、アメリカ側はオーケーと言ったわけですか。

○政府参考人(中川坦君) 基本的に、抜き打ち査察に同行するというところはアメリカ側と合意しております。その具体的な実施についてはこれから細部を詰めていかなければいけないということでございます。

○紙智子君 これも、私は本当にそんなできるのかなというふうに思うわけです。
 というのは、二月にアメリカに行って農務省と話をしたときにそのことを聞いたんです。抜き打ちということでなぜできないんだと、やらせてもらえないのかというふうに言ったら、いきなりはできないと、突然訪れてすぐドアを開けることはできないんだという回答だったわけですよ。それはなぜかというと、結局、米国の食肉処理場というのはすべて民間企業で、企業秘密で守られているわけですね。だから、相手に事前に連絡することなく査察をするということは、企業側がじゃ受け入れるのかということがあるわけですよね。
 だから、アメリカの農務省が、いや、いいですよと言ったとしても、じゃ企業はそれを受け入れるのかなということも含めて、本当にそれ実効性があるのかというのを思うわけなんですけど、その辺はどうですか。

○政府参考人(中川坦君) アメリカ農務省が抜き打ち査察をやると、これはまずジョハンズ農務長官が、たしかこの事故が起こった直後に既に長官自身がおっしゃったことの一つだったと記憶をいたしておりますけれども、アメリカ農務省は輸出証明プログラム、EVプログラムという一つのシステムを所掌している役所でございます。そのEVプログラムのいろんな実効確保の中で、これまでも年二回少なくとも査察をするというふうなこともきちっとルールとして決まっておりました。ですから、手法は今回違いますけれども、担当している役所、しかもその責任者が今回、査察、抜き打ち査察をするということで既に公式に表明をしているわけでありますし、日米間でもそういう約束を今回したわけでありますから、それが当然適切な査察ができるようにその実現をきちっとやっていくというのは、アメリカ政府としての務めでもあると思っております。

○紙智子君 やっぱり抜き打ちのその査察というのは、だれが来ようと来まいと日常的にどういうふうな処理の仕方をしているのかということをやっぱりきちっと点検するということから必要な意味を持っているというふうに思うんですよね。
 だから、それがそうじゃなくて、その私が二月に行ったときのやり取りの中でも、米国がやっぱりここ、ここ、ここと言ったところで抜き打ちでやりますよというところについていいという話であれば、これは抜き打ちとは言わないんじゃないかという話になったんですけれども、そこのところは、もし今言ったようなことだとするとこれは抜き打ちとは言えないわけで、そこのところは国民に対してもやっぱり誤解を与えないようにするべきだと思うんです。大体国民の理解というのは一般に、抜き打ちといったらやっぱり全く通告なしにいきなり入るということでもって効果があるというふうに思っているわけですから。そこは大丈夫ですか。

○政府参考人(中川坦君) まずは、アメリカ農務省が、アメリカ政府が自らの監査、査察のシステムの中に従来の、通常の査察に加えて新たに抜き打ち査察というのを導入するということをこれははっきりと表明をしたわけです。今度はアメリカがやるというその抜き打ち査察に日本も同行したいということを申入れをし、そこはアメリカ側も了承をしているわけです。
 その際にアメリカは、USDAがどこをやるということをまずは判断をして、そしてそれに日本が同行するということが基本とは思いますけれども、日本も、これから先、将来いろんな事柄から判断をして日本がこの施設を見たいんだという日本側の要望をアメリカに伝えて、そして、それを相手方に知らせないで査察をする、抜き打ち査察をするという、そういうことも含めて我々としてはアメリカ側に具体的な条件、その他、実施方法を協議をする際には申し入れていきたいというふうに思っています。

○紙智子君 具体的な煮詰めがされた場合はきちっとそれも明らかにしていただけるんですね。
 それじゃ、次に、六月二十二日のプリオン専門調査会で吉川座長が次のように言っています。今回の違反事例が構造上の問題なのかどうか、もし構造上無視できない違反であればリスク評価は成り立たないというふうにおっしゃっているんですね。これ極めて重大な発言だ、重要な発言だというふうに思います。
 それで、もう少し詳しく言うと、吉川座長は、私、最後に二つ触れておきたいんですけれども、あのとき評価した者として、リスク評価が無効になる場合があるということを附帯事項で書いたわけですと。EVプログラムを遵守させるという前提で評価するという選択を選んだわけで、そうすると、構造上無視できないエラーというものがあれば評価は成立しないことになると思うんです、最初に起こってしまったエラーが構造上の問題だったのか、それとも特別な事例で起こった個別事例のエラーなのかということは非常に重要な問題で、それはアメリカ側にも日本側にも十分認識した格好で、アメリカ側の原因追求というのはUSDAとOIGとダブルチェックのような格好で行われてその報告が出てきたわけで、アメリカ側は個別事例として起こったエラーであるという総括をしたわけですけれども、日本の管理側としてそれを受け入れたのかどうなのか、それは今度の検証も含めて明確な結論を出す必要があると思うんですというふうにおっしゃっているんですね。
 これに対してどんなふうに受け止めておられるのか。これ、大臣、どうでしょう。

○国務大臣(中川昭一君) 吉川座長がおっしゃるまでもなく、一月二十日の出来事というのは、EVプログラム違反ということで輸入をストップしたわけであります。EVプログラム違反ということは、いただいた答申は、EVプログラムが遵守されれば日米のリスクは非常に少ないという答申をいただいているわけでありますから、EVプログラム違反ということは、これは日米の間にリスクが大きくなったということでストップをし、原因究明と再発防止のための作業をしているところでございます。
 米国側は、他の日本向けの施設につきまして四月から五月にかけて再調査をして、この条件の適合性に影響を及ぼすような事実は発見できなかったというふうな報告を受けているところでございますが、いずれにいたしましても、現時点で日本政府がアメリカの三十五施設を今査察をしている最中でございますから、正にEVプログラム違反にならないということを前提にチェックをしているところでございまして、帰ってきて最終報告を私が受けるというところに今向かう作業をしているところでございます。

○紙智子君 大臣の見解は、要するに構造的な問題ではないということなんですか。

○国務大臣(中川昭一君) 構造的であろうが、何ですか、個別であろうが、EVプログラム違反になれば、これは一月二十日にやったようにリスクが日本と同程度ではないということになるわけでありますから、構造的であろうが個別的であろうが、EVプログラム違反ということはあってはならないということでございます。

○紙智子君 前国会で、予算委員会で農水大臣にお聞きしたわけですけれど、そのときにノンコンプライアンスレコードをお見せして、原本は読まれてなかったわけですけど、その後お読みになりましたか。

○国務大臣(中川昭一君) 原本は読んでおりません。

○紙智子君 やっぱり読まれるべきだと思いますね。
 私は、あれを読まなきゃやっぱり実態が分からないし、それで実は、全部その資料を分析も含めて本にして、多くの人たちに、やっぱりまだ知らない人たくさんいますからということでやったんですけど、改めてこれ読んでみますと、やっぱりそこから、いろいろな今まで積み重ねてきたそういう違反記録から浮かび上がってくるものがあるわけですよね。やっぱり私は構造的な問題があるというふうに思っているわけです。
 この米国の処理場というのはすべて企業経営ですね。そして、五つの、五大パッカーと言われる大企業によって経営をされていると。企業秘密で守られているわけです。その一日の処理頭数は、多いところでは五千頭という巨大な処理場も多く存在しているわけですね。そして、その処理のスピードというのは、それだけの規模ですから、もう何秒間に一頭とかという形で物すごい速いスピードで処理をされているわけです。
 さらに、食肉処理で利益を上げていくということで、実際そのために低賃金で働く労働者を多く雇用している。どんどんどんどん労働者が入れ替わって安い賃金で働けるようなふうにしていますし、移民労働者に依存しているわけです。それで、なかなかだから言葉も通じない状況というのがあって、英語が通じないというのは、先日、衆議院の農水委員会でやっぱり閉中審査やられていて、そこで赤松副大臣が答弁の中でも次のように述べられていますね。私は、スイフト社とカーギル社、二社に行ってまいりましたけれども、そういった幹部に対する問い掛け、また現場の作業員、これはなかなか、仕事中でありますし、言葉が、英語が通じない、スペイン語のみというところもあったりしましてというふうに答弁されているわけです。英語が通じないわけなので、職場教育といってもこれはなかなかままならないということがあるんだろうと思いますし、処理スピードを落とさないためにも、なかなか労働争議ということになったら困るということで労働組合はつくらないと、労働者は極力短期雇用ということで熟練労働者が形成されない仕組みになっているという、そういう問題もあるというふうに思うんです。
 そういう中で、同じような違反がこの間やっぱり繰り返されてくるというふうになっていると思うんですね。これについてはどう思われますか。

○政府参考人(中川坦君) ヒスパニックといいますか、移民の労働者が多いということは私どもも認識をしておりますし、今回行っております調査団も、単に英語だけではなくて、例えばスペイン語でもって従業員にきちっと意思疎通ができてルールが理解されているかどうかというふうなことは確認をするようにと、そういう問題意識で調査も行っております。
 そういう意味で、私ども、単に英語だけとかそういうことではなくて、いずれの状況であっても、要は肉がきちっと日本向けにルールどおりのものが処理されているかどうかということを見るのが今の調査団の目的でありますから、そこのところはきちっと見るようにということで今やってきているわけであります。

○紙智子君 大臣はどのように思われますか。

○国務大臣(中川昭一君) ですから、今、専門家が、厚労省と農水省の専門家が見に、査察に行っているわけでございますから、プロが行っているわけでありますから、そのプロの報告を待ちたいと思います。

○紙智子君 私は、やっぱり日本の国民の安全を最優先に考えるのであれば、こういう今までの問題点ということもしっかり見ていただきたいと思いますし、日本向けの牛肉処理施設というのはやっぱり別ラインを設けさせて間違いが起こらないようにさせるということですとか、それから処理スピードも、先日、参議院の農水委員会で、日本からアメリカに出しているHACCP対応の工場を栃木に見に行きましたけれども、あそこはもう本当にゆっくり、本当に一つ一つ丁寧に処理して、解体から洗浄から含めてやっているわけですけれども、そういうことから比べてみても、物すごいスピードで一頭一頭の処理がされていて、これじゃとてもじゃないけれども危険部位なんて取り除けないよと、実際見てきた方の感想もそういう話ありましたけれども、そういうことからいっても、処理スピードも落とさせるとか、ゆったりとした食肉処理ができるようにするとか、こういうことを米国の政府に対しても要求すべきだと思うんですよ。
 それから、当然全頭の検査を求めるべきだというふうに思いますし、それをやっぱり要求すべきだと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(中川昭一君) さっき紙委員が、米国の食肉施設は全部民間だと、御指摘のとおりでございます。我々は、自由経済の中で法律に基づいて、そして特に食の安全については、アメリカに対して日本の要求どおりにやってもらいたいということで再開をし、それにもかかわらず一月二十日にああいう出来事があったわけでございます。
 その時点では、アメリカが施設あるいは公務員含めて、EVプログラムについて、結局はミスというか、違反をしたわけでございますから、再発防止に向かってアメリカ側も努力をしておりますし、日本側としてもそれを査察に行っているわけであります。
 私はプロでございませんからよく分かりませんけれども、スピードが速いとか遅いとか、あるいは移民だからどうだこうだとか、そういう次元ではなくて、きちっとアメリカ側も日本との約束に合った形で食肉を輸出しなければ大変なことになるということは、ある意味ではアメリカ側も思い知ったんだろうというふうに思いますので、我々としては、再発防止という観点も含めて今査察をしているところでございます。
 移民の人が大勢いるとかスピードが速いとかだけで何か日本の食の安全が侵されるというような御議論というものは、それだけでは私は、紙委員の御意見にはそれだけでは私は意見を異にするわけでございます。

○委員長(岩城光英君) 時間が参っております。おまとめ願います。

○紙智子君 私個人の意見じゃなくて、やっぱり多くの国民の皆さんの大きな不安にこたえていくということから、やっぱり中川大臣は大臣なんですから、大きな権限を持っているわけでね、これからの対処どうするのかということが懸かっているわけですから、そういうことで判断していただきたいと思います。
 最後に一つだけお聞きしたいんですけれども、WTOの問題なんですが、二十三日からまた会議ということで先ほど来お話があって、米国が譲歩した場合、今度はボールが日本に投げられてくるということで、そこでどういうふうに対応するのかということが非常に問われてくるわけですけれども、最後に、やっぱり私自身は、本当に日本が半端な譲歩なんかして、それで何とかまとめようということは絶対しちゃいけないというように思います。もちろん、そのまとめるために努力しているんでしょうけれども、しかし、上限関税の問題にしても、生産者の人たちから見ればもうびた一文これ以上は、関税だって下げるのも大変だし、そういう状況の中でやっぱり妥協なく進めてほしいという思いでいると思うんですね。
 そのことについての、最後、大臣の決意といいますか、お話しいただいて、質問を終わりたいと思います。

○委員長(岩城光英君) 中川大臣、手短に願います。

○国務大臣(中川昭一君) 日本提案は既に、先ほどから議論あるように、日本提案ですら最上位階層を四五%削減しますという提案をしているわけであります。
 そして、交渉ですから、譲るところは譲るということで、びた一文とか一粒たりともとか一グラムたりともとか、そういう気持ちでは参りますけれども、我々は守るところは守る、しかしその範囲内で譲るところは譲るという姿勢でやっていかないと交渉はまとまっていかない。これは何も日本だけの話じゃございません。すべての参加国に要求される最低かつ最大のモチベーションであろうというふうに考えております。